これは想像なのですが、音楽院時代にマーラーとその友人たちは誰かの住まいに集まって一夜を過ごすことがよくあったそうで、そんな時に皆で歌うなどしていたメロディーのひとつがマーラーとロットの二人の記憶の中に残っていて、無意識にそれぞれが自分の曲に使ったという考えはどうでしょうか。また、1990年にこの曲がウィーンで演奏されたときに、「マーラーの交響曲第0番、それともロットの交響曲第1番?」という質問に「ロットとマーラーの二人の学生は、音楽的なアイデアについて親密な交換を楽しんだ」というやりとりがあったことがウィーン国際ハンス・ロット協会のサイトに書かれています("Do
not laugh, gentlemen ..." by Thomas Leibnitz 2000 )。
確かに似た音型に見えますが、わすが2小節だけのことですので何とも言えない箇所ではあります。しかし、マーラーのこのフレーズは、この楽章の冒頭のホルンの掛け声の後にファースト・ヴァイオリンによって奏される付点四分音符+八分音符3つによる音型の変形と見ることができますので、必ずしもロットの模倣とは言い切れないのではないでしょうか。また、ロットの方はこの楽章の冒頭からの
Frisch und lebhaft
という活気を持って演奏されるのに対して、マーラーでは「静かに」という指示しかありませんが、通常はゆっくり演奏されますので雰囲気はかなり異なってきます。なお、ロットのこの音型はこの楽章の中間部の主題として受け継がれます(第177小節から)。しかし、テンポは
Sehr langzam となって極端に遅く演奏されるところとなっていて、これまたマーラーの音楽とはかけ離れたものと言えます。