私の会った不思議な人たち
「不思議なパソコンライターOK氏」
OK氏とは電脳筒井線(筒井康隆氏が朝日新聞で「朝のガスパール」という小説を連載中、読者の意見を小説に反映してゆこうということで作られたアサヒネットの会議室)で知り合った。学生の頃からいくつかのパソコン雑誌に書いているライターで、マニアックなファンのいる人だった。文章はわかりやすく、読みやすく、短く、鋭かった。
そんなOK氏と初めて会ったのは、H討伐オフの二次会会場であった。このオフ(オフラインミーティングの略。為念)は今だから話せる、いや、今でも話してはまずいのかもしれないが、「朝のガスパール」や筒井氏、電脳筒井線の参加者の悪口を匿名で書いていたHなる編集者が、あるパーティに出席するというので、筒井さんと共に幾人かがHを征伐に行ったのであった。Hは筒井氏に「無礼者っ」と一喝され、べそをかいていた。
OK氏は仕事の都合で二次会からしか来られなかった。「確か名古屋だったよね」と言われ、「そうです。OKさんもですよね」などとなごやかに挨拶を交わしたのであった。その二次会では筒井さんにMacを使ってもらおうという話があったようで、あれこれと盛り上がっていたのだが、「どこかから記事にするから、とクワドラ700でも借りたらどうだろう」「それいい、で、そのまま返さずにおけばわからない」などとパソコンライターの人やプログラマーの人がテキトーなことを言っていたのであった。当時広告業界にいたG氏が、「広告の世界もいいかげんなところがあるけど、パソコンライターはまた違うね」と呆れていた。私も呆れていた。が、実際にMacをキャノンから借りたりはしなかったようだ(当然である)。
OK氏と次に会ったのは92年8月。アサヒネットの会員でもある渡辺香津美さんのライブが名古屋のダイヤモンドホールであったときのこと。私が本屋の包みを持っていたら、「何、それ?」と訊かれ、「ガロ」と答えたら、喜んでいたのでした。ま、ライブにガロを持って入る客は珍しいかもしれないが。ライブのあと、二次会三次会四次会。名古屋のアサヒネット会員のなかに、酔うとひとの後頭部を叩いたり、おしぼりを投げたりする酒乱の女性がいるのだが、OK氏は彼女にすぐに気に入られ、「ぎゃはは、こいつ、叩きやすい」とぽかぽか叩かれて喜んでいた。
92年名古屋忘年会オフ、93年3月の瞠目・反文学賞(筒井さんが審査員だったのでアサヒネットの会員が大勢出かけた)、93年春の名古屋オフ、93年夏の東京のジャズ喫茶でのオフ、93年名古屋忘年会オフ、と考えてみると私はOK氏と素面で会ってる時間がとても短い。
92年名古屋忘年会オフでは夫人を連れて参加され、OK氏は上半身裸にされたりしていたのであった。夫人はある男に下ねた話攻撃をされていたのではなかろうか。他の場所では押さえられて化粧されている男がいたり、なにやら修羅場のような宴会であったが、OK氏のはじけかたはかなりのものであった。
瞠目・反文学賞のときは入場待ちで並んでいる時に見ず知らずの女子大生に話しかけ(話しはじめたのは私であったりするが)、「僕、フリーのライターです。フリーセックスをしましょう。ひとりSMがシュミです」とかそんな話をしていた(私がねたを振ったような記憶もあるが)。とにかくノリはじめるとどこまでも歯止めがきかない人で、何を言い出すかわからないのである。
93年春の名古屋オフでは独身女性に男女幾人かで(なぜか私も混じっていたのであったが)延々Hな話をし、ひどくウケていたのだが、中心メンバーはOK氏であった(私ではない。為念)。その日、私は終電に間に合わず、OK氏の尾張旭市のご実家に泊めていただくことになった。翌朝、御尊父と三人で近くの河原で話す。とても立派なお父様であり、どうしてああいう子供が生まれてきたのかが不思議なほどであった。
93年夏の音種(そういう会議室がアサヒネットにあり、以前私がモデレーターをしていた)オフはめちゃめちゃであった。ディープなレコードやカセットテープを皆で持ち寄り、ジャズ喫茶でかけてもらい、その合間に飲み食いしたり、クイズをしたり、という集まりであったのだが、上半身裸になる男がいたり、男女がやたらと肩を抱き合って写真を撮っていたり、踊り出す人がいたり、抱きつく女性がいたり、男同士が抱き合っていたりと実になんとも狂った状況であった。中でもOK氏は上半身脱いで乳毛の写真を人に撮らせていたようである。なぜか我が家に証拠写真があるが、見たくないので見ていない。OK氏はこの日、 TAKOの回収されたレコードを持ってきていた。このレコードは実にアヴァンギャルドで、頭の音を聴いたジャズ喫茶のマスターが、「これ何?」と飛び出してきたほどであった。私もこんな音ははじめて聴いた。OK氏はアヴァンギャルドである。
93年名古屋忘年会オフの翌日、OK夫妻と前回書いた大阪のT夫妻が我が家を訪れた。妻がクワドラ800を買ったので、それのセッティングをOK氏にしていただくのを兼ねての集まりであった。OK氏は酔いながらも見事にマウスを動かし、あれやこれやをしてくださったのであったが、起動時に女の人のHな写真が出るようにしてあって、「これどうやってはずすの?」と聴くと、「少し勉強したら、はずせるから」と答えて帰っていったのであった。しばらくは妻が Macを起動する度、Hな写真が現れたものであった。
OK氏に関する噂は壮絶なものが多い。締切を大幅に過ぎているのでメールで督促しようとしたところ、パソコン通信の会議室に沢山書いていた、とか、ホテルにカンヅメにされているのに、パソコンでゲームをしていた、とか。94年夏のオフで、「OKの担当になるのだけは嫌だ」とある編集者が話していたのだが、それからしばらくしてその人はOK氏の担当になった。OK氏の悪口を言うと祟るようなので気をつけた方がいい。
