吉川トリコ作品のページ No.1


1977年静岡県浜松市生。2004年「ねむりひめ」にて第3回「女による女のためのR-18文学賞」の大賞・読者賞をダブル受賞し、同年同作を含む短篇集「しゃぼん」にて作家デビュー。2021年「流産あるあるすごく言いたい」にて第1回 PEPジャーナリズム大賞オピニオン部門受賞。


1.
しゃぼん

2.グッモーエビアン!

3.戦場のガールズライフ

4.「処女同盟」第三号

5.少女病

6.14歳の周波数

7.ミドリのミ

8.名古屋16話

9.余命一年、男をかう

10.おんなのじかん


流れる星をつかまえに、あわのまにまに

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1.

●「しゃぼん」● ★☆


しゃぼん画像

2004年12月
新潮社刊

(1200円+税)

2009年11月
集英社文庫化



2006/08/06



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“女による女のためのR-18文学賞”を受賞した「ねむりひめ」を含む短編3作と、表題作である中篇「しゃぼん」の計4作品を収録した短篇集。
“R-18文学賞”の受賞作を読むのは豊島ミホ「青空チェリーに続いて2作目ですが、「青空チェリー」ではあまり感じることのなかった“女のための”賞であることを本書ではつくづく実感しました。
「しゃぼん」は30歳直前の女性、あとの3篇は小学生、中学生、高校生の女の子を主人公にしていますが、女性あるいは女の子だからこそ感じる思い、が主題なのではないかと思います。
したがって、男性である私には到底及び難い部分、そこにこそ本書の妙味があるように感じるのです。

女性なら共感できる部分が多いのではないかと思いますが、私にはちょっと無理。
表題作の「しゃぼん」は、姉に生まれた子供に嫉妬する余り心が壊れそうになり、同棲している恋人とセックスもできず家に閉じこもるようにして暮らしている29歳の女性が主人公。
愛は分かつことができるのかという不安が主眼なのでしょうけれど、そんなこと今まで考えたこともありませんでした。
「いろとりどり」は初潮を迎えた小学生の、「もうすぐ春が」はセックスを始めた中学生の、「ねむりひめ」はセックスと愛の違いに気付いた高校生の戸惑いを描いた短篇。
「もうすぐ春が」では、セックス相手である男の子の泡を喰った様子に思わず笑ってしまう。女の子側からすれば許し難い行動でしょうけど。
「ねむりひめ」は豊島ミホさんの「なけないこころ」(青空チェリー収録)に通じるものがあるなァ。女性側からすればいずれ知る真実というだけのことかもしれませんが、男性側からするとオイオイそれを知るのは未だ早過ぎるよ、と言いたくなります。

しゃぼん/いろとりどり/もうすぐ春が/ねむりひめ

   

2.

●「グッモーエビアン!」● ★★


グッモーエビアン!画像

2006年04月
新潮社刊
(1200円+税)

2012年05月
新潮文庫化



2006/06/14



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新しいタイプの家族小説、と言ってよい。読み終わった直後の感想は、その一言でした。

主人公である中学生のはつきと、19歳の時に未婚ではつきを産んだ元パンクスの母親・あき、16歳のその頃からあきに結婚をねだっていた元パンクバンドマンのヤグ、という3人家族。
でも母親とヤグ(矢口)は籍を入れている訳ではないし、ヤグが実父でないことも今のはつきは知っている。
「おもしろければいーじゃん」というのが、母親の言う我が家のルール。裏返せば、つまんなかったら生きている意味がない、ということになる。
そんな母親とヤグとの家族生活なのですから、世間一般の家族風景とはかなり異なる。型破りと言うべきか、滅茶苦茶というべきか。でも、傍目で見ている分にはかなり面白いのである。
親がそんな風だと子供はしっかりするのでしょうか。まだ中学生だというのに、はつきのしっかりさ加減は凄い! 自分のことは自分でやる、そんな程度のことではありません。母親やヤグの足りないところ、良いところをちゃんと見て取っている。そこが素晴らしいのです。
世間からアホだと言われる仲間たちばかりかもしれないけれど、裏表はないし、3人が実行しようとする白昼夢のような計画を馬鹿にしたりせず、むしろ煽ってくれる程。そんな人間関係の気取りなさ、気持ち良さが、余すところなく伝わってくるのです。
こんなストーリィに、名古屋弁は何とよく合うことか。

洋服や必需品をフリーマーケットで購入するのが常なはつきですけれど、いじけているところは全くないし、その良い面をしっかり捉えている様子に感心してしまうのです。
フリーマーケットで値切った訳でもないのに 500円で価値あるトートバッグをちゃんとはつきは手に入れる。しかも、儲けたと喜ぶのではなく、本気で大事にしよう、ずっとずっと使おうと決意する。そんなはつきの心根が素晴らしい。
はつきの親友である、箱入りムスメ・ともちゃんの存在も見逃せません。はつきともちゃんの仲の良さもまた、実に好い。最後のさりげない部分ですけど、ともちゃんに絶交されたら死活問題だという一言は、何が大切なものか、はつきがよく判っていることを示しています。
家族、そして子供の幸せというのは、一様に語られるものではないなぁとつくづく感じる作品です。
最後の1頁もお見事。涼風に吹かれた気がします。

※なお、「グッモーエビアン!」は Good Morning Everyone! のこと。ヤグのでたらめ英語だとこうなってしまう。

     

3.

●「戦場のガールズライフ」● 


戦場のガールズライフ画像

2007年01月
小学館刊

(1300円+税)



2007/05/07



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東京で一人暮らしをしていた珠子の元に、名古屋時代の自称・親友たちが無理やり転がり込んできて同居する羽目に。
笑えるくらい底抜けにアホなアイドル系・希奈子、家庭的なのに20歳でお色気ムンムンの美深、美少女のくせに毒舌なロリータ・由美という3人。
3人がお互い親友だと思っているのに対し、実は珠子、名古屋を出て東京で一人暮らしをすることになった理由は、その3人から離れたかったからだという。
行動が派手な3人と異なり、珠子は地味系な女の子。でも、滅茶苦茶とはいえ何らかの夢を抱いている3人に比較して、何の夢もなくただ東京で無目的に暮しているだけの珠子の方がマシとは言えない。
本書はそんな4人の、ドタバタ・コメディ、青春版。

4人に共通するのは東京への憧れ、東京なら何か起きるのではないかという漠然とした期待。
かつてはそんな夢をもつことが多かったのでしょうけれど、都会と地方の格差が少なくなった現在においてもまだ在るのでしょうか。私は東京生まれ、東京育ちなのでその点は判らない部分。
「勝手に期待して、勝手に幻想を抱いて、それで思っていたのと違ったなんつってたら、東京だっていい迷惑なんじゃねえの?」
という卓男の意見はごもっとも。

若いのだから夢がないよりあった方がいい。でも余りにハチャメチャな3人の行動には、笑えるというより呆れるばかり。
銀座に行こうとしたけれど、銀座という駅がないため山手線をぐるぐる回ったというのは幾ら何でもナァ。
気軽に読んで笑って、4人に親近感を覚える、そんな青春ストーリィです。

  

4.

●「処女同盟第三号」● ★★


「処女同盟」第三号画像

2007年02月
集英社刊
(1300円+税)



2007/03/27



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高校生、大学生、元高校生たちを主人公に、思うに任せぬ現実を愛おしく描いた短篇集。

学園祭、大学生活、卒業後、・・・。それらの生活に入る前は、きっとこれまでにはない素晴らしいことがあるに違いない、と夢みるのは誰しも同じだと思います。でも、実際にそこに至ってみると何のことはない、何も変わらないままに時間が過ぎていくという現実に直面することになります。
本書の主人公たちも同じ。「あたしたち一生処女でいようね!」と立ち上げたコミック好きの同人誌も第三号まで行き着くかと思えた頃には、好きな相手ができたからといって解散状態。
学園祭に胸ときめかせたのは、入学して実際の学園祭を経験するまで。
2人で記念の一泊旅行をするまでに意気投合した女友達とも、いつまた疎遠になってしまうかもしれない。今は時間を共有する間柄であっても、それは同時に別れ道ともなっている。
本書は、そんな短いストーリィを綴った6篇からなる一冊。

どれもごく当たり前のことかもしれませんが、どのストーリィをとっても、そんな彼女たちが愛おしく感じられます。
そして、そんな風に思いながら過ごしていた日々もまた、愛おしく感じられるのです。
主人公たちは皆若い女性ばかりですが、親近感を抱きます。
さらっと読めて、そのくせジワーッとした味わいが出てくる、というところが本書の魅力です。

なお、6篇の中でもとくに次の2篇が好きです。
表題作「「処女同盟」第三号」の最後の場面、主人公の表情が実に可愛らしいんだな。
「そこからはなにが見える?」は、高校を卒業して10年後の同窓会が舞台。気の向かないふりをしながら内心では目一杯気合を入れながら同窓会に向かう主人公たち2人の様子が笑えます。判るんだよなぁ、この心理。いいなァ、この短篇。

「処女同盟」第三号/夢見るころはすぎない/一泊二日/新宿伊勢丹で待ち合わせ/そこからはなにが見える?/夏かける自転車

     

5.

●「少女病 Girl-disease」● ★★


少女病画像

2011年08月
光文社刊
(1500円+税)

2019年07月
ポプラ文庫



2011/09/23



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題名の“少女病”、いつまで経っても夢見がちで空想癖あり、いい年をして白馬の王子様を待っている、という症状とのこと。
医者曰く
「この病気を治すのは簡単なことだ。男を知ればいい」ということらしい。

そう医者から告げられたのは、長女の
日比野都32歳。地味で化粧っ気もなく、男性に無縁でここまで来た。
そしてその原因は、一時は人気作家だったものの今は売れもしない少女小説作家である母親=
町屋織子にあるらしい。ロマンチックな夢を今も追い続け、家事など一切せず、3人の娘に対して4姉妹みたいと、平然とのたまう女性。
女だけの4人家族で、姉妹は皆父親が別。でも正式に結婚した相手は次女=
の父親である日比野だけ、という次第。

4人が4人とも極端なまでに性格が異なる、というところが読み処。
これぞ少女病という典型例は織子、都なのでしょうけれど、次女の司にしろ三女の
にしろ、どこか他人に依存していて子供っぽい性格は、やはり少女病の亜流というべきでしょうか。
でもいつまでも変わらないままでいる訳にはいきません、変化がもたらされた故の本ドラマ。
 
4人が4人とも、如何にも現代の日本社会に新たに登場してきたような女性像。対照的なキャクターである故につい惑わされてしまいますが、それぞれ皆現実なのかもしれません。
そう思うと、身近に似たような存在(娘)がいることに気づかされ、この先が心配になります。


長女 都/次女 司/三女 紫/母 織子

        

6.

「14歳の周波数」 ★★☆


14歳の周波数画像

2013年04月
実業之日本社文庫刊
(552円+税)



2013/05/06



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地方のそれなりに都会風だったN市から、親が一戸建てを購入してN市郊外に転居。
それによって主人公=
深沢鮎子は、否応なくいっきに田舎の中学生に。それを中々受け入れられずジタバタして転校先のクラスでも孤立してしまう姿を描いた第一章から始まる、14歳=中学2年生女子たちの姿を愛おしく描いた連作短篇集。 
   
    
田舎なんか嫌だ嫌だと言いつつ、やっと同級生たちに馴染んだと思ったら自分もすっかり田舎の中学生になっていたという鮎子。同級生たちにシラケ顔をされるのも構わず正論をかざしてばかりの学級委員、
アネゴこと安達春菜。男子相手だとコロッと表情を変えるため女子の間では評判が悪い、でも鮎子とは馬が合う上原美月。売れっ子モデル兼タレントながら同級生、でも天然ボケのリリィこと橘理々衣、ヤンキー女子のしょうこちゃんこと伊神等々、鮎子らを囲む同級生の面々も十分個性的。
田舎であろうが何であろうが、個性的な同級生たちに囲まれた鮎子の中2生活はとても楽しそうです。
14歳の女子たちを生き生きと描いて清新な連作短篇集、学園小説がお好きな方には是非お薦めしたい逸品です


なお、鮎子たち田舎の中学生ぶりが発揮されて楽しいのは
「日曜の時間割」。前の学校での親友=ちえみが、男子同級生という付録まで連れて鮎子の住む町にやってきます。そこからの展開が可笑しいのですが、鮎子の変化がリアルに感じられて本書中で最も印象に残る章です。
また
「あぶない課外授業」は、鮎子らが同級生の真島健人の身にに起きた事件を知って心痛む様子を描いて、忘れ難い章

迷子の転校生/2.教室の要塞/3.日曜の時間割/4.歌をきかせて/5.恋する生徒手帳/6.体育祭の攻略法/7.あぶない課外授業/最終話.14歳スナップ

      

7.

「ミドリのミ」 ★★


ミドリのミ画像

2014年06月
講談社刊
(1500円+税)

2017年06月
講談社文庫化



2014/07/09



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小学3年生の重田ミドリは父親と共に、田舎町で古ぼけた写真館を営んでいる平野源三の家に転がり込みます。理由は、父親のが源三と恋仲になり、母親と別居したため。
ミドリを初めに、父親の広、母親の
貴美子、源三たちを各章の主人公とした連作式家族ストーリィ。

主人公皆に共通するのは、いずれも「ヘン」な人であること。そしてその「ヘン」さは、周囲の人間から押し付けられた評価なのです。
ミドリは学校でハブられ、父親は人の気持ちが全く読めないKYとして呆れられており、源三は高校生の時にゲイだとカミングアウトして気味悪がられている。そしてもう一人、子供の頃から平野写真館に入り浸っていた現在美大生の
梶原花世もまた、同級生たちと打ち解けられなかったという過去を抱えている。
古い家屋で冴えない写真館ながら、そんな彼らにとってそこは唯一つ息の付ける場所であり、自分の居場所と言えるところなのです。

しかし、そうであるにしろそれで充分だと済ませられないところが、難しいところ。自分にとって何がいいのか、大事な人にとって何がいいのか、彼らはそれぞれに思い悩み、その結果気持ちがすれ違うことも生じます。
そんな彼らの姿がとても愛おしく、同時に切ないストーリィ。とくにミドリのキャラクターが絶品です。

先行した米国同様、これからの日本も伝統的な家族像を守るだけでは済まない時代に入ってきているのでしょう。
血の繋がりがなくても、お互いに相手を思い合うことによって出来上がる疑似家族。本ストーリィの根底にあるのは、そんな家族像だと思います。
本書の4人に幸せあれ! 読了後はそんな気持ちになります。

ミドリのミ/ぼくの王子さま/日曜日はヴィレッジヴァンガードで/ビロードママ/ミドリのキ/セルフポートレイト

  

8.
「名古屋16話」 ★☆


名古屋16話

2015年08月
ポプラ社刊

(1500円+税)



2015/09/16



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山内マリコ「東京23話」と対になる、街案内要素を含んだご当地ものショート・ストーリィ集。
ショート・ストーリィは割りと好きな方なので書店で見て読もうかなと思ったものの、「東京」本との2冊は多いし、東京本のデザインは今一つ私の好みに合わずで、選んだのは本書の方。ちょうど名古屋のことは余り知らず、ということもあった故。

ショート・ストーリィ集ですから一篇一篇には余り捉われず、次々読んでいく中で名古屋という街の雰囲気、名古屋人の気性が立ち上がって来るのを楽しめばいい、という気持ちです。
一篇読み終えた後に章冒頭ページにある写真を改めて眺めてみると、その場所を訪れた気持ちをちょっとだけ味わえるところが楽しい。

なお、各篇は他の篇と特に関係はなく、登場人物もお互いに出会う、あるいは関わり合うということはないのですが、ふと気づくと共通して登場する人物も2、3人いて、以前に登場してきた箇所を時に振り返るという仕掛けもまた楽しき哉。

読み流すことも可といった気軽に楽しめる一冊。読書三昧の中、時にこんな一冊が混じるのは嬉しいことです。


【名古屋16話】
1.中区:さよならなんて言わないで/2.北区:失恋温泉/3.中川区:ハムくんは宇宙人/4.港区:ナゴヤからの手紙/5.東区:いつか見た夢は満塁ホームランでサヨナラだ/6.名東区:名東パン通りにて/7.守山区:いつかの晴れた週末に/8.昭和区:名前なんかいらねえよ/9.緑区:49番目の星/10.天白区:クリスマスまであとすこし/11.瑞穂区:とある書店の一日/12.西区:恋人たちの距離/13.中村区:忘れられない味/14.千種区:今池ハードコア/15.南区:あの娘といた夜/16.熱田区:夏休みの思い出
【8の旅】
17.長野:ちくたくちくたく/18.静岡:そろそろ真面目な話をしよう/19.滋賀:僕がふみこになった理由/20.三重:リヨンの夜/21.尾張:オールドガール/22.福井:三人/23.三河:真面目な話をしたあとは/24.岐阜:五月につづく道

               

9.
「余命一年、男をかう ★★☆


余命一年、男をかう

2021年07月
講談社

(1500円+税)



2021/08/05



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父親は頼りにならず、継母とは折り合いが悪く、自分一人で生きていく決心をして20歳の時に1DKの中古マンションを購入、以降節約に努めて生きて来た片倉唯・40歳が主人公。

役所から無料のがん検診チケットが送付されてきたので受診したところ、子宮がん宣告を受けてしまう。
普通ならここで大ショック、運命を呪うところですが、ここが唯のコミカルなところ。
何と、これでやっと死ねる、もう節約しないで済む、ホッとしたというのですから。ですから手術も治療もせず。

その病院の待合室で唯に声を掛けてきたのが、ピンク頭のいかにもチャラそうな
瀬名吉高・31歳。経歴10年のベテランホスト。
父親の入院費を支払うのに金を貸してくれないか、と。
そこから始まる、唯と吉高の奇妙な関係を描くストーリィ。

金で買ったんだから言いたいことを言わせろという感じの唯、金で買われたにしろ言っていいことと悪いことがあるという反応の吉高、それでも決別に至らない2人の関係が面白い。
タイプは異なりますが、唯も吉高も他人に向かい合うのが苦手で、そこから逃げていた印象を受けます。
それが金を間に入れたことによって、真剣にバトル、要は向い合うことになる。

2人の間にどういうドラマが展開していくのか、周囲の人間がどうそれを見るのか。いやぁ、面白いです。
と同時に、人間の本音が存分に吐き出されているのが、見処。
やはり人が生きていくためにはドラマがなくっちゃ、と思う次第です。

                

10.
「おんなのじかん ★☆


おんなのじかん

2021年09月
新潮社

(1500円+税)



2021/11/01



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第1回PEPジャーナリズム大賞オピニオン部門を受賞した「流産あるあるすごく言いたい」を含むエッセイ集。

前半は妊活問題。吉川さん自身の妊活、流産の体験談、等々。
吉川さんのリアルで鋭い語りに、改めて妊活治療の時間的苦労・金銭負担の大変さ以上に、肉体的苦痛の過酷さを感じさせられて慄く思いでした。
これまで女性たちが、女性ならではの性の問題だからと抱え込んできた事柄も、声を上げて訴えていく必要があるのではないでしょうか。
男女平等と言うだけでなく、女性のみが抱えている問題も明らかにしていく、そういう段階に至っている(遅すぎたのかも)と感じます。
そうしないことには、男性側、親側が理解しようとしない、理解しようとする機会が無いのではないかと思う次第です。

「おんなのじかん」という題名は、男性として手が出にくいというところがありますが、男性も本書を読んで理解を深めるべきであると思います、本当に。

はじめに/やさしさまでの距離/いつかいなくなる人/パパのこと/おれはジャイアン/不妊治療するつもりじゃなかった/沼の底で待っている/家族という名のプレッシャー/母からの電話には出ない/「この人の子どもを産みたいと思った」/これで卒業/She's a mannerf*cker/名古屋の嫁入り いま・むかし・なう/不謹慎なんて言わないで/妊婦はそんなことを言っちゃいけません
流産あるあるすごく言いたい
ばらを見にいく/コレガ、サビシサ/きみは月/スパゲッティ・ポモドーロ・アルデンテ/ダイエット・ア・ラ・モード/リトルブラックドレスはもういらない/お金なんかと君は言うけれど/失われた夏を求めて/夢にみるほど/子ども、お断り/持続可能な友情/ひとくちにピンクと申しましても/どこまでいっても夫婦は他人/特別になりたかった私たちへ/祖母の名前・・・・/長いおしゃべりの果てに−あとがきにかえて

   

   吉川トリコ作品のページ No.2

   


   

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