ポプラ社編アンソロジーのページ

 


     

「Fragile−こわれもの− ★★




2007年07月
ポプラ社刊

(1300円+税)

2008年01月
ポプラ文庫化

  

2014/05/29

  

amazon.co.jp

“こわれもの”、単に冒頭作の作品名から本の題名にしただけのことと思っていたのですが、どうも本書収録5篇に共通するテーマのようです。
学校〜家庭と、千々に揺れる、あるいは壊れてしまうかもしれない、そんな10代の心情を掘り下げた青春アンソロジー。

ちょうど読んだばかりの
椰月美智子「未来の手紙と、共に同じく中学生を描いた青春アンソロジーということで共通するところもありますが、本書は4人の作家による5作品という構成である故に多様性という点で優ると同時に、本書の方がシリアスな内容になっています。
中でも表題作である
「Fragile−こわれもの−」「あたしの、ボケのお姫様。」の2篇は、特に心に沁みてくる短篇です。
絶対壊れないものを縁にしようという主人公たちの心情、イジメや孤独に囲まれているが故の思いとして、共感できるように思います。
そうした中、
花形みつる「アート少女」は他の5篇と趣向が違っていて面白い。これもまた“壊れ方”の一つと言えるのでしょうけれど、いっそ健全な壊れ方と言うべきでしょう。
元々、部室立てこもり&ロケット花火連発事件を描いたという
アート少女−根岸節子とゆかいな仲間たち−の前エピソードを読みたかったから本書を手に取った次第。根岸節子と愉快な仲間たち、その言葉を繰り返すだけで、楽しい空想がどんどん羽を広げそうな気分になります。

思いがけない収穫!となった一冊。

石崎洋司 「Fragile−こわれもの−」
長ア夏海 「忘れ物」
令丈ヒロ子「あたしの、ボケのお姫様。」
花形みつる「アート少女」
石崎洋司 「流星群」

             


   

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