縮刷版96年11月下旬号


【11月30日】 寒いしだるいので1日家でごろごろ。本屋に行って新刊をチェックしてスーパーに行って食材を買って、後は読み残しの本の山を片づけることに専念する。なんか毎週同じことをしているよーな気もするけど、相手のないことなのでこればっかりは仕方がない。ちょっぴり悲しい気がしないでもないが。

 本屋では山田正紀さんを含めてあだらこだら新刊を見かけたよーな気がするが、目的はただ1冊とゆーか上下2冊組の「風の谷のナウシカ豪華版」(宮崎駿、徳間書店、各5800円)を買うことだったので、明日また来て買おーと思ってパスをする。漫画売場に積み上げられた「風の谷のナウシカ豪華本」は、箱入り上製でおまけに輸送用の段ボールに収納されていて、なかなかの質感、重量感を出していた。実際持ち上げると相当な重さで、それが2冊ともなれば普通の紙袋では破れてしまうということらしく、書店が包んでくれた取っ手付きの紙袋は、2枚重ねて補強してあった。

 帰りがけに珈琲屋で安売りしていた「モカハラリ」(「モカマタリ」は高いのから買えないの)を仕入れ、別のスーパーでやっぱり安売りしていた合い挽きミンチ200グラム100円を買って家に篭る。袋から「風の谷のナウシカ」を取り出して冒頭の部分を読み返し、これを初めて読んだのは、もう10年以上も昔のことになるのかなーと、深い感慨を覚える。今も発売されているレギュラー版は、文庫本のよーなカバーがついた装丁になっているけど、1巻の初期の版だけは、雑誌の表紙をちょっと厚紙にしたよーな、安っぽい装丁だったったことを思い出す。その時はまさかこれほどまでに、日本を代表するコミックなどと言われるまでに、「風の谷のナウシカ」が有名になるとは思わなかった。もちろん有名になって欲しいと思ってはいたけど。

 レギュラー版よりも版形が大きく、それから紙質も良くなっているためか、重さを除けばちょとだけ読みやすくなっている。版形が大きくなった豪華本といえば、大友克洋さんの「童夢」豪華本を思い出すけど、刊行当時はまだ学生だったため、何千円もしたその限定本を買いそびれてしまい、今に至って大変な後悔に囚われている。チャンスは2度無い、3度も無い。本は見かけた時が買う時だとゆー格言は、この時以来の物だといえる。

 イアン・バンクスの「秘密」(高儀進訳、2600円)を読了。カルト教団で真綿にくるまれて育った純粋無垢な少女の冒険譚と言えば確かにそーなんだけど、一般的な小説だったら、異端を絶対に認めないバリバリの信者のように描かれるではずの少女が、実は割と打算的とゆーか適応能力が高い人間として描かれていて、ヘマをやったりピンチになっても、機知と行動力でそれらを凌いでいく様などを読むにつけ、さすがイアン・バンクス、普通のマーク・トゥエイン的冒険ロマンスとか、普通のカルト批判社会派ミステリーとかは書かないぞと、改めて思い知らされた。でもまあ「蜂工場」とか「共鳴」とかよりは、主人公への感情移入がしやすいのも事実だから、うまくハマれば売れるかもしれない。


【11月29日】 エンターテインメント欄担当の本領を発揮すべく、日本の芸能界をリードしてきたナベプロこと、渡辺プロダクションに取材に行く。といってもナベプロ本体ではなく、創業者の故渡辺晋さん、渡辺美佐さんご夫婦の長女で、ナベプロ副社長の渡辺ミキさんが社長を務めているワタナベ・デジタルメディア・コミュニケーションズの方。ナベプロのマルチメディア戦略を一手に担っている戦略子会社で、先だっては出版社のインプレスといっしょになって、インターネットで音楽やアニメ番組を放送する事業を始めると発表した。

 マイナーな新聞社の哀しさか、当日の発表会の案内が届かず、故に新聞紙上で落としてしまったので、是非お目にかかって話を聞きたいと、無理に時間を取ってもらったもの。表参道の交差点から3分ほど歩いたビルにあるオフィスをたずねると、打ち合わせが長引いているようで、ミキさんはまだ到着していなかった。

 帝国と呼ばれたナベプロを支える副社長で、おまけにかつては女優として鳴らしたとゆーミキさんだけに、厳しい人なのかなーと思って待っていたら、ドアを開けて入って来たのは、明るいお姉さんといった感じの人だった。話す言葉もわかりやすくて丁寧で、これまで1度もお目にかかったことのない当方にも、親切にいろいろと教えてくれた。資料によれば年齢は××歳で、僕よりずっと年上なんだけど、とてもそーは見えなくて、もしかしたらミキさんは、こっちの方を年上だと思ったかもしれない。だとしたらちょっと悲しい。

komori  話をしていたらどんどんと時間が経ってしまって、次の発表会が始まる時間になってしまったので、表参道からタクシーを飛ばして四谷の文化放送まで行く。文化放送の開局45周年を記念して、ボトムアップとゆーソフト会社と文化放送がいっしょになって、ラジオ番組を制作して聴取率を競うとゆー内容のシミュレーションゲームを作るとゆー発表で、かけつけるとちょうど、ボトムアップの社長の人が挨拶をしている最中だった。

 席に座って前を見ると、見目麗しい女性が3人。声優として有名な小森まなみさん(中央)、丹下桜さん(左)、池澤春奈さん(右)で、これだけの容姿を持った人たちが、どーして顔の出ない声優さんなんかやってるんだろーと、まずは不思議に思った。しかし挨拶の段になって、マイクを握った声優さんたちが発した声を聞いて、疑問は一気に氷塊した。きゃぴきゃぴ、きゃんきゃんとした声は、まさしくしっかり声優さんだった。こんな声で愛をささやかれた日にゃあ、男心だって一発氷塊だろーなんて思って聞いていたけど、当然のことながら彼女たち声優さんの愛のささやきを聴く機会なんて、絶対に永遠に訪れるべくもない。書くだけむ虚しさが募っていく。

 ちなみにゲーム「ドキドキ ON AIR」(仮題)は来年6月発売の予定。3人の声優さんがパーソナリティーを務める架空のラジオ番組をププロデュースして、成功すれば番組続行が決まるとゆーハッピーなエンディング、聴取率が悪いと最短期間(13週間)で打ち切りになってしまうアンハッピーなエンディングを迎えることになる。ラジオディレクターを目指している人は必携かも。ゲームのラジオ番組で使うリスナーからのはがきも募集してるとかで、ニフティのアニメフォーラム「マルチメディア館」にコーナーが出来るそーだから、気になる人はのぞいてやってちょ。

 夢枕獏さんの原作を岡野玲子さんが漫画化した「陰陽師」の第5巻が刊行。冒頭で登場する、弾いてもらえない寂しさから源博雅にとりつく琵琶の玄象がちょっと可愛い。それにしても岡野さん、夢枕さんの原作には多分出てこない「クール」だとか「パンク」だとか「プログレ」だとか「お立ち台ギャル」だとかいった言葉を使っていて、それが作品に軽妙で洒脱な雰囲気を与えている。

 在原業平のことをアーティストと言って、「フォークシンガーにプログレは理解できぬようなものさ」と安倍晴明に言わせているところにも、岡野さんならではのユーモアセンスが現れているよーな気がする。にしても、もらった雛人形を呪いの人形に変えて遊び始める真葛は、可愛いんだけど恐ろしくもある。あとは晴明が博雅の従姉妹とゆー姫からもらった、あからさまに露骨な内容の手紙を、1度でいいからもらってみたいもんだ。「あしひきの 山の下水氷隠れて たぎつ想いに とくる下紐」って歌。どうだい、ヤラシイだろ?


【11月28日】 日本出版販売から届いた週報を見ていて、朝日出版社が小室ファミリーが総出演する季刊誌「トレイン」とゆーのを12月11日に刊行するとゆー広告を見つけた。アムロにglobeにTRFに華原朋美にそのた大勢の小室ファミリーの写真やらインタビューやらが掲載されていて、おまけに来年1月1日発売の新曲の紹介とか、小室・華原の両名による歌唱指導なんかが入った15分相当のシングルCDも付くんだとか。話題になること必定だろーけれど、かつての宮沢りえ写真集とか、最近では神田うの写真集とかに限らず、流行りそーなことはなんでもやるねえ、朝日出版社って。

 同じ朝日でも朝日新聞出版局は期待の新雑誌「UNO」の最新号は多分ガタガタじゃーなかろーか。何しろ話題が2種類ある表紙「だけ」ってんだから重傷。西原理恵子のコラムは爆走中だけど、なにも女性誌の「UNO」に載ってなくたっていーよな気がしないでもない。とか思っていたら朝日新聞社、あろうーことか次は「手塚治虫賞」なるものを来年にも立ち上げる予定だとゆー話が週刊文春に出ていてひっくり返って腰が抜けた。朝刊はともかく夕刊にあれほどまでに悲惨で滑稽な漫画しか掲載できないでいる朝日新聞社が「手塚賞」? 手塚治虫さんとは最晩年の悲惨な線が正視に絶えず涙が出てきた「ネオ・ファウスト」くらいしかつきあいの無い朝日新聞社が「手塚賞」? きっとなにかの冗談に違いない。

 別に朝日新聞社が毎日新聞とか産経新聞だったらいーと言っているのではなく、やるんだったら手塚治虫さんといっしょに育って来た漫画誌を持っている出版社とか、雑誌協会のよーなところとか、漫画家さんの団体とかが母体となって賞を創設して、そこに新聞社が協賛なり後援なりっしたほーがピンと来るんじゃないかってこと。だけどどーやら朝日は単独でやりたがってるよーで、いったい誰にあげるんだろー、誰を選考委員にするんだろーといった疑問が幾つも浮かんでくる。岡田斗司夫さんとか大塚英志さんとか村上隆さんとか、いいかわじゅんさんとか藤田尚さんとかを選考委員にしたら、きっと今を代表する漫画家さんなりアニメーターなりが選ばれそーだけど、それじゃーきっとおそらく絶対に、朝日新聞のお気に入りは選ばれないだろーからなー。

 実際、雑誌の記事によれば、「キスより簡単」くらいしか知らない石坂啓さんが、最初じゃないけどいつかは漫画賞を貰って、手塚さんのアニメを否定している宮崎駿さんが、最初のアニメ賞を貰うとかって予想が出ていた。功労賞にするくらいなら、こらから世に出て活躍しよーとしている漫画家さんを支援する賞とか、忘れ去られてしまったけど埋もらせるいは惜しい漫画家さんを再起させる賞とか、そーいった前向きな要素をもった賞にして欲しいなー。

 宮崎駿さんと言えば代表作「風の谷のナウシカ」の豪華本が、上下巻揃って発売されていて、本屋の店頭に搬送用の段ボール箱に入ったままの姿で、どーんと積み上げてあった。シリーズよりちょっぴり大判だから、あの緻密な絵をもっと詳しくより原稿に近い形で見られるってことになるか。しかし値段が確か各巻5800円だったかで、普通の人にはちょっととうてい手が出ない。幸いにしてボーナスも近い身だから、明日にも買うことが出来るだろー。今日はちょっと荷物になるからパス。それにいくらエンターテインメント欄担当だからって、漫画の豪華本かついで会社に行く勇気はない(って、会社の机の上に「新世紀エヴァンゲリオン」の漫画本3冊を積み上げてる人間の言うことではないが)。

 来年4月の消費税率変更を前に、出版社が在庫本を絶版にするんじゃないかって不安があって、その前に在庫の中から良い本を売っちゃおうってイベントが池袋のリブロポートでこぢんまりと開かれていた。ざっとのぞくと、かつてのサンリオが出版から撤退したよーに、今また文芸出版から撤退しよーとしているベネッセが、福武書店と呼ばれていた時代も含めて刊行したハードカバーの翻訳本が出ていた。その中に発見したのがジョーホールドマンの「ヘミングウェイごっこ」(1500円)。新刊で出た時に買おうかどーしよーか迷っていて、結局買わずにいたらいつの間にか本屋からみかけなくなってしまって、悔しい思いにとらわれていただけに、いよいよこれが最後の機会と、間髪入れずに買い込んだ。作者もさることながら、翻訳者がビル・ゲイツ長者に今年もなるのか大森望さん。大森さんは同じベネッセから刊行されたジョン・クロウリーの「エンジン・サマー」の翻訳も手がけていたけど、これは流石に並んでなかった。棚の「ヘミングウェイごっこ」は残り1冊。欲しい人は池袋へ急げ。


【11月27日】 ブエナ・ビスタから届いていたアンケート結果を記事にする。「あなたにとって懐かしいおもちゃは」のテーマで、日本全国津々浦々の老若男女に聞いたアンケートで、これによると女性は、10歳以下から50歳以上まで、ぜーんぶ「リカちゃん人形」または「ダッコちゃん人形」あるいは「人形」が1位になっていた。男の子の方は50歳以上でコマ(含むベーゴマ)、40歳代と30歳代でブリキのおもちゃが1位を獲得。ちょっと下がって確か20歳代は超合金、10歳代を飛ばして10歳以下はミニカー(チョロQなんかを含む)が1位だった。テレビゲームは入っていたかなー。少なくともどの世代でも、1位じゃあなかったね。

 ブエナ・ビスタではビデオ「トイ・ストーリー」に引っかけて、「人形とロボットはおもちゃの王様」的な結論を言いたかったよーだけど、その目論見が見事に当たって感じ。実際的に人形とかロボットは、やっぱり子供にとって一番感情を移入しやすく、それゆえにいつまでも心に残る玩具なんだろーね。朝テレビでやってた、ニューヨークでビルから飛び降りて心中した、22歳にして3人の子持ちとゆー黒人女性のニュースでも、地面にたたきつけられた「バズ・ライトイヤー」の人形を、警察官が拾い上げている場面が映し出されていたからなー。ちなみに僕だったら「ミクロマン」「変身サイボーグ」「超合金」「ジャンボマシンダー」「人生ゲーム」「サッカーゲーム」あたりか。やっぱりロボットは入ってくるね。

 おもちゃと言えばバンダイに電話したついでに「新世紀エヴァンゲリオン」の色プラ(色付きプラモデル)の売れ行きを聞くと、セーラー服美少女広報戦士の人が「社内のサンプルもないくらいなんですよ」と言っていた。今月出た「SFマガジン」にも、水玉蛍之丞さんがコラムで「よく出来てて」と書いていて、ガレキマニアの水玉さんをして納得せしめるほどの出来なのかと、少しばかり驚いている。ちなみにバンダイの「エヴァ」プラモシリーズ、いよいよ「使徒」が登場するそーで、聞くとラインアップは「サキエル」とか。顔は2つあるのだろーか。

 雨の降りしきる六本木交差点から走ってヴェルファーレへ。音楽関係のイベントではまったくなくって、何かと話題のアスキーと、アスキーの関連会社でヤワラカメの本なんかを扱っているアスペクトの戦略発表会とゆーのが、書店さんなんかを集めて開かれていた。前に新雑誌の発表会を開いたのが新橋の第1ホテル、今回がヴェルファーレとあって、なんだかアスキー、こーゆー外向けのプレゼンに金をかけるよーになって来た。次は東京ドームか、それとも両国国技館か。

 発表会には、手を震わせながら挨拶した橋本孝久副社長を筆頭に、第1編集統括部長の遠藤諭さんとか、第2編集統括部長の河野慎太郎さんとかいった、青葉台に某会社が設立されて以後のアスキー出版局を束ねているといった感じの人たちが勢揃いしてた。書店さん向けのイベントでこーした編集部門の責任者が大勢出てくるのって、あんまりないよーな気がするがどーなんだろーか。

 ちなみに新雑誌では来月25日に「ネットワーク時代のデジタルエンタテインメントを探る」と銘打たれた「DE」とゆー雑誌が創刊になる。創刊号の特集は「エミュレーター」に「ヘッドマウントディスプレー」に「パラッパラッパー」とか。「CAPE−X」とはちょっと違うみたいだけと、ターゲットがどの当たりなのかちょっと解らない。出て見て触ってみないと売れるか潰れるかなんとも言えない。題字の感じがなんか昔の「03(ゼロサン)」っぽかったなー。

 あと書籍では、去年の年末に慌ただしく刊行された「ビル・ゲイツ未来を語る」の改訂版、その名も「ビル・ゲイツ未来を語る97」(だったかな?)が近く出るんだそーな。ネットワークのあたりを相当力入れて書き直したらしくて、おかげで忙しさに追われている翻訳家がいるとかいないとか。きっと来年は「ビル・ゲイツ未来を語る98」が出て、その後も、毎年パソコンのバージョンアップのよーーに改訂版が出て、抜本的に代わる時には秋葉原ならぬ神田は神保町で花火を打ち上げて大騒ぎしてって、これはないだろーね。しかし10年経ったら10年前と言ってることがまるで違ってたって可能性はありそー。これだけ移り変わりが激しいと、5年でも手のひら返すかもしれない。

 笠井潔さんの「天啓の宴」(双葉社、1800円)をよーやく半分くらい読み終えて、さてラストスパートとゆー時になって、二階堂黎人さんの新刊「奇跡島の不思議」(角川書店、2000円)を見つけてしまって、もちろん買ってしまった。「孤島」に「館」に「クローズド・サークル」に「殺人鬼」がワンセットになった凄そーな話。ないのは「密室」くらいか。100ページまでたどり着いた「秘密」(イアン・バンクス、早川書房、2600円)ともども週末には片づける所存。おっとまだ村上春樹さんの「レキシントンの幽霊」と笠井潔さんの「巨人伝説」が残ってる・・・・。


【11月26日】 トリワークスとゆー会社の記事を書く。富士通が実施している社員を対象にしたベンチャー企業設立支援制度を受けて去年だったかに設立された会社で、社長の人はまだ30歳にも達していない。出しているソフトといえば秋葉原の案内マップをCD−ROM化した「バーチャル・トリップ秋葉原」とか、中国の写真と音楽をCDエキストラじゃない方法で普通にCD−ROM化した「シリーズ跡」くらい。国内じゃーまだまだ無名の会社なのに、何故か中国では結構知られて来ているとゆーことらしー。

 とゆーのもトリワークスの設立メンバーの1人が中国人で、複雑怪奇な中国でのビジネスに割と通じていて、いろいろと新しいビジネスを中国で立ち上げているのだとか。それからスタッフにいる別の中国人が、実は音楽の世界でとても有名で、歴代米大統領が訪中した折りにその前で演奏したくらいの神童だったそーな。ヘンな会社とゆーかなんとゆーか。

 ちなみに富士通のベンチャー支援制度では、ひそかに話題になっているらしーシミュレーション・ソフト「英雄光臨」を作ったアルファ・オメガとか、パソコン通信で文庫をオンライン販売するフジ・オンラインシステムとゆー会社なんかが設立されている。制度を立ち上げた当初に意図されていたよーな、世界を震撼させるソフトとゆーにはほど遠いけど、それなりに面白いソフトが出て来てる。資金面だけでなく、ヒト・モノ・カネを持った大会社が、組織面、精神面でバックアップしてるとゆー点が、今のところは有利に働いているとゆーことか。もちろん最終的には、支援を受けた側のアイディアとか、行動力とかにかかってくることには違いないんだけどね。

 恵比寿に行ってカルチュア・コンビニエンス・クラブの広報の人と話す。パーテーションで仕切られた部屋で待っていると、隣から大きな声が聞こえてきて「君はいったい何がやりたいんだね」「えーと」「君が来たとしてもずいぶんとギャップがあると思うよ」「そうですか」といったやりとりが聞こえてくる。中途採用の面接をやっていたみたいで、応募して来た人はテレビ局の下請けか孫請けに務めている若者のよーだった。面接官の圧迫が強くてしどろもどろになっていて、ちょっと可哀そーになってきたけど、自分も面接の席上ではあがって失敗を重ねて来た質なので、同情はしない。たぶん落ちたね、あれは。

 昨日買った本もまだ読んでいないとゆーのに、性懲りもなく笠井潔さんの「天啓の宴」(双葉社、1800円)を買ってパラパラと読み始めてハマってしまった。書いてあることは文学論とか哲学とかいった具合に難しいーけど、デビュー第2作がなかなか書けない新人とか、笠井さん本人を模したよーな失踪した新人作家とか、きのう憂国忌を迎えたばかりの三島由起夫とかが出てきて、本好きにはなかなかたまらない設定になっている。しかしメタっぽいので、1回じゃー理解できないかもしれない。

 パノラマ・コミュニケーションズとゆー会社からダイレクト・メールが届いていて、中にかの名作アニメ「くりいむレモン」ベストコレクションのLDボックスの案内が入っていた。もちろん他の品物の案内も入っていたんだけど、やっぱり男の子なのでこっちに目が行ってしまった。ディスクは6枚組で両面収録、別にスペシャルディスクが1枚付くのだそーな。そんでもってお値段は5万8000円(まあお安い)、限定1000セット。日本のアニメーションの裏面史を語る上で貴重な資料であるため是非とも学術研究的な観点より購入を所望するも機器的危機、財務的危機などこれありで断念する。残念至極。


【11月25日】 イアン・バンクスの「秘密」(高儀進訳、早川書房、2600円)を読みながら出勤。といってもまだ30ページほどなので話はまるっきり見えない。「蜂工場」や「共鳴」よりは明るそーな話だけど、なにせイアン・バンクスだから、どこでどーなっていくのか解らない。用心肝心。他に浮気しなければ、2日くらいで読み終えることができるだろー。

 と思っていたら、本屋で新刊の山にあって心が揺れる。運良く(運悪く)給料日だったこともあって財布に金がどっさり(見栄9割)。綾辻行人さんの対談集「セッション」(集英社、1600円)と村上春樹さんの「レキシントンの幽霊」(文藝春秋、1200円)と笠井潔さんの「巨人伝説」(作品社、5800円)をレジにどんと置き、あとで気が付いて「SFマガジン」の1月号も買い足して鞄に詰め込む。皮のアタッシェケースがぼっくりとふくらんでしまってカッコ悪いが、本てなー買える時に買って置かないと買いそびれるものなので仕方がない。

 しかし綾辻さんの「セッション」、対談集なので立ち読みで済ませてもいーかなー、とか思って手に取ったところ、単行本には珍しくとゆーか初めてとゆーか、フクロ綴じ漫画が巻末についていてそこだけ立ち読みが出来ないよーになっていた。なにしろ筆者は西原理恵子さんだ。どんなに凶悪なことが描いてあるかとフクロ綴じをスキマからのぞくがよく見えない。フトコロからナイフを取り出して店頭でこっそり引き裂いてやりたくなったが、流石にそれをやると犯罪なので、買って帰って家でナイフを入れて中を読む。おーっ、わーっ、ぎゃーってなもんで、読んだ作者は綴じた部分だけじゃなく、きっと全部を引き裂きたくなっただだろー。指切り手袋してない京極夏彦さんの写真も貴重。

 笠井さんの本はSF作品を集めた選集「笠井潔伝奇小説集成」の第4巻。このシリーズ、とにかく空山基さんの表紙がすごくって、刊行される度にもしかしたら表紙が引っかかって発禁になってしまうかもしれないと思って、出たらすぐに買うよーにしている。今回も結構すごい。集成の残りは1冊で来年1月には完結予定。全部そろったら結構な分厚さと重量になるだろーけれど、実は最初に出た「ヴァンパイヤー戦争1」しかまだ読んでいないので、この年末、なんとか「ヴァンパイヤー戦争」だけは、無理ならばせめて「巨人伝説」だけは読み終えたい。

 夕方から銀座の「ギンザ・グラフィック・ギャラリー」に行って、実は影でこそこそと開かれている謎の万国博覧会「インターネット1996ワールドエキスポジション」の公式イベントを見物する。狂言師の野村万之丞さんが仮面をテーマにしたホームページを公開していることにあわせて、仮面を使ったいろいろなパフォーマンスを行って、それをインターネットで中継しよーとゆーイベントで、中継のための機材がズラリならんだギャラリー地下の会場には、インターネットファンなのか狂言ファンなのかただのサクラなのか解らない人たちが50人位集まって、野村さんの登場を待っていた。

 待っている間に狂言講演の案内といっしょに、何故かパンストを手渡される。おそらくはヘンシンか何かのパフォーマンスに観客を巻き込もうって魂胆で配ったのだろーと思ったけど、イベントが始まって野村さんのパフォーマンスが続き、やがて終わろーとしても一向に使う気配がない。結局新品のパンストを家に持ち帰ることになったが、履かせる相手もいないので、自分で履いて今この文章を書いているのである。どーだキモチワルイだろー。

 実はパンストは、履くのではなくって頭に被るために使うものだそーで、いったんガッポリと被ったあと、足の部分を引っ張って顔を出し、ぶら下がった足の部分を頭のまわりにギュッと巻き付けて引き締めることで気分を高める。歌舞伎でゆー羽二重みたいなもんだね。それから仮面をとってその仮面の性格とゆーか人格を読み、ゆっくりと着けていきながら自分が仮面に同化していく。下手な役者だと仮面が顔から浮き上がってしまって、ただお面を着けているだけって感じになるけれど、うまい役者だと仮面に表情が出てくるから不思議。ってなことを見たり聞いたりしながら、あっとゆーまに過ぎた2時間ちょっとだった。しかしパンストって引っ張れば伸びるんだねー。


【11月24日】 「カウントダウンTV」とか「グルーブカウントTV」(だったかな)とかを聴きながら、明け方までかかってエリザベス・バウワーズの「レディーズ・ナイト」(佐伯晴子訳、新樹社、1000円)を読み切る。ペーパーバックのような質素な紙と薄っぺらい表紙の本だったので、さっさと読み終えられるかと思ったら、意外にも活字がびっしりと詰まっていて、おまけに心理描写や情景描写がみっちりと行われているので、会話とストーリーだけを楽しみながらさっさとページを読み飛ばすことができない。けれども読み飛ばさなくって正解で、中年女性の頑張って頑張ってだけど報われない愛とゆーか友情とゆーか、とにかく立場によってそれぞれの正義があるのだとゆーことを改めて考えさせられた。デビュー作だとゆーから次作が楽しみ。だけどあんまり聞かない出版社だけに、メジャーな書評でばんばんと紹介されたりしないと、次につながらない。誰かー。

 寝て起きて朝の9時。家にこもって積み残しの本を片づけよーとするが、眠気に誘われてなかなか進まない。難しい本を読んでも頭に入らないときは漫画に限ると、本屋に入って新刊を漁ると「エヴァンゲリオン四コマ全集」(角川書店、850円)とゆー本を見つけて手にとった。いわゆるパロディー本(やおい本とか18禁本とかを含む)かと思ってひっくり返すと、コシマキに執筆者の名前がずらり。見ると「あさりよしとお」「あびゅうきょ」「くら☆りっさ」「豊島ゆーさく」「ふくやまけいこ」「水玉蛍之丞」「安永航一郎」といったプロフェショナルな漫画家たちのオン・パレードで、これならやまもおちもいみも無い、下らないパロディーなんか読まされなくって済むと思って買って帰る。いっしょに「失楽園2」を買って帰ったことは内緒だよ。

 しかし「エヴァンゲリオン」、あさりさんの4コマはあさりさんの、ふくやまさんの4コマはふくやまさんの、水玉さんは水玉さんで安永さんは安永さんの特徴が見事にばっちり出ていて楽しめる。安永さん描く綾波レイは原作と違ってとってもポン酢な性格で、バラダギといーしょーぶかもしれない。マスクメロンの一発芸最高。意外だったのはあびゅうきょで、「彼女たちのカンプグルッペ」(大和書房、1600円)のよーな細く緻密な線で美少女の活躍する社会派っぽい作品とは違って、絵柄こそ暗いもののその暗さを逆手に取ったギャグをしっかり決めていた。しかしまあ、あびゅうきょがいまも仕事をしているってだけで満足、だね。

 ヒッチコックの「北北西に進路を取れ」を教育テレビで見る。ラストシーンで登場したアメリカはサウスダコタ州にある「マウント・ラシュモア」に、実は3年ほど前に行ったことがあって、映画と同じよーな光景を間近に見たことがある。映画では彫像の脇を下に降りよーとするけれど、実際には表面がツルツルしてるから、素手では絶対に降りられない。それにマウントラシュモアの上は金網で囲ってあって、許可がないと立ち入るこそすらできない。こっちは栃木県にマウントラシュモアの3分の1の模型をぶっ建てた某テーマパークの社長のツテで、よほどでなければ登らせてもらえないワシントン大統領の頭の上に立つとゆー、人目に付くんでホントはやっちゃいけない栄誉に浴することができた。役得ってなーこーゆー時に感じるもんだ。

 おまけ。先週、ソニー・マガジンズの編集の人から突然電話がかかって来た。R・L・スタインとゆー人の子供向けホラー・シリーズ「グースバンプス」(豊岡まみ訳、ソニー・マガジンズ、各650円)の話を聞きに行った時に会った人で、同じR・L・スタインの長編ホラー「迷信」(友成純一訳、2500円)を読んで、間に挟み込まれていたアンケートを送ったところ、こっちの名前を見つけたらしー。聞くとこの「迷信」、スプラッター作家の友成さんが担当した翻訳によって、原作よりはるかに素晴らしい作品になっているのだとか。けれどもセールスはあんまりパッとしてないそーで、同じ時期に出たスティーブン・キングの短編集とは比べるべくもない。このままでは「グースバンプス」の企画もろともR・L・スタインが日本から消滅してしまう恐れがあるので、ここに「迷信」「迷信」「迷信」「迷信」「迷信」と連呼して、知名度向上への協力をすることにする。といってもスティービー・ワンダーじゃなから間違えないよーに。


【11月23日】 埼玉県立近代美術館に「火の起源と神話」を見に行く。西船橋から武蔵野線で南浦和を経て北浦和へ。東京の外縁をぐるりと大回りして行く路線がどのくらいかかるか解らなかったけど、意外に早く家から北浦和まで1時間くらいしかかからなかった。ひょっとしたら世田谷美術館に行くより近いかも。鶴が岡八幡宮にある神奈川県立近代美術館よりははるに近い。あそこにいくのはホント1日仕事だから。

 駅から歩いて5分ほど。公園の中に建っている埼玉県立近代美術館だったけど、祝日だとゆーのにロビーは閑散としていた。始まってから1カ月以上経った展覧会だから、もうみんな見終わってしまったのかもしれない。美術館の正面に薪の上に載せられた消防車の作品があって、おもわず火をつけたくなった。燃える消防車ってとってもパンク。さて2階に上がって会場へ。内側に乾いてひび割れた泥のようなものがびっしりと貼り付いた透明な立方体が部屋の壁を覆っているとゆー作品がまずあって、後ろ側から光が当たってひびから光が漏れてくる光景に、なんだか土の中のホールに入っているよーな感じになった。

 薪の上の消防車を表玄関に出展している蔡國強さんの室内の方の展示は、額におさめられたロープ結びの見本とか、天井からつるされた水鉄砲とかあれこれ。「火」とかかれた看板の下にはモニターがあって、蔡國強さんが世界各国で行ってきた電流爆破マッチのよーな爆発芸術の数々を放映してた。渦巻き状に火薬が爆発していく光景を空撮した場面が最高にロック。ロープ結びの見本の下に「ご自由におためしください」と書かれてロープが1本置いてあったけど、ボーイスカウトだったのも大昔の話で今はロープの結び方も忘れてしまったので、触らずにおいた。

 別の部屋では円筒の一端にはめ込まれたプロジェクター用のスクリーンに、逆の一端から映像を当てた巨大な丸いテレビのような作品が置かれていて、音楽にあわせていろいろな映像を再生していた。陸根丙さんの作品。笑ったり泣いたりする女の子(だろーね)の顔が大写しになった映像のアドで、戦艦とかが海を渡ったり大砲を発射したりネアンデルタール人が横切ったりする映像をバックに女の人がコマ落としの踊りを踊ってる映像とか、ラジオ体操の最後の深呼吸の場面のよーに、腕を水平から体の横へと落としてまた水平にあげる映像とかが続く。踊る女の人がとても綺麗で(だって裸なんだもん)、ついつい3回ほど繰り返して見てしまった。こーゆー見方って、作者の意図とはちょい違うかもしれないなー。

 李相鉉さんの「Moon Walker」は砂漠のように砂が敷き詰めれた上を、尺取虫状の「ムーンウォーカー」がレールに沿って進んでいく作品だけど、動かすからと言われて11時に作品の前にいってさあ動くかと待っていたのに、故障みたいで動かず、係員の人が申し訳なさそーな顔をしてた。テクノロジーを使ったアートって、こーゆー事があるからなー。豚の「もっとも本能的な方式による交流」(つまりは交尾)の場面がプロジェクターで大写しになる「文化動物」とゆー作品がおかれた部屋に、子供を連れたお母さんグループが入っていったけど、あんまり気にしてる様子がなかった。人間もまあ「文化動物」だからなー。

 最後の部屋に置かれたとゆーか、最後の部屋自体が作品とゆー土屋公雄さん(ノブギャラリー推薦!!)の「神話の回復」は、細長い部屋の端から奥に向かって瓦礫が詰まれ、それが波を打ちながらだんだんと高くなっていくとゆー大がかりなもの。じっと見ていると奥から何かがこちらに向かって歩いてくるよーな感じがして来た。人が破壊してきたものの歴史が瓦礫の山だとしたら、その向こうから歩いてくるのは救いをもたらす神か、審判をつげにくる神か、さらなる破壊を誘う悪魔か・・・などど高尚なことを考えながら会場を後にする。決して数多くの作品が並べられている訳じゃないけど、1時間半は会場内にいたことになる。

 船橋の西武百貨店の飾り付けがクリスマスバージョンになっていて、ティディベアが鈴なりになった飾りとか、同じくティディベアだけが何10頭もぶら下げられたクリスマスツリーとかが置かれていて、なんとゆー大胆な飾り付けかと感心する。木で作ったリングの真ん中にティディベアが1つづつ張り付けられたものが、何10カ所かに置かれてたりもする。終わったらこのティディベア、どーするんだろーか。まさか捨てはしないだろーけど、かといって売るわけにもいかんからなー。お葬式の花輪の花を持って帰る名古屋でこんな飾り付けをしたら、立ち所にティディベアは持ち去られてしまうに違いない。


【11月22日】 白夜書房の「インターネットマニア」が発売になって、前にホームページ紹介の依頼を受諾した記憶があったので、どんなふーに乗っているのか確かめる。日記に関してこれまでにも何回か紹介されているけど、「インターネットマニア」からはプロフィルのページを紹介したいとゆー依頼だったので、たぶん自己紹介ページを集めて「こんな奴がいまーす」ってな具合にやるんだろーなーとはと思っていた。

 実際の記事自体は、からかうとかあげつらうとかいったネガティブな要素はなく、批判も違和感も抱かなかったが、しかし自分で描いたイラストが、インターネットのよーなマイナーなメディアではなく、リアルな雑誌のページを堂々と飾ってしまっているとゆー事実に、いくら昔に自分ところの新聞で、三重野前日銀総裁の似顔絵とか、永野建前日経連会長とかの似顔絵を公開していたといっても、やっぱりちょっぴり恥ずかしい。

 吉野朔実さんのエッセイ集「眠れない夜には星を数えて」(大和書房、1300円)が出ていたので買う。大和書房からは前に絵本「もっと幸福な一日」とゆーのが刊行されているそーだけど、不勉強でこれまで知らなかった。見つけたら買おう。吉野さんはそーいえば、「本の雑誌」に連載していた本にまつわる漫画エッセイ「お父さんは時代小説が大好き」が間もなく刊行される予定。「眠れない夜には星を数えて」の見返し部分の著作リストにもしっかり入っていたから、「本の雑誌」お得意の発売延期にはならずに、ちゃんと近くでるのだろう。けどちょぴり不安だなー。明日また本屋に行こう。

 「蜂工場」以来8年ぶりとかの邦訳「共鳴」(広瀬順弘訳、早川書房、780円)が出たばかりのイアン・バンクスに、またしても邦訳が出て吃驚。もしかしていつかのダン・シモンズみたくブームにでもなっているのかと思ったけど、あれほど王道を行くエンターテインメント作品でもないから、ちょっと不思議に思う。コシマキによれば来年春には英国SF作家協会賞受賞作品の「ファイサム・エンジン」も刊行されるとか。ギブスン絶賛だからまあまともな(つまりはダン・シモンズ的な)SFではないことは確かなので、やっぱりブームとはほど遠い。静かにじわじわと毒が回っていくって感じ、だろーね、イアン・バンクスの。

 エリザベス・バウワーズの「レディーズ・ナイト」(佐伯晴子訳、新樹社、1000円)は100ページ当たりまで到達。最高に面白くなりそうな予感がしていて、このまま読み進むのがちょっと恐い。予想を裏切られるのがイヤだから。ごくごく普通の主婦だった女性が、あることがきっかけで自分で身を守るための術を覚え、それまで接していなかったマイノリティーたちとも交流するようになり、結果夫から離婚を迫られて受諾し、挙げ句に私立探偵となって事件に挑んでいくという設定。最初の小説だとゆーのに、この心理描写、情景描写のうまさ、リアリティーはいったい何だ? テーマは全然違うけど、渡辺容子さんの「左手に告げるなかれ」(講談社、1500円)と比べてみたい気がしている。


【11月21日】 シナジー幾何学から「ゼッダス ホラーツアー2」のサンプルソフトが届く。しかしゲームがとことん苦手な小生、前にもらった「ホラーツアー」ですら未だに城の中に閉じこめられたままで、老婆の予言と塔に飾られた絵の女性との間を行ったり来たりのていたらく。よりパワーアップしているであろう「ホラーツアー2」が、とてもクリアできるとは思えない。しかしせっかく届いたソフトなので、週末にちらちらと挑戦してみたい。ハマり過ぎて読書ができなくなるのが心配だけど、最初で匙を投げて安心確実な読書に復帰する可能性の方が大きいような気がする。

 「WIRED」の1月号を買う。創刊2周年になるのか。創刊に先立つ半年前、有楽町の外国人記者クラブで発表会が開かれる前の週に、米国で人気の雑誌「WAIRED」の日本語版が同朋舎出版から発売されると新聞に書いて以来、ずっと成りゆきを見守っていた雑誌だけに、2年も続いたとゆーのにはひとしおの感慨がある。しかし投書欄を「創刊2周年おめでとう的有名人のお言葉集めましたコーナー」にしたのは解せない。すべてが礼賛という訳ではないのに、どうしても身びいき的な意図を感じてしまうからだ。「WIRED」から持ちかけられた日本語版発行の話をけっ飛ばして「CAPE−X」を創刊し、挙げ句休刊へと追い込まれたアスキーの西和彦社長のコメントはおもしろかったけどね。

 大判のペーパーバックって雰囲気の「レディーズ・ナイト」(エリザベス・バウワーズ、佐伯晴子訳、新樹社、1000円)とゆー本を買う。ハードカバーだったら2000円くらいはしていたかもしれないし、文庫にしたって800円くらいはするんだから、ちょっと中途半端だけど、こーゆー装丁も悪くないと思う。表紙をよく見ると、なんと作場知生さんがタロット・カード用に描いた「月」の絵が使われていた。どこにも作場さんの名前が入ってないけど、ちゃんと許可はとっているんだろーか。

 銀座の西村画廊で舟越桂さんの「舟越桂新作彫刻展」を見る。人気急上昇中の彫刻家だけあって、若い人からオジサンまで、幅広い層が狭いギャラリー内にあふれていた。新作の彫刻作品は4点あって、値段を見たら1点850万円もした。年に4点くらいづつ作っていけば、かるく数千万円の収入があるってことだけど、いずれは1点欲しーなーなどと思ってる見には、人気と比例した値段の上昇であってもちょっと辛い。

 ドローイングだって30万とか80万とかするから、そうおいそれとは手がでない。もっともリトグラフだって同じくらいの値段で得ってる益体もないアーティストがいるくらいだから、考えようによっては全然決して高くない。残念ながら今回はすべて売り切れになっていたけど、次の機会にはドローイングの1点でも、などと思っていたら次は1枚100万円なんてことになっている可能性が大だからなー、舟越さんの場合は。


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