縮刷版96年5月下旬号


【5月31日】 朝から浅草。バンダイの山科誠社長が出席する会見に出るために本社に行く。部屋に入ると、机の上に「ピピン」が1台並べられていて、どこかで見たことのある人が一生懸命セッティングをしていた。つるんとした顔に大きなメガネをかけたこの人は、バンダイにあって「ピピン」を取り仕切る鵜之澤伸氏。期待を込めて送り出したまではよかったが、その後パッとした話を聞かず、マボロシのマシンへの道を歩むかといった危惧までささやかれていた「ピピン」を救わんがために、先頭に立ってピーアールに努めるのであった。
 会見では、いよいよ店頭販売にも力を入れる旨が山科社長から伝えられたけど、最大の持ち味であるインターネットへの接続機能を、店頭でデモしてくれている店がほんの数店といった状況を、どう打破していくかが今後の課題。宗教団体の教祖メール伝達システムを「ピピン」で作る、なんてホントかウソか解らない話もあって、毎朝教祖の話を聞くために、テレビ画面を見ながらコントローラーを動かす熱心な信者の姿に、世の中変わったなあと思う日も、そう遠くないよーな気がしてきた。
 帰りがけに1階の車止めの所をふと見ると、「バンダイ・デジタル・エンタテインメント」の会社のマークになっている、飛行船の模型の残骸らしき物体が置かれていた。バンダイがくれた「くまのプーさん」の縫いぐるみや、「ウルトラマン」のおにぎり型なんかをアタッシェケースに押し込んで、都営浅草線で大門へと向かう。松下電器産業の発表に出て、インターネット上のホームページ情報を手軽に効率的に検索するシステムの話を聞く。あらかじめ許可されたホームページの情報を、ロボットが自動的に集めてきて、中身を細大もらさず解析してしまうとゆー点が目新しい。松下の発表会は途中で抜け出し、浜松町のデータベース振興センターで「データベース白書」の発表会に出席。おやつに出てきたケーキを食べコーヒーを飲んで30分ほどで会場を出る。会見の内容はよく覚えていない。ケーキは美味しかった。
 代々木で「NIKE」のサッカーシューズを購入する。明日(6月1日)はいよいよ「S(産経)リーグ」開幕戦で、相手は宿敵「産経社会部」。是が非でも勝たねばならないので、ちょっとばかり道具に張り込むことにした。会場は前回と同じ浦安市営グラウンド、時間は午後の3時から。なんだか暑くなりそうで、おまけに30分ハーフの60分とゆー年寄りにはツライ時間設定となっているから、きっと3、4人は死体になるだろー。

【5月30日】 電通国際情報サービスの決算発表を聞きに中野まで行く。就職活動のシーズンで、それっぽい学生が何人かロビーを歩いている姿をみかける。「電通」とゆー名前がついているから、もしかしたら広告代理店のよーな仕事をできるんじゃないかと思って、学生が受けにくることもあるとか。実際は情報システムの構築やソフト開発が中心の会社だから、勘違いはしないよーに。「博報堂」を「資生堂」とか「亀屋万年堂」とか「ヒサヤ大黒堂」なんかと間違うよーなもんだからね。
 帰りがけに「まんだらけ」の本店をのぞく。平日だとゆーのに店内は本を買いに来る学生や売りに来る学生でいっぱい。コスプレ店員もいっぱいいたけど、誰のコスプレをやっているのかさっぱりわからない。表に店員の投票箱が置いてあったのに、これじゃあ投票できない。「まんだらけ」では坂田靖子さんの懐かしの名作「バジル氏の優雅な午後」(白泉社)と「マイルズ卿ものがたり」(新書館)を購入。奇しくもどちらも、お金持ちの御主人を主人公にした話となった。やっぱりいいなあ、坂田さん。また買いにいこう。
 駅に向かうアーケードの下の薬屋で、ちまたで大流行の「ビオレ毛穴すっきりパック」を買う。会社で試してみよーと思ったけど、同僚もデスクも、アスキーの一件で殺気だってるよーで、その中で鼻パックをに取り出して貼る勇気はなかった。頭縛ってるのに今さら鼻パックぐらい、とゆー人もいるかもしれないけれど、僕にだって分別はあるのです。ちょっと他人とは基準がズレてるよーだけどね。それにしてもアスキーの1件はまさに「薮の中」。双方で言ってることがまるで違うってのは、客観的にはどちらかがウソを付いてることになるのだけれど、主観的にはウソなど言ってないってこともあるからややこしい。それにしてもどーなっちまうんだろー。角川のお家騒動の時みたく、会社作ってもろバッティングする本出して頑張って、そのうち本家がひっくりかえって出戻るなんてことには、まずならないだろーなあ。

【5月29日】 村上春樹さんの「うずまき猫のみつけかた」(新潮社、1800円)を読み継ぐ。安西水丸さんのイラストとは別に、綺麗な写真がたくさん収められていて、こっちをメインにした本を、1冊作ってくれないかなあと思った。本文の方はまあこんなもんかとゆー出来。嫌いじゃないけど感心もしない。
 むしろ彼の文体が、インターネット上の日記文に似ているのにちょっと驚いた。日々の出来事を会った人や読んだ本の話題をおりませながら淡々と描写し、ときどき世の中のことを、斜に構えたスタンスで軽く論評してみせる。断定口調の物言いは巧妙にに避け、「ほんとうはぜんぜん一生懸命生きていなかたりもするんだけどね。まあ、いいけど」とか、「べつに一般受けしなくたっていいわけだけどね」といった言葉を付けて、自分の立場をぼかしてみせる。過去に書いた自分の日記を読み返してみると、これと似た表現を使っている部分が幾つもあるはずだ。もちろん、僕の文体は村上春樹には及びもしないしから、似ているなんていうのはおこがましいんだけどね。まあいけど(ってこれだよ、この言い回し)。
 講談社のマルチメディア事業局をたずねる。某スピリッツのコミックに登場する出版社とそっくりの建物のウラに回り、高速道路をくぐって坂を上ったところに、マルチメディア事業局が入っている建物がある。新潮社でも電子出版関連をやっている部署は、本館にも別館にも入っていなくて、倉庫の脇のプレハブに入っていたから、老舗出版社のマルチメディア部門というのは、よくよく継子あつかいされているみたい。もっとも講談社の方はプレハブなんかじゃなかったけど。元少年マガジン編集長とゆー局長に聞いたのは、「謎はすべて解けた」の金田一少年が登場するプレイステーション向けゲームを作るとゆー話。全米でまだ劇場公開が続いている「攻殻機動隊」のプレステ用ゲームも作っているとかで、金田一少年のファンも草薙素子のファンも、年末は要注意。アニメや漫画のゲームがアニメや漫画ほど面白くないってケースはたくさんあるから、安心するのは早いかもしれないけど、話を聞いている限りでは、けっこう力を入れているよーだったから、アニメになった「攻殻機動隊」に嬉しい誤算を見たように、ゲームになった「攻殻機動隊」にも、同じ様な誤算を見られるかもしれない。期待しています。

【5月28日】 アレックジャパンとゆー会社の会見に出るために新宿に行く。ちょっと時間があったので、紀ノ国屋で本を漁ると出るわ出るわ、欲しい本が山積みになっていて、たちまちのうちに財布が空っぽに近くなる。まずはオタキング岡田斗司夫さんの「オタク学入門」(太田出版、1400円)。「僕たちの洗脳社会」も結構面白かったけど、こちらは「東大オタク文化論ゼミ使用テキスト」と銘打たれているだけあって、図版やケーススタディが豊富で分かりやすく楽しめる。昭和30年代生まれ、40年代生まれ、50年代生まれのオタクの部屋の図解や、日米のパクリの系譜など圧巻。東大出版会も「知の技法」シリーズなんで出さないで、この本を出せばよかったのに。しばらくは東大生協(ってあるのかな)の書籍売り上げベスト1を突っ走るだろー。
 もっとも、「オタク」よりは普遍的なブランドである「村上春樹」の新刊も出たから、こっちがトップを突っ走る可能性もある。新刊は村上朝日堂シリーズの「うずまき猫のみつけかた」(新潮社、1800円)。安西水丸さんの絵はクレヨンか何かで描いてあって、なんとなく沢野ひとしさんの絵にも見える。僕は「夜のくもざる」のような、シンプルで端正の絵の方が好きなんだけどなあ。ほかには加門七海さんの「鬼哭。−続・清明−」(朝日ソノラマ、480円)を買ってカバンはもうパンパンに。新宿3丁目から重いカバンを手に提げて、トコトコと新宿住友ビルまで歩いていく。ちょっとはヤセたかもしれない。
 アレックジャパンの会見は、新しい電子出版物のコンソーシアムを立ち上げるとゆーもの。なんでも透明なバーコードを雑誌記事の上に印刷しておき、これを専用のリーダーでなぞってCD−ROMプレーヤーにデータを転送すると、プレーヤーに入っているCD−ROMから、記事に関連する映像や画像が呼び出されて、テレビ画面に映し出されるのだとか。メニュー画面をクリックしまくって記事を探す今のCD−ROMタイトルは使いにくいから、本をインターフェースにしてしまおうってな発想だと考えていい。カタログショッピングのように、数ある商品見本の写真から、任意の情報だけを選び出し、CD−ROMで画像や映像を確認したいという場合には、効果を発揮するだろう。ただ、カタログの電子化という意味では、確かに電子出版物かもしれないが、CD−ROMのインタラクティブ性とか、ハイパーテキストの柔軟性という観点から見ると、いささか物足りないような気がする。まずはお手並み拝見といったところか。

【5月27日】 取材先でパソコンソフトのデモを見る。デモンストレーターは女性で、ブンヤが珍しいのか恐ろしいのか、つっかえつっかえ話をするので、聞いている方がかえって緊張してしまう。怖くないよ、とって食べやしないよと、いってあげてもいいんだけど、今日はあいにくと眠気が回って仕方がなく、気を利かせて冗談の1つも口にするよーな心の余裕がない。むしろ受け答えがつっけんどんになってしまい、よけい相手を怖がらせる結果になってしまった。考えてみればこんな商売を始めるまでは、生まれて20数年間、ブンヤに会ったことなど1度もなかった。今ではまわりにウジャウジャいるから珍しくもなんともないが、フツーの人にとってブンヤは、立って歩くワニと同じくらい、珍しい生き物なのかもしれない。(単に顔が恐ろしかっただけとゆーこともある)
 「リテレール」といっしょに買った西井一夫さんの「なぜ未だ『プロヴォーク』か」(青弓社、2000円)を読み継ぐ。著者の西井さんは、毎日新聞社がかつて刊行していた写真雑誌「カメラ毎日」の編集者で、写真評論の著書も多い。論評は辛辣で明解。あとがきの1文「作者と作品を相対的に別個のものと見なすこと、それは作品を距離を置いて見ることであるが、そのようなディスタンスが、この国の『作家』にはかなり欠けていて、私の書くものに対しても、文と私は違うという距離感を持たずに、読んでムカツクと絶好という直情的な浅はかな行為に出る」を読むと、自説への自信と覚悟がうかがわれる。僕もこんな、自信にあふれた文章を書いてみたいなーと思うけど、何せ気が弱くて八方美人で貧乏なので、手加減するとゆーかスリ寄るとゆーか、そんな文章ばかり書いている。マイナーは辛い。
 新企画の参考にするために、インターネット関連雑誌を買い込んでバラバラと見比べているが、結局のところどれもたいして違いがない。こうなれば知り合いが出てるとか知り合いが書いてるとか知り合いが作ってるとかいった、属人的な部分で買う雑誌を決めることになってしまう。もっとも僕の場合は、どの雑誌にも属人的な部分で選ぶ要素はあまりないから、あとはフロクが多いとかキレイな女の子が出てるとかこするとバナナの臭いがするとかいった、即物的な部分で選ぶことになるのだが、残念なことにこの部分でも当てはまる要素がない。結局のところ「寄らば大樹」の理にのっとって、あの雑誌を買うことになってしまう。メジャーは強い。

【5月26日】 季刊「リテレール」(メタローグ、1500円)の夏号は「写真集を読む」。「スタジオボイス」なんかでよく写真集の特集をやっているけど、「リテ」の方は元が書評誌だけに活字による評論がたくさん載っていて、活字人間にはありがたい。もちろん図版も普段の「リテ」よりたくさんはいっていて、例えば荒木経惟さんの「センチメンタルな旅」なんかは、私家版として発売されたバージョン(「冬の旅」が付かない方ね)の全ての写真が、飯沢耕太郎さんの解説付きで掲載されている。ほかにはイリナ・イオネスコのインタビューや、松浦寿輝さん、堀江敏之さん、小谷真理さん、松浦理英子さん、鷲田清一さんといった方々の「私の3冊」が載っていて、ああわかるわかる、へーこんな写真集があるんだ、本屋で探してみようかな、といった気にさせてくれる。
 日曜の午後をひとり自宅で過ごすのも、すべては「キリンカップサッカー」を見るため。ストイコビッチ、サビチェビッチ、ユーゴビッチ、その他何人ものなんとかビッチを擁するユーゴスラビア代表が、日本をどれかだけ翻弄するかに興味があったんだけど、試合は意外にも日本が早いパス回しと効果的なサイド攻撃でユーゴ陣にたびたび攻め入る、好試合となった。ユーゴは前半こそ華麗なパスワークと精度の高いロングボールによる攻撃で、日本をピンチに陥れていたけれど、暑さと疲れから後半は日本に幾度もパスをカットされる場面が出現。中央でのパスワークから最後はカズに決められて、結局1対0で負けてしまった。関係ないけど、チリチリした頭と深いソリ込みとムラっ気のある天才サビチェビッチは、サッカー界のマッケンローではないだろーかと思った。
 マーセデス・ラッキーとゆー、シオノギ製薬とは関係のない女性作家のファンタジー「裁きの門」(東京創元社、750円)を読了。しかし週末に買い込んだ本の半分も片づいていない。買っただけで読まない本が増えていて、もったいないなあと思いつつも、そのうち読むかもしれないし、買っとかないと絶版になってしまうかもしれないと思うと、ついつい買ってしまう。捨てられないだけに始末が悪く、はや夏を予感させる熱気のこもった6畳間で、古本屋のような臭いに囲まれて、愉悦を覚えつつ自己嫌悪にさいなまれる。

【5月25日】 二子玉川でフットサルの練習試合。ワンダーエッグで楽しそうにイベントするカップルを横目でみながら、蒸し暑いなかひたすら小さなサッカーボールを追いかける。相手を用意していないので、試合をするには最低でも10人が必要なのに、集合時間を過ぎて集まっているのは、わずかに7人という体たらく。仕方がないので3人対4人とゆー、バスケの3on3かと見間違えるよーな試合をして時間を潰す。そのうち人数がそろって、ようやくフットサルの試合らしきものになったけど、これでは来週、広いグラウンドで行う産経社会部との試合に勝てるはずがない。いまから逃げるわけにもいけないし、うーん困ったなあ。
 困ったといえば、来週の試合は午後3時から午後5時までとなっていて、終わったら速攻で返らないと、千葉テレビで再放送されている「Zガンダム」が見られない。我が家にビデオはないのである。今週の放映分で見た次回予告では、いよいよハマーン・カーンが登場するらしい。LDボックスだって出てるだろーにとの声もあるが、ビデオを持っていないのに、LDを持っているはずもなく、今はただ、来週の土曜日に雨が降って試合が順延になることを、祈るばかりである。体育祭を控えた体育の苦手な子供の心境になってるね。
 給料日が過ぎたので、ここを先途と本ばかり買っている。「SFマガジン」7月号やヒラマツ・ミノルさんの「ヨリが跳ぶ」(講談社、520円)の第5巻やら、飯沢耕太郎さんの「フォトグラファーズ」(作品社)やらなんやらかんやらで、枕元の本の塔が、また1段と高くなった。坂田靖子さんの「伊平次とわらわ」(潮出版社、550円)の第1巻も購入。「リ・シマメ・白」とゆー、何やら暗号めいた言葉は、表紙に使っている紙の種類のことで、生成のよーな色にザラザラした手触りは、ピカピカ光ったコート紙にはない、暖かな雰囲気を醸し出していて、坂田さんの作風に、ピッタリはまってる。

【5月24日】 月末なのでカバーガールを変えてみました。3姉妹の末っ子を取り上げたのは僕がロリコンだからで、ってのは半分冗談で半分ホント。いや、実の所は髪型に特徴があって1番描きやすかっただけなんですが。しかしマウスで描いているので相変わらず似ていない。
 仕事の合間に恵比寿の「スタジオ・エビス・フォトギャラリー」をのぞく。ジャズ・ミュージシャンらしい人物の写真が何10点か展示されていた。葉巻を加えたポートレートや、ギブソンのギターを抱えたポートレート。いったい誰の写真なんだろうと、立てかけてあった案内板を読むと、ジョー・パスとあった。ジャズに詳しくないのでよくは知らないが、オスカー・ピーターソンにいっしょに組みたいといわしめ、エラ・フィッツジェラルドとも共演している、世界的に有名なジャズギタリストだという。撮影したのは宮角孝雄という写真家で、10年前にふとしたきっかけで出会ったジョー・パスを、日本だけでなく米国まで追いかけて、2年前に彼がガンで死去するまで、8000枚に及ぶ写真を撮り続けたのだという。
 たまたま通りかかって入っただけの僕に、会場にいた宮角さんはいろいろと思い出を話してくれた。会場内に設置されたモニターに、フォトCD化されたジョー・パスの写真が映し出されていたのを見て、商品として売っているのかと聞くと、宮角さんが自費で制作したものだという。写真集が出る話もあったが、出版社の都合で流れてしまい、プリントでは展示できる枚数が限られてしまうので、フォトCDにしてみたらしい。せっかくデータをデジタル化したのだから、どこかのCD−ROM会社からCD−ROM写真集として出版してみたら面白いのにと言ったが、つてがないのでどうしたらいいのか解らないらしい。
 ジョー・パスがどれだけ有名なミュージシャンだったのかも、宮角さんの写真がどれだけの評価を受けているのかも知らない僕には、CD−ROM写真集にして発売した場合、どれだけの枚数が売れるのかまったく検討がつかない。ただ少なくとも、ジョー・パスと宮角さんの間に厚い信頼関係が確立されていたのは確かで(ジョー・パスは自分の痛む腹をさらけだして撮らせている)、どの写真にも被写体と撮影者という関係をはるかに超えた、2人の友情が凝縮され、満ち、あふれている。風景を集めたCD−ROM写真集もいいが、こんな暖かみのあるCD−ROM写真集もあったらいいなと思う。どこかで出さないものだろーか。写真展は28日まで開催中。
 恵比寿から日比谷線に乗って茅場町へ。東京証券取引所に行って東映の決算を聞く。ドル箱映画だった「セーラームーン」と「ドラゴンボール」がともに不振をかこっており、今期は「セーラームーン」も「ドラゴンボール」も劇場版は作らないという。代わってアニメ映画は「ゲゲゲの鬼太郎」と「地獄先生ぬーべー」のカップリングになる。年末にはあの「金田一少年の事件簿」も控えている。テレビ版はしばらく続くよーだが、最近の展開を見ている限りでは、ほとんど延命策の弥繕策に過ぎないよーな気がしており、こちらもいつ終わっても不思議じゃない。台風「エヴァ」はあっとゆー間に通り過ぎ、長く停滞していた「セーラームーン前線」も消えようとしている。次に時代を作るのはどんなアニメだろーか。

【5月23日】 大日本印刷の「ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)」に、岩波書店や大日本印刷が開発した辞書サーバーシステム「こととい」の発表会を聞きに行く。「ことえり」じゃあないよ。「EPWING」仕様のCD−ROM辞書・辞典を見るための検索ソフトで、ネットワーク上で複数の端末から利用できるようにしたバージョン。1枚のCD−ROMをサーバー側に入れておけば、端末からみんなでそのCD−ROMを検索・利用できるよーになる。これじゃあ辞典・辞書CD−ROMが売れなくなっちゃうって意見もあるけれど、そこはさすがに抜かりがない。「ネットワークことえり」を使うには、出版社から使用するCD−ROMタイトルごとに、端末台数に応じてライセンスを購入しなくっちゃいけないよーになっている。岩波書店からは安江良介社長が出席。「良識の府」を統べるエライ人だけに、全身からまばゆいオーラを発してた。なんてことは全くなくって、普通のおじさんにしか見えない。もっとも向こうから見れば、こっちは普通じゃない新聞屋ってことになるんだろーね。ちょんまげ結ってるし。
 雑誌を2冊購入。1冊は「小説新潮」の6月号、もう1冊は「WIRED」の7月号。相前後して発売された雑誌の月数が、まるまる1カ月違うってのはどーゆーことなんだろーと悩む。「小説新潮」を買うのは酒見賢一さんの「陋巷に在り」と、河口俊彦さんの「死線の棋譜」と塩田丸男さんの「新・天下のヤジウマ」と関口苑生さんの「書評家の独りごと」を読むのが主な目的。漫画も二階堂正宏さんの「極楽町1丁目」と山科けいすけさんの「マンガしんちょう」を毎号面白く読んでいる。連載1つを除くと、あとは立ち読みでも済ませるようなコラムと漫画ばっかりってのが情けないが、酒見賢一さんの連載は、1冊780円を払っても、単行本が出るより先に読むだけの価値があると思ってる。今号で66回目となる連載は、大きな山場を迎えていて、久しぶりに次号が楽しみな展開になっている。「すべからく」とゆー言い回しを正しく使っている小説を久しぶりに(ほとんど初めて)読んだ。さすが我が同窓って、関係ないか。

【5月22日】 パレスホテルで「ぴあ」がなんかやってるから行かないかと同僚に誘われて、大手町からトコトコとパレスホテルまで出向く。着くと会場は人でいっぱい。前に進めず入り口付近で身動きがとれずにいると、ゲストとして出席していた川淵三郎・Jリーグチェアマンの挨拶が始まった。
 6月1日のワールドカップ2002年開催地決定を控えて、一挙手一投足が注目されている人だけに、スポーツ担当記者が周囲にはべり、テレビカメラも1台(TBSだ)入って、挨拶を注視していた。開口一番「共同開催なんて1言も言ってないぞ!」と大きな声で周囲をけん制、ついで会の趣旨である、新しい施設マネジメントシステム「ベニュー・マネジメント・システム」への賛辞を贈り、最後に「負けてたまるか」と快気炎を上げて壇を降りる。しかし名古屋出身者の僕には、オリンピックの招致に失敗した時に、会場からのテレビ中継を見ていて味わったバツの悪い想いを、もう1度味わうことになりそうな気がしてならない。
 大手町の紀ノ国屋書店で「マンガ日本の経済」とゆー本が山積みになっているのを見る。昔、といっても10年くらい前に大流行した「マンガ日本経済入門」の続編とゆーか新編のよーな位置付けの本だと思うけど、今回は石ノ森章太郎先生じゃなくって、「炎の転校生」「風の戦士ダン」の島本和彦さんが絵を描いている。超シリアスな内容で、女性のキャラクターが結構キレイ。売れるのかなあ。
 本屋では結局、岩波新書の新刊「誤報」(後藤文康、650円)と「現代ユーゴスラヴィア」(柴宜弘、650円)を買う。前者は元朝日新聞記者で、日本新聞協会審査委員などを経て現在はフェリス女学院大学の非常勤講師が書いた本。松本サリン事件に始まって、ロス疑惑、朝日サンゴ事件、伊藤律架空会見記、ワシントンポストの「ジミーの世界」でっちあげ事件といった数々の誤報事件、虚報事件を取り上げて警句を発している。正論だけに反論しにくく、読んでいて胃がチリチリとして来る感覚を味わう。
 後者はユーゴスラヴィアへの興味から買った本。ユーゴ内戦について勉強しようと、これまでにも何冊かの本を読んだが、民族や宗教という、日本人にはなかなか理解できない背景があるため、何冊本を読んでも、扮装がかくも泥沼化し、かつては1つの連邦にまとまっていた国々、肩を並べて住んでいた別々の民族が、血で血を争う抗争に突入したのかが見えてこない。扮装の激化にプロパガンダが果たした役割が大きいという指摘は、メディア業界の端っこに籍を置くものとして、常に心にとめておかねばならないことだが、商業主義的プロパガンダの片棒をかつぐこともないとはいえず、やっぱり読んでいて胃がチリチリとして来る。

【5月21日】 前に白泉社のホームページ開設を記事にした縁で、白線社が27日に創刊する新雑誌の創刊記念イベントを、ホームページと連動して行うとゆー話題を記事にする。新雑誌の名前は「PUTAO(プータオ)」。女の子が興味を持ちそうな身の回りの話題を、漫画家がエッセイ漫画にするとゆー、これまでにないコンセプトの雑誌で、創刊号には、松苗あけみさん、佐々木倫子さん、魔夜峰央さん、美内すずえさんといった、それはもう有名な漫画家さんが原稿を寄せている。ホームページでは今週末に渋谷で開くサイン会で漫画家さんに聞いて欲しいことや、渋谷周辺を探索する、イベントでリポーターに訪ねてもらいたい場所なんかを募集中。抽選でテレホンカードがもらえるとゆーけれど、渋谷には縁が無い身の上ゆえ、注目スポットはとてもじゃないが教えられない。
 ところで、エッセイ漫画がジャンルとして確立してきたのはいつ頃なのだろうと考えてみたのだが、これといった明確な答えが思い浮かばない。薄れつつある記憶をたどると、例えばとり・みきさんの「愛のさかあがり」なんかはエッセイ漫画の大著だったし、最近では水玉蛍之丞さんが、1枚の画面に濃密な絵と文章を収める力技のエッセイ漫画を、あちこちの雑誌に連載してる。永島慎二さんやつげ義春さんの自伝的な漫画は昔からあるけれど、これらはエッセイ漫画とゆーよりは、私小説漫画といった方が、雰囲気からして似つかわしいよーな気がする。それはともかく、漫画家さんが何を考えていて何に興味を持っているのかを知って、自分の行動の参考にしよーと思っている人は少なくないから、「プータオ」にも、そこそこの市場があると思う。
 バンダイの決算発表。「パワーレンジャー」も「セーラームーン」もブームはひと山越えたようで、ちょっと売り上げが伸び悩んでいる。期待の「ピピン」も相当の苦戦を強いられているみたい。話から類推するに、よく見積もって1万5000台くらいしか売れてないんじゃないだろーか。もしかしたらマボロシのマシンとなって、50年後にプレミアムが付いて超高値で取引されてる、なんてことになってるかも。


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