縮刷版98年7月下旬号


【7月31日】 そうだった「パーフェクトブルー」は東北新社からビデオとLDが発売されるにあたって5・1チャンネルドルビーデジタルに格上げされることが決まって今敏監督に監修をお願いすることになったんだけど、監督にはお金が一切出ないと言われたから今監督大爆発したんだった。どうにかこうにかテレシネ作業が無事済んだからこそのリリース告知の広告が出たんだろーし、懸案だったビデオの仕様が「ビスタ」、スペシャルボックスのオマケも当初の「キャラクター原案の人の描き下ろしカラーイラスト」から「主人公・未麻の初期設定カラーイラスト」になっている当たり、相当な紆余曲折右顧左眄があっただろーと推察する。

 初回限定のLD−BOXとスペシャルコレクションの2つもスペシャルを出す意図はやっぱりわからないけれど、監督描き降ろしのインナージャケットとか35ミリフィルムとかオリジナルセル画って差別化の材料になるのかな。個人的には1枚で裏返さなくても済むDVDが有り難いけど12月10日の発売まで待てず9月25日のLD−BOXを買う可能性もあってここが思案の為所。年末までこっちが大爆発せずに月給取りを続けていられるか解らない状況もあるから早めにLDゲットなんてことになるのかなあ。

 それに何より年末には「機動戦士ガンダム」のLD−BOX第2弾も出ていよいよ資金が逼迫している可能性も大。すでにパート1を購入した現時点で「ジオブリーダーズ」の第2巻と8月早々に発売の「トライガン」の第1巻購入にメドが立たない状況で、月末の「はれときどきぶた」のLD−BOXに至ってはまったく資金の手当すら付いていない。「VUIRS」のDVDも「パーブル」と同じ9月25日からリリースで、これは既にLDを持っているから買わない可能性が大だけど、特典映像とかにそそられる部分もあるしなによりあたしゃ「感染者」なんでひょっとしたら浮かれて買うかもしれん。そうだ「lain」も9月25日からリリース開始だわーを・・・・ってことで結局は何時まで経っても大変なことに変わりがないみたいだから、こーなれば毒を喰らわばの精神で、「パーブル」も3つ纏めてゲットしちゃうか。

 しかし流石は「機動戦士ガンダム」だ。行き着けのお店で予約していた分を引き取ろうとしている間に1つ、2つと売れていく。週末とはいえウィークデーのお昼にさらりまんが時間を作って取りに来ているのがバレバレで、ってつまりは自分も同じ立場なんだけど、年齢的にはそうたいして違わない人たちが主な購買層になっているところを見ると、同じ発売日にショップに行っても買っているのは年齢的に1世代下当たりが中心となっている「ウテナ」あたりと違って、80年代に中高大をどっぷり過ごした「エイティーンズ」な人間にとって、「ガンダム」はやはり1段も2段も違う存在になっているんだろー。

 さてBOXはと言えば2枚入りづつのジャケットで両面に絵が描いてあるんだけど、レコード(そう当時はまだレコードだった)のジャケットとか雑誌に描き降ろされた当時の絵をさんざん見て来た目からすると、新鮮なのにどっか違和感があって妙な気分になる。むしろ封入していある解説書の中にある、安彦良和さんのキャラクターや大河原邦男さんのモビルスーツといった昔どこかで見た覚えのあるイラストに愛着を感じてしまうのは、それだけ同時心に擦り込みながら「ガンダム」の全てを取り込もうとしていた事の現れか。

 インナーボックスのアムロは安彦さんの描き降ろしだけどなんか肉々していて貧相な理系オタクだったアムロのイメージとどこか違う。パート2のボックスはシャアがジャケットだけれど告知のチラシを見る限りではやっぱりイメージが微妙にズレて困惑する。時代の変化がこっちの目かあっちの腕に変化を及ぼしたんだろー。20年だものなあ。まあそれぞれにさまざまな思いこみのある作品だけに、発売なってまたいろいろな意見が出てくるだろーから、刮目してそれらを待ちたい。もう何年も「ガンダム」について話してこなかった身にすると、分かち合えるにしろ反目しあうにしろ語れるってことは悪くない。

 とはいえ昨日は初台方面からのリクエストに答える謎な仕事を夜中までやろーとして「エスタロンモカ」と飲んだとたんに眠気が増してストンと落ち、連日の深夜アニメ観賞が祟って日が南南東へと動いてもなお微睡みが続いている状況にもかかわらず、無理矢理目えこじあけてワープロに向かってカコカコとあること無いこと書いただけあって、今すんげー眠い。のでせっかくの「ガンダム」はしばしのおあずけで、夏も本格化するお盆あたりにまとめて見返してみよーと思ってる。まあとりあえずはガルマが吹っ飛ぶあたりまでへの盛り上がりがキモかな。とにかく今日は早く寝てあすの横浜パシフィコ「ガンダムビッグバンプロジェクト」の幕開けを告げるイベントにゴーだ。12時の回にウロウロしてるんで誰か貧乏な僕にガンダムの超合金を買って下さい。でるんだってさ。


【7月30日】 そろそろ出ているはずだと思うけどまだ買ってない「トライガン」の第3巻に、果たしてこのエピソードは描かれているのかなはTVアニメ「トライガン」の第17話。ヴァッシュとナイブズの出自とそれからヴァッシュとレムとの関わりなんかが描かれていて、過去に何があってだから何があるのかを予感させてくれる内容に、続き描かれるであろー「マキシマム」版のエピソードとさらに先にあるクライマックスへの期待をグググググッと増してくれる。これまでおそらくは頑なに隠して来た「SF」っぽさも、宇宙船のそれも恒星間を飛行する移民船を見せることで一気に明らかにしてしまった。

 残るはヴァッシュとナイブスが子供ん時には成長が早く大人になってからは全然歳を取らない生き物なのか、んでもってヴァッシュのあの銃はどこでいったいどうしたものか、解らない部分も数あれどともあれ1つのクライマックスを過ぎて絵は最初ん頃みたく綺麗になりキレも戻った「トライガン」、8月頭にLDの発売も控えてますます盛り上がりを見せるんだろー。ってことはきっと「コミケ」には10人20人じゃ効かないヴァッシュが1割引き2割引から横に1割増し2割増しまで含めて大量発生するのは確実。それはともかくも期待は実物大かつ実寸のミリィが見られるかどうかって所で、あるいはチームとして調達できず仕方がなしに男のロンゲをバケさせるなんて荒技が、そこいらかしこらに出現するかもしれんと思うと、持ち込み禁止でもトンプソンでベカベカ撃ちたい気分がムラムラ沸いて来る。さてはてどんなものか。期して(もないけど)お盆を待ちたい。

 録画してビデオで見た「lain」の第4話は前回のラストで突然正確変わった玲音がそのまま活発で「ってゆーかー」なコギャル言葉(なのか?)で喋るようになってこれまでとは違った意味での違和感に苛まれる。物語はリアルとバーチャルが交錯してるってゆーかー、バーチャルな世界にバッドトリップしてしまってるよーなヤツラが次々と「幻」みたいなー、少女に襲われていく展開に何となく全体の構成が見えて来た気になるしー。両親の様子を見ているとどーやら玲音には秘密があるみたで、それはヴァーチャルな世界に対する力のよーなものらしく描かれていて、とりあえず話は一気な展開を見せたものの、謎はますます深く大きくなっている。団地の追っかけっこが「童夢」みたくでちょっと背筋ゾクゾク。初めてロリれない女の子のキャラクターが出てきたのにも驚き。しかし「ガッチャ」ってなにのお呪いなんだ?

 解らないことが多すぎるのでここは元締めに説明してもらうべしと、スポンサーの「パイオニアLDC」に押し掛ける。半ば職権を濫用したものだがきっと全国およそ少なく見積もって10人はいる(もっといる?)「lain」フリークな方々は許して頂けるでしょう。だいたいが1人しか担当記者がいなくなってしまった表の新聞のコンテンツ面は、名実ともに「俺がルール」なので、これからなおいっそうアニメとゲームとフィギュアと現代美術とSFと荒木経惟の記事が増えるでしょー。経営戦略? 財務体質?? 社長人事??? なにそれぼくよくわかんなーい。

 さても4月から「A&G事業部」なんて四谷にあるラジオ局と同じよーな部署を作ってアニメとゲームを同じ部門に集めたパイオニアLDCが、「lain」にかける期待はことのほか小さくはなく、「天地無用」「エルハザード」「大運動会」的テイストのお話とは違ったジャンルを育てて新しいファンを獲得する、その先兵としての役割を「lain」は担っているらしー。ちなみに「イリャテッセ」も同様に先兵としての役割を担っているらしく、それは子安武人さんはじめ人気男性声優の声聞きたさな女性ファンを作ることなんだとか。解ったかな女人(おんなびと)よ。

 成功したかと聞かれれば耳を塞いで恵比寿の街を走り回りたくなるって事で明言をごまかすけれど、そーゆー狙いを活かすならまずお話をしっかり見せてくれなきゃダメじゃんと、事業部長のエラい人に向かって言うと紙袋からガサゴソとレンタル向けの第1話を取り出してテーブルの上に置いて差し出すので、とたんに「おおのやすゆきさんは最高でしたね」「男の子が可愛いって女子大生の人が単行本片手に言ってましたよ」「ヴァイスクロイツと人気を二分してますよ(それはそれでものすごい事、だけど)」なんてポジティブシンキングな言葉に切り替える、あたしゃ昔からコウモリ人(びと)とか呼ばれています。やっぱ夏コミは「ナスカ」がキモですね、コスプレはみんなタイツでチャンバラですよ、とか言う自分が何か虚しい。

 しかしこと「lain」に関して開いてがあんまり自身の無さを見せるので(それはもう「イリャテッセイ」なんかより自身の度合いは低そー。これはこれで問題だけど)、世間の話題は「lain」で一色ですよ、有名評論家も「lain」をイチオシですよ、コミケは半分が熊のパジャマで歩いてますよ(うち2割が夏なので白熊さん・・・だめ?)、とか言って元気づける。もうビデオ配りまくったらどーですか、とか言っておいたのでそのうち突然山と「lain」グッズが届いてそのキュートさに一発でヤられ、翌日から熊さんパジャマに熊さんスリッパでパソコンを打ち出すことになるでしょー。それも衆人環視の「ロイホ」とかで。期待してまーす。

 もらった「00PREVIE」ビデオは大体が第1話のダイジェストで熊ちゃんパジャマシーンも結構出るのでこれだけでもクる人はいるかも。「TUTAYA」でレンタルしてるのってこれなのかな? あにめの「lain」も紹介されているけれど、より密度が濃く紹介されているのはゲーム版の方で、テレビとはちょっと(随分)違う目だけが異様にギガギラしているように影の関係なのかそう見える玲音を軸に、何かやっぱり不思議な事が起こるってな内容を教えてくれる。発売は果たして間に合うか、ってところらしーけど少なくとも頑張ってクリスマスまで引っ張る事はしないそーだから、ちょっぴり遅れてもファンは起こらずに待っててね、ってことですか。

 このプレビュービデオでお得なのは巻末にかの「パーフェクトブルー」のビデオグラム化を告げる映像が入っているってとこ。映画を編集した予告編っぽい作りだけど、ストリップ小屋であれこれなシーンや「へんなピザ屋さんだなあ」の次のブスリなシーンや3人がフリフリヒラヒラな服で「ドーキドーキ」と踊っているシーンとかが漏れなく入っているから、これだけ見ていても結構あの映画の余韻に浸れる。もちろん本編が発売されたら買うけれど、しかしチラシを見ると音声がドルビーデジタル、5・1チャンネルなんて事になっていて、今敏さんのページのどこにそんな豪毅な大盤振舞が書いてあったのかと不思議に思う。あるいどっかから金でも降って来たのかな?

 「パーブル」と言えば原作者の竹内義和さんがぶんか社の叢書「ホラーウェイヴ」から刊行された「シンプル・レッド」は理想を追求し過ぎて負われたアニメ監督と、アニメの声優よりも唄やゲームやラジオのパーソナリティが人気で内心アーティストとしての自分との葛藤に悩む声優が登場する「裏パーブル」的ストーリー。自分の理想を追い求めたが為に業界から追放されたアニメ監督の身長が180を超えると読んであるいは今敏さんあたりの顔を思い浮かべたけれど、「メタレイド」って少年の悩みや苦しみを描いてヒットしたアニメの監督だったとあると今度は庵野秀明さんを思い出すあたり、あれやこれやな情報をゴッタ煮にして詰め込んで、いかにもな声優業界アニメ業界を構築する、パッチワークの妙が生きた作品とゆー気がしてくる。声優流出ポルノ話も満載で、見分け方とか結構勉強になったので、早速取り寄せてナマと見比べてみよーかな。って買うのかミヤムーのエロなんて。


【7月29日】 小林でも恭二さんの方の「カブキの日」(講談社、1600円)を読む。出た直後に買ったは良いものの長く行方不明になっていて、それがようやく山の下から見つかったのをこれ幸いと一気読みしたもので、大森望さんだったったかがが「歌舞伎版美藝公」と言っていた意味をようやくにして納得するも、伝説めいた断片を挟みながら物語がクライマックスへと収束していくのは池澤夏樹さんの「マシアス・ギリの失脚」(新潮社)にも通じるところがあるよーな気がして途端にハーパーの12年物が飲みたくなる。「マシアス」読んだ人なら意味は解るね。

 あるいはしりあがり寿さんの「真夜中の弥次さん喜多さん」にも似た現実と非現実とが交錯していく最中におよそ異様なキャラクターが絡んで話をますます異様な雰囲気へと引きずり込む手法に似ている部分もあり、しりあがり寿さんにいつか絵に描いてもらいたいってな気もしてくる。SFとか幻想小説とかマジック・リアリズムとかに慣れている人にとってはそうした現実と仮想とがごっちゃになりながらも混在していく描写は楽しいばかりだけど、ストレートな純文学の人には果たしてどうだったのだろーか。三島賞はとっても直木芥川にはとんと縁がなかったよーで(出版社の思惑もあるんだろーけど)、ノミネートすらされなかったけど、今の傾向ならあるいは直木賞へと引きずり込まれる可能性大と、思い冬の直木賞あたりを楽しみにする。

 しかし主人公の女の子の名前が蕪(かぶら)というのには大笑い。今となっては何で読んだのかさっぱり思い出せないのが悔しいけれど、あるコラムで誰かが娘の名前をつけるときに、濁点があるとかラ行があるとかいった特徴をすべて入れた名前として、娘にかぶらと付けようと奥さんに提案して一言の元に却下されたエピソードを思いだし、当時はなるほどいくらなんでも「かぶら」はねーよなと思ったのが、こーして改めて素晴らしい物語の素晴らしい主人公を目の当たりにすると、名前が蕪(かぶら)でも一向におかしくないよーに思えて、人ってよくよく状況に流されやすい巻かれやすいってことを身を持って実感する。

 だからといって仮に億が1つの可能性で僕が結婚して子供のそれも娘が生まれたところで「かぶら」と付けるかとゆーとやはり2の足を踏でしまうのが情けない。「なたね」なら良いかもしれないけれど、流石に「かぶら」じゃー薄くうすーく切って足の底に綺麗に並べて漬け物にするくらいした将来がないと思うと不敏、だから自分の所はとりあえず置いておいて(心配しなくても無理だって)、近くどこかで娘が生まれそうだったら、迷わず「かぶら」と付けよとここで他人に責任をなすり付けておく。さてもコラムの筆者が「かぶら」の変わりにつけた名前が何だったのか思い出せないのがやっぱり頭に何か挟まっているよーで気持ちが悪い。誰の何ってコラムだったのかなー。うーんうーん悩ましい。

 「マシアス・ギリ」と言えば同じ南洋が舞台の「さらばスティーブンソン」(新潮社、2200縁)って本を読む。実はあまり知らない森山清隆さんって人が書いた「文芸サスペンス」って触れ込みだけど、かの名作「宝島」のガキ向けな部分をすべて取り払った上でサモアへとやってきたスティーブンソンが書いた「新・宝島」が、今もサモアのどこかに残っていて、それを大勢の人々が血眼になって探しているっなシチュエーションは、よりエンターテインメントに近いテイストを持っているし、実際本の大半は漂流であったり殺人事件であったりと、殺伐だけどエネルギッシュな雰囲気を醸し出している。

 割と自分探し的な要素があって、「俺は俺だし俺以上」がモットーな(今決めた)自分ならいざしらず、全国各地のアイデンティティが崩れ掛かっている若者たちに、もっと現実と向かいあって批判も中傷も浴びながらケナゲに育っていくことの大変さを示しているよーな気がしないでもない。さても有名な作家は生前にたいていの本が発表されるから、残っているのはカスかあるいは作家が自らボツにした資料的な価値は高くても作品的な価値はどうだ? な作品ばかり、にも関わらず群がる男たちの多さはやはり、品物としてそんな「幻の草稿」を扱う人もさることながら、永遠に探し続ける苦しみを超えた探訪の喜びがきっとそこにはあるからなんだろーね。とりあえずはハッピーエンドな結末が、実は違っていたりするのかもしれず、その意味でも「宝島」ならぬ「さらばスティーブンソン」の”幻の続編”を、著者存命にも関わらず、や著者存命だからこそ広く世間に探っていこー。

 ああわが母校、にはさせてもらえなかった学校を見ながら日吉からテクテクと歩いて光栄本社へと向かう。大昔にその出現を予言して表でも一応でっかく扱った「信長の野望」が、いよいよネットワーク型対戦ゲームへと移行していて、会場ではもっぱら各社の編集者やらライターさんがLAN環境で「信長の野望 インターネット」を楽しんでいる姿を見るにつけ、こーゆビジネスもあるいは成功するのかもと、ややお世辞モードも入れて新作に押しみない拍手を贈ろー。

 見ると「信長の野望」でどんどんと複雑化して来た(んだよね?)戦略とか内政とかいったパラメータをばっさりと切って、城攻め領地格調といったアドレナリンがほとばしりそーな設定を優先させる潔さにはまず脱帽。手練れの「信長の野望ラー」が熱心に画面に見入っていたところを見ると、エキスパートでも納得させるものがきっと「インターネット版」にはあるんだろー。九州マップだけのデモ版を貰ったは良いけれど、マシン環境が整わずスタートできない悲しさに「みんなビンボが悪いのさ」と拗ねてみる。


【7月28日】 小林弘人・WIRED編集長(だよね?)によれば「よぉれよぉれえよっほっほっ、よっほほほのうっしゃっしゃっ、うーりゃうーりゃどっほほっのほぉー」らしい「アルプスの少女ハイジ」のコーラス部分も耳に優しい展覧会を見に行く。昨日もお伝えした岩本正勝こと「ミスター」が全身全霊を込めて描いた芸術(アート)の数々が、今を名高い現代美術の梁山泊、小山登美夫ギャラリーにて展示されるとの報に「これは事件だ」(by神足裕司)とあっては仕事なんてしている場合ではないのである。

 そう、それはかつて「印象 日の出」を引っ提げてモネ(マネ? セザンヌ?? 忘れたあ)とそして「印象派」がその名を永遠に美術史に刻んだが如く、来るべき21世紀に使われるであろう美術の教科書にその偉大なる足跡が刻まれるかもしれないミスターが、歴史を作った瞬間に立ち会うのがたまたま偶然この街にいて、たまたま偶然展覧会へのお誘いが来ていた者としての、こんにゃくか絹ごし豆腐が如きの地盤の上に立つブーやフーが作った楼閣のような何とも頼りない論拠に基づく義務であろう。

 その名も「アルプスの画家 ミスター展」が開幕した江東区佐賀町1の8の13は鄙(ひな)びた食糧ビル2階にある「小山登美夫ギャラリー」に1歩足を踏み入れた瞬間、聞こえて来たのは「よぉれよぉれえよっほっほっ」(by小林弘人)の歌声。狭い(暑い、汚・・・くはないけど古い)ギャラリーの壁という壁にはかの「教えてー」とハイジも呼びかけるアルプスの山々が描かれ、その上にはところ広しと半ペラなレシートの上に描かれた美少女たちと、そしてB5サイズからA4サイズほどの大きさのカンバスに描かれたやっぱり美少女たちの絵が飾られていた。一目見た印象は以下のよなものだた。「ミスター、腕を上げたな」。

 かの「ぴあ」に掲載されているイラストが口も大きく目もただのキラキラ(テレビの国から、はつかない)で、およそ可愛さからは縁遠いただの記号にもなりえない少女の絵だったことに比べると、展示してあったレシートやキャンバスの上の美少女は、口は小さくなり目はクリクリになり胸は薄いけどあって足は細いけどなめまかしく、使って決して使えなくはない(何に、とは聞くな)記号以上の少女になってあちらの壁、こちらの壁から健康な媚気を発散していた。思わずポケットに手をいれて・・・・は衆人環視もあって流石にやらなかったけどね。

 しつこく言うけどマンガとしてはまだまだ稚拙にしか過ぎないミスターの描く美少女たち。それがレシート1枚5000円、カンバス物が小さい方で2万、大きい方で3万の値段で売られているのを1冊500円の同人誌すら売るのに四苦八苦している人たちがどう思うのかは決して想像できないことではない。見た目で「アンドロジナス的よね」「バルテュスみたい」ってな賢しらな言説を振り回して、何か価値を見出そうなんてしている雑誌記者やら評論家の方々の言説に対し、率直に「下手だよね」と言ってのける村上隆さんの言葉は聞いていて(したり)と思うけど、一方で「高尚」「価値のある」といったイメージを否応なしに持っている「アート」としてミスターの作品が扱われることに、村上さんが別に異論を唱えている訳ではく、そこいらあたりに「アートって、何?」ってな疑問がつきまとって離れない。

 もっとも価値観なんて人それぞれに千差万別で、エラい人の言葉であろうと画廊の付けた値段であろうとそれを信じるならばそれがその人にとっての「価値」なんだろー。この2年近くのレシート美少女の変遷を知る者が、必死にそれこそ取り憑かれたように(取り憑かれているんだなおそらく実際)レシートに描き続ける「行為」を俯瞰して、見えて来た浮かび上がって来る熱のような物に価値を見出すのならばそれも1つの評価だし、描かれた対象から作者の内面が透けて見えて来ることに価値を見出すのならばやっぱりそれも立派な評価なのだ。

 最も分かりやすい貨幣という価値観において比較されるから腹も立つしやっかみも覚えるし羨望も抱くのであって、すべてのジャンルの垣根をぶっ飛ばしてただ唯一絶対な価値観で、対象物を評価出来る人がきっと、「アーティスト」として存在できるのかもしれんなー。展覧会は夏休みの休廊期間を挟んで9月5日まで開催。さあみんな見に行って頭をウニにして下さい。そして思わず口ずさんでください。「うーりゃうーりゃどっほほっのほぉー」(by小林弘人)。

 んなことばっかり考えている訳にもいかないので会社で仕事。バンダイが持って来たリリースとくれなかったサンプルを眉間にしわ寄せ見入る。玩具といえば「テクマクマヤコン」の昔からさまざまな変身アイティムの類が女児向けに売られて来たけれど、そーした”なりきり”願望をもっと幅広く敷衍させ、新しいコンセプトの元に送り出したとゆー新製品に、自分を偽り「ここではない所」にいる「ほんとうの自分」を見つけたい人が増えている、この息苦しい現代への強い警鐘を見る。なんちゃってー。

 実はバンダイが持って来たのは”なりきり”願望を究極まで高めた「コスプレ」を、リーズナブルに実現してくれるキャラクター衣装の数々。もちろん顔など苦みばしることなんかなく、むしろ目尻垂れ下がり口元にやけて周囲から「やっぱりあいつは」なんて言葉が漏れるくらいの窮地へと追い込まれたのでありました。今回発売するのはなんとなーんとなんとかの「カードキャプターさくら」から、木之本桜様さま様が来ているたぶん制服の一式で、ワンピースにセーラー服の上とそれから帽子までついて5980円の値段に、3歳から5歳の娘を持つすべての「さくら」ファンの父親(浜松が該当するかは不明)は、おそらく狂喜乱舞したのではあるまいか。

 他にも定番な「セーラームーン」と、新作からは「ファンファンファーマシー」のぽぷりちゃんにシルバー王女のドレスとまあ、実にツボを付くセレクトをして戴いちゃってくれて、写真を持つ手はぶるぶると震え、デスクに「写真は絶対使え」を厳命を下す私なのでありました。ので明日の朝刊(夕刊は無いけど。ついでに土曜日も日曜日もないけど)には「さくら」のバージョンが載りますから、ファンな人は要チェックだぜー。どこにも売ってないけどね。あっと皆が喜ぶ戦闘服バージョンは9月頃にちゃーんと発売予定なので、ヒラヒラフリフリなほえほえが好きな人は、そっちも期待して待っててネ!


【7月27日】 モケイの王国に憧憬に近い関心を抱きながらも純血な国民にはなりきれない我が身、なればこそアートの帝国から単身乗り込もうとして未だ格闘し続けている村上隆さんの活動には心よりの理解を抱き賛辞も惜しまないが、一方ではマンガの王国アニメの王国では国粋主義者にも近いメンタリティーを持っているこの身にとって、岩本正勝転じてミスターなる「アーティスト」の作品はどうにもこうにもそのまま受け入れることが難しい。どんな絵かって言えば最新号の「ぴあ」のアートのページを見て頂ければ一目瞭然、横に大きく展開している明和電機に賛辞を贈るアートの帝国のスノッブな臣民としても、やはりミスターの作品は容易に受け入れがたい。

 かつて村上隆さんが中原浩大さんのとってつけたようなガレージキットの作品におたくを舐めたようなアートの傲慢さを見たのかどーかして、「HIROPON」ちゃんを作りまた「KO2」をつくって本質へと近づこうと努力した事があったけど、これい比べるとマンガと言うにはあまりにオソマツなミスターの絵がアートとして紹介される事を、やはりマンガ好きでもある村上隆さんがどうして黙っているのかが正直言って解らない。聞くとレシートの裏に書かれただけの絵も含めて、ミスターの作品には欧米から強い引き合いがあるそーで、ともすれば中堅の漫画家が毎週頑張ってネームを考え下書きペン入れトーン貼りを行って仕上げる原稿の1枚分を凌駕する値段が、レシートの裏に描かれたミスターの絵に付けられているらしい。「やってられねえ」なんて思うマンガな人もいるだろうけど、それにしては大して声も挙がっていない所を見ると、あるいはもっと鷹揚に構えて、「だからアートはねえ」と見下すくらいの態度で臨んでいる人が大半なのかもしれない。

 前にBOMEさんの作品がアートとしてアメリカで紹介された時に、長くガレージキットの世界に携わって来たあさのまさひこさんが、しつこいくらいに数あるガレージキットの中においてBOMEの作品がいかな価値を持ち得ているのかを説明しようとやっきになって、アニメ顔した奇妙で綺麗な美少女人形的認識しか持っていなかったあっちのギャラリストに喰ってかかっていたのが印象的だった。同じ文脈で言うならとてもマンガの世界を解った上でその中における傑出した作品を紹介しているとは思えない今回の展覧会を企画したギャラリスト、つまりは小山登美夫ギャラリーの小山さんに、どうして「ミスター」の作品の何が「アート」としての価値を持ち得るのかと、さてどなたかあさのさんよろしくマンガ界の青年将校を代表して、とくと聞いてやってはくれまいか。

 あたし? うーん、あたしゃ一方でアートの帝国のスノッブで新しもの好きでお騒がせ大好きな臣民でもあるので、アートのシーンをと何であれ引っかき回しそうなミスターの作品は、結構気にいってたりするんだよね。小山さん自身の結構な覚悟を持って今回の展覧会を企画したって前に聞いたことがあるんで、とりあえずはどんな反響があるのかを中立の立場から小ずるく観察して強い方に乗りたいってところ、ですか。されも話題沸騰の「アルプスの画家 ミスター展」は28日から江東区佐賀町1の8の13、食糧ビル2階の「小山登美夫ギャラリー」で。吉祥寺の「shop33」でも8月21日からミスターをフィーチャーした「大江戸くノ一忍法帳」が開かれるのでチェックだ。驚けよぉ!

 モケイの王国に不法滞在しながらも、それなりに文化を学ぼうと足を運んだ「JAF・CON」で見た「座頭市 勝新太郎」のフルアクションフィギュアに一目惚れして、持って帰ったチラシの住所を頼りに早速取材を申し込む。チラシにあった会社に意図を書いたファックスを送り、返って来た返事から相手の仕事を聞くと何と本業はいわゆるセールスプロモーションの企画なんかをやっている会社で、フィギュア関係はこれまで一切手がけたことがなかったとの事。その割にはあまりにリアルな勝新の表情に、誰かモデラーでも居たのかと聞くと、フィギュアな専門家はいないけど、ディスプレーなんかを作る上でやっぱり工作の技術は付き物だそーで、そっちのプロでもある会社の1人が映画ファンとしてフィギュアを作りたいと表明、いわゆる請負仕事が中心だった事業に自らのブランドを関した商品を送り出すことで厚みを加えたいと思っていた他の人たちの賛同を得て、手探りの中を一気に走り出すことになったそーな。

 ここん家のすごいところは素体まで自分でつくってしまった所で、ジンガイなGIジョーでは表現できない短足で太鼓腹な日本人を作れる素体は、それこそ正座も出来れば豊登よろしく両腕を抱え込むように胸にくっつける(パコーンとは音はしない)くらいの関節の自由度を持っていて、だからこそガニ又で仕込み杖ひらめかせる座頭市のポーズを自由に再現できるんだとか。顔の表情は中村玉緒っちも息子の雁龍太郎も納得の逸品、金型は精密機械屋のものを使い衣装は洋裁主婦の手縫いとかで、そんな大盤振舞をしながらもお値段はたったの1万5000円とあっては、もうファンならずとも買うしかない。「フランキーオンライン」のパーティーにまだ生きていた高城剛さんが買うかどーかは解らないけど、昨日のイベントだけで何10件って予約が集まり、勝プロからも親類知人を紹介する形でやっぱり予約が入っているとか。

 とにかく和にこだわるこの会社、次は三船敏郎をリリースする予定で他にもいろいろと企画を考え中。しかしながらあまりにこだわったため15000円では多分足が出るらしく、とにかく売れて次の企画を実現するために糧になればと、とりあえずここに紹介し、やがてはほとんど1人で1面全部の記事を書いている職権を濫用して(明日付けなんで「ガンダム」のLD−BOXで70行も書いちゃったぜ)、表の方でもドギャーンと取りあげちゃうから期待してね、って表なんて誰も読んでねーよな。たまたまメディコム・トイがかの「ドクター・ノー」に登場したショーン・コネリー版の「ジェームス・ボンド」をフィギュアいするってリリースが来ていて、並べれば東西のヒーロー対決って感じでいかにもスポーツ紙(工業新聞なんだけど・・・)っぽくなるな。


【7月26日】 もしも自分に女房や子供が居れば、即座に質屋へと走り質札にとっかえて手には現金を握りしめ、定価に1割2割のっけた値段でも良いからその場で売り子にたたきつけ、その場から現物を引き取って帰っただろーと思ったけれど、残念な事に女房も子供も思い人すらもいない寂しい我が身、なればこの際他人の女房子供でも良いから質草にしてやれとばかりに、同じ会場の西館で開催している子供向けマルチメディアのイベントに、出向いて適当な女房と子供をさらって質屋に走ろうかと、そんな事まで考えてしまうほどの衝撃を、東京ビッグサイトの東館で開かれていた「JAF・CON98」の会場でくらわされてしまった。

 いったい何事かと訝る方々に訳を説明すれば、これほどまでに惑い乱れる理由も解って頂けよー。それはあの1分の1フィギュアで有名な「ペーパームーン」が、「新世紀エヴァンゲリオン」の綾波レイ、「サクラ対戦」の真宮寺さくらと続いたシリーズの最新モデルとして、「カードキャプターさくら」から木之本桜そのお方を、ほえほえ感もぷにぷに感もそのままに1分の1フィギュアにして、売り出していたって事なのだ(をを! とどよめきが上がったのを今ネットの向こうから感じたぞ)。同じく新作として惣流・アスカラングレーも並べられていたけれど、眼前で比べると5歳の歳の差(で良かったかな)は歴然としてアスカは既に大人の女、さわると罵倒されそうな雰囲気がそれはそれで悪くはないけれど、やはり抱きしめればクニッと行きそーなたおやかさで、さくらに1度で足りなければ2度だって10度だって軍配を上げてしまうだろー。

 いかんせんお値段が制服を着た固定タイプのもので30万円、バトルコスチュームを着た可動タイプ(間接が動くんだぜってことはあんな格好こんな格好も可能・・・なのかな?)は50万円もしやがって、並の女房や子供では質にいれてもとても足りはしない。相手がいればのジェリコの壁も真っ青な前提を別にして、仮にかなうとすれば種から育てて9年を時間をつぎ込んで、ナマなさくらもどきを作るって手もあるけれど、それにかかる値段は100万や1000万ではとても足りず、だからといって本物の1割もぷにぷに感ほえほえ感が出せるかと言ったら、おそらく無理も大無理なのは毎日鏡を見ていれば明々白々な事実。なればここはやっぱり他人でも良いから女房子供を米兵に売って、永遠のさくらを手に入れよーではありませんか、ねえ助教授。えっ、俺は知世ちゃんの方が良いって? だったらやっぱり来週の「東京キャラクターショー」に来てペーパームーンのブースで担当者にお願いしてみては如何でしょーか。さくらも多分見れますし。

 しかし夏の東京ビッグサイトおたくイベントの先陣を切って開かれた「JAF・CON98」、午後に着いたらすでに会場は人でいっぱいでめぼしい品物はほとんどが品切れ、とくに1分の1フィギュアじゃないけれど、「カードキャプターさくら」関連はどこもが軒並み完売となり、その人気の高さを裏付けていた。会場隅のコスプレコーナーにも年甲斐もなく「CCさくら」に扮した方々が大勢いたけど、例えばさくらがフォクシーな細いお目目なら知世はラクーンドギーな丸い顎で、思わず会場へととって返して売っていた戦士の銃をかっぱらい、ドンドンと2発3発撃って撃って撃ちまくりたい衝動にもかられたけれど、それをやると身長は2割引なくせに顔の大きさは1割増しなヴァッシュ・ザ・スタンピード「たち」(「たち」ってことがぢうよう)に、コスプレイヤーの敵と見られてドガンドガンとやられそーなので、俯いて静かにコスプレコーナーを後にする。

 再ブームなのか「ガンダム」関連も結構多くて、3体ばかり「セイラ・マス」が出ていたのが昔ながらのファンとしてちょっと嬉しかったけど、あのお椀を臥せたよーでかつ端っこが跳ねた髪型が難しいのかどれもヘルメットのよーに重そーで、ポーズも直立したものばかりだったため見るだけに止める。タイツ姿だから下から眺めてもつまんないし。ここは再ブームをさらに盛り上げるため、「月刊OUT」の売上部数を2倍にも3倍にも押し上げた(ってのは大袈裟かもしれんが)かの「悩ましのアルテイシア」をままフィギュアにしてやってくれちゃっては如何でしょーかバンダイ茂木社長。キッカカツレツに跪いてシャワーをかけるシーンもそのままのフラウ・ボウでも構いませんが。

 ガレージキットと言えば「SFマガジン」9月号は水玉螢之丞さんの「SFまで10000光年」が「数奇にして模型」(森博嗣、講談社、1100円)を1コママンガの方で小ネタにしていたのが時期的にツボ。とは言え本書を場内で焚書するよーな光景もなかったところを見ると、コスプレはともかくガレキとミステリィの両方を跨いでいる人ってのは存外少ないのかもしれん、ただ呆れてるって説もあるが。あとマンガで「ガレージキット? あ、知ってるアクションフィギュアとか、ああいうのでしょ」と言う声にひきつり笑いを浮かべて「ま、だいたいそんなところせうねー」と答えるシチュエーションがあったのが、スポーンなんかのブームとガレージキットのブームをいっしょくたにして「人形がブーム」ちか見がちな勘違いメディアへの強烈な牽制にもなるのかなー、などと我が身への自覚も含めていろいろと考える。

 がしかし、両者は確かにカテゴリーとしては別の物だと言えるけど、一方では「モデルグラフィックス」9月号の冒頭コラムに登場した、ボークスの可動式素体「ウルティメイト フィギュア」の実物を「JAF・CON98」のブースで見るにつけ、そのなめまかしさ妖しさはフィギュアの世界に新たな可能性をもたらすはずだと勝手に確信しているのも事実。だってこの素体、服を脱がせるとどこか痛々しさの漂った数かるアクションフィギュアの素体と違って、剥き身で見ても本当に1つの作品として耐えうるだけのエロさ、じゃないアートっぽさを持っていて、あるいは本当にアートの人たちがアートショップの店頭で10個に1つは「シェー」をやってるデッサン人形の変わりに買うんじゃないかと思うくらいのクオリティを誇っている。ドテの盛り上がり方なんてホントにエロい。

 「モデグラ」のコラムは村上隆の勘違いコメントにあさのまさひこさんがクレームを付けた場面に筆を起こして、けれどもマーケットの予想を超えた展開にあさのさんが戸惑い何故だと考えている内容になっている。アクションフィギュアを愛でる人たちを「ぬるい」と見、また「美少女フィギュアはすでにここまで進化(退化?)」と釘を差すあたりはやっぱり長くガレキの世界でその究極を模索して来た人ならではの思い入れだけど、一方でハンス・ベルメールに四谷シモンに天野可淡といった間接美少女の人形(ベルメールはちょっと違うか)を愛でる風習は何十年もの昔からある訳で、リアルな(といっても2次元のイメージにリアルな、という意味)アクションフィギュアの登場は、壁で隔てられていた両者をつなぐ新しい伊吹なのだと見ることも出来るんじゃないかと考える。なんてご託も実は「これもアートなんだ」と美少女フィギュアを堂々と買うオヤジの言い訳だったりするんだけどね。


【7月25日】 あーうー「ウィンドウズ98」の大騒ぎはゆんべの内に終わってしまってるんですけどぉ・・・・とPメっておいて深夜に帰宅してから「I.W.ハーパー」をソーダで割って2杯ばかりガブ飲み、ままぐっすりと眠るなんてもったいない事はせずに買って帰った「フォトン」の第5巻「鍵を開けるパパチャ」を見る。すっかりデブってしまった姉さんに愕然とするアウンを横目でキーネはすっかり新妻気分、なれどパパチャの悪事はそんなラブラブムードな一行をよそに、彼にゾッコンのラシャラを巻き込みフォトンをキーネを引き離し、宇宙を手に入れる力の「鍵」となるキーネ奪取へと向かうであった。ってな寸法ですな。

 お話は確かに進んでいるしラス前のスリルとサスペンスもしっかりあって最終回への期待を増してくれている。まき散らされた謎もたいていは解決されるだろーから、その点は心配してはいないけど、第1話のあの圧倒的なスピード感とテンポがここんとこ、ガクーッと落ちたまんまになっているのが気になって、セリフ回しも第3話あたりのアウンとキーネの膚に塩擦り込むよーな辛辣さが、ややなれ合いっぽくなってしまってデングリ返る感じなない。絵もなんだか・・・・とまあ言ってしまえば親の(親なのか)欲目みたいなものだけど、ともあれキーネの縛られ悶える姿は悩ましく、またマ・マミーの色っぽさも乳を中心に爆発していてそれはそれで結構。ライナーのマ・マミー役の市野莉絵さんの実写の美しさなんかはまさに感動もので、まあそれだけ見たくて買ってもそれほど損はないかと言い訳ってみる。さて次はいったい何時出るのか。時間かけても良いから作画動画セル画もふんだんに爆発なラストを作って下さいな。

 朝だあーさーだーよ、なんて歌っているけど実はすでに昼になっていたので近所の本屋で新刊を物色、まんず見つけたのは野田真外って人が編著となっている「前略、押井守様。」(フットワーク出版、1800円)って本。とにかく押井さん大好きな編者が自分の思い入れを語ると同時に同じく思い入れバリバリな脚本家のじんのあきひろさんとかタツノコ時代に押井さんと机を並べた演出家(「ダブルキャスト」の西久保さんとか)3人のタツノコ時代から現在までの押井さんを語る座談とか、これまであまり読んだことのない作家とゆーよりは1クリエーターとしての押井さんの軌跡めいたものが詰め込まれていて結構読み込める。

 「御先祖様万々歳」を最初はじんのさんが依頼されてでも結局1行も脚本を書けず、以来押井さんとの仕事がなくなってけど吹っ切れて押井さんを永遠に師と仰ぎ続けている話とか、タツノコ時代の仲間が語る押井さんのとにかく圧倒的な犬好きなエピソードとかはゴシップめいて面白いし、「逆転イッパツマン」でパロった「999」の押井さん直筆コンテ初公開は絵が描けないと言われているけどこれでなかなか上手いんじゃねーかと思わせる出来映え(メーテルの顔が押井顔ぉぉぉ)だしと、そんな楽しみもあるけれど要はやはり本文での分析、その思い入れたっぷりかつ網羅的な取り組みぶりに、手元のLD−BOXを1から見直しそうなのかそうなんだってな検証を、やってみたいってな気分にかられる。

 敢えて言うなら僕にとっての押井守は「ビューティフルドリーマー」までが同時代で、後は「何かやっているな」くらいの知識を受けつつも家にビデオがなかった事、田舎で「パトレイバー」のTV放映がろくすっぽなかった事、等々の理由で一気に「攻殻機動隊」へと飛んでしまう。そこから遡っての検証は、のめり込むと言うよりはすでに高まった名声の理由を確認していく、いささかファンとしては不本意な態度となっているが、それでも「ビューティフルドリーマー」をきっかけにハマった、じんのさんに編者に他多数の人々と同様、押井守が決して宮崎富野庵野エトセトラな人々に勝りこそすれ劣らない人物であると見ている事に変わりない。マイフェイバリットを挙げろと言われればTVシリーズでは「未来少年コナン」、映画ではこの「ビューティフルドリーマー」を僕は多分挙げるだろう。

 とはいえ個人的には実写の押井作品への知識とゆーか愛がカケラもない点が、著者の意見をまま受け入れられない理由になっている。けど反発を抱くとかってことじゃなく、とりあえずそうなのかと聞いておきつついずれ機会を見て「紅い眼鏡」ほかの作品を見ていこーと考える。だからバンダイビジュアル早く「押井守の仕事実写編」を出しとくれ。出来ればDVDで。ついでに「御先祖様万々歳」のDVD−BOX化と「パトレイバー」のTVシリーズのDVD−BOX化もやっとくれ。総合監修ってゆー「宇宙貨物船レムナント6」は命名くらいしか確か関わっていなかったからまだいいや。「トリスアギオン」に絡んでこないかなー、でもじんのさんが本書いているから無理、かもなー。

 まだ続いているのか「クズ論争」が不思議な「てれぽーと」欄の「SFマガジン」だけど誌上の散々な議論がおよそ世間を変えた雰囲気はなく、マーケットには相変わらずミステリーが山と積まれて(ってもあくまでも一般認知としてのジャンル分けであって中にSFが山と含まれていることは間違いないんだけど)いるのに対してSFのコーナーにはなかなか新刊が出てこない、特に日本人作家。あれだけ山ほどのSF作家がいるってーのに何で新刊出ないんだよー、と思っても「出せないんだよ」と切り替えされるから黙っておいて、仕方がないのでレギュラーでちゃーんとSFが出ているヤングアダルトのコーナーへと行き、たとえ80年代と言われよーとも僕はオヤジだ好きなんだないのまたむつみさんが表紙を描く「虚船(うつろぶね) 大江戸攻防珍奇談」(松浦秀昭、ソノラマ文庫、530円)を購入する。

 江戸を舞台に「うつろ船」つまりはUFOが絡んだ奇想天外な物語になってるみたいで、分量もたっぷりあってこの寝苦しい夜を結構楽しませてくれそーな予感がする。「てれぽーと」ヤリ玉な森下さんがこっちでは「素晴らしい新人作家を紹介します」と2度も強調している才能、らしーから今晩あたり熟読玩味する予定。ただなあ、タイトルがどーしても澁澤龍彦を思い出してしまうんだよなー。ヤングアダルト、とゆーとちょっと違うかもしれない森奈津子さんの「白百合館の変な人たち」(プレリュード文庫、524円)についてはあまり話したくないけれど、たとえ世の中にはセクシャリティがあることをエロの物語に混ぜ込みながら示そうとしたのだとしても、「SFバカ本」で他を圧する活躍を見せる作者とは思えないくらいに爆裂度が感じられなく、物足りなさばかりが残ったなあ。それでも1度は役立つから(何に?)まあ良いか。


【7月24日】 なんかイベントをやっているよーだったのでヒョコヒョコと東京ビッグサイトへと出向く。西館の1階では日経主催の「ぱそまる」ってなパソコンとマルチメディアのイベントがやっていて、同じく西館の4階ではやっぱり日経が主催している「MIDI WORLD」って言葉もそのままに電子音楽のイベントがやっていて、どっちから回ろーかと思ったけど、一応自称ミュージシャンなので(ちょっと嘘)(本当はすっげー嘘)興味の向くままに4階の方へと回る。

 場内はとてつもなく訳の解らない楽器とコンピューターと機械の山で、いったいこれをどーすれば音楽が奏でられるのかと自称ミュージシャンだけどアコースティックなミュージシャンなので酷く悩む。そんな中にあってとてつもなく良く解った商品がローランドのブースにあった「ピグザ」と「モデラ」。鍵盤もなければキーボードも見あたらないおよそ楽器には見えない不思議な機械だけど、そこから生み出される作品の美しいことといったら、どこのメーカーのどの製品も絶対的にかなわないってな結論に達した。

 って、「ワンダーフェスティバル」とかに入り浸ってる人ならすでに内幕はバレバレだろーから白状すると、つまりは3次元のモデルを製作する一種のスキャナーとそれから削り機。音楽とはいささかの関係もなくどーしてこの場に出ているのか、まずそれを指摘するってのが筋でしょー。ちなみにこの機械、針状のセンサーでタッチしながら読み込んだデータを、グラインダーがぐるぐる回る機械にかけるとそのまま正確に削れて立体モデルが出来てしまうって寸法で、この冬に海洋堂さんがこれを使って綾波レイを作って売ったら、あっとゆー間に売り切れたっけ。

 そんな機器をなぜに「MIDI WORLD」に、と思ったけれどつまりはミュージシャンはフィギュアも好きだからってな我が経験のみから結論づけて、ブースに展示してあった新作とかゆーダイバーな姉ちゃんのモデルを上から下から舐めてその出来に感じ入る。聞くと日曜日の「JAFCON」には本業よろしく新作の「エヴァ初号機」を引っ提げて乱入するらしーので、ミュージシャンなら「MIDI WORLD」ともどもそっちも覗いてみてはいかがかな。

 その昔CMで「ヘイ、那智黒ッ!」とかやってた人と同じ(に見えてしまった)背格好顔色をしたミュージシャンがライブを始めたので会場を退散、1階に降りて「ぱそまる」を覗く。1階の大エスカレーター横にはナムコが英国から輸入したとゆー巨大な風船状の遊具施設があって、中を子供たちが跳んで走って登ってすべりおりていたので滑り台を降りてくるシーンを正面から写真に納めようと思ったけど、ミュージシャンは(まだ言うか)流石に女の子が滑り台を裾も気にせず降りてくる写真を真正面から撮るなんてことは出来ないので、そこだけフォトジャーナリストに自分を変えて正当なる記録写真として子供たちが如何にこの遊具で楽しんでいるのかをナムコに証明してみせるために、嫌々ながら真正面に周り周囲の視線が痛いほど刺さる中をシャッターを押す。見たくもないものが写ったかもしれないけれど、そこはジャーナリストの使命として、ルーペでも何でもつかってよくよく観察することにしよー。おやイチゴ模様だ。

 ピーターに似た美人の女性運転手(って誉め言葉なのかな?)が運転する都バスで浜松町まで出てから秋葉原へとゴー! 「ウィンドウズ98」の発売まで残り半日を切った秋葉原はそこかしこのショップでショーウィンドーとか飾り付けに余念がなく、今晩の狂騒を予感させた。がしかしとりあえずの目的はLDの新譜の購入で、行き着けの店へ言って何枚か物色、例のヌード美女軍団飛翔アニメも第1巻が出ていたけれど、ボックスは持ち運びが面倒なので後に回してとりあえずエイシャのヒップがキュートでズキドキな「星方武侠アウトロースター」の第3巻と、やっと出たな「フォトン」の第5巻をゲット。そのまま場内を見ていると、目に入ったのが「王立宇宙軍 オネアミスの翼」のボックスだった。

 大きさはLDサイズで絵柄もこのあいだ発売になったメモリアルボックスと同じ、がしかしあっちに比べると薄くて軽い。これは何かとよくよく見れば、何とDVDのボックスであった。しかしコンパクトさが売りのDVDで何でこの大きさを採用したのか、その意図は判然とせずすでに公表のよーに我が部屋はすでに物を置く場所が極端に不自由で、CDでさえも山積み状態となっている、にもかかわらずCDサイズのDVDを何故にLDと同サイズのジャケットで出すのか、これは時代に逆行する反動的振る舞いであるとばかりに瞬間怒りにかられるものの、よくよく読むとかの大森望さんが解説っぽい文章を書いたリニューアル版のメモリアルボックスだけに封入されている28ページものブックレットがDVDには付いていて、おまけに音声もリニューアル版に旧版にさらには英語版まで入っていて、1枚で2度も3度も美味しい作りになっている。

 んでもって値段は定価で9800円とLDのサウンドリニューアル版のメモリアルボックスに比べると格安で、つまりはLDボックスを欲しくてもちょっち手の出なかった人間に、待ってて良かった的幸運をもたらすパッケージ、それがLDサイズジャケット入りのDVD版「王立宇宙軍」だったことに気付き、怒りを正反対の喜びへと変えて感謝の念を松が谷に送る。あとはナベさんがインタビューに出てくれれば言うことないんだけどなー。マスコミがそんなに嫌いかい? あたしゃオタクなんで難しいことは聞かないよ。恐がらずに出ておいでん(三河弁ちょこっと)。

 もどって仕事してから夜になって再び秋葉原へ。前回の「95フィーバー」は寒かったこともあってパスしたけれど、今年は夏なので夕涼みがてらあっちのショップ、こっちのショップを状況を観察、ラオコン館前が一番のスポットと確認してから、裏手の九十九の前で打ち合わせ中のレースクーン軍団をカメラで舐め、ソフマップ前でセッティング中のバルーンをなぜてから横にあるセガのゲーセンへと飛び込む。このところちょっぴり当たりが出てきたキャッチャーで、初めにウルトラマンに挑むも中途半端な大きさが禍(わざわい)してダウン、なので横に移ってフワフワなポケモン縫いぐるみに挑戦し、1回目でえーっとあのピンク色してあたまが渦巻きの助教授がディパックにぶら下げてピカピカ光らせているモンスターを見事獲得、続けて挑んだ2度目では、こっちは解るぞニャースをゲットし運を思いっきり使い果たす。

 結果ラオコン館の前へと開店の1時間前に到着したらすでにテレビに雑誌に新聞のカメラが書面入り口前に壁を作り覗き込む隙間もない。仕方がないのででかいモニターの横にあった灰皿の上へと登り手前の看板に腰を掛けて待つことだいたい1時間、やがて始まったカウントダウンのコーナーに、彼らが(我らがなんて呼びたくねー)成毛真マイクロソフト社長とやっぱり彼らが高山由NEC常務が登壇し、ラオックスの社長といっしょにヒモを引っ張ってくす玉を割ってオープンを祝う姿をどーにかこーにか写真に収める。入り口前はすでに数百人もの人垣が出来ていて、もしかしたら「98」も結構なブームを起こすのかな、と一瞬思うものの集まっている人のおそらく2割はマスコミで、3割くらいは単なるヤジウマと見受けられたことから勘案すると、日本中がフィーバーした(死語)「95」の騒ぎの時ほどには、世間をシンカンさせる事はないんじゃないかなって気がして来た。

 いろいろな人の記述を読むと、前回はあちらのショップこちらのお店に結構な業界的有名人が惨状しては冷やかしたりしていたらしーけど、今回見掛けたのはたぶん遠藤アスキー編集長と、おそらくはパソコンやらデジカメが得意なライターの方くらいで、スノッブな新し物好きお祭り好きな人々も、今回はやや冷静になって騒ぎを遠巻きに見ていたのかもしれない。あるいは無理してお祭に参加なんかしなくたって買えるし、それよりわざわざ「98」に入れ替えるほどのメリットもないと自覚している懸命な人がこの3年の間に増えたとも考えられ、これもマイクロソフトが簡単簡単と宣伝した挙げ句にパソコンを購入して結果机の飾りと化している例を我が身とし、喉元過ぎても熱さを忘れなかった学習効果が発揮された結果などと、勝手な分析をしてみせる。微笑みでいっぱいの成毛高山連合軍の表情は、あくまでも現状への相対的な意味での好機到来への喜びだろーけど、確実に増加しているはずのパソコンマーケットでかくも冷静な展開は、決して先行きを喜べない現れなんじゃなかろーか。ああちょっとジャーナリスティック。でも直接の担当じゃないから書くのはこっちだけだったりするんだけどね。つまりあたしもヤジウマの1人だったってことで。


【7月23日】 いちおー流行っているよーだが「ジターリング」、販売元のバンダイが意図しているターゲットとはどーやらちょっぴり違った層に人気となっているよーで、このままでは「ハイパーヨーヨー」に続く子供立ち向けのヒット商品には育たないんじゃないかって、そんな懸念も余計な事だけど抱いている。例えばこないだ街で見かけたのはいかにも渋谷なストリート系の兄ちゃんが手でビーズを弾きつつアメリカントイのショップに入って来た姿。本来の使い方をとても知っているとは思えないのに、それでもとにかく手に持って歩くのがカッコ良いんだぜ的意図が読みとれた。

 次に見たのが近所のデパート。そこには6階に玩具屋さんがあって「ジターリング」もちゃんと売っているけれど、プレイしていたのはやっぱり渋谷な(千葉だけど)半ズボンにサンダル履きな茶髪の兄ちゃんたちで、場所も玩具屋からは遠く離れたエスカレーター横の雑貨屋さん前。一応はぐるぐると回しながら向かい合ってジャグリングよろしく受け渡しをやって遊んでた。テンポが良くなくうまく回らず見ていて見苦しかったのはご愛敬、なれどこーも重なってヒップなヤツラの玩具化している状況は、あるいはどこかで誰かがそーゆー遊びを流行らせているのかも知れないと考える。

 ほかにも場所こそ秋葉原だけどアロハに短パンサンダルのややストリートかかった体型はマウイないかにもジターリング向き極太の兄ちゃんが、最初に見た人なら誰でも試したくなる(渋谷の会社の女性広報もそーやって遊んでたなあ。上手くなった?)形として、首飾りよろしく首にかけて下に下がったビーズをピンピン指で弾いて遊んでた。とどめは今日の新宿紀伊国屋。どう見たって小学生にも中学生にも見えない若いアベックのうちの兄ちゃんが、背負ったディパックにこの「ジターリング」を縛り付けて歩いてた。これで都合4件の目撃はすべてにおいてストリート系のファションの人たちが面っていた姿、ってことはあるいはストリート系の雑誌にヒップなアイティムとして、「ジターリング」が紹介されていたのかもしれん。まさか「ダイム」とか読んでるよーには見えないもんな。一体何が起こっているのやら。

 そのバンダイから「デジタルモンスター」に続く携帯型対戦ゲームでありかつ「あるくんです」やら「てくてくエンジェル」やら「ポケットピカチュウ」に続く散歩系付き携帯型ゲームとして発売する「ヨウカイザー」(だったかな?)とかゆー玩具のサンプルを頂戴する。早速スイッチを入れて時間なんかをセットしていると、「手慣れたものですね」と同僚から言われて「やっぱりね」とまでトドメを刺されてつまりは僕の仕事っぷりは、こーゆー玩具に「だけ」は精通している異端なヤツだと認知されてるってことに遅蒔きながら気が付いた。確かに「ビーストウォーズ」を変形合体させてたり、「バーチャルゴルフ」をぶんぶんやって「ナイスショット」なんて言わせていたら、ヘンを通り越して薄気味悪いと思われたって当然かも。けどねえ解ってよこれも仕事なの子供の心知らずしてなんぞ玩具にゲームにマンガにアニメの記事が書けようか。針の筵(むしろ)に耐えつつ今日も、腰に「ポケピカ」つけて社内を闊歩するのであった。

 ところで新しいゲームのほうは、つまりは歩いた分だけ日本を旅してそこで妖怪ゲットだぜ!  が出来るって代物で、早速3000歩くらいでなんとかゆー妖怪をゲット、運良くゲームにも勝って捕獲に成功し、初日の怠惰なさらりまんにしてはそれなりの釣果(釣るのか?)をあげることが出来た。だいたい3000歩とか4000歩とかでゲット可能みたいだから、営業マンなら1日に相当数の妖怪を見つけることが出来るかも。おまけに捕まえた妖怪とかけっこするゲームでは、本当に走らないといけないみたいなので相当の腹脂肪の燃焼が出来そー。手でカチャカチャ振ったって一応の勝ちにはなるけれど、ここは是非とも衆人環視の町中で、「用意ドン」のかけ声を我が身に発して妖怪とのかけっこに勤しんで戴きたい。見たら笑ってあげますから。

heya  部屋の写真第2弾はとうとう3台になった家庭用ゲーム機14インチのテレビの上におかれているのかを示した図。といっても別に工夫もなにもしてなくて、「セガサターン」と「プレイステーション」を並べてそれから「プレステ」の上に「NINTENDO64」を積んでいるだけで、「PS」なんかを遊ぶ時にはいちいち「N64」をどかさなければいけないのが面倒くさい。とりわけ「ダブルキャスト」なんてリプレイのたんびにひゃこひゃこディスクを交換しなくちゃいけないから、その度によっこらしょっと「N64」を持ち上げて、中のディスクを交換し、すると繋がったコントローラーがフローリングの床をはい、朝方つかったドライヤーのコードがからまり並べたLDはパタパタと倒れ上からは干してある洗濯物が降ってくる・・・・と実になんともダイナミックなゲームライフ、アニメラフを送っているのでありますりゅん。

 画面やや左よりにあるのは机にもなるアイロン台でその証拠に台のやや奥手にちゃーんとスチームアイロンがこっちに穴を向けて立っている。そのやや手間に見える白と黒の物体はちょっと前にキャッチしたパンダの縫いぐるみ、そしてその下敷きになっているのは東京マルイ謹製な組立式の「モーゼル」で、作ったは良いけれど置き場に困って持て余し挙げ句ガラクタと化す、典型的な部屋汚しの道を歩んでる。ちなみに最新号の「SPA!」には美人な女性の汚れた部屋の様子が写真入りで紹介されていたけれど、散らかっているには散らかっているにしても男の子と違ってやたら外から物を持ち込まない分、散らかり度数が抑えられているよーな気がする。ただし写った部屋が本当に、最盛期より一切の手を入れてないのかといえばちょっち疑問で、何故なら生活していれば知らず溜まる服とか下着の脱ぎ差しが、部屋の中にそれほど乱雑には放り出されていない。武士の情けかあるいは乙女の恥じらいかとも考えて、願わくば真の「ゴミと暮らす女」の姿を見せてやって戴きたいとここに切に要望する。人の振り見て我が身はまだまだ安心、したいだけなんだけど。


【7月22日】 でかい、とまず思った。おっぱいのことじゃないよ。なぜならその彫刻は男性をモデルにしたものだから。じゃー身長のこと? うーん確かに180センチはあろーかとゆー上背を誇ってはいるけれど、その程度だったらジャイアント馬場とかを間近で見たことのある目には(見たんだよ愛知県体育館で大昔に)、どれほどの高さって訳でもない。だったら何がでかいのか? ってそれはもう男性をモデルにした彫刻といった段階で、賢明な紳士淑女ならお気付だろーね。そう、チンチンがでかい、のだよおまけに長いのだよ、そしてもちろんとてつもなくぶっといのだよ、そりゃもう男だって赤面するくらいに。

 現代日本を代表する世紀末アーティストの村上隆さんが、アンミラ風美少女をモデルに作り上げた「KO2ちゃん」って等身大フィギュアが前にあって、そのモティーフのおたく趣味全開な仕事ぶりが美術界とおたく界の狭間でどっちつかずのコウモリのように揺れ動く姿だと見られた挙げ句、どちらからも未だ黙殺され続けているけれど、今度新しく作った「マイ・ロンサム・カーボーイ」ってやっぱり等身大のフィギュアの作品は、おたく界はともかく少なくとも美術界は黙って見過ごすことはできないんじゃーなかろーか。何故ならそこから発散される雰囲気には、かのルネッサンス期に大活躍したミケランジェロの「ダビデ像」をも凌ぐパワーが感じられてしょうがないんだよね、なんだっかとっても。

 簡単に説明すればこの「マイ・ロンサム・カーボーイ」、素っ裸の男の子が当然素っ裸だから見える股間のアレを片手でしごき、真一文字に屹立させてそこから白濁した液状のものを発射している場面をモティーフに作った等身大フィギュアで、発射された白濁の液体が頭上で円状になっている様が、どこかカウボーイの投げ縄を伺わせるところから、多分こんな題名が付いたのかな。その顔に似合わない生々しいセクシャリティは、村上さんがオタク界に敢然と挑んだ「KO2ちゃん」より遡って製作した、やっぱり1分の1フィギュアの「HIROPON」ちゃんと対を成している作品と言えるんじゃなかろーか。

 本当だったら世紀末の「ミロのヴィーナス」とも言える(無理矢理言ってしまう)「HIROPON」ちゃんと対にして並べて欲しかったけど、残念ながら今回はピン立ち(文字どおりピン立ちなんだけど)して、青山のスパイラルガーデンで開かれている都内の有力ギャラリーが集まって開いている展覧会「G9ニューダイレクション」の場内で26日まで展示されているから、新時代のダビデ像が生まれる瞬間を見届ける、世紀のイベントの生き証人になりたい人は今すぐやれすぐ駆け付けよー。アレがそのままピン立ちしている関係で、前の「ワンダーフェスティバル」では紙っ切れが貼ってあって官憲の横暴を排除しよーと配慮していたけれど、今回はとりあえずは異論もないよーなので先っぽのキノコな部分から下部の筋までくっきりと形作られた、ピン立ち放出のシーンが間近で見られるので、どっかの新聞社が「こんなんやってまっせどないやねん」と警察にマッチポンプを仕掛ける前に駆け付けよー。男は「負けた」と思うからよほど自信が無い限り行かない方が吉かも。あたし? そりゃもー完全なる敗北、ですわ。長さで10分の1、太さで5分の1にも満たないとゆー・・・・・。

 場内では前にも表と裏の両方で紹介した村上隆さん謹製の時計「インディペンデンス」が展示即売されていたので購入する。18800円もしやがるけれど、かの「DOB君」をデザインした赤を基調にどっかウルトラマンっぽいデザインになったこの時計、普通だったら2000個とか3000個とか作られるところをアーティストなんで限定999個しか作っていないから、仮に村上さんが本当に21世紀のピカソかラウシェンバーグ(祝!世界文化賞受賞!!)かなんてもてはやされるよーになったら、相当なプレミアムが付くんじゃないかと睨んでる。実際、先行発売した「Xラージ」ってなショップではすでに大半が売り切れ状態だそーで、前に村上さんとかが展覧会を開いたアメリカでもやっぱり結構な人気があって、今ではおそらくスパイラルガーデンでしか買えないんじゃなかろーか。

 加えてここでは村上さん自信がソフビで作られたとゆー「DOB君」をそのまま立体化したケースにサインまで入れて、さらには納めておく白いボール紙の箱にまで簡単なイラストを入れたバージョン(って大層なものではないけれど)を限定50個売っているので、買い逃した人も将来の値上がりを見込んでいる人もすぐにゲットだ。かの海洋堂がボーメさん原型で作ったガレージキット「1/6KO2ちゃん」の「アーティストプルーフバージョン(Tシャツ付き)」もおそらく今ではここでしか手に入らないので、会場でも海洋堂でも買えなかった人は2万円と別に税金を持ってやっぱり「スパイラルガーデン」にGO! だ。

 会場では小山登美夫ギャラリーのスペースに、奈良美智さんのベニヤ板の上に描いたおたふく風邪な子供の絵が飾られていて、1枚が15万円で既に売約済みの赤い丸シールが貼ってあったけど、もう1枚の小さい絵は9万円なのに未だ買い手がついていなかった。本当にお金に余裕があれば即購入しても惜しくない作品だったけど、時計は買ったカメラは買った近くLD−BOXも2つ3つ買う予定の身には正直支払えない。惜しいけど見送って誰か本当のファンの人が買ってくれるのを心から願う。

 小山さん扱いのアーティストの中では、ロリロリってゆーよりはほとんどハイジな美少女の絵をレシートとかに書き散らすアーティスト、通称が既に芸名にもなった「ミスター」の絵はこの合同展には出ておらず、流石に衆人環視であの作品はきつかったのかと考える。がどーせ28日から佐賀町にあるギャラリーで「ミスター」の個展が開かれるんだし、そこには国内のキレたアーティストのギャラリストにジャーナリストが集まって、その異様なまでの執着心を目の当たりにするだろーから、遠からず話題になることだろー。彼の作品も「マイ・ロンサム・カーボーイ」とは違った意味で凄いよ。

 「カウボーイ」と言えば遅蒔きながら最新号の「TVブロス」で板井昭浩さんが「カウボーイビバップ」を取りあげて頓狂なことを書いている。アニメファンは承知のよーに本来2クール分の作品があって出来上がっていたにも関わらず、お上の都合で枠がとれずまた内容への配慮もあってか第2話を皮切りに跳ばし跳ばしで13話のみの放映となった「ビバップ」。がしかしコラムでは「テレビ放映はほんのサワリ、ショーケースみたいなモンですよ、的臭いがプンプン」と、端折られたのがプロモーション含みでわざとだったってな解釈をしていて酷く気になる。そーじゃないんだけどねー。

 筆者自身は「アニメ雑誌が大特集組むわ」ってな状況くらいは知っているよーで、とすれば何故に13話のみの放映になったのかその理由くらいは抑えているんだと思いたけど、そーだったら前述のよーな「プロモ絡み」ってな解釈は出てこないはず。やっぱり見た番組だけで判断を下しているとしか思えない。「わざとストーリーを跳ばしたりして、クールな意図を感じる」なんて言ってるくらいだし。とはいえ一般にアニメ情報誌なんぞ読まない層にはこーゆー解釈も当然かとも思われるだけに、それがひいてはアニメ全体の信用秩序崩壊につながりかねず、やっぱり誠意は尽くしましょうってな感想を抱くに至る。だからビデオ、早く出そーね。

heya  カメラも買ったことだし部屋を試し取りしてその有り様を見て貰うことする。第1弾は机とそれから寝ているベッド周りの惨状。そーまさに「惨状」とゆー言葉が相応しいくらいにベッドの脇に壁に沿って積み上げられた本はすでに1メートルの高さを誇り、正面やや右にある机の下にも本がぎっしりと詰め込まれていて足を入れる隙間もない。机の上にあるファクシミリの上にもよくよく見ると「ジオブリーダーズ」を初めとしたコミックスに文庫が山。机の上にあるパソコンは何故か「パーフェクトブルー」の絵がスタートアップスクリーンになっていて、その上にあるプリンタのトレイには「エヴァ」のプラモデルが2コ積んで埃(ほこり)を被っている。目の良い人ならほぼ正面にある「吸血鬼美夕」のフィギュアに気付くだろーし、更に目がよければその美夕の手が着物の裾をまくっていることに気付くだろーね。1葉の写真から伺えるその人の私生活、さてここから伺えるのはとにかくも不摂生で不精なおたくの死に至る病、ってところでしょーか。


【7月21日】 やっぱり単なる部屋着ではなく寝間着だと解ったくまちゃんパジャマ、なのであるがそれより何より本編の方は、一段と解らないぞ度数が上がってしまっているテレビ東京は月曜深夜放映のアニメ「lain」に、もう眼は釘付け心はへろへろで火曜日は仕事がほとんど手に付かない。まあ付かないのは火曜日に限らずウィークデーの全てだったりするんで、これは単なる永遠5月病の末期症状なんだけど、ともかく久々に毎週を楽しませてくれる(っても6月までの「カウボーイビバップ」に今も放映中の「トライガン」に去年は「ウテナ」と「VIRUS」があってさらには「吸血姫美夕」も「大運動会」も「AWOL」も「星方武侠アウトロースター」の最終回1話前まであたりもやっぱり毎週楽しませてくれたんだけど)アニメに出会あわせてくれたことを、さっぱり印象に残らなかったイリャテッセを割引しつつとりあえずは恵比寿に感謝を贈る。有り難うパイオニアLDC広報の高橋くん@元オリコン(って広報は作品には一切関係ないけどね)。

 何やら不穏な空気漂う「WIRED」じゃないワイヤードの世界にはレインってピーチクな娘が存在するらしく、けれどもリアルワールドの玲音は未だおぼこな無表情、なので今後はリアルとワイヤードとの関係がいかなるものでどう重なり合ってあるいは反発しあって行くのかを、主人公である玲音とレインを軸にドラマでは見せてくれることになるのかな。実は見ていて玲音が学校に通って父親からもらったNAVIを操作してくまちゃんパジャマにくまちゃんスリッパで家族の間を歩き回っているあの描写が、本当にリアルワールドなのかいまいち実感できんのよ。ときどき現れるムンク姉ちゃんしかり、電線の風鳴りが語り欠ける言葉もしかり。あの一家って本当に存在しているのか。へんなゴーグルつけたメン・イン・ブラックな奴はリアルな世界の住人なのか。

 とはいえ玲音の姉ちゃんと先週の宅配便の兄ちゃんは妙にリアルで生活感があって全体から浮きまくり、なおいっそうの混乱を見る者に与えて止まない。警察署もアリスら友人たちも生活感と存在感がどっしりとしていて、故にすべてがレインが見ている夢へとオチる話とも思えず、かといってワイヤードに浸食されている玲音の描写がどんどんと現実から乖離していていく感じがして、いったいどっちなんだと問い掛ける。謎解きを真剣に考える性質(たち)ではなくただ漫然と流されて「EVA」も「ウテナ」も見ていた人間だけど、事がこーしてネットの上で別人格を装っている(本当は僕高校生の美少女なんです、ってそこのひと戻さないよーに)人間ともまんざら関わりがない訳じゃない内容だけに、関心だけはとにかく持って毎週をしっかと見定めて行くことにする。次回をよろしゅうの絵に出る「ウエザーブレイク」へのツナギも楽しみ、2回でネタも尽きたと思うけど、さて来週はどんな裏切りを見せてくれることやら。いっそ「ウエザーブレイク」まで取り込んでレインに天気予報を読ませるか? 矢玉アナ使った「はれぶた」みたく。

 さてレインが暮らすワイヤードじゃない風雲急を告げるな「WIRED」の方は、タテ書きなりたてな去年の銀ピカ鉄腕アトムに続く手塚治虫はヒョウタンツギの表紙に久々な電脳サブカルお笑い文化誌(つまりはオモロイ雑誌ってことだ対極にあるのは「フォーブス」だ)的読ませ応えを感る。西村繁男・少年ジャンプ元編集長を巻頭に飾る特集は日経新聞のいしかわじゅんさんのコラムよりはちょっとだけ先を行ってる気がしないでもなかったけど、割かしメジャーな雑誌が中心でマイナーがあってもそこではメジャーな「まんがの鬼」当たりまでしか取りあげられておらず、美少女エロやおい他多数な今をトキメク人たちが、総じて見落とされている気がしてそっち系を詳しく知りたい身には物足りなかった。アンプラグドもド迫力にやや欠ける。やっぱ作家に編集者の具体的なワルクチ、読みたいよねー、ヤジウマとしては。

 このページって読めば読むほど職業選択の不自由さが身に染みる。勇んで入社したはずの会社からいきなり出向の憂き目にあって入った先が何とアダルトビデオの直販会社、おまけに社員も社長もどこか妙、すでに窓際の風格漂う新入社員たちの未来は果たしてドドメ色かってな先行きへの不謹慎な期待を抱かせてくれる。エヴァ関連では結構知られた作者らしーけど、実生活にこんな苦労があったとは。あたしなんてまだまだ、だな。こちらも新着で夏への扉に入れた「毒林檎帝国」は青森林檎が甘くて嫌だと仰る貴兄に我が輩度が高くてなかなかピッタリ。広島産林檎って酸っぱいね。

 日販の週報によればやっぱり京極夏彦さんの「塗仏の宴 宴の始末」は8月31日の発売になるみたいで、こんなことなら初めから今夏と行っておけば良かったのにと、絶対に年内と言わないスクウェア的プロモーション手法を思い出しつつけれどもアニメージュにはしっかり登場して妖怪図絵にも監修かなんかで参加してる活動の広さをやや怨む。これでも「支度」を読み切ってないから恨みはまだまだ小さいけれど、一応の完結はしてるのかなと思って読んでしまった多数の人は、何やっとんじゃーってな怒りに胸打ち振るわせ、この熱い夏を何読んで過ごせば良いんじゃーってな叫びを繰り返していることだろー。夏なら夏のお勧めとあの恩田陸さん幻のデビュー作(だったかな?)「六番目の小夜子」がおふざけにも1500円の多分ハードカバーか何かで再刊される予定とか。「匣の中の失楽」なみな出世魚だねこりゃ。でも「龍臥亭事件」の豪華本化は出世魚をは誉められんなー、まるで鮒に金粉塗って鯉だと池に放つみたいで。


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