縮刷版2006年1月中旬号


【1月20日】 「ギャラクシーエンジェル文庫」こと「GA文庫」が店頭に並んだと思ったら今度は「機動戦士Zガンダム文庫」こと「Z文庫」が竹書房から登場とあってアニメーションのノベライズ業界もこれでなかなか賑わっている様子、って違うライトノベルの新レーベルだ。夏頃から創刊の噂は出回っていたけれどいよいよもってラインアップを揃えて登場。ライトノベル業界の王道を突き進む賀東招二さんを原案に迎え「家政婦が黙殺」の篠房六郎さんをイラストに起用したきぬたさとしさん著の「ドラグネット ミラージュ」といー、これまた天下の神代創さんを迎えた「ウェイズ事件簿」といー面子も揃い絵師もなかなかとあってこいつはちょっと見過ごせない。

 もちろん仕事もあって見過ごすことなんて出来るはずなく購入してはとりあえず「ドラグネット ミラージュ」の冒頭なんかとペラリペラリ。西大西洋上に現れた異世界に繋がる大陸で麻薬みたいなものを捜査していた刑事が遭遇した事件って導入部から、いったいどんな話しが繰り広げられるのか。なかなか興味をそそられる。あと口絵に描かれた篠房さんによる下着姿の美女がいったい、どんな役回りを見せてくれるのかってのにも。

 発売が奇数月ってことはまだ、毎月揃えるだけのラインアップがないってことで「GA文庫」も出て正直アップアップな我が財布にとっては有り難いことだけど、他のレーベルも出版点数が増えているしノベルズの方でも新レーベルが出ていたりして、月に使う本題のおよそいったいどれだけが、ライトノベルに注ぎ込まれるのかと指折り数えるのは精神によろしくないんで止めにする。それよりやっぱり部屋のどこに積み上げれば良いのかってことの方がより切実な問題か。1年経って回顧をする時に見つからず、また買い直すものも結構あったりするからなあ。それで重ねて増えるとゆー悪循環。近くにトランクルームはないものか。

 薄い。けど濃い濃い。豪屋大介さんの「A君(17)の戦争9 われらがすばらしきとき」(富士見ファンタジア文庫)は魔王領の都に迫る人族連合軍の攻撃にぎりぎりと胃の痛む思いをしながらも我らが魔王の小野寺剛士、局面ではなく大局を見極め戦術でも戦略でもない大戦略を打ち立てひたすらに反撃の時を待っているとゆー構図で、笑いや色気が入り込む予知もなしにひたすら戦争に関する描写とうんちくが続く。勉強にはなるけれど実践はしたくないなあ。だってこれ、戦争なのよね。

 田中魔王に告白する電波姫さまとか笑いがあったり、見目麗しい要望で知略を巡らせるシレイラちゃんの明晰ぶりがあったりと読んで楽しい部分もあるけれど、ばつばつと死んでいく魔族人族が今は戦争なんだと分からせその悲惨さに身をこごらせる。始まった反撃が向かうのは何処で、当然読んでいるはずのシレイラちゃんのどんな裏を衝くものなのか。待ち遠しいけどしかし次は一体いつ出るんだろー。玲衣さんのイラストも前の伊東武彦さんを模しつつポップさからシックさへとやや移って雰囲気にマッチ。美少女は美少女なところも嬉しい。このまま最後まで連れ添っていってもらいたい。絵師がシリーズで3人4人と変わるのは「グインサーガ」だけで十分です。

 世の中は広いなあ。宮崎駿監督が長編を取らず「ゲド戦記」の指揮も取らないで作っていた「三鷹の森ジブリ美術館」で上映される短編アニメーション「水グモもんもん」の音楽を担当している山瀬理桜さんって人に面会したんだけど、この人が凄い。ノルウェーの民族楽器で弦が9本ある「ハルダンゲル・ヴァイオリン」ってのがあって、それを日本で弾くただ1人のプロのヴァイオリニストが山瀬さん。音大を出てノルウェーに行った姉とのセッションを現地で重ねる中で知ったこのヴァイオリンの存在に弾かれ、学び演奏できるよーになってそれから日本で自主制作盤を作りコンサートの会場や、山野楽器で販売していたら人気となってビクターエンタテインメントからアルバムが発売された。

 それを聴いて気に入ったのが宮崎監督。音楽に使いたいって依頼をする一方で、制作にかかった「水グモもんもん」の作業の間もずっとこれを聴いていたらしー。そして完成した作品に山瀬さんの音楽を着けてもらって誕生した作品が、1月から「ジブリ美術館」で上映されている。今や世界のミヤザキとなった宮崎監督の音楽に、使われているってことはすなわち世界のヤマセになったに等しい快挙。音楽の世界では著名でファンも多い山瀬さんだけど、アニメファンや映像のファンも巻き込みこれから更なるメジャーの道を歩むだろー。

 それにしても不思議な音色を放つハルダンゲル・ヴァイオリン。弦が9本あって下の5弦が共鳴用という不思議な構成で、CDを聴いた感じはシタールにも似て広がりがあって奥深い音色で、1台なのに何人もが重ねて演奏しているようで耳に心地よい。「ペールギュント」のグリーグが愛した楽器らしく、山瀬さんに聴くと「ペールギュント」でも有名な「朝」の冒頭のメロディーは、このハルダンゲル・ヴァイオリンの調弦を行う時に弦を順に慣らすと聞こえる音階なのだとか。

 ヴァイオリンのスコアで弱音器を付け奏でる指定のある音楽がグリーグに多いのも、繊細なハルダンゲル・ヴァイオリンを意識したものって説もあるとか。実際にハルダンゲル・ヴァイオリンで奏でられた山瀬さんのCDに入っている「朝」こそが、グリーグの心にあった「朝」なのかもしれない。ノルウェーでもなかなか聴けない楽器らしく、それが日本でCDによって聴けるのは貴重な機会。ましてやセットになるのは宮崎アニメだ。ジョン・ラセターのアニメに吉田兄弟の三味線がセットで奏でられる以上に珍しいチャンスをこれは聞きのがせない。しばらく行ってないけどこれは行きたい「ジブリ美術館」。でも遠いんだよなあ。どうしようかなあ。


【1月19日】 あの頃の君はぴっかぴかに光り輝いててテレビで見るたびに目を見開いては瑞々しくもきらびやかなそのたたずまいに震えていたものだったけど、25年と四半世紀が過ぎ去った本日この時をもってその輝きとも永久にお別れすることが決定して哀しみもひとしお。コニカミノルタがカメラ事業から撤退を発表。この前のニコンのフィルムカメラ事業大幅縮小と遭わせて光学機器の世界に訪れている大きな転換点って奴を改めて強く実感させられる。

 まだ中学生だった1980年。宮崎美子さんが木陰ではにかみながらTシャツを脱ぎジーンズを下ろすCMに脳天をうち砕かれた「ミノルタX−7」に続いて85年には世界初のオートフォーカス一眼レフ「ミノルタα−7000」を発売。話題の品々を送り出しては35ミリ一眼レフカメラの世界でシェアトップを獲得し、果てしない存在感を維持して来たけれど、デジタルカメラの普及にはコンパクトの部門で乗り遅れ一眼レフでもニコンとキヤノンに遅れを取ってペンタックス以上に存在感を発揮できないまま、ソニーに一眼レフ事業を譲渡して手を引くことになってしまった。これが栄枯盛衰って奴か。

 受け継ぐソニーがいったいどんなカメラを作るのかは分からないけど、オートフォーカス技術は今はどこでも大差はなくセンサー技術だったらソニーの方が1枚上、ってゆーか日本でもトップクラスだろーから、そこにミノルタのレンズ技術を組み合わせればそれなりなカメラが出てきそうー。カールツァイスのレンズを組み込むって手もあるなあ。そのカールツァイスのブランドも含めて、京セラがヤシカを買収して送り出した「CONTAX」のように、デジタル一眼レフカメラの分野でニコンともキヤノンともひと味違った存在感って奴を出していけば激化する市場でも生き残れそう。でもソニーがソニーらしさにこだわったら、安売り競争に巻き込まれて2度目の撤退から永遠の死なんて事態もありそー。どんな使い方をするのか注目。とか言ってると今度はペンタックスがサムソンに持っていかれてしまうんだ。

 大きく開いた胸元から左右にごろん、ごろんとのぞく山のすそ野の張りっぷりに30近い歳とはとても思えず目が吸い寄せられてしまったハミュッツ=メセタのイラストが、表紙を開くといきなり目に飛び込んでくるから、山形石雄さんの「戦う司書と雷の愚者」(集英社スーパーダッシュ文庫、552円)を読む人は心を落ち着け深呼吸してから表紙を開くよーに。不適に笑う口元もキュートなら鼻にかかったそばかすも扇情的。やっぱりしっかり縫い止められてる胸元のうさこちゃん風アップリケが今いち見えないのは残念だけど、それより素晴らしいものがのぞいているから構わない。うずめたいなあ。うずめた途端に何処からともなく降って来た石に脳天を貫かれてしまうんだけど。

 そのハミュッツ=メセタは今回は前回ほどの大活躍はみせずどちらかといえば傍観者的に事件に関わる。ハミュッツ=メセタの留守の間に彼女をたずねて来た得体の知れない男が図書館で引き起こしたひと騒動。受付嬢が殺され武装司書もかなわないままかろうじて怪物にはお引き取りを願ったもののいずれまた来るかもしれないと警戒していた折りも折り、武装司書の見習いとして入ったばかりのノロティが出張先でその怪物かもしれない人物と出会い、なおかつそこにふらりと現れたハミュッツ=メセタから怪物らしいザトウという男を守るように命令される。

 武装司書ですらかなわない相手。人を危め人の記憶が死んで固まった「本」を奪ったらしい相手をどうして守らなくてはいけないのかと、悩むもののハミュッツ=メセタの命令だからと守る新米司書ノロティ。若い美貌はあってもなかなか決断できない性格もあっていろいろ引っ張り回されるものの、最後にはその真摯さでもって事件を見事に解決へと導いていく。ハミュッツ=メセタはどこ行った? いえいえ逃げてなんかおりません、しっかりと活躍してくれちゃってます。ってゆーかもしかしたら彼女が1番の敵? そんなサジェスチョンも頂きながら向かう続きの物語で起こる大乱戦に注目。それにしても過去のハミュッツ=メセタの戦闘シーンを振り返った描写の、あらゆるものを武器にして放り投げて命中させる彼女の凄さに感服。砂漠でだって砂をくりぬき固めて投げるぞハミュッツ=メセタなら。

 ”天壌の劫火”アラストールより”夢幻の冠帯”ティアマトーより”蹂躙の爪牙”マルコシアスより強いのかもしれない”風説の流布”ホリエモン。なんてことは思わないまま見た「灼眼のシャナ」はケロロ軍曹と並んで「であります」の語尾が似合う「万条の仕手」ことヴィルヘルミナ・カルメルがメイド服の裾も露わに戦うシーンに眼を奪われ、裸に包帯を巻いた姿で飛び回るシャナの姿に心を奪われっぱなしの30分。おかげでアラストールがシャナと契約したシーンとか、直前に死へと歩み行くマティルダ・サントメールの後ろ姿もそれほど記憶に残らず、2度見返して話をようやく理解する。この辺あんまり単行本も読み込んでないからなあ。さらに直後に録画で見た「かしまし」のはずむが繰り広げる初女の子的な言動の痒さに心奪われ記憶もそがれて朝の寒さすらどこかへと吹き飛ぶ。あかほりさとる恐るべし。オネニーサマって言葉は久々きいたよ。ミルちゃん今どこで何してるんだろ。


【1月18日】 キングレコードが新作のアニメーションを作り「キッズステーション」で放映したりDVDやビデオで発売するって会見があったんで見物に行く。あの「新世紀エヴァンゲリオン」なんかを手がけたキングレコードの名物プロデューサー、大月俊倫さんも出席しての会見だけにいったいどんなハードな内容で、なお且つ可愛い美少女がわんさと出てくるキングらしーアニメなんだろーと期待を胸に見た試写でキャラクターの発したセリフに胸を打ち抜かれて死ぬ。

 「子どもを誘拐するのは、子どもに触ったり裸の写真を撮ったり、恥ずかしい目に合わせることが目的なんだ。犯人は子どもの体に興味を持つ異常者なんだ」。うぉおおおおお。そりゃなるほど正論だけどでも心の深いところでそんな考えを抱いても、自制し絶対に面には出さない代わりにキングレコードが「スターチャイルド」から送り出して来る、美少女があられもない格好で恥ずかしいことをしているアニメを見て気持ちを満たしているんじゃないか。それをどーして同じキングレコードの作品で指摘されなきゃいけないんだ。気持ちがぐぐっと暗くなる。

 でもしょうがない。これは普通のアニメじゃないんだから。タイトルも「Kin−Qキッズ☆おたすK隊」ってアニメが目的にしているのは、子どもが誘拐とか暴力といった危険から自分で身を守れるようにするために、何が危険でそれを避けるにはどうすべきで、それでも危険に遭ってしまったらどうすれば良いのかを教えること。例えば車から声をかけて道を聞いてくる大人がいたら、親切にしてあげるのは悪いことではないけれど子どもにわざわざ道を聞くのは怪しいんだと判断して、車がUターンして追いかけて来る時間を稼ぐために後ろに歩きされってディスカッションとクイズを通して子ども自身に気づかせる。

 学校なんかで教える防犯方法だと子どもを狙う犯罪者が狙いとしているものが猥褻行為だってことをぼかして曖昧にしたまま、ただ危険だから気をつけようとしか言っておらず、子どもが見ても心底からは理解できていないとのこと。スターシップが実際に制作したビデオはそうしたナイーブな部分にも踏み込んで、子どもがいたずらに怯えることはなしに自分たちの何が狙われているのかを知り、それを防ぐにはどうしたら良いのかを考えどう行動するかを理解できるよーになっているとか。って言われると子どもが一体何をされちゃうのかなって尾籠な興味も浮かんで来るところが厄介だけどそれも含めてどんなロジックで子どもの”気づき”を促しているのかは知りたいところ。監修はセコムで結構本気。買ってみるか。

 「銀色の髪のアギト」があんなんだったこともあってこっちに期待するしかないと舞台挨拶付きの試写で押井守監督の「立喰師列伝」を旧徳間ホールへと見物に行く。同じ建物に以前あった「アニメージュ」から元編集長の鈴木敏夫さんが出演者として来場していたり、前編集長の大野修一さんがこれまた出演者のひとり、山田正紀さんを連れて訪れていたりと同窓会のよう。広報をやってて今は東北新社にいる室井さんも後で発見したりして、かつて上の階で東京港を見下ろしながら未来を語っていた故・徳間快康さんの建物に染みついた魂もきっとお喜びだったことだろー。あの社長室にあった胸像、どこに行ったのかなあ。

 映画は怪作。とにかく喋りが凄まじい。映像の凄さについてはかねがね言われていることだけど、よーするに撮影した人物なんかを「ミニパト」よろしくCGなんかも使って動かしエフェクトをかけつつ疑似立体紙芝居を演じさせるってもので、見知った出演者たちの登場に興味は持てるけれどそれはそれ、石川光久が誰で鈴木敏夫が何者で河森正治がどこのアクエリオンかを知らない人には別にだからどーしたってところだろー。動きは凄い。いわゆるアクションとゆー動きじゃなくって写真をどう動かしていけば面白くってそれっぽい動きになるのかを、理解した上で作り込んであるんで見ていてとにかく良く動かしてるって感動を味わえる。まあ昔だったら「空飛ぶモンティパイソン」のオープニングでテリー・ギリアムが手がけたアニメがあるし、今だって数々のアートアニメもあるんで、CGを使ったって手法的な新しさは讃えられても、映像的にはそーしたものと並び比べて突出したものだって言われないかもしれない。

 ただセリフは凄い。絵の巧妙さがまず目に止まるアート系のアニメとは違って、怒濤の如くに繰り出されるセリフってゆーかナレーションの、詰め込まれた情報量と積み重ねられた知識量と練り込まれた思想量によって目よりも耳がとにかく刺激を受ける。一場面だけ選べば「御先祖様万々歳」の第6話で犬丸が見せる立ち食い蕎麦屋での会話と同じだけど、それを一種の泣き芸と位置づけ前代に正統さがあり色香があって、やがて美学の皆無なテロへと居たりマスプロダクツなもの、システマチックなものへの反発があり白けがありナンセンスがあってそして浸透と拡散に至る、日本を支えた風潮なり心理の歴史のおさらいとそーしたものへの押井さんなりの見解が込められていてひたすらに圧倒される。

 そしてそれらの声をほとんど1人で演じ分けている山寺宏一さんの凄まじさよ。100分に渡り9役を演じたそーでその千差万別な声を津浪のよーに浴びせられ続ける環境で、画面に出ているのが石川光久だろーと樋口真嗣だろーと関係ないって気分が湧いてくる。なるほどこれは押井さんの映画であり、且つ山寺さんの映画でもあったんだなあ。圧倒されます。その他の出演者では大森望さんとさいとうよしこさんと娘さん息子さんがハンバーガー屋を襲撃(想像)してたり滝本竜彦さんと佐藤友哉さんが得体の知れないサイエンティストをやっていたりと知っていれば楽しいけれど知らないとあれ誰? ってなものか。「どうしてウルトラマンがウィンドブレーカーを着ているの?」って人もいたりして。ってことは、つまり。そんな楽しみも満載な「立喰師列伝」を誰が見てどんな感想を抱くのかが今から楽しみ。ヒットは……しないなあ、やっぱ。

 原作で大石英志さんの「神はサイコロを振らない」(中央公論新社)を読んでどうなるかをすべて知っている身で見たドラマ版の「神はサイコロを振らない」は冒頭からただひたすらに滂沱。10年前に消えてしまい墜落したと思われて居てた飛行機が10年後に突如現れ着陸する。乗っていた人は全員無事。喜ぶ家族に恋人たちっていった内容とコメディ仕立ての演出に10年ってゆー彼我のギャップを浮かび上がらせる話なのかと思った人も多いかも。

 けれどもそーしたあっけらかんとした状況がいずれ来るクライマックスでどーなるかを知っていると、とてもじゃないけど笑ってなんかいられない。演出のコミカルさがクライマックスに近づくに連れて濃さを増すシリアスでシビアな状況への感慨を、かえって強めてなおいっそうの涙を誘うことになりそー。軽妙な演技をしていてもいざという時にはピシッとなる小林聡美さんの起用もそんな展開を見越してのこと、なのかな。だとしたらキャスティングも演出も脚本もなかなかの遣り手と見た。さてもどーなるか。ドラマは見ない人間だけどこれだけは最後まで追っていこー。ともさかりえさん、巧くて可愛い演技をする女優になっていたんだなあ。スタイルも相変わらずにグッドだし。


【1月17日】 「ジーエージーエー文庫が出ます」でおなじみ「ギャラクシーエンジェル文庫」だと思った人もやたらといそーな「GA文庫」から出ていた榊一郎さんの「神曲奏界ポリフォ二カ ウェイワード・クリムゾン」(GA文庫、590円)は音楽を奏でることで精霊を動かし社会に貢献する仕事を始めたばかりのタタラ・フォロンってゆー主人公が見習いから正社員への登用につながる大事な仕事を受けたものの本人の満足が行かずに差し戻し。雇っている会社の社長は自覚が足りないと叱りつつ依頼主に謝りに行ったところがそこでは精霊を操り悪事を成す男によってとんでもない事態が引き起こされていた。

 音楽で精霊を操る「神曲学士」の設定そのものだったら過去に探せば類例がありそーだし、精霊を呼び出す能力だけは何故か高くて高級精霊の美少女を呼びだしたものの扱いに難しい彼女に振り回されっぱなしという点は吉村夜さんの「ハーモナイザー・エリオン」におけるエリオンとランドラの関係にちょっと似てる。ただそこは名うての書き手だけあってストーリーは起伏に富みまた音楽で精霊を操る手法も描写が細かく説得力十分。奏者の特性も加味された戦いぶりのバリエーションを重ねていくことで平板になりがちな戦闘描写を幅のあるものに仕立て上げている。

 タタラにいきなり精霊がついてて同居している部分なんかは書けばまるまる前日譚に出来そうなんだけどあっさりすまし、圧倒的な強さを誇る彼女がヒロインであるにも関わらず敵にピンチに陥れられてしまう容赦の無さもあったりして、定番の図式からズレた驚きも味わえる。炎髪をしてぶっきらぼうだけど戦うと強い美少女ってのは「灼眼のシャナ」のシャナにもちょっぴり重なりそう。そんなヒロインの冴えない男にやきもきしながらも彼を守るために戦う姿が好きな人なら読んで楽しめるかも。会社は個人の欲求を満たすためにあるんじゃないってことを分からせる大人っぽい描写もベテランならでは。こーした現実社会を踏まえたリアリティって奴もきっと類例のありそーな話を一頭抜けたものにしているんだろー。侮りがたし「GA文庫」。んで水野良さんの「ギャラクシーエンジェル」本編はいつ出るの?

 プロダクションI.Gが株式公開から初の業績説明会を行うってんで見物に行く。会場ではまず英語版の「IGPX」第1話が上映されたけど主人公のタケシの声が「A.I.」のハーレイ・ジョエル・オスメントで敵のチーム「スレッジママ」でタケシに絡むポニーテールで顔に傷のあるヤマーの声がマーク・ハミルと聞いていったいどんな声になるのかと耳そばだてたらこれが意外にマッチ。日本のタケシとまるで違わない芯はあるんだけどどこかつかみ所のないタケシの声をハーレイくんが見事に演じれば、しゃがれた声で嫌らしくタケシに絡むヤマーをマーク”スカイゥオーカー”ハミルがしっかり当てている。

 ディズニーやピクサーのアニメーションにも当てはまるけど、声に俳優を起用するのは同じでも、単にファンが多くてお客を呼べるビッグネームだからってことじゃなく、役にちゃんとマッチする俳優を用意して来るところはさすがエンターテインメントを大切にするアメリカって言ったところ。「初めて声をやりました。頑張りました。難しかったです」と完成披露で堂々と言いやがるアニメ映画なんかがあったりする日本とは、作り手も演り手も仕事に対する満足度が違うってことなんだろー。あとそれで満足してしまう受け手の多すぎるってゆー現実もあるけれど。

 その「IGPX」がいったい米国でどれだけヒットしているのかは知らないけれど、上場以来株価だけは急上昇しているプロダクションI.Gだけにこれからいったいどんな派手なことをするのか、知る意味もあってのぞいた説明会だったけど石川光久社長はきわめてシビアで且つシリアスに現状を踏まえ、今はとにかく50数億円の売上を維持しつつ次の飛躍に備えて良い作品を作り続けることだと強調。そうする中で原作権やら版権を自前で確保し配給などの交渉も自分たちで行えるような力を蓄えることによって、以前に30億円前後だった売上が50億円前後へと跳ね上がったよーに、次の飛躍が果たせるんだと訴え集まったアナリストたちに理解を求める。

 「20億円で作った映画が成功したから次は30億円の製作費を集めると言って集めれば売上なんかは上がるけどそうはしない。20億円で作れたのならそのノウハウから次は同じクオリティの映画を17億円とか15億円で作れるようにしていけば、その分だけリターンは増える。スケジュールを短くできればクリエーターへの期間単位のお金を厚くでくるし、次の仕事へと移ってもっと稼げるようになる」とも。それこそ四半期ごとの利益にしか眼が行かないアナリストたちにそーいった長期スパンで物を見る考え方を理解できるかは難しいけど、何かを作り出すことで信頼も評価も得てきたクリエイティブな会社の、これが基本なんだとゆーことを改めて知らしめた意味で意義のある説明会だったって印象。

 ものすごい儲けは出さないけれど「原価計算をしっかり」やって「赤字を出さない」ようにすることで、利益を確保し信頼も得つつ自分たちで企画を立てて実行に移せる体制を整えて来た、それをこれからも引き続きやるって決意をアナリストたちに見せた石川さん。「ちやほやされるアニメ会社になんかならない。地に足の着いた会社にしていく」って言っていたから、公開によって儲かったからってフェラーリなんか買って乗り回すよーなことはしないだろーね。こんなスタンスを思えばプロダクションI.G株、公開から短期で急騰なんかする株じゃないしこれからすぐの急騰を見込む株でもない。長期で持って次のジャンプアップを待ち、ともに成長していく感じで持つのが正しいんだろーけれど、すでに手の出る値段じゃなくなっているからなあ。困ったものだよ昨今の騰貴市場と萌え株ブームにも。

 本命ばりばり。芥川賞と直木賞の発表があって芥川賞は絲山秋子さんが取り直木賞は東野圭吾さんが獲得とノミネートされた回数の多い人たちが”順当”に受賞となった模様。東野さんばばりばりな本格ミステリーだったから抒情に流れやすい選考では不利かと思ったけれどここまで候補に上げてきた以上はやはり落とせぬと選考委員の人たちも考えたとゆーことか。絲山秋子さんは前回が直木賞へのノミネートだっただけに鞍替え受賞で行くかと思われた矢先の出戻りだったから、これで受賞させない手はないって意志が上げる側にも出す側にもあったってことなんだろー。しかしいずれも文芸春秋の作品。雑誌の売れ行きが落ちる時期に賞を作って盛り上げ雑誌を売ろうとゆー、自前の商売優先で始めた賞が”原点回帰”したってことになるのかな。なるほど”原点回帰”を早々に唄った毎日新聞はご明察だったってことで。意味ちょっと違うけど。


【1月16日】 本編ですら一切の白見せが存在しないテレビ東京とは比べものにならない楽しさをローカルネットのアニメーションが備えていることは分かっていたつもりだったけど、まさかオープニングから堂々過ぎる白見せを繰り出して来るとは思いもよらかなった「タクティカルロア」。企業に属する駆逐艦だか何かが得体の知れない敵に出会って会社のプレッシャーを覚えながらも戦闘するって展開で、それなりに緊迫感はあったけど戦艦が「青の6号」がよーやく出来た6年前かと思わせるよーなCGだったり、キャラクターが妙に平板だったりしていかにもローカルって感じ。普通だったらDVDを買うどころか番組だって見ないかもしれない。

 けれどもそんな平板さを吹き飛ばしてオープニングからスカート姿の美女が足を組み替えるシーンを真正面から描いて見せ、なおかつ本編でも着替え中の女性のところに男を天井から落として女性の姿を真正面から、それも足下から頭へと視線をなめる形で描き上げて見せてくれて疲れた夜中の目がこれで一気に目覚めさせられてしまった。いやあ。うわあ。けどでもそれだけと言ったらそれだけで、ストーリーは判然とせずキャラクターはしゃきっとせず何とはなしに誰かと戦う女性たちって設定ばかりが目の前をちらつく。ここから一体どこへとストーリーは向かっていくのか。それによっては見続けてもよいかもしれないんであと数週間は成り行きを見守っていくつもり。そしてオープニングのホワイトに本編のピンクやら水玉やらあれやこれやに脳天をヤられてしっかり最後まで見続けてる僕がいる。いそーだね。

 まだあったのか。といったら失礼かもしれいないけれどこのところクレジットカード決済に台頭なんかであんまり名前を聞かなくなっていたウェブマネーがオンラインコンテンツを提供しているサイトでユーザーから評価を受けてる企業を表彰する「ウェブマネーアワード」を立ち上げたってんで見物に行く。今が旬なIT企業によるオンラインゲームの表彰ってんだから、さぞや派手なイベントになっているのかと思いきや、「六本木ヒルズ」の49階にある会議室を使った手作り感たっぷりの表彰式で、集まったプレスも新聞やらネット系メディアやらごく少数。創業から8年が経過したとはいってもウェブマネー、これでまだまだ世間的にはあんまり知られていない縁の下の力持ち的存在に留まっているらしー。

 とはいえ加盟サイトは数千とかあるし利用も05年12月は月間で100万件を超えたとか。インターネットを使ってコンテンツ配信なんかを行う企業がブロードバンドの普及をバックに急増している一方で、パソコンが行き渡ってクレジットカードを持たない学生とか、それこそ子どもなんかがインターネットでコミュニティサイトとかを利用するように成る中で、ウェブマネーを使う率が結構な割合になっているとゆー。

 「iTunes」の場合はアップルなんかが自前でプリペイドカードを作って提供しているからウェブマネーは直接は関係ないけれど、クレジットカードではなくプリペイドカードを使う動きはネット上ではまだまだこれから普及しそう。そんな中でアスキーサムシンググッドの時代から「ビットキャッシュ」と並びプリペイドカードを提供して来たウェブマネーにも、ようやく追い風が来たってことになるのかな。そーいや「ビットキャッシュ」ってどこ行ったんだろう? ライブドアグループに入っているじゃん、こりゃ大変。

 なんか出歩いて戻ってきたらライブドアに家宅捜索のニュース。何をしでかしたと調べたら表向きは子会社のライブドアマーケティングが出版社のマネーライフを買収した際に”風説の流布”を行ったとゆー証券取引法違反の容疑だそーで、伝聞では前に買収した出版社が実はそれより以前から深い関係だったのに遅れて発表したのがけしからん、といったものらしー。実質的には関連会社だったとゆーその状況がすでに株を持っていたけど一般には公表していなかっただけなのか、それとも隠れて持っていたけどそれを一気に表面に出したものなのか。買うとか言って買わなかったらそれこそ嘘つきになるんだけど、すでに持っていたものを持ってますと言ってどれだけの問題があるのかが今ひとつ分からず、それをもってしてライブドア本体とそして堀江貴文社長までをも悪逆非道と誹れるべきなのか判断に迷う。

 ただそんなしょぼい容疑で家宅捜索をする以上はきっとそこから先に何か狙っているものでもあるんだろー。それがライブドアとゆー会社なり堀江貴文社長なりに繋がる何かであって白日の下にさらそーとしているのか、あるいは目立ち過ぎた堀江社長個人をここで抑えておくことによって台頭する若い市場騒乱者たちを牽制しよーとしているのか。敢えて家宅捜索まで行っているんだから、ライブドアが単に証券取引法違反で上げられ、それも関連会社による出版社の買収とゆーネタで上げられただけで終わりになるとはちょっと思えない。なったらなったでそれもまたきっと何かを意味するんだろー。何だろう? ともかく始まったばかりでしかない捜査が、最後に上げるだろー容疑を見てからこの一件が何を意味したものなのかを考えることにしよー。

 トレンドとか割に早めに取り入れネタにする「きまぐれコンセプト」だけどオタクネタにはからっきし弱い模様で16日発売の「週刊ビッグコミックスピリッツ」掲載の漫画ではオタクがアイドルに「○○たん」と「たん」付けで呼ぶ(アイドルは呼ばんだろう?)ことを上げてだったら「アフガニスタン」「ウズベキスタン」「パキスタン」「トルクメニスタン」といった中央アジアの各国をおたくが愛でているんじゃないの? って感じに揶揄している。もう莫迦かと。阿呆かと。ホイチョイプロダクションは「あふがにすタン」を知らんのか? 知らないんだろーなー、きっと。だからさも自分たちが発見したかのよーにニマつくオタクの漫画を描いて揶揄するんだ。時代はもっと先を言っている。擬人化の果てに単行本まで刊行されてる。「びんちょうタン」なんてアニメ化だ。まあちょい先を言ってるんだぜって程度の先進性だからこそ、一般から遊離せずそれでいて新しさを提供しているってポジションで、何十年も「スピリッツ」に連載を持てているだろー。そんな微妙な位置取りもまたホイチョイらしさってところか。


【1月15日】 春みたいな暖かさ。空気の匂いも3月末あたりから4月にかけてのちょい寒い日って感じで、このまま一気に春めいてくれれば寒さに震え布団にくるまり何もできないまま、無駄に時間を潰さなくても済むよーになるんだけど世の中きっとそうは甘くない。きっと数日のうちにぶり返した寒波に東京までもが数メートルの雪に覆われ部屋に閉じこめられたまま、食べるものも切れ何年も昔に勝ったパスタを水で戻して囓りながら何ヶ月間を過ごす羽目となるに違いない。ダイエットには良いけど健康には悪そう。早く春にならないかな。景気も一緒に。

跳び跳ねボールを弾き掴む。ゴールキーパーの頑張りがサッカーの試合を盛り上げる  そんな陽気に誘われ「国立霞ヶ丘競技場」へと「全日本大学女子サッカー選手権大会」の決勝を見物に行く。目当てはもちろん早稲田ア式蹴球部女子を応援に来るチアリーダー、だったんだけど昨日は雨の中を派手に踊っていたよーなのに今日は他で仕事があったのか来場せず目の当たりに出来ず残念無念。一方の東京女子体育大学はスタンドで歌い踊っていた応援の人たちが、今日も集まっては「セーラームーン」やら「ドラえもん」やら「怪物くん」やらジュディマリやら、ちょい古かったり古めかしかったりする歌に歌詞を着けて試合の間中を歌い踊ってて元気いっぱい。体育大な割には眼鏡っ娘も混じっていたりして遠目に見ていても華やかで楽しそう。

 だから勝たせてあげたかったけど試合は東京女子体育大学がコーナーからのヘッドで先制しながらも追いつかれて同点に。その後は双方のゴールキーパーの必至のセービングもあって無得点のままで進んだけれど突入した延長の前半に、ペナルティエリアでの反則から早稲田がPKを獲得。東京女子体大のキーパーも懸命に手を伸ばしたけれどその先をすり抜けられて早稲田が1点をリードしそのままタイムアップとなって早稲田が1991年の創部以来、初となるインカレ優勝の栄冠に輝いた。こっちもこっちで体育大とゆー壁に阻まれ優勝どころかリーグでの1部維持もままならない時代が長かっただけに、壁を破ってのタイトル獲得は1部にようやく戻った男子以上に喜びもひとしおだっただろー。

 選手層では高校勢で強い聖和学園から何人が入りL・2の清水第八スポーツクラブからフォワードの佐藤衣里子選手が入り伊賀FCくノ一の下部組織にあたる伊賀FCフロイラインからも選手が入っていたりして強化もそれなりに進んでいる模様。偏差値超絶な学校だけあって体力だけで入れる訳じゃなく、選手もそのあたり大変だったんだろー。どんな勉強をしたんだろう? とてもじゃないけど及びもしない偏差値の持ち主として是非に効いてみたい気が。まずは毎朝ランニング20キロ、ってんならちょっと遠慮するけれど。

 とはいえ一時の学力偏重を改め、学校全体が何か特色を持ってブランドイメージを作ろうとしてスポーツの推薦を強化している早稲田。ラグビー部なんかはアディダスとスポンサー契約を結び設備面の充実も図った上で選手獲得に励んだ結果、2年連続で学生日本一に輝く強さを持つに至った。それと同様に、女子のスポーツにおいてもあるいはいろいろ差配があって、これだけの選手確保に繋がったのかもしれない。ブランド力があってもそれにあぐらをかいたままではいつか錆びて朽ちるしそうなりかかっていたところを、踏みとどまって今再びの隆昌を見つつあるところに少子化時代における教育ビジネスの可能性って奴が見えたりする。一時のハイテクブランドにかげりの見える慶応SFCもここで起死回生の手なんか打って来るのかな。

 男子の試合はどーでも良いんで会場を出て恵比寿へと向かいひろき真冬さんの久々とゆー個展を見物。おおこれはジョージ・アレック・エフィンジャーの「重力が衰えるとき」の表紙ではないですか。ブーダーイン3部作のそんな表紙絵をはじめ「マンガマスター12人の日本のマンガ職人たち」(美術出版社、2500円」)に掲載されてる短編「月の娘」の原画が展示されててあの、繊細にして美麗な絵を間近に見られて至福の時間を短いながらも過ごす。

 会場は画廊カフェーで近所のハイソな御方が連れて来たのかでっかい犬が寝ていて抱きしめ枕にしたかったけど、飼い主に迷惑だからと我慢。でも気持ちよさそうに寝ていたなあ。触りたかったなあ。会場では23枚だかが入った絵はがきのセットを購入して帰途に。画集とかも出ていれば欲しかったけど絶版なのか見かけず。最初の画集「ルイーズ」は確か勝ったはずだけど部屋のいったいどこに行ってしまったのやら。大きな版で再刊しないかなあ。できれば初期の漫画の単行本も。見たこと、なんです、これはさすがに。

 有川浩のさんの「図書館戦争」(メディアワークス)を映画化するためにフジテレビの亀山千広プロデューサーは白紙の小切手を持って明日朝1番にメディアワークスへと駆け付け映画化権を奪取すること。「県庁の星」なんて予定調和の範囲を抜けない温さで溢れたぐだぐだの行政批判本を映画化するより、よっぽど痛快きわまりないバトルアクションと1人の若者の成長を描きつつ、権力が言論の自由を縛り人権を蹂躙しつつある現状への異論を、例えるなら「バトルロワイアル」のように唱え世間の耳目を集めることができるから。

 公序良俗を守り人権を保護するとのお題目で、メディア良化法が施行させた日本ではメディア良化を推進する勢力が武力を備えて不適切な本の取り締まりに当たっている。出版社から街の本屋に至るまで監視・弾圧の網を広げるそんな勢力に異論を唱えたのが図書館たち。組織を作りメディア良化法とのバランスをとるべく強化された図書館法のもと、武装化しては半ば治外法権化された図書館に攻めてくるメディア良化の特務機関員たちと日々激戦を繰り広げていた。

 そんな図書館の防衛隊に新たに入った女性の笹原郁は、恵まれた体力と誰よりも本を愛し図書防衛隊に憧れる気持ちで訓練に励む。融通の利かない性格もあって上司とも同僚とも対立してはたびたびピンチを招くが誰よりも図書防衛隊のことを思っての行動と認められ仲間の導きもあってひとりの図書防衛隊員として成長していくってストーリー。いやあ面白い。本好きならずとも昨今の妙に息苦しい世の中に得体の知れない不気味さを覚えている人なら何かを感じ共感できる。

 もちろんいたずらに反対するだけじゃなくってロジカルに、どうして自由が必要なのかを考えさせる部分もあって、説き伏せられるってゆーより納得させられる。主人公の女性の「交響詩篇エウレカセブン」でガキっぽさ丸出しにして騒ぐレントン・サーストンにも似たまっすぐ莫迦っぷりに苛立たされる部分もあるけれど、周囲のフォローに本人の自覚といった歯止め効いてるんで、呆れ放り出すところまではいかないバランスが良好。映画になったとしたらクライマックスが寸前の激戦から見てややおとなし目だけど、そこをサスペンスフルに仕立て直せば見てスリリングなエンディングの果てに、安心とそして世相への憤りを抱きつつ劇場を後に出来るだろー。主演は誰がいいかなあ。25歳前後で体力ありそうで170センチくらいで熱血莫迦っぷりを演じられる女優。誰になるのかなあ。


【1月14日】 体内のサッカー成分が薄まってきたので雨だったけど「西が丘サッカー場」まで「全日本大学女子サッカー選手権大会」の準決勝を見に行く。第1試合が「東京女子体育大学vs大阪体育大学」の東西アスリート系女子大のサッカー部対決。それだけに体力技術とも見るべきものがあるかと想像して行ったけど、なるほど走り方とか堂に入ったもので、体育をしてない人がちょこちょこ走るのとは違った、全力疾走の姿を見せてくれたしトラップなんかっももらってしっかり自分の足下へと落とす技術を披露。それだけなら「L・リーグ」と遜色のない所を見せてくれる。

白鳥鈴音と秋山乙女じゃありません。けど大きいなあ171センチのディフェンダー  キック力でもサイドチェンジとかちゃんとあったしクロスのスピードもなかなかなもの。ボールに固まってガチャガチャする場面もあったけどこれはキック力のない女子サッカーではよく見る場面でそんな中からうまくサイドへと出たボールに走り込める選手がいれば、受け取り前へと送ってそこからクロス、そしてシュートといった綺麗な攻撃スタイルを見せてくれる。

 メンバーを見るとINACレオネッサとかスペランツァ高槻といったL・リーグに所属するチームの下部組織なんかを経験した人もいて、進学してそっちで部活に励んでそれからチームに戻るとかしながら、鍛え技術を高めているんだろー。日本サッカー協会の後押しなんかもあってクラブの数も増えているし、これでなかなか裾野の広がる女子サッカー。東京女子体育大学には身長171センチのディフェンダーなんかいたりして、育ってくれれば「なでしこ」の守備も安泰か。

 第2試合の方が神奈川大学と早稲田大学でL・リーグの下部組織出身者や強豪高校の出身者も多く実力面でもそれからビジュアル面でも、なおかつチアリーダーが揃っての応援面でも見物だったんだけど雨が強まってきたんで待避。狭い西が丘のスタンドで舞い踊るチアリーダーを間近に見られるチャンスだったのに……。まあ良いや早稲田が勝ったみたいあし明日の決勝でそっちは楽しむことにしよー、寒くなくって雨が降ってなければ行くから、多分。男子の試合はどーでもいい。

 バスでサンシャインを経て池袋に歩いていく途中に立ち寄った「ゲーマーズ池袋店」の前に長蛇の列。イベントがあるんだろーと横をすり抜け中に入ると夜逃げ寸前みたいな状態に荷物なんかがまとめられた場所があって聞くと明日で閉店だとか。ビル全体が取り壊しになるみたいでそーいえば2階にあったエロ漫画屋さんもしばらく前に店を閉めてどっかに移転していたっけ。「ゲーマーズ」だけは残っていたけどいよいよもって店を畳まざるを得ない状況となって今日は「ギャラクシーエンジェル」だか何かのイベントがあって、明日は久々となる「でじこ」のお出ましによるグランドフィナーレ撮影会が行われるらしー。

 閉店といっても別に場所を見つけて移転したい考えらしーけど現時点では時期も場所も未定とか。「乙女ロード」とか持てはやされて秋葉原とか中野に並ぶオタクの街として世間に喧伝されている地でありまた、「ゲーマーズ」にとっては最初に店を構えた発祥の地ともいえる池袋を一時とはいえ退却してしまうのは正直言って勿体ない。渋谷の店はとうになく新宿の店は品揃え目で弱すぎで、横浜はしばらく行ってないから知らないけれど変わってないとしたらまあそれなり。秋葉原の駅前にあるビルがあれば利用に関してはオッケーなんだけど、売上を伸ばさなければいけない時期に規模だけはまああった池袋の閉店は企業としても痛いかも。その秋葉原だっていつまでオタクの街で居続けられることか。「乙女ロード」の一角に早く開いた場所でも見つけて再び三度の開店を、迎えて欲しいものだと希望。「でじこ」をキャラクターに引き渡す代わりに「アムラックス」の角を開放してもらうってのは、どう?

 そんな「ゲーマーズ」で売っているからてっきり「ギャラクシーエンジェル文庫」かと思った……ってのは嘘だけどだとしたら何の略なんだろー「GA文庫」の創刊ラインアップが並んでいたんで購入。神野オキナさんに榊一郎さんに御大・朝松健さんを揃えて来るとは頑張ったなあ、本気だなあって印象だけどこの面子だったら別に他のレーベルだって出せそうな気もしないでもなく、何故に今この新しいレーベル、書店で面を取ってもらえるのかも不明なレーベルで出すのかが業界に通じてない身には分からない。考えるにそれぞれ各レーベルではシリーズを立ち上げている以上は、新しいシリーズをそこで出す訳にはいかないってことと、あと各レーベルでは新人の参入が活発でベテランを混ぜる余裕がなくなって来ているってことなのか。

 そんな1冊となる神野オキナ「虚攻の戦士 『ナツ』のキオク」(GA文庫、590円)を一気読み、おもしれえ! 主人公の三隅舞矢は高校生でアニメ研究会の部長で半端じゃないでぶちんだけど実は秘密があって強くって、幼なじみの女の子で風紀委員長と剣道部の部長を兼務しながら頑張っている古鳳翔夏を守りながら得体の知れない敵と戦ってる、って設定を聞くとまず思い出すのが細野不二彦さんの「さすがの猿飛」に登場する史上最強のでぶちん忍者、猿飛肉丸くんだけどその見かけによらない強さが学校では周知の肉丸くんと違って舞矢は傍目にはただのアニメオタクと思われているから事情はちょっと違う。

 世界観もまるで違って多層構造になっている宇宙のどこかで「集積者」と呼ばれる万物の情報を喰う存在によって滅ぼされてしまった世界から、記憶を受け継いで目覚めた現世の人たちが異世界から襲来する「集積者」の端末と戦っているってゆー設定がまずあって、そんな中で舞矢は事情があって「集積者」と戦う「式者」となり、パートナーで見かけは寡黙な美少女の「装者」とともに倒しても倒しても現れる「端末」に挑み消去する過酷な日々を送っている。

 かつてのただのデブオタではいられなくなった舞矢の変化してしまった日常も残酷だけど、それ以上に残酷なのは当人がそれと気づかないうちに世界の激変に巻き込まれてしまった翔夏の運命か。”あの”夏の記憶を消されそれ以前から続く平凡な日常を過ごしていると思い込んでいる彼女だけど、その内に眠る力を求める存在によっていつか舞矢をほのかに思い出張しているだろう両親を思う日々は崩れてしまう。

 なおかつ思いを寄せている舞矢までもがまるで違う存在となり、彼の自分への想いがあるいは虚構のものかもしれないと判明する時にいったい彼女はどうなってしまうのか。オープニング早々から奇手を繰り出し、舞矢とそのパートナーで人間ではないにも関わらず舞矢に微妙な感情を抱き始めている霧音を苦しめる「端末」と、そして「集積者」の攻勢もあって予断を許さないシチュエーションの中で、繰り広げられるだろー戦い&三角関係のドラマに期待大。猫耳で見かけ少女の仙人は今回はまだ出ていないけどやっぱりいつか出て来るのかなあ。しかし「GA文庫」、創刊ラインアップで凄い人材とシリーズを見つけて来たぞ、これはうかうかしていられないぞ他のレーベル。「ジグザグノベルズ」も面白いしなあ。「ライトノベルブーム」って別に焼き畑でもなくちゃんと裾野の拡大に役立っているなあ。


【1月13日】 ああそうか山城敬さんが副編集長なのかと「スター・サッカー」の奥付に気づいてから録画してあるのを見た「IGPX」は、初期の何も説明がないなかを情感の薄そうな主人公がのんべんだらりとマシンに乗って戦う抑揚の無い展開に、相方の女ドライバー同様にいらつきを覚えてこいつは見るに耐えない作品かもって気になっていたけれど、1月見て2月見て3カ月が経った頃には状況が分かり主人公のパーソナリティも判明し、淡泊なんだけれど負けるのは好きじゃない主人公が迷い考えながらも強くなっていくって様に、気持ちをシンクロさせつつ次々に立ちふさがる敵を倒して頂点へと上り詰めていく展開を楽しみながら見られるよーになっていた。

 別に演出が大きく変わった訳じゃなく、相変わらず山場を少なくして淡々として状況を流していくだけなんだけど、キャラクターの属性が掴め彼らが何のために何をしているのかが理解できたことで、その世界で繰り広げられるドラマを飽きないで見られるよーになっていた。掴みで引きつけ逆転のドラマで次も見させるのが漫画であれアニメーションであれ連続物の王道かって思っていたし、今もそれがエンターテインメントには大切なんだと信じているけど、連続して見られることによって何かをそこに描き上げるとゆー、まったり系で淡々系のアニメって奴も成立し得るんだってことを「IGPX」によって教えられた気分。

 見続けさせられさえすれば視聴者を展開に慣れさせ、シリーズに引きつけられるんだってことで、それを意識して最初っからあーいった淡々とした描き方をプロダクションI.G.が選んで行ったんだとしたら、これはアニメの流れにおいてもちょと凄いことかもしれない。2クールを繰り返して放映し、ケーブルで何度も放映してそれに気づかせ再放送再々放送を見させて楽しませる、アメリカのケーブルテレビみたいな場を意識しての演出だったとか。それはないか。いよいよクライマックスに近づいて、主人公の憧れだったレーサーの消息も明らかになりそー。まあ意外でもない所に落ち着くんだろーけれど、そーした淡々として微笑ましい展開もまた「IGPX」らしさってことで。これも慣れさせられたから故のまったりとした反応か。それともやっぱりユルい展開に慣れただけ?

 金曜日。新年早々から。だからといって何もないのがつまらないといえば言えるんだけど。ニコンが銀塩フィルムのカメラから超高級機と超初心者機を残して撤退とかゆーニュースには何だか大きな時代の移り変わりってやつが感じられて止まない。そりゃまあ過去に8ミリがビデオに取って代わられ消滅したことがあったしレコードだってビニール盤がCDによって駆逐された歴史を見たけれど、8ミリよりもビデオの方が画質においても使い易さにおいても圧倒的に上だったし、レコードよりもCDの方が扱いやすさに勝れ音質もシロウト耳にはCDの方がノイズの入らない分綺麗に聞こえた。

 対して銀塩写真とデジタル写真のどちらか上かとえいばプリントされたものは圧倒的にアナログカメラで撮影された銀塩が上。ノイズも入らずボケもせずにしっかりと隅々までをクリアにくっきりと写し取る。デジタルだって引き延ばしさえしなければ遜色のない写真は撮れるしパソコンのモニター上で見るだけならデジタルの方がむしろそのまま表示できる分、扱いやすさで次元を超えて上だったりする。でもそうした”装置”がなければ見られないデジタル写真ってもののどこか不安定な感じが未だ残って、デジタルへの全面的な移行を躊躇させる。

 それはノスタルジーとかではなく、カメラを写真撮影の道具として考えた時に起こる様々な問題で、例えばカメラに電池がなくなり再生する装置も無い場所に行ったときに、デジタルカメラはただの重たい箱と化す。マニュアルカメラは電池なぞなくてもフィルムさえ入っていればシャッターを切ればそこに景色を写し取れる。それを思うとデジタルカメラを保つ一方で銀塩カメラでなおかつ操作がマニュアルなカメラも手に留めておきたいという気がなかなか抜けない。

 単なる心配性かもしれないけれど、カメラが写真を撮る装置である以上、その目的に不安を抱かせるような可能性は極力排除しておきたいというのが心情で、デジタルへの全面的な移行はそうしたリスクの増大をユーザーに強いるもの、といった気がしてならない。写真撮影というカメラの本来的な目的を後ろにおいやってでも、企業としてのコストを求める姿勢の現れとも言い換えられそう。

 まあそれを言うなら針を工夫すれば円盤から音を拾い出せたレコードとは違って装置がなければ再生不能なCDへの全面的な依拠だって事情は同じ。言っても詮無いことなのかもしれない。まあ言い新製品が出なくても中古に行けばアナログのカメラはいくらだって溢れてる。これを機会に1台2台買い求めて、電池がなくなり電気も来ない、世界の終わりがやって来た時に撮影できる準備を整えて置こう。現像ってどうやるんだ?

 「広州白天鵝賓館」だよなあ、金正日総書記が広州で宿泊しているホテルのてのがNHKのニュースで映し出されていたけれど、川沿いにある白いホテルでアプローチの道路が長く伸びてるロケーションに記憶がたっぷり。それは1993年の10月末から11月の頭にかけて中国を仕事で大旅行した時に、広州で宿泊したのが確かこのホテル。ロビーに滝があって窓からの眺めもバッチリとゆー高級っぷりは広州でもトップクラスって聞いていたから、金正日総書記の宿泊先に選ばれて当然っていったところか。それでも宿泊は100ドルくらいで日本のホテルとは段違いなやすさ。なおかつ部屋の広さは日本のホテルの数倍は軽くあるから何日か滞在して中華料理に舌鼓を打ちつつゴージャスな気分を味わうのに最適か。そうかだから金正日総書記もここに泊まったのか。また行きたいなあ。


【1月12日】 悪くない。むしろ大好きかもしれない「スター・サッカー」。サッカーを中心にしながらも音楽だのファッションだのといったトピックを取り上げるカルチャー誌って聞いていたからてっきりサッカーは流行りの象徴で、それをツマにしてスポーツブランドを取り上げてみたりサッカー好きの芸能人に申し訳程度にサッカーの話しを聞きつつメインは音楽だの映画だのといった話で埋めて芸能人のファンだのファッションを気にする小僧小娘に売りまくる、オサレ度マックスでサッカー度ミニマムな雑誌になるのかと思ってたら違ってた。サッカーマックス。それもハイパーに。

 ミュージシャンへのインタビューは確かにある。「ロッキング・オン ジャパン」にいたとゆー鹿野淳さんが編集長なだけあって、手法もざっくばらんで時に鋭く突っ込む問いかけも含めて長いインタビューを掲載しているけれど、聞く内容はとにかくサッカー一色。あのオアシスのリーダー、ノエル・ギャラガーを相手にマンチェスター・ユナイテッド嫌いな話しから切り出しマンチェスター・シティは最高でセルティックも最高で、イングランド代表はグレイトでクラウチは背が高すぎるって話しを引き出している。心底サッカー好きな相手からサッカーに関する話しを聞かされる事ほどサッカー好きには楽しいことはない。それが世界のオアシスだとあればなおさらだ。こんな野郎が作る音楽ってどんなだと、そっちへの興味がかき立てられる。サッカー好きです系アイドルのおまけ程度の話じゃ絶対に得られない感銘だ。

 つまりはそーゆー雑誌なんだよ「スター・サッカー」。今回はあんまりなかったけれどファッションを語るときも映画を語るときも、きっとサッカーがすべての中心になって来るんだろー。サッカーファン以外が読んで果たしてどう思うのかは分からないけれど、でもアーティストなりクリエーターの意外な1面、つまりはサッカーフリークな所が暴き立てられる雑誌てのが他にはないとあれば、ちょっとは気にして読むかもしれない。そこでサッカーってこんなに人を引きつけるものなんだって、思ってもらえれば雑誌の勝利。あとは引きつけ引っ張るだけだ。豚にサッカーをやらせたり編集長自身が各地を歩いて食べまくったり、キング・カズにインタビューしたりと読みどころはたくさん。それに何より文字数が多い。読んでお得な気分になれるのは「サッカー批評」とこれくらい、だろー。

 音楽ってゆー文化がサッカーと結びついている英国の特集だっかからこそ絶妙のマッチングを見せた創刊号。これがサッカーでは大国でも文化では何があるのか今ひとつ不明なスペインや、ファッションはあるけれどサッカーとはあんまり重なってそーもないイタリアにフランスを取り上げてどこまでクロスオーバーした特集を組めるのか。気になるけれどもそれはそれ、アイディアとフットワークでもってきっと凄い特集を見せてくれることだろー。ロック大国にしてサッカー貧国のアメリカを取り上げたってきっと何かやってくれるに違いない。信じて次号を待とう。それにしてもノエル・ギャラガーのサッカー好きは本物だな。日本代表について聞かれて「よくわかんないよ。オレは別に日本サポーターじゃないんだからさ。それはあんたの役割だろ、しっかり応援してやれよ」って答えるところは、自分の応援するチームに忠誠を見せるサッカーネーションの人間ならではの、歴史と伝統に裏打ちされたスタンスが見える。こーゆーサッカーの本場だからこそ培われる”文化”って奴を、いろんな記事から見せてくれたらとっても嬉しい。

 雪恵ちゃんすげえ。乗ってる車がランチアだけあってラリーだってお手の物。何故か良い奴に顔立ちまで含めて変化していたアトリと竜騎兵では一番真っ当っぽいトビもいっしょにカラスとハルカとユウを載せ、弱ったカラスにエネルギーを送り込む場所へと連れて行こうとした途中で、内田涼子と郡山京司の乗ったアウトビアンキに見つかり追いかけられたけど、例えアバルト仕様であってもでこぼことした牧場を走るには向かない小型のボディーが災いしてか、カッ飛ぶ雪恵のランチアには追いつけず跳ね飛びパンクして牛に囲まれ立ち往生する羽目となった「ノエイン もうひとりの君へ」。

 未来がカラスたちの暮らしている世界のよーに破滅への路を転げ落ちるものなのか、それとも今のハルカやユウが向かう未来はまったく別のものなのか、未だ判然としないまでも決して破滅ではない未来を選び取れる可能性が浮上して、ダークで閉じたエンディングを見ないで済むかもって希望が湧いてきた。アニメにまで暗い気分にさせられるのはたまらないのよ、普段がもはや先の見えないくらいに真っ暗だから、理由は内緒だ。しかし変わったなあアトリ。目が普通になって態度も優しくなってしまった。描き分ける人も大変だけど演じる人もきっと大変。それをやってしまうところにこのアニメにかける作り手側の並々ならぬ情熱を感じる。月末に出るDVDは購入決定。去年の「ファンタジックチルドレン」に並ぶ21世紀の僕的スタンダードになれるか否かは最終回を見てから決めよー。

 風俗の世界から成り上がった女実業家が、晴らせぬ怨みを代わって晴らしてやろうと手に銃を持ち、東京アンダーグラウンドを駆け回っては狡知をめぐらせ敵を追いつめ斬り捨てる、現代版の仕事人的なハードボイルドアクションかと所収の最初の1編を読んだ時には思った大沢在昌さんの「魔女の微窪」(文藝春秋社、1475円)だったけど、間が開いて掲載された次の話からもしかすると方向性を変えようとしたのかそれとも最初っからその考えを持っていたのか。

 明らかになっていく設定で、主人公の女実業家には人に知られたくない過去があって、その過去と戦いながらも敵の手強さと裏社会の柵の強さから、次第に追いつめられていくってストーリーが連作の中に描かれていて、それはそれでスリリングだったりするんだけど、今時の時代にはたしてそぐう設定なのかって気持ちも一方に浮かぶ。どうなんだろー「地獄島」。

 日本のどこかにあって、そこには何軒もの娼家があって、各地からさらわれて来た女の子たちがそれこそ死ぬまで客を取らされサービスを提供すている「地獄島」。どういった経緯からか日本を牛耳る暴力組織から一目おかれ、警察権力も及ばない存在となって21世紀になった今も暗然とした力を誇っている、とか。エンタテインメントとしての面白さ、という意味ではあって悪くない設定だけど、女主人公が東京で見せる暴力組織や権力者たちのやりとりや駆け引きの、実にリアルで生々しいのと比べると、「地獄島」の存在がネーミングも含めて嘘っぽさを増してしまう。

 「地獄島」には強靱な肉体を誇る「番人」がいて、逃げた女をどこまでも追いつめ連れ戻すという設定も同様。荒唐無稽さで成る伝奇バイオレンスのようなストーリーでは、「地獄島」ともどもあって全然オッケーな設定だけど、でも主人公はそこを逃げて名も顔も変えたと言っても、同じ裏社会で手広く事業を営んでいたりするわけで、噂も現実に広まっている中でいつまでもバレずにいつづけることなんて不可能なんじゃなかろーか。島にはそんな調査能力がないって言うんだけど、それなら脅威になんかなり得ない。裏切りと騙し合いの日常茶飯事な裏社会で奸智謀略で生き抜く女のドラマに、「地獄島」という設定がどうにもそぐわない。

3DCGだったら、揺れる、かな?  木訥なキャラクターで人気の女子砲丸投げ選手にインタビューしたルポライターが、彼女の性に関する奔放さを雑談の中で聞いてしまったことが、女子砲丸投げ選手を支援している東北の裏社会を取り仕切る実力者の逆鱗に触れ、抹殺される展開ってのも小説的。現実に果たしてそんなことがあるんだろーか。あったらアイドルインタビューを生業にしているライターの半分は埋められてんじゃなかろーか。まあそれだけ驚くべき設定や展開が多いのお、大沢さんがフィクションをフィクションとして、エンターテインメントをエンターテインメントとして提供しよーと頑張っている現れだって言えそーで、悩まず受け止め驚き恐がりながら読んで楽しむのが正しい「魔女の笑窪」の受け止め方なんだろー。

 入った場所は床も剥げて染みとか浮かんだ場末感の漂う六本木のホール。現れた人はマオカラーのジャケットを着た長髪の中年とゆー怪しさ炸裂の会見に、これはちょっと危ないゲームなのかもと聞いているうちは心配した「デカロン」って韓国製オンラインゲームの日本におけるサービス開始会見だったけど、長髪の人が佐谷秀美さんって北村龍平監督の数々の作品をプロデュースしている人で、「デカロン」が本当にそれなりに人気を持ったゲームだってことが後で調べて分かって安心。だとしたらどーしてあんな不思議な場所を選んだのかが気になるけれど、夜に輝く場所を昼間に見るとみすぼらしいってのは、普通に灯りの着いた「ヴェルファーレ」なんかでも経験したこと。六本木に長くそびえる「vanilla」は夜にはきっと淫靡な輝きで都会の男女を吸い込み輝くんだろー。

 ゲームはアクション性を売りにしたMMORPGで、チームを組んでクエストするだけでなくって格闘ゲームとかシューティングゲームみたいなスピード感ある戦闘を体験できるとか。キャラクターの雰囲気も韓国製であっても最近の韓国キャラが日本人に違和感のないデザインになっているのと同様に、眺めてそれなりに受け入れやすいデザインになってるんでファンとか付いてフィギュアとか出て人気を集めそう。見た目ではやっぱり魔法使いみたいなキャラかなあ、谷間とか派手に見えてるし。けど会見に登場したコスプレの魔法使いは谷間を見せず全体を覆ったスタイルになっててとても残念。その代わりは剣を振り回してくれた白いドレスのコスプレキャラがしっかり果たしてくれたから良いや。


【1月11日】 これも「なでしこジャパン」効果というのか。「東京スポーツ」が2006年1月10日発売の号で日テレ・ベレーザを取り上げ「ラモス監督悲し、妹分がヒジ鉄 同日試合拒否、女子最強ベレーザ」ってな感じの記事を掲載している。ようするにJ2に落ちた兄貴分の東京ヴェルディ1969が、ドサ回り気味に各地を放浪する羽目となる関係で心配される観客動員の減少を、人気上昇中のベレーザの試合を後座なりで行うことで、そっちのファンも呼び込みくい止めようとしていることに、当のベレーザの選手たちが反発しているってゆー内紛勃発ニュース。真偽については不明だけど、そーしたニュースが「東スポ」とはいえ掲載され得るくらいに女子サッカーのニュースバリューが上がっていることは確かだろー。

 ワールドカップ日韓大会の余韻など消えかけた02年末に見始めた頃の女子サッカーは、次年度のワールドカップに出場できるかも危ぶまれていた状況で、実際にアジア予選で負けてプレーオフに回り遠くメキシコはアステカスタジアムで内臓を痛めながらも戦い引き分ける苦闘のまっただ中にいた。試合だってベレーザは会場が「よみうりランド」の脇にあるヴェルディの練習場。スタンドなんてなくフェンスに張り付きベンチの上に立って首をのぞかせ、凍らせたエビアンのペットボトルを置いて回る控え選手の姿も眼下におさめながら間近を走り回る選手の姿を追っていた。

 それが今やかつてのJリーグ人気をひとり引っ張ったヴェルディの観客動員に貢献し得るくらいの人気を獲得したってゆーからこれを嬉しい限り。ってかそれだけヴェルディの凋落が激しかったってことになるんだけど、並べて同等のバリューを持つくらいの存在に女子サッカーがなって来たんだと言えないこともなく、ベレーザ以外のチームにもその人気が広がって、働きながら頑張ってサッカーを続けている選手たちがちょっとでもサッカーに打ち込める環境が作られ、女子サッカー全体の底上げが図られていくよーならこれは将来が楽しみ。

 もっとも実際問題として有料で行っている試合にそれなりの観客を動員しているヴェルディと、無料のL・リーグに数千人を動員しているベレーザの人気を同列で比べるのは愚かなことで、支えるファンの数は今でも圧倒的にヴェルディの方が多いはず。記事はとにかくJ2落ちしたヴェルディの惨状を伝えたいがために、ちょっとばかり人気が出てきたベレーザを引き合いに出しただけのことなんだけど、これがクラブの幹部なりヴェルディのスタッフなりに真に取られ、ベレーザよ頭に乗るな! って言われかねないのが心配だ。

 あと観客としては後座でやられると開催が土曜日になってJリーグのヴェルディ以外の試合、とりわけジェフユナイテッド市原・千葉の試合が見られなくなるのが辛い。選ぶならジェフ千葉に当然のように行くわけでつまりはそーしたヴェルディファン以外のベレーザファンの足を、会場から遠ざけてしまうことになりかねない。日曜日を中心にスケジュールを組んでいる他のL・リーグのチームにも迷惑な話。仕事なり学校だってあるかもしれない土曜日を取られかねない事態を直接は無関係のJ1チームの思惑だけで引き起こすのは正直良くない。

 ヴェルディが試合した後の荒れたグラウンドで試合をさせられるベレーザ選手の不安についてはごもっとも。女子サッカーへの認知度アップとゆー大義名分があって去年は幾度か後座が組まれたけれど、それが常態化しては選手たちが可愛そう。絶対に止めろとは思わないけど数はシーズン中にせいぜい3試合程度にして、会場は荒れのそれほど起こらない国立霞ヶ丘競技場でヴェルディに対戦相手がジェフ千葉の時に開催してくれたらラッキー。どうせならベレーザの相手もジェフ千葉レディースが良いけれど弱くてなかなかL・1に上がれないんだよなー。オシム監督が直々に指導して強くし女子でも盟主を狙ってくれないかなー。

 「朝日新聞」の2006年11月11日付夕刊で森川嘉一郎さんが秋葉原の変化が招きかねない角を矯めて牛を殺したりするよーな本末転倒な事態を憂う文章を寄せていて、そんなことは例の巨大なITビルが堂々のオープンをした時から、つーかそれが立てられ始めた頃から心配していて欲しかったけど当時はこれほどまでに”萌え”なる市場が着目され、秋葉原にメディアの目が向くとは誰も思っておらず、綺麗なビルが建ってそこから”浄化”が始まったとしてもゆっくりとしたもので、家電の街がパソコンの街となりオタクの街となったような変化速度で進むんじゃないのって見方も出来たかもしれないけれど、去年の春当たりからにわかにメディアのそれも特定事象ばかりをクローズアップする眼差しが、秋葉原の変質をよりやっかいなものにしてしまった感があって、それに森川さんが懸念を見せている。

 つまりはメディアが妙な取り上げ方をすることによって、政府なりアカデミズムなんてところが「IT」だ「コンテンツ」だといったものの本質を抜かした価値ばかりを取り上げて、それを秋葉原の地でもり立てようとするんだけど、そーした上っ面の持ち上げ方は半面で地場で静かに醸成され発酵していたアングラな雰囲気を持つ、故に濃い趣味の人たちを秋葉原へと集めて秋葉原の秋葉原とも言える雰囲気の創出に役立っていた諸々を除外してしまいかねない恐れがある。メディアはそーした隠花植物的な方は向かず目立つ「メイド喫茶」的なものを取り上げ、それこそが象徴と引き合いに出すのみ。結果でしかないものが目立ったところで流行廃りの波が過ぎれば消えてしまうだけのものでしかない。そしてその陰で”浄化”は進み秋葉原は変質する。森川さんの1文が歯止めにつながれば良いんだけれど……。

 メディアのフレームアップ的な所作については、某大手紙の誰かが個人のブログで明かした、例の宮崎事件の時にテレビ局が収集物の操作を行いオタクへのよからぬイメージを作り上げたことが森川さんの文章の中に挙げられていて、一般には流布せずネットでふいっと生まれてそして消えた言説を逃さずに捉え、その某大手紙とはおそらく違う「朝日新聞」の上で公開してしまった森川さんの英断に拍手喝采。あとそれを載せた「朝日」の決断にも賛意を贈りたい気分。手前と無関係だからこその許可なんだろーけど、身内ではないにしても仲間の不始末をしっかりと指摘した文章を載せるのって、メディアではなかなかやらないことだから。反撃もきっとあるんだろーなー。某大手紙の反撃が森川さん個人に向かわないことを願おう。

 目に止まったニュースをいろいろ。飲む発毛剤として日本でも販売が始まった「プロペシア」をずっと飲んでたスケルトンの米国人選手がドーピング違反として出場停止処分を受け、トリノ五輪出場も辞退する可能性が高まったとか。男性ホルモンを抑える働きのある薬でドーピングとはこれいかに? 分からないけどでもやっぱり、恥ずかしいのはドーピング違反にとられたことより「プロペシア」をずっと飲んでたってことなんだろー。サッカーのJ1「ヴィッセル神戸」のオーナーでもある楽天の三木谷浩史社長がサッカーの外国人枠撤廃を訴えたとか。真っ当な外国人、ちゃんと使えて”降格”なんぞに貢献しない外国人を連れてきてから言え。フジサンケイビジネスアイが11日付けでユーワールドという会社の青田吉弘社長のインタビューを掲載。論評は無し。


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