縮刷版97年1月中旬号


【1月20日】 幸いの2日間が終わって再び企業見学会へ。といっても午前は老人ホーム、午後はエンターテインメント関連企業とあって、全然わからない話を延々と聞かされなくって済むだろーと足どりも軽い。

 最初に行った老人ホームは低い所得のじーちゃんばーちゃん達が住んでるアパート風のホームで、中に入るとなるほど70は超えているだろーと思われるアメリカンなおじーちゃんおばーちゃんが元気に歩いてテレビを見ていた。部屋をのぞくとベッドルームこそ1つの狭い部屋だったけど、それでも今僕が住んでいる部屋の倍はあろーかとゆー広さで、これで月々2万円とか3万円ときくと、やっぱりアメリカっていーなって気にさせられる。食事を除いてね。

 で次に行ったのが入居に2000万円とか3000万円とかを払って、かつ月々30万円だとか50万円だとかが必要な超豪華老人ホーム。もはや老人ホームなどとゆーのもはばかれるよーな荘厳華麗な作りで、ホテルのよーなロビー、ホテルのよーな食堂、ホテルのよーなプールとフィットネス施設、そしてホテルよりもはるかに豪華な居室とまー、流石にアメリカの金持ちが最後に住もーと考えているだけの場所だけのことはあると圧倒される。

 時間が押したので街のフライドチキン屋に入ってアメリカンなサイズのニワトリを食べ、午後の訪問地となる「ITEC」とゆー一部に有名な会社へと向かう。テーマパークのアトラクション施設だとかのデザインなんかを手がけている会社で、例えば「ディズニーストア」のショップのデザインだとか、前にのぞいた「ターミネーター2」のアトラクションのデザインなんかを手がけているそーな。しかし流石にアメリカ人のデザインセンスだけあって色使いが派手で、こーゆー施設が町中にぽつんとあると、すっげー違和感で嫌われるか、すっげー目立って話題になるかのどちらかだろーと考える。さてどっちだろー。

 さらに別の会社へ。この「SERVOS AND SIMULATION」とゆー会社、飛行機会社で軍需関係に携わっていた人たちが設立しただけのことはあって、作っている「ヘリコプター・シミュレーション」は揺れ具合といーリアルな戦闘シーンといーなかなかの出来。で値段はと聞くと驚きの350万円。大きな鞄を持っていたら、1機買い求めていただろーな。

 すべての訪問を終えてあとは帰るだけ。本当ならば夜の街に繰り出してぱあーっと、なんてところなのに力が出ず、4時起きの明朝に備えて10時過ぎには床に就く。荷物、鞄に入るかなー。


【1月19日】 昼少し前に宿を出て一路ケープカナベラルへ。ロケットとかスペースシャトルとかがごろごろと横たわっている「ケネディ宇宙センター」を見るためで、1時間半くらい車を頃がした先に、先日ロケットが打ち上げ花火になったばかりの「NASA」が誇る「ケネディ宇宙センター」が見えてきた。

 入場料はタダってところがはアメリカらしく、思っていたより狭い敷地内を老若男女がぞろぞろと歩き回って、ロケットやシャトルをバックに写真を撮っていた。さすがアメリカの魂アメリカの誇り。見たかった「サターン5型ロケット」は遠く離れた場所に置かれていて、バス・ツアーで行かないと見られず、時間がなくて断念。同行したジャーナリストは宇宙食を買っていたけど、あんまり旨いものとは思えず、しれに1人暮らしで宇宙食ってとってもとっても侘びしいので、買うのを止めにする。栄養は満点だったかなー。

 「ケネディ宇宙センター」を出て再びオーランドへ。連れていってくれた主催者の人が用事があるからと、同行したジャーナリスト(男性)を2人で「シーワールド」とゆー施設の前でおろされ、2時間半つぶして下さいと言われて途方にくれる。同じ「シーワールド」でも「鴨川シーワールド」くらいしか思い浮かばない狭い国土から来た身には、たかが水族館で2時間半はとて無理だと顔を見合わせて嘆息するが、とりあえず会場内に入ってみると、なにやら楽しそーな声が聞こえる。近寄ると「イルカショー」をやっていて、3000人くらいの人が熱心にイルカの演技に見入っていた。

 間もなくショーが終わって皆がぞろぞろと移動し始めたので、後をついてこっちもぞろぞろ。付いた先が同じよーなコロシアム風の施設で、席に座って待っていると、今度はアシカのショーが始まった。ドラマ仕立ての楽しいショーは息も付かせぬ密度の濃さで、流石ショービズの本場と感心することしきり。感心したのはしょーの始まる前の前説で、日本だったらディレクターがつまらないことを行って笑いととろうと懸命になるところを、ここではプロの芸人がピエロに扮して、ぞろぞろと入場して来る人を揶揄するポーズを取って、開演を待っているほかの人を楽しませている。

 女性の手をとってキスをして、女性がふりむいたスキにプールに向かって「オエッ」ってやったり、車椅子を押して挙げて介添え人に帽子を差し出し、チップがもらえなかったら今度は車椅子を外に押し出そうとしたり、最後は女性を1人誘い出して一緒のダンスを踊るように強要し、そのうちストリッパーのよーなポーズを取って「さあ貴女もどーぞ」ってな感じで振ったりと、とにかく見ていて飽きない。昨日の「ユニヴァーサル・スタジオ」とー、今日の「シーワールド」といー、エンターテインメント関連担当記者として勉強になることしきりの2日間。とまあ、遊びに惚けていたんじゃないってことを見せよーと取り繕っても、遅いか。


【1月18日】 ホテルを移動して、青木建設が持っているその名も「ブルー・ツリー・リゾート」へ。コンドミニアム風の2ベッドルームの部屋をタイムシェアしている施設で、フロントのある建物のヨコには温水プールまで付いていた。でも寒さで誰も泳いでいない。荷物を置いてとりあえず前に行った「コンベンション・センター」へと向かが、時間がないので開催中の「レジャー・エキスポ」をパスして「ユニヴァーサル・スタジオ」へ。

 何故時間がないかとゆーと、「VIP」賭して招待されていて、時間厳守を言われていたから。なるほど到着するとトレーナー姿のお姉さんが待っていて、映画「ターミネーター」でシュワちゃんがかけていたよーなサングラスとか、緑色で誰が着るんだってな趣味の悪いTシャツだとかを一式くれた。会場内に入って裏通りのとある店の裏口を入ると、なんとそこが今一番話題のあとらくしょん「ターミネーター2」への秘密の入り口になっていて、5分も待たずにアトラクション会場へと入れた。流石「VIP」。

 と思っていたらお姉さん、「後はご自由に」と行ってどっかへ行っちゃった。おいおい他のアトラクションは並べってか、でも肝心要の「T2」を見られるんだからいーかとあきらめる。さて「ターミネーター2」、3Dとかの映像は予想してたけど、現実と映像とうまく組み合わせた演出にはただただ凄いの1言。そんなアトラクションを観客も演技者も実に真剣に楽しんでいて、同じ施設を日本に持って来た時に、日本人特有のてらいとゆーか、シラケ心とかがじゃまするんだないかと心配になる。でも大阪でも見たいよなー。

 芸能関係には有名な「ハードロックカフェ」で昼食し、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のやっぱりすっげーアトラクションを見て後は散歩。夕方になったので戻って宿屋の近所のレストランで照り焼きステーキを食べる。期待していたほどには大きくなく、かといって期待どーりに出てきたらとても食べられなかったと、相反する複雑な気持ちにとらわれる。もしかして日本人サイズ、だったりして。


【1月17日】 午前5時45分に出るはずの飛行機が飛ばず、早起きが無駄になって気落ちするが、仕方がないので空港で時間を潰して、次の飛行機に乗ってマイアミへと向かう。そう常夏の「マイアミ」。オーランドへ来て日本とたいして違いのない寒い日が続いていたから、せめてマイアミくらいはと思っていたのに、非道にもマイアミは異例の寒波が到来で、ジャケット1枚では寒くて外に立っていられない。これじゃー鹿児島の方がまだ暖かいぜ、詐欺だぜ、金返せと心の中で憤る。でも招待してくれた人に悪いから、顔には鳥肌しか出さない。

 マイアミでも「エンタープライズ・フロリダ」の事務所を見学した後、大学の中にある研究施設だとかマイアミ市だとかマイアミ・ビーチ市(マイアミとマイアミ・ビーチは違う、のです)とかを走り回る。昼食の日本食は「マツリ」とかゆー店で取ったけど、ここは本当に美味しい日本食で、聞けばマイアミでも1、2を争う店だとか。ロンゲーでモリタカとウワサされた歌手兼俳優がマイアミでレコーディングした時にも、この店から毎回食事を届けたのだとか。

 もっとも届けたのは「店に来られて横柄な態度をとられたら他の人に迷惑だったから」って説もあって、実際この歌手兼俳優、レコーディング中にはストレッチ・リムジンを3台仕立てて、乗る人もいないのにただいっしょに走らせて、自分を誇示してたのだとか。スタローンだとかマドンナだとかいった地球的なスーパースターが平気で店で飯喰ってジョギングしてるフロリダで、いったい日本人なにやってんだかと呆れるやら憤るやら。

 夜は有名な「ジョンストンクラブ」でカニの爪をポン酢醤油で食べる。大江健三郎も大喜びで食べたとゆーカニの爪は本当はマスタード・ソースのよーなもので食べるんだけど、マイアミ在住の日本人のまとめ役とかゆー人の尽力で、1番美味しい食べ方が出来るよーになったのだとか。3本も食べればお腹いっぱいの爪を5本食べた後、クリームたっぷりのデザートのお菓子を頬張って外で。入り口には入場を待ちわびる人たちが行列を作っていて、受け付けの人にチップを握らせて少しでも早く座らせてもらおーと頑張ってた。袖の下じゅうよう。

 泊まれば楽なのに翌日のスケジュールもいっぱいでオーランドへ戻らなくてはならず、空港へ向かう。夜のマイアミ・ビーチは赤い灯青い灯が輝く官能的な街となって襟足を引っ張るも、スポンサーの以降には逆らえず、プロペラ飛行機に乗って1時間かけてオーランドへ戻る。宿に帰るともー午後の11時。疲れはてて寝る。


【1月16日】 やっぱり午前8時に出て、今回のツアーの主催者であるところの「エンタープライズ・フロリダ」の事務所に行って一番偉いアンダーソンとゆー人と会う。1人1人に名刺を配って歩く態度は日本慣れしたセールスマンってとこだけど、それも道理でこのアンダーソン、これまでに100回以上も日本に行ったことがあるんだとか。でもお土産によこした「ナショナル・ジオグラフィック」の写真集は重たくて迷惑。もしかして日本に訪問するたびに重くて壊れやすい博多人形とかをプレゼントされた復讐か。

 大学の側にある何かの研究所に行っていかにも博士って風体のおっさんから戦車のシミュレーターを見せてもらい、食事した後にまた会社回り。バーコードシステムを作ってる「データマックス」とかデータストレージを作ってる「エヌスター」とかに行ってエラい人たちの自慢話を聞かされる。きっとそれなりにすっげー技術なんだろーけど、ほかにもどこかの会社で作っていそーな品物だし、だったらわざわざフロリダまで来て見るよーな会社じゃねーって気にとらわれる。

 夜もヨコ飯の時間で外国人に囲まれて謎のスマイル(つまりはひきつり笑い)を浮かべながら重くなった胃に優しいスープとワニの空揚げを食べる。ワニは魚とニワトリの中間のよーな味でなかなかグッド。でも日本で食べたいとは思わないね。ましてや分厚いステーキなんてねえ。店を出てからそろそろ増えて来た(お土産じゃなくって資料で、だよ)荷物を入れるための袋を買って、ホテルへ帰ってすぐに寝る。夜の街へくりだそーなんて元気はもはやなく、なのに明日は4時起きだとあって無理矢理頭を睡眠モードへと切り替える。ぐーっ。


【1月15日】 ちょっと遅めの(といっても普段から考えられないくらい早朝の)午前8時にホテルを出てバスで「インターナショナル・デザイナーズ・アウトレット」へ。取材なんだけど買い物とゆー謎に満ちた時間を過ごし、「101匹わんちゃん」の形をした洗濯物入れを9ドルで買って外に出る。

 有名ブランドの店が数千台は楽に止まれる駐車場をぐるりと囲んで立っている地区で、歩くのも面倒なのでそこからバスにのって10秒の場所にある「サックス・フィフス・アベニュー」のアウトレットへ移動。「アルマーニ」の薄手のニットを60ドルくらいで買う。他に行ったジャーナリストのみなさんは最初の店で布団に枕に毛布にタオルを買い込み、次の店でワンピースにジャケットにスカートに靴を買い込むとゆー飛ばしよー。こんなに飛ばして最後はスーツケースに入らないよと思うけど、これって単に金もっていかなかった貧乏記者のひがみ、かな。

 幕張メッセの倍はあろーかとゆー「コンベンション・センター」やら同行しているジャーナリストのうち観光チームが泊まっている「ウォルト・ディズニー・ワールド」の敷地内にある豪華絢爛な「ヒルトンホテル」やら「ディズニー・ワールド」の隣、といっても東京でいえば隣区ぐらいにスケール感のある地域に建設中のディズニー・コンセプトに彩られた新しい街なんかを見学。とくに新しい街「セレブレーション」は、アメリカにしては庭のない戸建て住宅がびっちり並んだ「日本的」新興住宅地って感じがした。値段も安いんだよね。もっとも1軒がたいてー2ベッドルーム、2バスルームなんて作りだから、日本だったら軽く1億円はするだろーね。

 見学の後、日本食レストランで食事。ニューヨークで評判を取り、オーランドへ来てからもアラスカまでネタを捜しに行くとゆーシェフ、じゃない板長のいるレストランだと聞いていたのに、しなびて温くなった寿司ネタとカチカチに固まったシャリは、回転寿司の方がまだましってな出来で、さんざんアメリカ食をバカにした挙げ句に登場した肝心の日本食がこれではと、はずかしー思いにとらわれる。しっかり全部食べたけどね。


【1月14日】 前夜、オーランドに到着して、午後10時に入ったホテルを午前7時半には出発しなくてはならず、スーツケースを開けるのも早々に寝間着に着替えて寝る。「ウォルト・ディズニー・ワールド」や「ユニヴァーサルスタジオ」なんかがある観光の街なのに、泊まった「ホリデイイン」は高速道路の脇にある場末のビジネスホテルのよーだった。しかし広さだけは自分の住んでいるアパートよりあって腹が立つ。キングサイズのベッドに独り寝は寂しいが、外国人を毛布代わりに誘う甲斐性なんてないし、これもまあ仕方がない。

 フロリダ東部地区経済開発委員会を周りオーランド市長と面談し半導体屋を訪問してから池の側のレストランで昼食。スパゲッティは素麺のよーな細い面を茹ですぎに茹で挙げたしなしなの出来で、それにしては量だけは異様に多くて食べきれない。これから毎食こんな量のご飯を食べなきゃならんのかと思うと胃がどんどん重くなる。胃腸薬は持ってこなかったんだよね。

 オーランド国際空港の冷凍倉庫を見てちょっとお買いもの。「ららポート」を10倍くらいにでっかくした感じの「フロリダモール」に行ってまずはフットロッカーで「NIKE」のシューズを漁るも「エア・ジョーダン」も「エアMAX」も買い尽くされた後のよーで影も形もない。店員が「28センチあるよ」なんて日本語で話しかけてくるところを見ると、流石日本人ここまできて「NIKE」漁りに邁進してるかと自分を棚に上げて感心する。

 何も買わずにビデオ屋へ。カートゥーンの棚で「ジャパニメーション」の呼び名も高い(と日本人だけが思っている)日本製アニメのビデオを探すが1軒目にはまるでなし。2軒でようやく大量の日本製アニメを見つけて、その中から「新世紀エヴァンゲリオン」の英語版と「攻殻機動隊」の英語版を買って帰る。「エヴァ」は25ドル、「攻殻」は20ドルくらいだったかな。とにかく安い。とゆーか日本が高すぎるってことですね。もっとも店内にいた15分くらいの間に、同じ棚をのぞいていた外国人(とゆーかこっちでは内国人)は1人もおらず、なんだ「ジャパニメーション」なんて口だけかと憤るも、なにせここオーランドはディズニーの本場だから仕方ないかもと自分を慰めて外に出る。しかし外国まで来て何買ってんだかなー。


【1月13日】 早起きして出張の準備。実は22日までフロリダのオーランドに取材とゆー名の視察旅行に出かけることになっていて、その間はこのページも更新が止まることになる。いちおー会社の「PC98ノート」を持って行くんだけど、慣れない海外からの送信に使い慣れないウィンドウズ・マシンとあって、ホームページの更新をするだけの知力・体力がない。これまでほとんど1日も休まず、正月だって風邪ひきながらも更新し続けたのに、1周年を前にしてのこのブランクは残念だけど、ちょっと早めの1周年記念お休みを頂くってことで、皆様にはご勘弁願いたい。現地の経済状況・政治状況の報告は帰ってから、っても遊んでくんだけどね、ほとんどは。

 しかしテレビ朝日で朝から放送している「やじうまワイド」で、だいたい7時半頃に流れる「どパルコ」のCMってヘン。「ミラパルコ」と「オプティパルコ」を3方から取り囲んで、おへそを出したミニスカートの女の子たち30人くらいが、「ぱっぱらぱっぱぱー、ぱっぱらみらぱるこ」と歌いながら、踏み台昇降運動を繰り返すって絵柄が妙に気になる、とゆーか気に入る。と同時にCMを作ったクリエーティブの人とかプランナーの人が、クライアントのダイハツにどーゆープレゼンしたのかにも興味がある。「女の子30人を用意してミニスカートを履かせます」とクリエーティブ。「ふんふんそれで」とクライアント。「踏み台昇降運動をさせるんです。歌いながら」。「ぎゃふん」。となったからどーかは知らないけれど、とにかく印象に残るCMであることには違いがない。

 二階堂黎人さんの「バラ迷宮」(講談社ノベルズ、780円)を読了。端正な短編集でそれぞれにそれなりに探偵の謎解き場面のカッコ良さを味わえる。なにせ探偵が絶世の美女にしてキッツイ性格の二階堂蘭子だ。さぞや高ビーに事件を解決しては後に波紋を残して去っていくんだろーと思ったら、割と相手に配慮したりと結構細やかなところを見せている。これで今月の講談社ノベルズ日本人作家大特集で、残すは西澤保彦さんの「死者は黄泉が得る」(同)だけとなった。でも出張に行っちゃうから、大きくて重たいノベルズは持ってけないず、その間読むことができない。たぶん1番面白い作品だっただけに、後に残したのはちょっと残念。

 出張中に背中までのポニーテールを振り乱して歩くのも熱そーなので、家にあったはさみで半分くらいまでちょんぎる。英断だね。そんでもまだ背中の肩胛骨あたりまでは延びてるんけど、前の無造作に延ばしていた時よりは見栄えはよくなった。前はどんどんと無くなっていくのに、後ろはどんどんと増えるなんんて、頭の構造って不思議などと、お茶目をかましていられるほどには精神的・物理的な余裕はなく、このままてっぺんをツルンとさせて丁髷でも結うか、いっそスキンヘッドにしてやろーかなどど、日々鏡を見ながら溜息を付く。せっかくフロリダに行くんだから、ジャマイカっぽくドレッドにして帰って来てやろーか。会社に行ってそのまま荷物ごと放り出せるってのがオチだけどね。

 皆様しばしの休筆をお許し下さい。続きは22日から。ではまたいずれ。


【1月12日】 坂田靖子さんの「叔父様は死の迷惑」(ハヤカワ文庫JA、440円)を読む。昔どっかで読んだ話だなーと思って初出を見ると、86年から87年にかけて角川書店の少女漫画誌「月刊ASUKA」にとびとびで連載されていた作品だった。「月刊ASUKA」は創刊から4年ほど買い続けていて、新興誌だったにも関わらず、どーやって集めたか高口里純さんの「花のあすか組」だとか、谷地恵美子さんの「ピー夏がいっぱい」だとか、萩尾望都さんの「海のアリア」だとかいった、とっても有名な漫画家たちの印象に残る作品が、何本も連載されていたことを覚えている。

 坂田靖子さんの「叔父様は死の迷惑」も記憶にあって、その頃から不思議な線を描く人だなーと思っていたけど、最近の「伊平次とわらわ」なんか見ると、線がもっともっと単純化されて、それでいて趣のある漫画になっていて、いくらベテランの漫画家さんでも、日々進歩なんだなーと感心する。あとがきを読んでこのタイトルが、実は「秩父路は死の迷路」を見間違えた時に浮かんだものだと初めて知った。「叔父様」と「秩父路」。うーんなるほど確かに似ている。しかし誰の作品なんだろー「秩父路は死の迷路」って。

 休みなのに会社に言って原稿書き。長めの出張が控えていて、その間の出稿分を書き溜めて置いていかなくちゃいけないから休日出勤も仕方がない。「ニューリリース」とゆーコーナー向けに、身内のポニーキャニオンが1月から販売を始めた岩井俊二さんの「PICNIC」のビデオの紹介を、3月発売の「スワロウテイル」と絡めて書いたり、CICビクタービデオから来月末に発売になる、去年公開の洋画ではベスト10には入る作品「ツイスター」のビデオの紹介だとかを書いて送っておく。

 ほかには大昔にフジテレビで放映されたテレビドラマ版「男はつらいよ」が、初めてビデオになって2月にフジテレビ映像企画から発売されるとゆー話とか。「寅さん」はもちろん渥美清さんだけど、さくらは倍賞千恵子さんじゃなくって長山藍子さんが演じている。おいちゃんおばちゃん御隠居はよく知らない。しかし何でもテレビ局には、もうマスターが残っていなくって、ビデオも全話揃いとはいかなかったよーで、最初に「寅さん」が登場した第1話と、奄美大島で死んでしまう最終話をカップリングしたものになったとか。モノクロだし、10,000円近い値段だけど、でも売れるんだろーね、旬だから。

 出張中に読もーと、山口雅也さんの「生ける屍の死」と中井英夫さんの「虚無への供物」を購入する。根性がいるから普段はなかなか読めない本だけど、何時間も飛行機に乗らなくちゃいけない時には、時間つぶしには最高のよーな気がする。前に飛行機に乗った時には、綾辻行人さんの「霧越邸事件」を買ってあまりの面白さに時間を忘れて引き込まれ、帰りはダン・シモンズの「サマー・オブ・ナイト」を上巻から読み始めて、到着しても下巻をまだ読み切れていなかった。「生ける屍」と「虚無」では、読んでいる途中であまりの難解さに投げ出さないとも限らないから、もしかしたら選択を誤ったのかもしれないなー。やっぱペリー・ローダンを20冊くらいまとめて持っていくか。持ってないけど。


【1月11日】 ベッドの中で「ジョーカー」を読んでいると、あまりの重たさに腕が疲れて来たので、浮気して軽めで物理的にも軽い本を読む。集英社のコバルト文庫から出たばかりの荻野目悠樹さんの「六人の兇王子 ヴァイサルの血」とゆー本。新井素子さんや大和真也さんを読んで以降、自分ではついぞ買ったことのないコバルト文庫だけど、昔読んで結構のめり込んだジャック・ヴァンスの「魔王子」シリーズに似たタイトルに惹かれて、ついつい手に取ってしまった。

 裏切り者の「元・兇王子」が、それぞれに違う能力を持った「兇王子」たちと闘い倒していくストーリーは、「ドラゴンボール」や「ジョジョの奇妙な冒険」といったジャンプ系コミックお得意の設定だけど、政治に翻弄される女性の悲しみとか、悪と正義の間でどちらが真実の自分なのか、つまりは人間の本性は悪なのか正義なのかを問いかけるメッセージが作品から感じられて、退屈せずに読み通すことができた。「元」を除く5人の「兇王子」を1人倒してあと4人。つまりはあと4巻は出るってことで、さあ他の「兇王子」の能力やいかにと、楽しんで先を待てそーな気がする。

 能力合戦といえば流石に清涼院流水、デビュー作の「コズミック」で、奇妙な推理能力を持った探偵達を大勢登場させてファンをうれしがらせた、あるいはマニアを激怒させただけあって、新作の「ジョーカー」にもやっぱりたくさんの探偵が登場して、それぞれのモードを駆使して謎に挑んで懸命になる。でも前作「コズミック」ほどの衝撃がないのは、登場する探偵たちの多くが「コズミック」と重なっていて、その意外な能力に驚嘆しながらページをめくる楽しみが減ってしまっていることと、清涼院流水さんがアナグラムとゆーか言葉遊びを使って作品を書くとゆーことが解っていて、いくら突飛な解決でも前ほどの驚きが感じられなかったことがあるからだろー。

 あとがきでは次はJDCのシリーズを書かないとあったから、新しい探偵の新しい能力に驚嘆させられる楽しみがない変わりに、探偵たちの超能力合戦を「あーまたか」とうんざりしながら読まなくて済むってことになる。驚嘆を取るか呆然を取るかは判断の難しいところだけど、作家本人がどちらでもなく別のモードを発揮すると言ってるんだから、とりあえずは繰り出す技のインパクトを見極めたい。でもいつでんるだろー、次回作は。

 NHK教育テレビで小林恭二さんがホストを務めた「未来潮流」を見る。マルチメディアやインターネットが文学を、言葉をどう変えるかとゆーテーマで青野聰さん、多田道太郎さん、岡井隆さんの3人と対話を重ねていくとゆー内容で、出てきた結論はおーむね文学は変わらないとゆーものだった。特に岡井さんの発言で、俳句とか短歌って形式は相当にしぶといから、電子メディアが出て横書きは常態化しても、なかなか滅びないと言っていたことが印象に残った。

 個人的には、縦書きだろーが横書きだろーが、そこに書かれてある内容がすべてであって、価値に一切の差はないし、縦書きで書こーが横書きで書こーが文体とか内容とかに変化は出ないと思ってる。新聞の原稿を書くときはワープロを縦書きにして字数行数を数えながら書いてるし、こーいった日記とか、読書感想文とかは横書きで書いているけど、パソコンに向かう時の気構えが変わるとかいった、そーゆーことは全然ない。しかし小林恭二さんが「横書きの文章は信用できない」と言っていたことにも、うーん考えさせられるなーと思い、なにが彼をしてそう言わしめているのか気になった。書いている文章への思い入れの度合いの違いか、単なる視角的な差異か、それとももっと根元的なものか。今度ゆっくり考えてみよー。


【1月10日】 電通の新年会。新聞記者らを対象にした懇親会じゃなく、取引先企業やマスコミの経営者らを招いての本格的な賀詞交換会で、大学を出てからまだ10年も経っていない洟垂れ記者には雲の上の存在ともいえる、正論で鳴る新聞社の社長とかお台場放送局の社長とかが会場を闊歩してた。ほかにも新聞テレビ雑誌各社のエライ人とか、三菱マテリアルの永野健さんに日商岩井の速水優さんといった財界の重鎮がたくさんたくさん集まっていて、洟垂れ記者は出る幕もなくこそこそと、会場の隅っこでオレンジジュースを飲んでいた。

 食べ物のコーナーは早くから人が集まって手出し無用の大混乱。仕方がないのであまり人気のなかったローストビーフとカレーライスとスパゲッティーのコーナーに行って、それだけを皿に盛ってもらってかき込む。昼食終わり。広報の人に上のフロアでいろいろと出店が出ているからといってのぞくと、本当に縁日のよーなバナナの叩き売りとか射的とか輪投げとかの出店が並んでいて、オジサンたちが嬉しそーにそれらのコーナーで遊んでいた。似顔絵のコーナーと占いのコーナーは人気があって受け付け終了。しかし会社ではエライ人たちが占ってもらうことって、もしかして会社の経営方針かしら?

 それから話題のプリクラのコーナーも。モデルクラブからの仕込みなのか社員の扮装なのか、ミニスカートにルーズソックス姿の女の子が5人ばかり、仕切られたブースの中に入ってオジサンたちを手招きし、一緒にプリクラしてくれるって出し物で、折角なので撮ってもらおーかと思った時にはすでに遅し、とても渋谷でプリクラできないよーなオジサンたちが列を作って、洟垂れ記者の割り込むすきがなかった。しかし一見女子高生の女の子が、丁寧に礼なんかしてオジサンたちをプリクラの前に迎え入れている光景はなんだかヘン。こんなに親切な女子高生なんて今日びいねーよなー。少なくとも渋谷とかのプリクラの前には。

 筒井康隆さんへのインタビュー「断筆解禁宣言」が掲載された「文藝春秋」を買う。タイムリーな企画はさすがに覚え書きを交わした出版社だけのことはある。巻頭とゆーのも凄いが、実際これまで1度も買ったことのない「文藝春秋」を、それもキオスクで買ってしまった僕のよーな人間も大勢いると思うから、バリューの判断は間違っていないと思う。それだけ筒井康隆さんとゆー人の人気が高く、世間の関心も高かったとゆーことですね。しかしインタビューで「世界初の作家5人によるサーバーの発足という一番重要なことをきちんと書いたのは、産経新聞だけしたね」というインタビュアーの発言には悲しくて涙が出る。日本工業新聞だってちゃんと書いたのにさ。スペースだって1番大きかったよ。マイナーな新聞ってのはこーゆー時にツライ。

 ラスベガス発とゆーニュース記事の日本語訳がファックスで届き、内容を読んで流石アメリカのインターネットはすごいと嘆息する。インターネット・エンターテインメント・グループ社とゆー会社が、世界発の女性ばかりのインタラクティブ・ポルノ・ライブショーをインターネット上で提供するとゆー内容のリリースで、5人のトリプルXのアダルト女優が出演してるんだとか。早速のぞこーと思って日付を見ると、4日付けのリリースで「来週の水曜日と木曜日」に実演すると書かれてあって、つまりはもう終わってしまったとゆーことだった。うーん、残念。

 リリースには「インターネットの視聴者は(中略)この性の祭典に積極的に参加し、あるいは通常の電話からアクションに注文をつけることもできる。(中略)自分の正体を明かさずにライブショーに指図できるサイバー・ポルノとしては世界最初であろう」と書かれてある。でも先月出た「WIRED」には、インターネットでアレしてるところを生中継してるって番組の紹介があったから、中身的にはそっちの方がが喜ばれそー。でも雑誌にはアドレスが書いてなかったし、ヘルパー・アプリもたくさんいりそーなのでまだ見てない。実際ほんとにどっちが凄いんだろーか。

 清涼院流水さんの「ジョーカー」(講談社ノベルズ)を200ページくらいまで読むが、まだよーやく4分の1で、終わりどころか始まりすらもまだ見えない。ちょっくら浮気して西澤保彦さんと二階堂黎人さんの新刊に行きたいんだけど、これでなかなか清涼院、浮気させないだけのストーリーをつむぎ出すうまさがあって、しばらくはこっちにかかりっ切りになりそー。でも半分くらいでつまらなくなったぶん投げるかもしんない。その時にはあまりの重量に負けて、壁に大きな穴があくことだろー。さて日本で何個の穴が壁にあくか。


【1月9日】 筒井康隆さんは載っていないけど河出書房新社から出ている文芸誌「文藝」春号を買う。漫画チックなイラストの表紙にピンクの題字、緑やらオレンジやら紫やらの色を使った特集の案内と、まるで老舗の文芸誌に見えない。そもそも買った理由がテーマコラムとして「新世紀エヴァンゲリオン」が取り上げられていたからで、「クイックジャパン」が特集すれば「文藝」までもが特集する、国民的アニメになったのかと半ば歓喜にむせび半ば呆れる。テーマコラムとは複数のライターが同じ「新世紀エヴァンゲリオン」のテーマでエッセイを書くとゆー企画で、今回のライターは滝本誠さん、田崎英明さん、篠原一さん、東浩紀さん、赤坂真理さんの5人。いわゆるヲタク系の人じゃないけど、ちゃんとそれなりに「エヴァ」への思い入れを語ってくれている。

 しかし今回の「文藝」春号、ほかにも「不思議の国のアリス」をカバーするってことで古屋兎丸さんやロビン西さん、村上隆さんたちに漫画やイラストを書かせてみたり、「電波系サイコロジー」というテーマで村崎百郎さんと香山リカさんの対談を載せてみたりと、さっき比較の対象として挙げた「クイックジャパン」とバッティングするよーな企画が盛りだくさんに溢れていて、ポップに走って自爆した「海燕」の後を継ぎそうな、そんな勢いとゆーか開き直りが見られて面白い。「ブックレビュー」では、トップに堂々と自社で刊行している「文藝賞」優秀作の2作、「フレア」と「ボディ・レンタル」を堂々と並べ賛辞を贈っているし。今回発表になってる「第3回蓮如賞」で優秀作となった「薔薇の鬼ごっこ」を書いた末永直海さんは、たしか小林よしのりさんのところにいた「ピャーポ」さんて呼ばれてた人だったかな。

 雑誌を読みながら東映会館へ。「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生」の公開を前にテレビ版を復習させてあげましょーってゆー主旨の試写会を見せてもらう。24話までを3部に分けて4話から5話づつピックアップして見せてくれる内容で、僕は19話と22話から24話までを上映する第3部を見せてもらった。5月のSFセミナーで庵野秀明監督が最後の死力を振り絞って作ったとか行っていた19話は、ウワサどーりに凄い動き凄いアングル凄いストーリーの話だった。いやストーリーは知ってたんだけど、実際に動いているのを見るのはこれが初めてってことで。22話から24話まではちゃんとテレビで絵付きで見たから懐かしかった。渚カヲルくんてやっぱ人気出そーな顔してるねー。「最後のシ者」が入ったLDとビデオの発売はまだちょっとだけ先だから、ビデオ録画を逃した身としてはこーゆーイベントは有り難い。明日もまたやるとか。1部も見て来よーかなー。

 開場を待っている間にピーアールの人と話していて、劇場版間に合いそーですか、脚本は出来たんですかと聞くと顔が曇った。きっと厳しい進行状況なんだろー。試写会の案内にも映画が完成するのはギリギリになりそーだって書いてあったくらいだし。映画でもうひと山あてよーと懸命なキングレコードと角川書店からせっつかれて、監督の庵野さんがピリピリしているとかいないとかで、あんまり突っついてへそでも曲げられた日には、3月の公開どころか永遠に続編が作られない可能性だってある。チケット付きCDに入っていた「音だけアニメ」になる可能性もちょっとだけ出てきたぞ。嬉しーなー。声でやってる「ミーン、ミン、ミン、ミン、ミン、ミン」ってSEが大好きなんですよ、僕は。いっそ武道館とか東京ドームで、観客を前にナマで「音だけアニメ」を実演して見せるってのはどーですか、東映さん。チケット1万円でも客は集まると思うよ。4万人くらいなら。

 日販から届いた2月の新刊コミック情報をチェック。マーガレットコミックスから吉野朔実さんの「恋愛的瞬間」の第2巻、新書館から西炯子さんの「三番町萩原屋の美人」が出る。見ていて気になったのが田中圭一さんの「ドクター秩父山だっ!!」。昔読んで大笑いして死にそーになったあの「秩父山」がまた読めるのかと思うと、早く2月が来ないかなと気持ちがせき立てられる。再刊なのか続編なのかは解らないけど、百足の青年とかエロ本大好きなカエル(名前忘れた)とかちゃんと出てるのかな。ほかには「エヴァ」に続くかの話題作「機動戦艦ナデシコ」のコミック版「遊撃宇宙艦ナデシコ」1巻が出るみたい。文庫では栗本薫さんの「グインサーガ」の55巻にコードウェイナー・スミスの人類補完機構シリーズ「第81Q戦争」が刊行。いったいいつ以来なんだスミスの新刊が出るのは。もしかして近日公開の「人類補完機構」映画との混同を狙ったのか。だとしたら早川書房も結構お茶目。


【1月8日】 1日遅れで文藝春秋の「文学界」を買おーと本屋をのぞくが売り切れているよーで見つからない。新潮社の「新潮」も売り切れていて、筒井康隆さんの恐るべき人気は、新人賞の応募作品数が売り上げ部数よりも多いと言われるほどに売れ行きが低迷している文芸誌の世界に、台風どころか大暴風を巻き起こしていることを知る。こーゆー事態を目の当たりにすると、他の出版社でも早急に覚え書きを交わして、新作の執筆をお願いするか、書き溜めていた作品の掲載を求めるかしたいと思っているだろーけど、秘密の会合で朗読された「エンガッツォ指令塔」は、食事時にはちょっと効きたくない表現が満載だったから、どこも買うのにきっと二の足を踏むだろーね。しかし覚え書きを交わしたのが雑誌社ばかりで、小説を連載したりコラムを依頼する新聞社が今後どうするのか、覚え書きを交わして筒井さんの小説なりコラムなりを掲載するのかが見えないのが寂しい。まあうちの新聞ではギャラが安すぎて依頼なんて出来ないから安心だけど。

 見つからないのは講談社ノベルズの新刊も同じで、丸善や紀伊国屋書店に行ってもまだ店頭に並んでいない。仕方がないので早出しが得意の神保町の本屋に行ってあちこちをうろうろ。ついに書泉グランデで森博嗣さんの「詩的私的ジャック」、二階堂黎人さんの「バラ迷宮」、西澤保彦さんの「死者は黄泉が得る」、そして煉瓦も真っ青の分厚さを誇る清涼院流水さんの「ジョーカー」を購入する。何とゆー重たさだろーかと、渡された袋をもらって絶句するが、読み始めれば面白さに押されてまたたく間に次々と読了に持ち込み、週内どころか明後日ごろにはきっと4冊とも読み終えているんだろーなー。こんなペースで本を読んでちゃー、やっぱりお金は貯まらないね。

 面白そーな本と言えば、デイヴィッド・トーマスとゆー人の「彼が彼女になったわけ」(角川書店)も相当に面白そーな設定。親不知の手術に病院に行った男性が、手違いで性転換手術を施されて切られて(どこを?)膨らまされて(だからどこをだ?)しまったとゆーストーリーで、これがミステリーなら北川歩実さんの「僕を殺した彼女」、SFだったら小松左京さんの「男を探せ」になるところを、軽妙な語り口によってユーモラスでちょっと哀しい、実は社会的なメッセージも強く含まれたエンターテインメントに仕上げている。強力無比な4冊が控えているだけに読了はちょっと先になりそー。

 渋谷の円山町にある「クラブアジア」とかゆースポットで記者発表会。広告代理店の大広がプロデュースするマルチメディア学校の「デジタルメディアスクール」を4月に開校するとゆー内容で、校長先生を務めるデジタル・ガレージの伊藤穣一社長が出席して喋った。動くジョーイを見るのはこれが2回目か3回目。特別講師の1人として名前を連ねているチバレイこと千葉麗子さんも呼び出されて壇上に上って何か喋っていた。特別講師のメンバーは他に武邑光裕さん、高城剛さん、浜野保樹さん、村井純さんとまーいかにもな面々で、ホントにこいつらが講義してくれるんだろーなーと、疑問がむくむくと湧いて来る。

 どっかの専門学校の講師に名前を連ねているとゆーチバレイが、壇上で「パンフレットに名前とか載せているのに、実際に学校に講義に来いって話がない」と、撒き餌のよーな扱いに不満を表明していたから、こっちの学校ではちゃんと講義するのかと思いきや、ふだんは技術のある人たちがスキルを教えて、月に1回くらいの面談とか、特別講演会とかの時だけ有名でエライ人たちが現れることになるらしー。学生も100人くらい取るそーで、他にも山ほど学校ができて講師不足が叫ばれている昨今、これだけの学生を教えられるだけの人材を、果たして集められるのかとゆー疑問が付きまとって離れない。

 もっとも運営者側はそーした非難が起こることは先刻ご承知のよーで、エライ講師の面々は進路相談にも乗るし、いっしょに仕事なんかして学生とのコミュニケーションを取るそーな。んでもってただ言われた事をやるだけの技術者じゃない、自分で何かを作ろーと意欲に燃えたプロデューサーとかクリエーターとかを育てたいんだそーな。その意気や良し、その理念や良し。でも意欲に燃えてる人って、学校なんか行ってエライ人とコネ作って仕事にあり付こうって考える前に、自分ひとりででコツコツ何かを作ってるんじゃなかろーか。

 NHKが「ヴァーチャルアイドル」についての特集。対人関係に消極的だとか、生身の人間に感心を抱けないとかいった理由を識者に語らせ、ゲームのキャラクターに惹かれている男共の特殊性を描き出そーとする、ステレオタイプな構成だったのが気に入らないが、番組に登場した「ヴァーチャルアイドル」に熱中する男共の容姿や服装を見ていると、こいつらと一緒にされたくねーやと思えてきて、おもわず識者の常識的意見に賛同してみたくなる。

 「ヴァーチャルアイドル」ってゆーと、やっぱり登場するのが「藤崎詩織」と「伊達杏子 DK96」。でもこの2人を双璧として並べるのにはちょっと疑問がある。ゲームのキャラクターとして人々から感情移入されて来た実績のある「藤崎詩織」が人気になるのは、アニメやコミック、昔だったら小説のキャラクターにファンが付くのと同じ文脈。でも作り手側が性格とか趣味とか背景とかを全部作り上げてしまい、さあおまえら感情移入しろって感じで突如現れた「伊達杏子 DK96」に、どーして魅力を感じることが出来よーか。「自分たちが作っている、生み出しているという意識を持たせないと」とゆー識者の指摘には、正直素直に賛同したい。


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