縮刷版96年3月上旬号


【3月10日】 新聞記事には「ストレートニュース」と「傾向記事」がある。美術の展覧会をこうした分類にあてはめると、特定の作家を取り上げた個展は「ストレートニュース」で、テーマによって様々な作家の作品を集めた企画展は「傾向記事」ということになる。ちょっと強引かな。
 「ストレートニュース」の扱いが、該当する事件や企業のバリューによって変わるように、個展も取り上げられる作家の知名度によって、ずいぶんと扱いが違う。さしずめトップ級はゴッホやピカソというところ。今日見た「マーク・ロスコ展」はベタとはいわないまでも2段かよくて3段程度の扱いにしかならない。バリューは知名度とも言い換えられる。これじゃあいけないと思うのだけれど、戦後50年で培われたヘンな固定観念は、なかなか崩せるものではない。
 「傾向記事」は切り口と記者の腕前で、良くも悪くもなる。知名度のない作家ばかりが集まった企画展でも、切り口の新奇さ、斬新さ、記者の役割を担うキュレーターの腕前によって、おおいに客が呼べるものだ。「マーク・ロスコ展」と同じ会場で開催中の「日本の美術−よみがえる1964」は、傾向記事として1級の評価を与えていい企画展だと思う。ただし、往時を懐かしむ人達だけにしか集まらないようでは、展覧会を開いた意味がない。新しい息吹が芽生え始めた時代の雰囲気を、新しい世代の人々に伝えるためにも、もっと若い世代を呼び集めるような、プロモーションが必要だ。
 晩御飯にカレー・スパゲッティーを作るが、ちょっと麺を煮すぎた。張り込んで牛ミンチにしたのに。名古屋名物のタレかけスパゲッティが食べたい。「ミラカンの1半」って具合に頼むんだよ。「カントリー」や「ピカタ」もあるでよ。

【3月9日】 こんな夢を見た。
 パート1「マッターホルンも真っ青という四角錐に近い冬山を、野口五郎がザイルも付けずに上っていくのをテレビで見ている。山の名前がテロップで出ていたけれど、覚えていない」
 パート2「新世紀エヴァンゲリオンの次回予告。これまで動画だったのが、最近は絵コンテ(設定資料、イラストボード)に音声が被るようになっていて、いよいよ切羽詰まってきたか、ガイナックスと思って見ていたら、今回は映像がまったくなくなって、黒い画面にナレーションだけが入って終わった」
 この夢の意味するところはなにか。あまり考えたくないなあ。
 Jリーグ開幕直前の大一番は、富士ゼロックススーパーカップ「横浜日産マリノス名古屋グランパスエイト」。天皇杯で初めてタイトルを獲得したグランパスが、リーグの覇者マリノス相手に、どれだけやれるか注目してたけど、最初のうちはマリノスの縦パス攻撃に翻弄されて、ヤバイ局面がたくさんあった。でも次第にボールの支配率を高め、パスを回し、着実に相手ゴール前に攻め込むいつもながらの戦術が出て来た。少ないチャンスを決めて2得点。後半30分過ぎからのマリノス怒涛の攻撃も、バックスの奮闘とキーパー伊藤のナイスセーブで凌ぎ切った。バテたのか、後半華麗なパス回しがちょっと見られなくなったけど、まあなんとか行きそうだね、今シーズンは。
 セーラームーンは新シリーズの「セーラースターズ」に衣替え。オープニングに登場した、翼の生えたセーラームーンと4人のセーラー戦士が、くるくる回りながら落ちていくシーンを見て、「地球はひとつ、おーガッチャマン」とゆー歌を思い出した。ほたるはだんだん大きくなるみたいだから、来週あたりがいっちゃん食べ頃そそり頃(おぢさん談)、かも。

【3月8日】 ソニー・ミュージックシステムズとゆー会社の発表会に出るために、銀座のソニービルまで出向く。時間があったので、東海銀行の入っているビルの地下の「なごやきしめん亭」でお昼を食べた。東海銀行ときしめんって、実にぴったりな組み合わせじゃあないですか。きっと名古屋の大学を出て東海銀行に入り、銀座の支店に配属された行員が、「うみゃー」とかなんとかいいながら、連日通っているに違いない。だって、いつも込んでるんだもん、この店。
 食べたのは「びっくりきしめん」。本当は「味噌カツきしめん」にしたかったんだけど、ちょっとお腹の調子がね・・・。でも「びっくりきしめん」も吃驚するくらい量が多くて、なかなか減らずに往生した。次は豚汁きしめんにしようっと。
 しつこくカプスの話。神原弥奈子社長(20代後半、才色兼備、委細面談)のところへ、半年ぶりに取材に行ったら、とても忙しそうだった。このカプス、ただの「ホームページ制作」ではなく、「ホームページ番組制作」を目指している会社で、今は伊丹十三監督の最新作「スーパーの女」のホームページを、まるまる作って発信している。聞けば、最初は自腹を切って、エンターテンメント関連のホームページを作り、あちこちに売り込んでいって伝を得て、次の番組の受注やスポンサーの獲得に結びつけて来たとか。若いのに(僕だって若い?けど)、とても立派。
 ここまでして仕事をするのも、企業から受託して紙のチラシの電子版のようなホームページを作っているだけでは、つまらないコンテンツが増えるばかりで、インターネットの発展は望めない、そんな考えが根底にあるからなのだと思う。同じ様にホームページの制作を手掛けているアクセスの代表で、パソコン通信ネット界にその名を知られた松岡裕典氏も、「ホームページの制作がビジネスになるのではない。情報の蓄積と交換がビジネスになる」と言っていた。有意義な情報を、有効な形でネットワーク上に載せてこそ、意味があるのだとすると、無駄な情報を羅列するだけの、我が「リウイチのホームページ」など、まさしくビットの無駄使いかと落ち込むが、忘れっぽいのですぐ立ち直る。ああ、味噌カツが食べたい。

【3月7日】 ぐらぐらぐらって、結構でかかったゆんべの地震。布団の枕元に本が右に70センチ、左に60センチ積んであって、崩れおちてたら顔が潰れてた。生きて目が覚めたのでよかった。寿命が延びた。「やじ馬ワイド」によれば河口湖で震度5、三島で震度4。船橋はどのくらだったのだろーか。
 「新世紀エヴァンゲリオン」第弐捨参話についての書き込みを、あちらのフォーラムこちらのボード、そこかしこの掲示板で拾い出して読んでみた。うーん、レイが「3人目」といったのは、そういう意味だったのか。ちょっと(ものすごく)古いけど、萩尾望都さんの「銀の三角」のマーリー1、マーリー2、マーリー3みたいだなあ。あるボディからサルベージして記録しておいた記憶を、違うボディに移し変えた時、前のボディの中で「生きている」と考えていた意識は、新しいボディへと継承されるのか否か。経験してみないと解らないけれど、経験できるのはいつのことになるのやら。
 午前は、半蔵門の地方自治情報センターに「平成8年度事業計画」の発表を聞きにいった。研究開発事業の1つに、地方自治体のインターネット利用度や、インターネットの適用目的の調査を行うというテーマがあったけど、へえ、今までやってなかったの、ってのが率直な感想。野村総合研究所なんか、自分ちのホームページの1つに地方自治体のインターネット利用情報のディレクトリー「サイバー都市ケースバンク」をつくっちゃってるし、何より通産省の岡林さんは、インターネットがかくも注目されるずっと前から、コツコツと地方自治体情報の収集を行っている。でもまあ、インターネットの普及があまりにも急だったこともあるし、去年の今頃、同じテーマを上げても通ったかどうか。マムシも出たことだし(意味不明)、広い度量で(狭い了見で)事情を斟酌しておこう。

【3月6日】 ラジオで聞いているだけではさっぱり解らない「新世紀エヴァンゲリオン」第弐拾参話。綾波は生きていたの? 加持から何が届いたの? リツコが陵辱されるって? 絵が見たい、でも絵は見れない。いいさ、そのうちLDボックスかDVDボックスでも買うから。出ればだけど。
 春休み(だから、んなもんないって)に作る予定の荒木経惟ファンページ「ARAKI'X」(仮題)の前哨戦として、アラーキーの「御近影」(JIF.11K)をアップした。もちろん僕の直筆。マウスでぐりぐりやって描いた「御近影」だけど、腕前がないから全然似てない。これでも少し前に、三重野康前日銀総裁、平岩外四前経団連会長、永野健前日経連会長らの似顔絵を描いて、自分ちの新聞に、恥ずかしげもなく出していたのだよ。通産大臣だった頃の森喜朗氏も描いたっけ。本人には似てないって、いわれたそうだけど。
 でもアラーキーの絵を見れば、新聞に載っていた僕の作品が、いかにすさまじいものだったのかが、お解り戴けると思う。あー、イラスト・パッドが欲しい(まだ懲りてない)。
 新聞にはカプスの記事を書いた。伊丹十三監督「スーパーの女」のリアルタイム・メーキング・ムービーの話。興味のある人は"表"日本工業新聞を見てみよう。でも、見つけられるかな。キオスクには売ってないからなあ、あんまし。

【3月5日】 会社で1日、原稿書きの日。届いているリリースや、前に取材した内容を脚色して膨らませて、大げさにまぎらわしく書いていたら、NOVAの鈴木さんが訪ねてきた。じゃなくって、NOVAの鈴木さんの本が出たから紹介して欲しいと、代理店の人が訪ねて来た。NOVAに行く日は英語だけになる鈴木勝利(こういう名前なんだよ)さんの日常を、漫画にした英会話レッスン書。「イエース、ザッツ・ライト」とは書いてなかったけど、読んでてそれなりに楽しめた。役に立つかっていうと、話は全然別だけど。
 帰りがけに本屋に寄ったら、前日銀総裁の三重野康氏が書いた初エッセイ集「赤い夕陽のあとに」(新潮社、1300円)が並んでいて、早速買った。今でこそ器用貧乏なエンターテインメント面担当記者だけど、4年前から2年間、日銀詰めをしていたことがあって、三重野さんには月に2回は会っていた。もちろんヒラ記者だから、記者会見の席で後ろから眺めていただけなんだけど、当時から怖いとか、傲岸不遜だとかいった印象は微塵もない、人の良さそうなおじいさんだった。エッセイ集のあとがきには「私は普通のおじさんになった」とあるけれど、おじさんって歳でもないでしょう。ねえ三重野さん。
 リンク集の「夏への扉」を手直しして、アート関係のサイトを集めた「美藝リンク」をしこしこ作る。サーチかけてURL拾っただけなんだけどね。写真集関係のサイトを探したんだけど、イマイチいいのが見つからない。荒木経惟さん関連のサイトもなさそう。自分で作るしかないけれど、あの人、写真集の数だけはやたらとあるから、著書目録作るだけで大変そう。春休み(んなのないけど)の宿題としよう。

【3月4日】 人手の足りない中小企業は、1人であれやこれやと担当しなくてはならず、エンターテインメント面の担当とはいいながら、実は印刷会社にも出入りしている。今日は朝から凸版印刷の取材。印刷会社といっても、紙にインクを刷っていただけの昔とは、仕事の内容は大きく変わっていて、今流行りのマルチメディアにも、実は10年近く前から熱心に取り組んでいる。今日聞くのも、インターネット絡みの話で、秋葉原の本社にあるショールームには、インターネットにぶっとい回線でつながったパソコンが、何台も並べられて、ぐいんぐいんと動いていた。
 見せてもらったのは、凸版印刷が最近開いた「2002年ワールドカップ招致フレンドリークラブ」のホームページ。サッカーについては、前に「蹴球リンク」を作った時に、検索エンジンでサーチをかけたのだが、このページは見つけられなかった。早速リンク集に入れることにする。
 2002年に日本でワールドカップが開催されても、たぶん決勝トーナメントには出られないだろうから、恥をかく前に辞退した方がいいんじゃないの、ってのが正直な気持ちだけれど、目の前で超一流選手を見られる魅力には、ちょっと抗しがたい。ともかくも、98年のフランス大会に出て、どれだけやれるか見てみる必要があるね。
 月始めの月曜日は、大日本印刷が銀座で運営しているギンザ・グラフィック・ギャラリーが、新しい催しに切り替える初日に当たっていて、夜には毎回、関係者を招いての内覧会と小宴が開かれる。今回は、中堅・若手の人気グラフィックデザイナーが、「日本人」をテーマに制作したポスターが展示されるとあって、会場は若い人達でいっぱいだった。こんな顔(JIF.28K)をしているため、普段は背広おじさんの間で浮きまくっていた僕だけど、今回はデザイナー関係の人が多く来ていたため、カタギに見られたみたい。前なんか、同業者から関係者と思われて、挨拶されたからなあ。

【3月3日】 「明かりをつけましょ、雪洞(ぼんぼり)に」−ああ、今日はおひな祭りのめでたい日。なのに今日も、家で1人でテレビを見ている。誰もおひな祭りに誘ってくれない。仕方がないからデパートで、ひなあられと菱餅を買ってきて、おやつ代わりに食べることにする。
 本をベラベラと見ながら、テレビのサッカー中継を聴いていると、どうも柏レイソルの調子が良さそうで、今期応援することに決める。別にレイソルファンではないのだが、住んでいる千葉県のチームなので、出身地のグランパスに次ぐ興味はあった。レイソルの試合相手だったジェフユナイテッド市原も、同じ千葉県のチームなのだけれど、わたしは勝つ方しか応援しない、こうもり野郎なのだ。
 しかし本当に、レイソルは調子よさそうで、チームリーダーのカレッカと、新加入のエジウソン、アントニオ・カルロスが、実によくかみ合っている。FWのエジウソンは弾丸のように走るし、アントニオ・カルロスは深い読みのディフェンスが光る。ただクリアーするだけでなく、前線にフィードして攻撃につなげる技術を持っていて、中盤から両サイド、前線へとボールがつながって、カレッカとエジウソンがゴール前で仕事をする、実にスムーズな流れが出来ていた。
 インターネット日記界の重鎮、通産省の 岡林哲夫様よりメールを戴く。津田優氏日記リンクスの新人情報に、恥を忍んで日記開設のお知らせを出した意味があった。嬉しい。しかし、読者のお役に立てるだけの情報を、掲載しているとは決していえない「リウイチのホームページ」だけに、いっそうの精進を重ねなくてはと、ほんの一瞬だけ思う。

【3月2日】 3月になったってのに、何でこんなに寒いんだろう。エアコンかけても、隅の方には暖気がこなくて、キーボードを打つ手がかじかんでいる。早く暖かくなれよ。電気代も安くなるぞ。
 お出かけは東京都美術館。「第49回アンデパンダン展覧」「オルセー美術館展」を見に行っただけど、オルセーの方はあんまし楽しくなかった。人の数はバーンズとかMomaほどは多くなかったんだけど、いかんせん会場が狭くて、両側の絵を見る人達の、背中と背中がぶつかりそうになっていた。アンデパンダンは玉石混淆の大バーゲン状態。特別出品とかいうキューバの作家、エドアルド・ロカ・カサラスやフローラ・フォングの絵が一等光っていたのは、飽食日本の限界を示しているようで、ちょっと愕然とさせられた。
 レオタード姿の美人が2人、踊りまくるパフォーマンスは秀逸。目の前で高く足を上げる瞬間、背筋がゾクゾクと来た。また見に行くかもしれない。

【3月1日】 前に金曜日は早起きが大変って書いたよね。でも今日は平気。毎週やってる若手社員の研修会が、講師の都合で午後にずれ込んだから、ゆっくりと朝寝が出来た。「ポンキッキーズ」も「バレエ誕生」も家で見れたし、満員電車にぎゅうぎゅう詰めになって行くこともなく、助かった。
 でも、今回の研修会は、いつもやってるような、中堅社員のお話会とは違って、超有名な人が出てくることになっていたから、楽しみは楽しみだった。有名講師って?その名は石井英夫。誰それ?産経新聞朝刊のコラム「産経抄」の筆者で、何年か前には、菊池寛賞も受賞したこともある、産経きってのスターおじさんなのだ。
 写真で見たことがあるから、顔は知っていたけれど、実物の石井さんは、何ともまあ人当たりの良い方で、話し方もどこか落語家みたいな口振り手振り。声の感じはそう、橘家円蔵って感じかな。毎回、こんな有名人が出て来るんだったら、8時半が6時でも、行こうって気になるんだけど。
 夜、家に帰ると1通のメール。去年夏に取材したホームページ制作会社のカプスからで、何でも伊丹十三監督の最新作「スーパーの女」のプロモーション・ホームページを作ったから是非見てね、との内容。早速見てみて驚いた。ハイパー・ダイアリー映画日誌版だぜ。毎日毎日、撮影現場の模様をデジカメに収録して、インターネット上にアップしてしまおうって寸法だ。素人芸の日記とは違って、見栄え良くレイアウトしなくちゃいけないから、作業している人は、結構大変だと思うよ。頑張ってね、神原さん(カプス代表)。

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