縮刷版97年7月中旬号


【7月20日】 ふゅーじょんぷろだくとから出た「もののけ姫を読み解く」(1,000円)を読み込む。舞台となったシシ神の森とかタタラ場とかエミシの森の歴史的な背景を踏まえた詳細な解説とか、エボシ御前や「もののけ姫」ことサンといったキャラクターの性格設定なんかが載っていて、映画を見た上で「そうだったのかー」と思い出す分には役に立つ。映画を見る前に読んだほうがいーかとゆーと、あんまり情報を詰め込んでそれに振り回されて、物語の主題を見失う恐れがあるので、懸命な人は見てから読んでそれから見よー。

 モンスリーから峰不二子、クシャナと続くちょっぴりアダルトな女性の宮崎キャラの中でも、エボシ御前は個人的に1番好きかも。あのポックリと赤く塗られたくちびるに、とっても情欲をそそられるんだよなー。そのエボシ御前とサンが闘うシーンの絵コンテは、宮崎さんの筆になるだけあって、緻密ではないけれど見て横の支持を読んでいるだけで、そのシーンの激しく動いている様が手に取るよーによく解る。1冊にまとまったら是非読んでみたい。続く原画は切りかかる場面のサンの表情とりわけボクっと飛び出た目玉がちょっとおっかない。裏表紙の山犬の前で大口あけて笑ってるイラストのサンは可愛いーのに。もっとも、本編じゃーこんな顔微塵も見せなかったんだけど。特別に描いてもらったのかなー。

   青木光恵さんの新刊「となりの芝生は」(集英社、1,100円)を買う。これはもう現代のおとぎ話を集めたファンタジーであろーと、読みながらしばし夢想に耽る。例えば「立山不三男くんの場合」。美少女ゲームのアニメ絵グラフィックを作っている立山くんはちょっと小太りでメガネとゆー典型的オタクスタイルの青年で、唯一のアウトドアが犬の散歩だから、女性と知り合う機会なんてまるでない。と思っていたら現れた美女がパソコン好きで美女ゲーのファンで、おまけに犬に「アルテイシア」なんてつけるクソオタク。たちまち好感度は上昇し、もしかして次はなんて期待を抱かせて去っていく。

 オタクだったら誰もが夢見るシチュエーション。けれども誰も出会ったことのないシチュエーション。それでも不三男くんなら美女ゲーの制作者ってゆーアドバンテージがあったから、きっかけはともあれ次へと発展する可能性は高い(高い?)けど、いったい自分にあるものってなんだろーと思い、そろそろ崩れ落ちると命が危ない段階にまで積み上がった枕元の漫画の山とか、日に3度は崩れ落ちて爪をゲシゲシと潰している机の下の漫画の山とかを見ながら、それでも半端な情報量と技術しか未だ持ち得ていないことに気づいて愕然とする。これで「藤川くん」みたいに顔だけでも良かったら、うだうだ抜かす世の女性どもに「アンタだってドラマとTVと芸能人の話しかしないじゃん?」て言い放ってやれたのにぃ。巻末のメイキング最高。夫婦の会話が担当と編集の打ち合わせへと横滑りしてく様子って、聞いてると結構スリルあるかも。

 思い立って朝から東銀座の松竹セントラル1へ。例の映画を見にいって試写で見逃していた場面とか聞き逃していたセリフがないかをチェックして、まあだいたい最初の印象とおんなじだったことを確認する。しかし許せないのは最後のセリフが出る直前にバチっとフィルムが切れて幕が閉じて明かりが付いてしまったこと。もしかして公開後に人心を惑わせるセリフとカットするよー司令でも出たのかと訝ったが、ネットあたりを見るとやっぱり最後のセリフへの賛否が渦巻いているよーなので、単なる事故かあるいは劇場なりの親心かなどと勝手な想像をめぐらす。

 事故なら中途半端なフィルムを見せやがって金返せと事務所に詰め寄っても良かったかなあ。しかしあるいは意図的に製作者がカットを支持していたのだとしたら? 結局LDかDVD(でもいつでるの、どれがでるの)でどうなっているのかを待つしかあるまい。ちなみに入りは日曜のお昼で約8分。メッカな渋谷か新宿だったら行列が出来ていたかもしれないけれど、劇場数が増えた分だけ分散化が進み、かつ春の喧噪でためしに見たお客が離れてコアなところだけが見に行くよーになったからかも。東銀座音響最悪。吉祥寺あたりにまた見に行くか。ラスト、気になるなあ。

 日比谷線で秋葉原に回ってLD漁り。昨日は山手線の最終で帰ったってゆーのに、自分のこととなると妙に元気になってしまうのがやっぱりオタクさんの哀しい性、でしょう。目当ては特にないけれど、ペラペラとめくっていると「機動警察パトレイバー」のOVA第1期が1枚1,480円で並んでいるのを発見、そうかワーナー・パイオニアから出ていたんだなあとゆーことに何故かはじめて気づく。ずっとエモーションだと思っていた。でも買わずに別の店もチェック、ヤマギワで押井守さんじゃない人が監督をした第7話もまとめて2枚組にしたバージョンが新品9,800円だかで売られているのを見つける。

 悩み店を出て前に押井さんのアニメ映画全集を買った中古屋をのぞくと、こんどはワーナー・ミュージック版で最初の4話を1枚に、残りの3話を別の1枚に収めたバージョンが1枚2,280円で並んでいるのを発見する。さすがに秋葉原やっぱりいろいろ回って見るもんだね。とりあえず購入してほかをチェック、6月に23,000円だったアニメ映画全集が21,000円に値下がりしていたのがちょっと悔しいかな。来月だったら2万円切るかも。でも思った時が吉日、とゆーかその場の勢いみたいなもんがあるからなー、こーゆー買い物って。


【7月19日】 郵便局まで大日本印刷から届いていた荷物を取りに行く。夏場になるとこの会社、プリントをつかっていろいろな物を作ってお得意さんに配っていて、前は田中一光さんデザインに団扇セットとか、グラフィックデザイナーがデザインした風呂敷とかを送ってくれた。今年は小さな箱だったのでなんだろーと開けてみると、団扇じゃなくって扇子が一本入っていて、まあ普通だねって説明書を読んで得心した。ああそうか亀倉雄策さんのデザインしたものだったのか。

 先に死去された亀倉さんはもう日本のデザイン界の先頭に50年以上も立ち続けた人で、たとえば戦前に土門拳さんなんかが所属していたことで知られる国策誌「NIPPON」にも、グラフィックデザイナーとして参加していたスゴい人。戦後では東京オリンピックのポスターなんかが知られていて、ほかにもNTTとかリクルートとか、見知った企業のあのお馴染みのロゴマークなんかをデザインしている。扇子は青地に白で鳥が飛んでいるよーなシンプルなデザインで、そこがいかにも亀倉風。仰げば涼しい風とともに部屋の中にデザインも踊るって寸法で、会社なんかでパタパタやってもオヤジ臭くないから、OLなんかに嬉しいかも。まああんまし扇子パタパタやってるOLとかっていないけど。ニューヨークでバリバリのキャリア・ウーマンが映画かなんかで扇子パタパタやったら全世界的に流行るかも。扇子全世界化計画でした。

 「週刊アスキー」の写真でもう1枚貴重な写真が。あの柳下毅一郎さんがカラー写真でしっかり登場、例の「首ちょんぱ事件」についていろいろと話をしてくれている。黒いサングラスをかけてやや下からあおった写真の下に「特殊翻訳&犯罪研究家」と書かれてあって、けれども燦然と輝く最高学府卒の学歴に、世のお母さんたちがいったいどんな反応を示すんだろーかと、持って回って聞いて歩きたい気になった。「こんな人に(なりなさい)(なっちゃいけません)」。さてどちら? 京都の最高学府を出た人が頭金色にしてアニメ誌に出まくっているのもいっしょに持って回ろうか。

 ネット媒体にはちょこちょこと「夏エヴァ」の感想が出始めた見たいで、「SFオンライン」では虎ノ門ホールでみかけた頭が金色な大森望さんが、ネタバレ解説にはなっていないけどとりあえずな感想を書いている。注目のラストのセリフはなんか間際に差し替えられたそうで、やっぱりあれこれハッピーにするかアンハッピーにするか悩んだ上での、庵野監督一世一代の決断だったんだろーね。そんな地獄のような逡巡の果てに送り出された実際の映画を見てしまうと、イヤ系な出版社のトップ10に入る幻灯舎から刊行された、「詩篇 新世紀エヴァンゲリオン」と帯で銘打たれた「THE END OF EVANGELION 僕という記号」(1,400円)のラストの部分が、妙に浮ついたものに見えてくる。

 簡単にいってしまえばこの本は、TVシリーズと「春エヴァ」とそして「夏エヴァ」の脚本を集めて再構成したもので、構成にはあの野火ノビタさんが当たっている。吃驚なラストシーンのセリフはもちろん入っていなくって、その場面へと至るシチュエーションを説明する数行前に、第15話「嘘と沈黙」でシンジとアスカが演じたセリフが入っていて、少しばかり期待を持たせた読後感を与えてくれる。悩んでいたのかこの本でも、ラストシーンがどうなるのかを完璧には開かしておらず、その辺り劇場公開にタイミングを合わせて出したかったのかなーってゆー出版社の意図が見える気がして、もっとイヤーンな気持ちにさせられる。

 便乗本でもマンガ・マガジンから刊行された新世紀エヴァンゲリオンJUNE読本「残酷な天使のように」(1,143円)はJUNE本だけあってJUNEだから、読んでいてすっかりJUNEな気持ちにさせてくれる。なんのこっちゃ。つまりそっち系のパロディ漫画がたくさん詰まった本ってことだけど、他にもJUNEに掲載された庵野監督へのインタビューとか、使徒のデザインもしたあさりよしとおさんの「エヴァンゲリオン補完委員会」とか、ふくやまけいこさんの「エヴァ新聞」とかが入っていて、とってもお得な1冊に仕上がっている。編集はあの英保末紀さん(お兄さんが西葛西の有名人)ね。

 あさりさんのJUNE的(なのか?)な漫画も凄いけど、もっと凄いのは佐伯かよのさんを司会に迎えたシンジとカヲルのリアル対談。アリス大好きでスケバン刑事なヒゲ熊もびっくりのシンジくん(和田慎二)と、まるでキャプテンハーロックのヤッタランでけれども描く女性は超美人なカヲルくん(新谷かおる)が、クリエーターならではの視点から「エヴァ」とゆー作品について語り明かしてくれている。「あはーん、うふーん」な第20話のパロディを思いついた話をはじめ、各話各エピソードへの突っ込みとそこからの妄想が、クリエーターだけあってやっぱり飛んでる。

 両名ともフィギュア好きみたいで、新谷さんが「ワンフェスにICBMぶち込めば日本人のIQが少しは上がるかもしれない」といって、それに和田さんが「でもワンフェスはやめてくれ。いつも行くから」と返しているあたりから、あとはもうフィギュアの話にまっしぐら。「ICBM云々」な新谷さんだって綾波の1分の1フィギュアを買ってるんだから、ホント金のあるオタクに怖いものなしって感じだね。後段でもう1度フィギュアの話になって、そこから10倍綾波とかゆー話になって爆笑。「夏エヴァ」じゃーもう10倍とか100倍とか言ってるレベルじゃないからなー。ってことで海洋堂さん、「夏エヴァ」のアヤナミ1分の1フィギュアを是非とも作って下さい。スペースシャトル貸しますから。


【7月18日】 連休前なので3日早めの「週刊アスキー」。冒頭の特集で対談している宮台真司さんと香山リカさんの写真が実にじつに興味深い。まず宮台さん。例の小林よしのりさんの「ゴーマニズム宣言」で頭髪に不自由な可能性があることを示唆されていて、その反論をなんか別の媒体でやっていたけれど、カラーの大きな写真で見ると、実は本当にキケンがいっぱいだったことが判明した。これはもう経験者が言うのだから間違いはない。微塵もない。哀しいけれどいつか来た道とおる道、なのである。

 つまりは遠からず宮台さんには来るべきものが来る。いやもうキてる。無理して伸ばしても地肌は許してくれない。鏡を見た時、あるいは撮られた写真を見た時に、本来ならば黒々と写ってしかるべきの場所にうっすらと幾筋もの肌色の線が走っていることに気がついているはずだ。やがて線は毛ほど(毛だもんな)からチョーク、鉛筆、そして極太マジックへと進化して、その頃にはもう輝かんばかりの栄光の時、光輝く至福の境地が待っているのである。あきらめなさい、そして認めなさい。宮台さん、あなたはすでに○げている。

 そして香山リカさん。いつもだったらアラレちゃんメガネをかけてニッコリ微笑んだ写真なのに、テーマがテーマだからか妙にマジメな顔して写っている。もちろんメガネも外してる。外してるから目元に僕より5歳も上とゆーその年季が確実に刻まれていて、それからお顔の皮膚にも緊張感の対局にある余裕がほの見えていて、なるほど香山リカさんはやっぱり僕より5歳も年上だったんだとゆーことを、写真が改めて認識させてくれた。恐るべし雑誌のカラーグラビア、そして最新の印刷技術。DVDになるとくっきりしちゃっていやだってゆー女優さんがいたとかいないとか聞いたことがあるけれど、写真だってやっぱりそれなりに写るンです。

 さてDVDといえば「新世紀エヴァンゲリオン Volume1」が秋葉原あたりで一斉に発売になっていた。1日早いぞ。何件か回って早くも定価6,600円に対して5,610円で販売しているショップを見つけて1枚所望する。ほんとLDに比べれば何分の1かってゆー小ささ(って当たり前だよCDサイズなんだから)で、本当にこんなのに4話分も入っているのかって、5月の半ば過ぎにいの1番に新聞だねにした身でありながら(日経がベタで追っかけた。一般紙は無視したってまあ当たり前だよな)、信じられない気持ちで鞄にポンと放り込んで店を出る。鞄に放りこめちゃうんだもんなあ。

 流通経路の違いから販売元にキングレコード版とガイナックス版があるとは聞いていたけれど、アキバあたりに出回っているのはほとんどがキング版みたい。まあキングさんにはナマで奥井雅美さんとか見せてもらった恩義もあるので、キング版購入も止むなしといったところでしょう。LDと違って巨大なライナーがついていないのが残念といえば残念だけど、アートとしても十分通用するくらいの完成度を誇っていたLPレコードのジャケットを、たった12センチしかないCDじゃあどーするんだかとか、中の巨大なライナーを12センチのパッケージに落とし込むなんて不可能だとかいった議論が散々交わされ、それでも世界はCDに流れてしまった経緯があるから、DVDだからっていささかも卑下はしてない。パッケージに付けられないなら別冊で解説集など出せばいーし、ネットでフォローしたっていーんだもん。DVD−ROMなんて普及すれば、ネットと融合した使い方ってのが増えてくるかもね。今のCDエクストラみたく。

 帰って早速中身を見る。もうこのため「だけ」に買ったパイオニアのDVD・LDコンパチ機がうなりをあげてDVDを再生、いきなり始まるオープニングに感動し、録画したビデオと違って微粒子のとばない画面に感嘆し、ガンガンと響くサウンドに驚愕した後に流れたエンディングに「あれ、まだ第1話だよ」と訝る。そして予告編を経て再びオープニング、本編Aパート、アイキャッチャー、Bパート、エンディング、予告編と続き、三度オープニングが流れたあたりで「おいおいそこまで再現せんでもいーんちゃうか」と呆然とする。LDもやっぱり各話ごとにオープニングとエンディングが入っているんだろーか、それがテレビシリーズをパッケージする時のお約束なんだろーか。いくら容量に余裕があるからって、ちょっともったいな気がするなあ。

 持っていないのでLDと比べることはできないが、DVDでも映像の再現性にいささかも問題はない。ブロックノイズその他の画面のチラつきも確認できず、むしろ「TV版エヴァ」の映像が、決して劇場レベルでもOVAレベルでもない、「TVアニメ」ならではの適度なクオリティであったことをデジタルレベルで確認できた。これはあんまり良かったとはいえないか。おまけの台本とか用語全集とかは見て楽しむというよりも付いているから安心といった程度のものだと思っていた方がよいかも。いちいち切り替えてそっちの画面に飛ぶのって、いくらデジタルだからとはいえ結構面倒だもんな。どうせだったら静止画でいろんなイラストとか絵コンテとかを入れてくれた方がうれしかった。次から考えて下さいね。

 金がないがもう勢いだ。プレイステーション版「攻殻機動隊」のサウンドトラックを買ってしまう。限定版の方ね。アートワークをアーティストの村上隆さんが手がけたとは聞いていたけど、なるほどいわゆるゲームのCDともアニメのCDとも違う、おまけに普通の音楽CDとも圧倒的に違うアートワークを披露してくれていて、これは結構海外あたりで人気が出そーなデザインだと、手にとってひとり悦に入る。中に折り込まれているライナーは、もうどこを取っても村上さんっていう感じのデザインで、サブカル的ガジェットがコラージュ風に散りばめられている中に、日本古来の鬼のよーなモチーフが巧みに折り込まれて、最先端のテクノロジーと伝統的なオリエンタリズムとがごっちゃになった不思議な雰囲気を醸し出している。

 肝心の音楽の方はちょっとパス。だって自分にとってテクノってのはYMOがボコーダー使って「とおょきいぃよぉぅ」ってやってた時代からほとんど進化してないんだもん。テンポよくチャカチャカドコドコと正確にリズムが刻み込まれていく音楽は、身を委ねれば心地よいのかもしれないけれど、まだそこまであっけらかんを身を任せられる心境には至っていない。YMOから今の華やかなテクノへと至った人々と、YMOからはっぴいえんどへと至った僕との違い、それはやっぱ根暗なおたく魂のなせる技なんだろーな。ぅおーっ、春よ来ぉい。


【7月17日】 第117回の芥川賞と直木賞が決定。以前「蒼穹の昴」で確実と見られながら受賞を逃した浅田次郎さんが、泣かせの極意を余すところ無く発揮した短編集「鉄道員(ぽっぽや)」(浅田次郎、集英社、1500円)で受賞した。いやあ目出たい目出たい。初版本にサインもらっておいて良かったなー。高く売れるかもなー。黙って2、3度並んどくんだった。

 同時受賞は篠田節子さんの「女たちのジハード」だから、今回も直木賞は推理・冒険系の人たいに独占されたってことになる。どうしたSF、ってもここ何年かSF系の人が候補になったことなんかないから、受賞しなくって当たり前なんだけどさ。ちなみに芥川賞は目取真(めどるま)俊とかゆー人の「水滴」(文学界4月号掲載)が受賞。ニュースによれば沖縄県生まれで沖縄在住の人らしく、確か最近似たよーな境遇の人が芥川賞を取ったっけってそんなことを思い出した。芸能人とか業界人とかプリミティブな要素を持った人でないと、芥川賞は取れないってことなんでしょうか。

 スポーツ紙各紙が「夏エヴァ」の試写が行われたことを報じている。総じてベタ扱いの中で、「デイリースポーツ」だけがその面のトップにすえる大盤振舞を見せていて、弐号機とウナゲリオンが激しくバトルする本編スチルをでっかく掲載している。記事では映画の内容に一切触れておらず、スチルとそれから本文のアオリを読んで、なるほどこれなら面白いかもしれんなーなどと、ろくすっぽ予習もせずに見に行く可哀想な人が大勢出やしないかと心配になる。

 だって「夏エヴァ」、最初はいいけど半ばすぎから”立ち上がれビッグX”だもんな。我孫子武丸さんの「ディプロトドンティア・マクロプス」(講談社、740円)なんて目じゃないってくらいの。途中には雰囲気ガッツ星人に捕まった「ウルトラセブン」かってな場面があって、おまけにラストは諸星大二郎だ。なんじゃいそれは、土曜日まで待てん、もうどうなってもいいぜと思った人は、加野瀬さんとこにある「ネタバレ感想」をのぞいてみよう。ますます見たくなるはずだから。怖いもの見たさだけどね。

 「デイリー」の記事とか昨日もらったチラシをかを見ながら、火曜日付けの「ニューリリース」コーナー向けに原稿をでっちあげる。本当は担当から外れたコンテンツ面の「ニューリリース」のコーナーだけど、キャシャーンがやらねば誰がやるって訳で(どんな訳だ)未だにズルズルと担当を引きずっている。ネタ枯れの時はもうビクビクしながらやってたけれど、一昨週の「もののけ姫」に今週の「フィオナの海」と書きたいネタが続いた時なんか、予定の50行をはるかに越える大原稿を出してデスクを慌てさせている。「もののけ姫」はたしか70行だったかな。

 今回の「夏エヴァ」なんか90行になっちまったい。たった30分しか執筆に時間をかけてないのにね。削れば削れるけれどまーいーかと思ってそのまま出稿。夏枯れでデスクも大変みたいで、なんとそのまま「ワイド版」にして掲載するとか言っていた。いーのかこんな思い入れたっぷりのアニメ評を載っけてしまって。いーのだ自分が面白い記事は読者も面白いはずだから、ってなんかとっても尊大とっても傲慢。でもソフトなんて好き嫌いが最大の判断基準だから、紹介するにもやっぱ好き嫌いで選ぶしかないんだよな。どんな記事になっているのか気になった人は、火曜日発売の表新聞を買ってね。街の駅じゃーどこにも売ってないけどさ。

 まじめに運輸関連の仕事。ホテルオークラでノースウエスト航空の社長の人とかが出席する会見があったので出る。狭い部屋にぎっしりつまった報道陣の前にあらわれた外国人多数。いかにも米国の会社のえぐぜくちぶってな風体で、襟だけ白いクレリックシャツを来ていたり、ポップな柄のネクタイをしていたりとまあ、上から下までオールドブネズミな日本の会社とは全然違うファッションオーラをまき散らしていた。髪型も長髪あれば薄毛ありと種々雑多。自己主張の強い国でもさらに自己主張の強そーな航空会社の首脳陣ってオーラーをベシベシ発していた。

 渉外担当の定跡副社長なんてカフス部分にボタンがたてに3つもついているシャツ着てやがったもんな。カフスなんてみっともないもん誰もしてねーもんな。あれやこれやで会見が終わって帰りしなに「ティファニー」と書かれた箱を受け取る。まあ気がきいてるじゃんと思って職場に戻って開けてみるとマグカップ。それもしっかり「ノースウエスト航空」と書かれてあって、あーこりゃ売れんわ(売る気だったのか)とがっかりする。社長の人の顔写真が入っていなかったのは救いだったけど。

 もどって原稿を仕上げる間もなく事務次官の会見、日本エアシステムとノースウエスト航空との提携話、全日本空輸の社長会見と発表が相次いで、その合間をぬって速射砲のようにリリースをヨコから縦にして、発言を頭の中で整理して足りない分は妄想して、どーにか原稿を仕上げて送稿する。ちょっと疲れたね。ノースウエストは米国の航空会社としては始めて日本語版のホームページを作ったとかで、アクセスするとどれだけマイレージが溜まったかとか、どのフライトの座席が空いているのかを調べることができる。

 腕が丸太ん棒なスチュワーデスのノースウエストを積極的に利用したいとは思わないけれど、ウェブから気楽にチケットを予約できるんだったら、あんまり人と喋るのが苦手な僕(おいおいしゃべるのが商売のブンヤだろ?)なんかにとって、重宝しそーなサービスかもしれない。それから食事のエントリーなんかも出来るよーにお願いしたい。だっていきなり丸太ん棒のよーな腕で塩辛いハンバーガーなんか出されちゃ、タマランですよ。ついでにスチュワーデスも選べるよーにして頂きたいもんだ。せめて脚が電信柱とか、胸が洗濯板とか。

 岡田斗司夫さんが某所で大激賞している「はれ、ときどきぶた」をビデオで見る。前に製作している会社の社長に取材したことがあったけど、7月3日にスタートしてからこれまでの2回とも見ていなかった。はじめて見た本編は、ギャグのセンスはともかくスピード感とテンポの良さでは確かに一頭抜けているかも。主人公を演じている南美央と、はれぶた役のかないみかの演技も確かだからか、30分をほとんどダレることなく見通すことができた。

 キャラの作画についてはまあこんなものでしょう。背景のトーンがちょっと普通のアニメとは違っていて、独特の雰囲気を出している。矢玉四郎さんの原作があるとはいえ、絵本に近い原作版の「はれ、ときどきぶた」をここまでハイパー化してしまうとは、よほど優秀な脚本家と演出家がいるんだね。しかし久しぶりに見たぞ、「代々木アニメーション学園」のCMがなく笠原弘子さんの歌を聞かなくて済んだテレビ東京系放映のアニメ作品を。


【7月16日】 「少年マガジン」で「夏エヴァ」特集。先週は「もののけ姫」で今週は「エヴァ」と、もう手段を選ばない読者獲得大作戦に、「マガジン」の本気を見た思いがする。実売ではおそらく「少年ジャンプ」を抜いているであろう「マガジン」が、いよいよ真の意味で少年漫画誌ナンバー1の地位をその手中に収めるか。でもさすがに「スレイヤーズ」は持ってこれないだろーし、ましてや「ジャングル大帝」じゃーかえって客が逃げるから、次がちょっと大変かも。グラビアよりも本編で勝負するのが少年漫画誌の王道ってことで。それでもやっぱり「ジャンプ」には勝ってるけどね。

 沈黙を守っていた庵野秀明監督が対談に登場していてびっくり。ヒゲはうっすら残っているけれど、トレードマーク化していたサングラスをはずしてやや離れ気味の目を見せてくれているのでさらにびっくり。冒頭「同じことをもう一回やるだけです。やっぱり終わり方は変わらない」と発言していて、そうか「夏エヴァ」のラストも「おめでとう」になるのかとちょっとウンザリ、やや安心、そして相当の期待で胸と頭がいっぱいになる。わくわくどきどき。対談の内容それ自体に新味はなく、宮崎駿監督のことを聞いたり肉を食べない話を聞いたりしていて、もういいよって印象を受ける。でもまあ庵野監督及び「エヴァ」にハマっちゃった人が聞くと、やっぱこーゆー質問しか出来ないんだろーね。某「SPA!」の禰津さん(だから誰なんだよー!)、安心して下さい。

 ってことで、なんだ同じなんだとウンザリ安心期待の心で虎ノ門ホールへと赴く。詰めている運輸省から歩いて5分の近場、霞ヶ関のど真ん中にある虎ノ門ホールは、背後に霞ヶ関ビルを仰ぎ見て、ビジネスとか行政の街らしく、歩道は帰宅の途にある背広姿のサラリーマンやら官僚やらで溢れかえっている。そんな街には不釣り合いな、ジーンズにTシャツにキャップを被ったり頭縛ったりのオタクな人々がにわかに出現。虎ノ門ホールにむかってゾロゾロを歩いていく様はなかなか壮観だった。ってああ僕は背広来ていたから官僚に見えたかも。って頭縛ってる官僚なんているのかよ。いるかもよ。

 さあ「夏エヴァ」だ。いや正式には「THE END OF EVANGELION 新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に」だ。虎ノ門ホールをうめつくした大森望さんを含む(やっぱり来ていた)1,000人近い人々が固唾を呑むなかで幕が開き、いよいよ映画が始まった。CGバリバリの角川のマークにスターチャイルドのマークに昔ながらの東映のマーク(ザッバーン)にくるくると回る映倫のマーク。もうつかみはオッケーって感じで、しばし笑いの漏れる中で始まった本編は、池の畔にたたずむシンジ、病室でちょめちょめするシンジ、ミサトが走ってアスカが目覚めて空からウナギが降りてきて、そこで「魂のルフラン」が・・・鳴らない。鳴らずにそのまま「第25話 Air」の後半部分へと突入する。

 展開されるのは驚愕のシーン、壮大なシーン。テレビ版の第25話、26話で見たような悲惨なカットの、そこへと至る哀しい展開が目の前で繰り広げられ、けれども未だ起たない主人公に人々のイライラと怒りがつのる。やがて始まる「欠けた心の補完」「いかなきゃ、シンジくんが呼んでる」「殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる・・・・・・・・・」。もはや会場には微塵の笑いもなく、ときおり漏れ聞こえる感嘆の溜息だけが、激しさを増すスクリーンに向けて吐きかけられる。

 1つになり、解放され、理解しあい、大勢が1人に、1人が大勢になって憎しみに満ちたそれまでの世界が終わる。「同じことをもう一回やるだけです」。そう、確かに同じだった。ちょっと表現形式が違うだけで、やっていることは同じだと思っていた。「僕はここにいてもいいんだ」と説得されて納得して、それで誰もがハッピーになって虎ノ門ホールを後に出来るはずだった。だがしかし、庵野監督はそんな安易な妥協を許してくれなかった。2階に追い上げて、それとも穴蔵に突き落としてからハシゴを外して石をぶつけた。水をかけた。火を放った。逃げられない状況に追いこまれて、人はうろたえとまどい、悩み苦しむことになった。

 「もののけ姫」は人間にも自然にも見方してない。もちろん敵視もしていない。ただ状況を明示して自分で判断しろ、オマエが決めろとバトンを渡して走り去った。「夏エヴァ」もそう。人間なんて解りあえやしない、解りあえたとしても本当なのか知れたもんじゃない、すべてをさらけだしたら解ってもらえるなんて甘すぎる、さらけだしたその姿に、どうして嫌悪感を持たれないといえるだろうか。世界のはじまりに生まれたアダムを、イブが愛してくれるなんてご都合主義だ、世界の終わりに取り残された男と女が愛し合うなんて幻想だ。僕は僕でしかなくあなたはあなたでしかない、そんな当たり前過ぎる真理をあかさらまにして放り投げ、さあおまえらこれからどうすると問いかける。種として考えなくてはいけない人間と自然との関わり以前に、個として考えなくてはいけない自分と他人との関わりに、毒を流して走り去った庵野監督をとにかく怨む。そして感謝する。つらいけど。ありがとう。

 素っ裸のレイとかパンツ姿のアスカの余韻を楽しんで「おかずにする」間もなく、ビデオで「少女革命ウテナ」を見る。息抜きの回で別になくってもいいんだけど、あるとやっぱり息抜きになる。カウベルを付けて一歩も譲らない七実の芯の強さとゆーか見栄っ張りな部分とゆーのを改めて強調するという点で、それなりに意味のある回なのかもしれない。前の劇辛カレーの時の方が、シナリオにテンポがあって絵にも動きがあって面白かったけどね。来週からはまたまた話が動き出すみたいだけど、ホントどこに連れていってくれるんだろーか。とりあえずはサントラ買って考えよー。おっと「エヴァ」のDVDも間もなく出るんだ、「リアルサウンド」も発売だ、「コナン」のDVDボックスも欲しいよー。人間関係で悩もうとも、物欲のいささかも衰えない僕でした。おっと「ON YOUR MARK」も買わなきゃ。


【7月15日】 山田まりやに決定した。なにがってそれはこの夏にもっとも爆発するであろー女性アイドルが山田まりやに決まったってこと。「スプライト」だったかのCMでブルンブルンさせていた(どこを?)のは春だったかな。最近では雑誌の表紙にグラビアにと、そのあどけない笑顔とは不釣り合いなまでにぷよぷよとした肉体を披露してくれているけれど、それだけではまだまだ大勢の候補の1人としてしか認識されなかった。しかしこの2−3日で大きくポイントを上げた。理由はただ1つ、そう、首都圏に住んでいる人ならもう知っているよね、はい、大磯ロングビーチのポスターを見たからだよ。

 地下鉄やJRの駅張りポスターに登場した巨大な山田まりやは、もう近くによるのも赤面するほどの迫力あるボディーを紙の上に定着させて、そのあどけない笑顔でにっこり微笑みかけている。四つん這いになって足を大きく広げたポーズを正面から撮ったその写真には、当然のごとくこぼれおちんばかりの肌色のウオーターメロンが2個、端切れのようにのびきった布によって支えられている様が写っている。V字の布から左右に伸びたその脚は、触れば柔らかさと堅さを適度に持ったウエルダンのような感触を、きっと我が手に伝えてくれるだろう。

 欲を言えばグラビアならまず失格であろうそのおとなしいポーズだが、衆目に触れる駅頭という場で披露する以上は、抑制もやむを得ないといったところなのだろう。むしろ抑制がエロティックな妄想をいや増して、夏の暑さに爛れた頭にいっそうの煩悩を惹起してくれる。見ると極太のホチキスのようなもので頑丈に張り付けてあって、とても瞬時にははがすことができない。カッターナイフで切り抜こーにも昼間の地下鉄ではちと難しい。夜まで待つか。それとも職権を束って大磯ロングビーチが印刷会社か営団地下鉄かJRからガメるか。

 「週刊アスキー」を読んでいつも真っ先に開く「オタキング日記」のページを見ると、肝心の日記が載っていない。かわりに大泉実成さんにあてた謝罪文が、1ページまるまる使って掲載されている。一瞬ギャグかと思ったが、岡田斗司夫さんの言葉の中身は極めて真摯で真剣で、とてもギャグには思えない。岡田さんの謝罪の言葉から想像できる大泉さんの抗議の様子も、実に真剣でまじめなものだったみたいで、言葉にギャグは交えても、表現者として常に真剣に物事に対峙して来た大泉さんの揶揄されたことへの怒りようが伝わって来る。

 そんなことに目くじらたてなくてもと、岡田さんの側に立って言ってしまうことは簡単だが、人によって心を覆う殻の質は異なるもの、酸に弱い人もいればアルカリに弱い人もいるわけで、岡田さんの言葉は大泉さんの心の殻にとって、極めて強い破壊力を持っていたのだろう。「オネアミスの翼」で「バンダイを騙した」とかいった類の誹謗中傷を受け続け、慣れてしまったという岡田さんも、自らが誹謗中傷の主として抗議を受けた時に、表現者の表現に対する責任感を再認識したのかな、抗議に対して1ページを提供する姿勢には、開き直りではない真剣な謝罪の意志を見てとった。でも一ライターの謝罪の意志にまるまる1ページを提供する雑誌のスタンスもちょっと羨ましい。だって新聞じゃあ、とてもここまで出来ないからね。もしやったら、毎日半分のページが謝罪文で埋め尽くされるから。

 JR東日本東京地域本社長の定例会見で、8月23日だったか4日だったかに開かれる大井町工場の一般公開の発表を聞く。なんでも一昨年まで横浜の鶴見線で走っていた車両とか、戦前は「富士」、戦後は「つばめ」の展望車として人気の的だった車両とかが展示される予定で、鉄道マニアにはもうタマラないイベントになるみたい。不思議なことにとゆーか人気集めにはこの際構っていられるかってことで、ミニ4駆のコースも設営される予定。でも鉄道を見るイベントで、車のおもちゃのミニ4駆やるのって、やっぱりなんだか錯綜してるよなー。せめて「電車でGO!」とかをバーンと並べて来場者にタダで楽しんでもらうとかやればいーのに。えっ、周りにホンモノがあるなら「リアルな電車でGO!」をやればいい? ごもっとも。


【7月14日】 なるほど白泉社もあれでなかなか手堅い商売をするんだね。日販から届いた週報を見ていたら、「売れ筋あらかると」のコーナーに、「ガラスの仮面パーフェクトブック」の案内が載っていた。「ガラスの仮面」といえば安達祐美とか野際陽子とかが出演してのドラマが多分絶賛放映中。本誌での連載も再開されたとかで、タイミングを合わせてのメディアミックスに、書籍の方でも一枚加わったってところでしょう。あれだけ膨大な原作なんだもの、やっぱりガイドブックって必要なのかもしれないけれど、あれだけ膨大な原作なんだから、最初と今では随分と絵なんか違っているんだろーなー。比べて見ると瞭然か。違っていなかったら「最初から完成していた」か「進歩がない」のどちらかの言葉を贈りましょう。7月22日発売で値段は1,500円。

 角川書店の下半期の企画に「カドカワエンタテインメント」が登場。読んで字の如くエンターテインメント系の作品を書き下ろしでリリースしていく大型企画で、ラインアップを見ると森村誠一さんの「棟居刑事の憤怒」とか勝目梓さんの「真夜中の女」とか檜山良昭さんの「日独決戦完結編」とか西澤保彦さんの「仔羊たちの聖夜」とかが並んでいた。甦る「幻影城」ってのもあるけれど、これは書き下ろしじゃないぞ。それからエンターテインメントなのにSFがないぞ、ってまあSFはミステリーの10分の1くらいのマーケットだから、最初のラインアップに入ってなくても仕方がないんだろーね。ゲショゲショ。

 おっと「スニーカーブックス」ってのも創刊みたいで、菅浩江さんの「末枯れの花守り」なんてのがラインアップに入ってる。エンターテインメントにスニーカーとは豪勢だねーと思ったものの、たしか菅さんのホームページだったかに、カドカワノベルズの発展的解消みたいなことが書かれてあったことを思いだし、なんのことはないノベルズをセグメント化しただけっだってことに気づく。もはや講談社一人勝ち(カッパもあるでよ)の観もあるノベルズ市場で、その他の勢力はジャンル分けしていかないと生き残れないってことなんでしょう。その他単行本の企画では、根岸好伸さん撮影による「佐藤藍子フォトストーリー」に大注目。あと島田荘司さんの「三浦和義事件(仮)」とか藤原伊織さんの「題未定」(わはははは)の短編集とか。おお馳星周さんの「不夜城2」ってのもあるぞ。下半期のエンタメ本は角川に注目、ですな。

 晶文社の津野海太郎さん、筑摩書房の松田哲夫さん、ボイジャーの萩野正昭さんが編集人を務める雑誌「本とコンピュータ」(トランスアート、1,300円)を読む。およそ予想どおりの展開ながら、1本1本の記事に適度の分量があって、おまけにライターがみな一騎当千の強者ばかりなので、読んでいてほとんどダレ場がない。息を抜く場所もないってことだけどね。とかくコンピューターってゆーと、若いライターの独壇場みたく思われがちなのに、この本の執筆者で一番若いのは(匿年齢ってのは別にして)1962年生まれの田中聡さん。つまりは全員僕より年寄り(ホントだよ)ってことで、けれども実に今の電子出版の状況と、印刷分野の電子化の状況をとらえている。執筆者のほとんどが出版とか印刷の最前線にいる人たちなんだからだろーね。

 圧巻はデジタローグの江並直美さんへのロングインタビュー。いきなりのヒゲモジャツルピカな落ち武者顔に圧倒される人もいるだろーけど、今のCD−ROMによる「電子出版」を考える上で、書かすことのできないキーマンの1人であることに間違いない。とはいえ新聞ではせいぜいが100行、雑誌でも見開き2ページが限界なところを、この「本とコンピュータ」では実に18ページにもわたってインタビューしていて、普段はあまり語られることのなかった中学時代とか高校時代とか大阪時代の話を、始めて知ることができた。そうですか万国博覧会だったんですかきっかけは。

 おお冒頭のコラムに書いているのは読売新聞でマルチ読書面を担当している石田汗太記者ではないか。ちょっとお金が落ちなかったら立ち所に会員資格を停止されてしまった某「YOMINET」で、2年以上にわたってパソコン通信による読書合評を担当している記者さんで、おまけに「エヴァ」にハマっている。某「YOMINET」には、ユーザーが自由に書き込めるボードがあって、一般の人だったらまず直接お目に掛かることのない文化部の記者相手に、自分の意見を開陳することができる。コラムでは石田さん、このボードのことについて触れていて、記事への反応が批判であれ激励であれ直接伝わることは良い経験だったと書いている。ひるがえって大半の新聞がオンライン版を出すようになった今、どれだけの新聞がインタラクティブのメリットを生かして、読者が記者に、あるいは編集者(デスク)に、編集幹部に直接文句(激励)を言えるようになっているんだろー。ハガキを書くより手軽に意見を伝えることのできるメディアなんだもん、使わない手はないぜ。

 まあプライドの高い新聞記者が読者の奇譚のない意見を平静に聞ける訳もなく、罵倒のメールには大罵倒プラス紙面を使った超罵倒で応じかねないから難しいかも。かといって小板橋二郎さんが「新聞ジャーナリズムの危機 新聞添削日記」(かや書房、2,200円)が取りあげている朝日新聞の読者広報室のよーに、書面での質問に木で鼻を括ったよーな返事しか寄こさないってのも問題だし、その辺りうまくやっていく方法を探っていく必要があるんだろーなー。ちなみにこの「新聞ジャーナリズムの危機」、「伊藤律会見記捏造」とか「林彪事件大誤報」とか「サンゴ事件」とかいった過去の過ちをあげつらって新聞の姿勢を非難するありがちなスタイルをとらず、現在新聞業界が抱えている数々の問題を、冷静に、かつ客観的に、時には数字を使って分かり易く説明してくれている。

 環境問題に関するダブルスタンダードな態度についての指摘には納得する部分多し。前々から地球環境年の年の正月に、環境問題を訴える別刷りをドバーっと出すような大新聞(ウチじゃないぞー)の姿勢を不思議に思っていたけれど、ここまで具体的に数字とかを挙げて新聞と環境問題との関係を指弾した文章には、たぶんはじめてお目にかかった。記者クラブ批判とかはとくに目新しい部分はなし。感動するのは「天声人語」の悪文ぶりと社説のフヌケぶりと新聞による日本語破壊のすさまじさを指摘した箇所。とりわけ社説のフヌケぶりは、著者が各紙の社説の形容詞部分ばかりをピックアップして構成した「社説」を読むとよく解る。いやもう没個性的な紋切り型の形容詞をつなぎ合わせれば、一見立派でその実「沈香も焚かず屁もひらず」のたぐいの社説ができてしまうんだね。よし僕も参考に・・・・しちゃいかんぞ。


【7月13日】 新宿の三越に「20世紀フォックス展」を見に行く、じゃなかった「ハリウッドSFX展」を見に行く。巫山戯るなと思う。だってねえ、いきなり冒頭から「インデペンデンス・デイ」のビデオの宣伝が流れてるんだぜ。周囲には確かにエイリアンの攻撃機とかエイリアンのバイオスーツとか大統領の飛行服とかリンカーン像の模型とかホワイトハウスのミニチュアとかが飾ってあるんだけど、「映画で使われたもの」という以外には何の価値もないガラクタって感じがして、せめてどこそこのどーゆー場面で使われた品物なんだぜ、とか、こーやって撮ったから生きているよーに見えたんだぜ、とかいった具合に、本編との関わりをもう少し伺わせるよーな展示が出来なかったものなのかと、主催者に対する怒りが沸々と湧いてくる。

 次の間の「エイリアン」に関する展示も同様。エイリアンの造形物があちこちに並んでそれなりのスゴミを発しているけれど、これではただの蝋人形館だって。せめて造っている様子をビデオで見せるとか、撮っている様子を再現して見せるとかしないと、「ハリウッドSFX展」って看板が泣くよ。ギーガーのエイリアンの絵もとりたてて目新しさはないし、さらに次の間の「ボルケーノ」に至っては、映画が一般的じゃないため、展示してある物への親しみも愛着もまるで湧いてこない。映像を流している訳でもなく、これじゃあ映画の宣伝にもならないよって、罵倒の言葉の1つも出て来る。

 「20世紀フォックス」なんだからせめて「スター・ウォーズ」絡みの展示をやればもう少しは盛り上がったんじゃないかって思ったけど、たぶん複雑な事情があって展示出来ないんだろーね。昔セゾン美術館でやった「ジョージ・ルーカス展」の楽しさとはエラい違い。最後の間に積み上げられた「スター・ウォーズ」の玩具が泣いているぜ。って訳で「ハリウッドSFX展」の一番の見所は、「エイリアン」のコーナーで流れている「エイリアン」第1作のビデオの、脱出したシャトルの中で宇宙服に着替えるために、リプリーがパンツいっちょうになる場面に決定。ってそー思ったのは僕だけか。会場のあちこちに張られたデジタル・ハリウッドの杉山知之さんの顔写真よりゃいーと思うけどなー。

 ぽくぽくと歩いて紀伊国屋書店へ。2階のレコード売場に行くと、「もののけ姫」をはじめとする「スタジオジブリ」のコーナーが出来ていて、そこでマボロシのジブリ作品「On Your Mark」のモデ映像が流れていた。2人組の男に救出される天使ってなストーリーの映像は、まんま「未来少年コナン」とか「ルパン3世カリオストロの城」のシチュエーションで、30過ぎたこの身にとって、ひどく懐かしさを感じさせる映像だった。これでバックに「CHAGE&ASUKA」の歌が流れていなきゃーなー、なんて思うアニメファンの結構いるんじゃないかと思うけど、そーゆー人は25日に発売されるビデオもしくはLDを買って、ついでに久石譲さんか大野雄二さんのCDを買って、勝手にBGM付けちゃいましょう。おーこれぞミヤザキ的って映像に、きっと仕上がるはずですから。

 アドホックのコミック売場で今市子さんの新刊
「砂の上の楽園」(朝日ソノラマ、760円)を買う。結構怖い話なのに不思議と恐さを感じさせないのは、ひとえにどこか抜けてるキャラクターの造形と、はんなりとした温もりが漂う今さんの絵柄のせいでしょう。表題作のエンディングにも吃驚するけれど、「僕は旅をする」の恐ろしくも哀しく、そして優しい展開には、心底感動させられる。生きていればこその人生、せめてもう一花なんぞと考え込んでしまった次第。さあ朝日新聞の求人欄でも読みますか。

 家の近所のレコード屋でタダのサンプルカセットを配っていたので持ち帰る。朝日美穂とかゆーアーティストのデビュー曲(一部。3分ほどかなあ)を聞いて、気にいったら買いましょうってな感じのプロモーションで、いっしょに置いてあったハガキの宛先を見るとソニー・ミュージックエンタテインメントってなっていたから、きっとSMEの新手のプロモーションなんでしょう。で肝心の曲の方はといえば、なんだかとっても川本真琴テイスト。でも声質がよくってアレンジもビートが効いていて、聞いていてなかなか心地よかった。シングルが出たら買う買ってゆーと、たぶん買わないんじゃないかって思うけど、でもアルバムだったら通して聞いてみたい気がしたね。絶賛バラ捲き中なので、見つけた人は白地に赤で「MIHO ASAHI★MOMOTIE」と書かれたカセットをゲットしよー。もしかしたらバケるかも。


【7月12日】 さあ「もののけ姫」の封切りだ、ってことでもそもそと起き出して千葉市に新しく出来たシネコンの「シネマックス千葉」に行くと長蛇の列。あれだけ拡大ロードショーしてるから1館当たりの来場者は薄められてるんじゃないかって予想してたら嬉しい方向に外れていた。でも続々と集まるガキのお子さまたちを見ていると、いくら立ち見が出ないように発券を制限しているとはいえ、結構ニギヤカなことになるんじゃなかと想像して、早々と列を離れて出直すことを決める。まあ「夏エヴァ」と違って2週間で終わりってこたぁないから、来週か再来週かそれとも来月にまた来よう。津田沼のパルコにある劇場で見てもいーんだけど、やっぱ新しい劇場の方が音とか良いからね。

 松屋に寄って牛丼じゃなくってカレーをかき込み、そのまま日本最大の床面積を誇っていると言われた(今は確かどっかに抜かれたんじゃなかったかな)千葉そごうの本屋をウロウロ。「夏エヴァ」を前にドサっと出版された謎本のコーナーを「やれやれ」と思いながら眺めていると、中に第三書館から刊行された「エヴァンゲリオン快楽原則」とゆー本を見つけて手に取る。表紙に並んだ植島啓司、東浩紀、布施英利、野火ノビタ、香山リカ、宮崎哲弥といった名前に彼らの寄稿集かと一瞬思うものの、コシマキの「いかにEVA言説は再生産されたか」といった言葉から、たぶんメディアに発表された彼らの原稿をまとめたものだと推定。購入して中を読み、推定に間違いがなかったことを確かめる。

 よくぞ雑誌や新聞から「エヴァ」絡みの記事だけを集めたものだというのが率直な感想。そしてベラベラとページを繰りながら、本当に全部の記事に関して媒体や著者に転載の許可を得ているのかとゆー疑問も同時に浮上する。たぶん転載の許可が出なかったんだろーね、「SFマガジン」に掲載された「SFセミナー」での大森望さんと庵野秀明さんの対談の模様は、解説部分に結構大量に「引用」されている。未だに売られているところを見ると、ネット上とかで伝わっていた、やっぱり第三書館から刊行された「エヴァンゲリオン・スタイル」が、図版等の版権がらみで、出版差し止めになるんじゃないかって話は虚報だっのかもしれないけれど、今度の本を読んでいると、やっぱりちょっと心配になる。訴訟問題なんて場外のことで話題になって、それが本作の価値までネジ曲げちゃうってケース(とゆーかマスコミが無理矢理ネジ曲げちゃうケース)ってゴマンとあるからなあ。14歳が云々って時期も時期だし、あんまりネガティブなことで話題になって欲しくないんだよなあ、せめて封切りまでは。

 で「エヴァンゲリオン快楽原則」の方は、もうだいたいが読んだことのある文章ばっかりで、それらをつなぐ編者・五十嵐太郎さんの言葉にもとりたてて目新しさは感じない。まあ情報をパッチワークのように組み合わせて作られたアニメを語る時に、そのアニメに関連して発言された言葉をやっぱりパッチワークのよーにつなぎ合わせるのってのは、実に真っ当な手段なのかもしれないし、もともと学者先生、資料や論文から言葉を選んで来て想像をめぐらせ自分の言葉に置き換える術に長けているから、こういう本を作るのもお手の物、なんでしょう。あとがきによると「ザ・スクープ」が7月26日に特集を組むみたいなんでそっちにも注目。公開された映画を見て、慌てて番組の内容をサシカエなかならない羽目になったりして。

 ついでに「春エヴァ」のフィルムブックを購入、うんこっちはあの被っていて全然聞き取れなかったセリフを含めてすべてのセリフが収録されていて、テレビ本編の良いおさらいになる。いわゆるレギュラーなフィルムブックでも落ちてるセリフって結構あったしね。アスカが叫ぶ場面(「だから私を見て!!」ってとこ)だけは、声の違いを活字で再現するのは不可能だったみたいで、色分けによって区別してる。映画を見なかった人には、その違いは単なるレイアウト上のアクセントにしか見えないんだろーけど。もとより「春エヴァ」のフィルムブック読んで「エヴァ」のストーリーが理解できるとは思えないし、やっぱ映画見た人が確認(エントリープラグの中でのびてたうちに超美人になってしまった綾波とか)のために買う本になっちゃってるって印象です。

 さあ神林長平だ、「敵は海賊」だ。待望のシリーズ最新作「敵は海賊・A級の敵」(ハヤカワ文庫JA、600円)にはラテルとアプロとラジェンドラのチームにチーフ・バスターの海賊課一党、それに海賊のヨウメイと仲間のラック・ジュビリーそして乗艦カーリー・ドゥルガーの海賊一党に加えて、新キャラが登場してマンネリ気味だったバトルを楽しいものにしてくれている。1人はアプロにはかなわないもののその食欲は海賊課の人間ではナンバー1とゆー1級刑事・セレスタン。もう1人は情報を操って金を稼ぐ海賊ってゆーかほとんど詐欺師のラクエシュで、こいつらの持ちつ持たれつの腐れ縁から広がって、宇宙を危機に陥れようとする巨大なコケコッコ野郎との決戦へと話は進む。

 神が「光あれ」と言葉を発して生まれたこの世界が言葉によって支配されているのはやっぱり当たり前なんだろうか、とか言霊という存在が信じられているよに言葉や延長にある情報にはやっぱりエネルギーが備わっているんだろーか、とかとにかく哲学的で物理的な会話がゲシゲシと頻出、夏の暑さで弱った脳をグリョングリョンとかき回してくれる。でもノリややっぱり「敵は海賊」、軽妙にして洒脱な会話の積み重ねによって、読者を飽きさせず離れさせずにラストのやっぱりな大団円へと導いてくれる。次からもこの新キャラ登場するんだろーか。セレスタンの道具とゆーか相棒のピンクのパワードスーツ、誰かイラストにして視覚化して下さい。

 良かったよ「逮捕しちゃうぞ」。シナリオはちょっと予定調和で赤面モンだったけど、絵の方はキャラの顔が好みのお目目ぱっちり系になっていて、それが最後まで安定レベルで続いてくれたから、それこそアイドルが出演していればドラマなんて関係ない、顔だけ見ていれば超ハッピーってな感じで、美幸と夏実の表情を食い入るよーに見ながら、30分を過ごすことができた。来週も同じ雰囲気みたいで、それが2話連続になっているよーなので、やっぱりエアチェックするつもり。BOXは買わないけれど、第38話以降はやっぱりLD買い、かなあ。


【7月11日】 宮崎駿さんが露出しまくって・・・あっ一昨日と同じ振りだ。とにかくインタビュー記事が出まくりの宮崎駿さんに、我らが禰津亮太(誰だ?)さんも「SPA!」誌上にてインタビューを慣行。本編はともかく欄外のミニ解説に筆者の思いと知識が爆発してるって感じで、とってもオタク度高くて僕は好きです。普段から「SPA!」読んでる人がこういうのを好きなのかどうかは分からないけどね。

 本文の質問にも思いの丈がずいぶんと入っているよーで、例えば「ありがちな『エコロジー』みたいな雰囲気ですかね。嫌ですねえ」の「嫌ですねえ」なんて、新聞のインタビューじゃあ多分書かないし、そんな風に聞かない。でも当の宮崎さんは「そうそう」って結構我が意を得たりって反応を示していて、そこから「もののけ姫」という映画が訴えかけている善と悪、人間と自然の錯綜(さくそう)した関係が伺われるようになっているから、良かったんじゃないかってそう思う。

 押井さん、庵野さんについて聞くのはやっぱりお約束ってやつで。仮に僕がインタビューしても聞いたでしょう。まあマイナーな工業新聞がインタビューをお願いしても受けてくれたかどーか分からないし、最初から気後れして頼めないってこともあったし。宮崎さん全然口ごもらずに(記事だからかな)庵野さんには「上手に乗り切って欲しい」、押井さんには「彼はほとんど犬のことを考えて生きている」って言葉を贈っていて、その辺「ニュータイプ・マーク2」に乗っていた富野さんとは対応が違う。もう最後だから、何言ってもいいぞって、そんな気持ちがあったのかな。

 欄外のミニ解説の庵野さんの顔につけられた「期待してるぜ庵野サンっ!!」ってのも、やっぱり聞き手の願望が? ずっと公開を危ぶんでいたけれど、ガイナックスのページによると、ゼロ号、初号と試写は順調に進んでいるみたいで、会社によって葉書を整理していたら、来週いよいよ結果が判明することになっていたから、宮崎さんに続いて今度はいよいよ庵野さんにも直撃だっ!! んでもって「もののけ姫、嫌ですかあ」とか聞いちゃって下さい。

 人の本棚とは気になるもので、「SPA!」宮崎駿インタビューの写真に写っているジブリの本棚の中身が気になる。でっかいトトロとジジも気になるけれど、買っても家には置いておけないからなあ。話が曲がった本棚の話。ぼけていて何がどんな本なのかさっぱり分からないけれど、アニメージュ文庫だけは背表紙のブルーで解った。あと辞書類とか。たぶん彫刻家だったかな「佐藤忠良」さんの作品集があるのは何故なんだろー。頭の横から右にいったブルーの背表紙のハードカバーは椎名誠さんの「アドバード」かな。手前のチェリーたばこのパッケージの色が目にしみる写真です。

 我らが(フジサンケイの、って意味ね)河井真也さんがエグゼクティブプロデューサーを務めた中原俊監督作品「Lie lie Lie」の試写。佐藤浩市さん演じる電算写植オペレーター、波多野のところに、突然高校時代のクラスメートだった豊川悦司演じる詐欺師の相川が登場。口八丁手八丁で波多野の知り合いの印刷屋の危機を救い、そのまま波多野の仕事場兼アパートに居座ってしまう。不眠症の波多野に睡眠薬を勧める相川。それを飲んでラリった波多野が素晴らしい文章を知らない間に電算写植機に打ち込んでしまっていたことから、今度は出版社を巻き込んだ新しい詐欺を思いついた・・・

 とにかくお軽いトヨエツは、正直言って「MISTY」の夜盗なんかよりよほどピッタリってイメージ。宝焼酎のコマーシャルに出ている半端なコミカルな役所をもっと押し進めた、突き抜けたコミカルぶりを見ていると、ほかの映画の暗くてクールでハードなイメージは、実は相当に無理していたものじゃなかったのかなあなんて思えてくる。「傷だらけの天使」も「男たちの描いた絵」も見ていないから解らないけれど、今のとことベスト・オブ・トヨエツです。

 それから編集者として登場する鈴木保奈美さんの、まじめなコミカルぶりもなかなかにキュート。あのウルウルした目で見つめられ、ポッテリとした唇で「雲呼」なんて言われた日にゃあ、もう耳と目玉がぶっとびます。酒屋に入ってスタンドで冷や酒頼んでグビグビやるポーズのなんとエロティックなことか。時折思い出したように奏でられるBonnie Pinkの歌が、画面の軽さにグルーブ感を与えていて、見ていてとっても心地よい。

 その他のBGMは抑え目で、演出も全体にしっとりしていて、とかく派手な仕込みと宣伝が話題となる河井真也さんプロデュースにしては、全体に落ちついた印象を受ける。それでも見所、笑い所(イカスミ喰いながら笑い会う場面とか、カメラに向かってトヨエツがニカリンコする場面とか)には事欠かず、もう2時間ぐひぐひしながら、予想どーりのエンディングを迎えることが出来た。再見可。10月東映系でロードショー。

 メディアワークスから出る「悠久幻想曲」のセガ・サターン版が制作元のスターライト・マリーから届く。前作の「エターナルメロディー」はシグナルライトから出ていたかな。会社の名前は違うけど、プロジェクトごとで会社作ってやってるらしーから、実際は同じところから作っていて、キャラクターはmooさん(取材に言った時、設定資料作りながら漫画家さんみたいなことしてたっけ)で同じ、ゲームの進め方もだいたい同じで、設定が若干違うってところでしょう。

 キャラクターに合った仕事を見つけてやって、チャクチャクとボタンを押していると、だんだんステータスが上がってくるのが癖になって、それこそカッパえびせんのよーに職業選び、ボタン押し、イベント、休日の過ごし方選び、それから職業選びってパターンを繰り返している。開発者曰く、何10人、何100人が何10億円かけて作ったゲームを300万本売るよりは、何人かのスタッフが1億円(もかかってるのかな)程度の製作費で作ったゲームを10万本売った方がお気楽ってことで、「悠久幻想曲」も何とも肩の力が抜けたゲームになっている。僕はどっちが好き勝手、やっぱりお気楽な方ですね。もちろんなーんにも仕事しないで食べられるってのが、1番いーんですけど。


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