石崎洋司
作品のページ


1958年東京都生、慶応大学経済学部卒業後出版社勤務。「ハデル聖戦記」三部作にて作家デビュー。「黒魔女さんが通る!!」シリーズは小学生に圧倒的な人気。児童書や昔話絵本、翻訳等幅広く活躍。2012年「世界の果ての魔女学校」にて第50回野間児童文芸賞を受賞。

  


     

●「世界の果ての魔女学校」● ★★☆       野間児童文芸賞




2012年04月
講談社刊

(1400円+税)

  

2012/12/08

  

amazon.co.jp

「世界の果ての魔女学校」という名前、いかにもファンタジー風ですが、決してハリー・ポッターのホグワーツ魔法学校のような楽しい処ではありません。むしろ本書、見方によっては凄く怖ろしい面もあるストーリィなのです。
本書は、「世界の果ての魔女学校」の生徒(つまり魔女になるための)となった4人の少女の物語。

何故4人は「世界の果ての魔女学校」の生徒となったのか。
4人とも周囲から疎外され苦しんできた、という理由があるのです。そんな少女たちの心の隙を魔女たちは狙っている、即座に近寄り彼女たちを籠絡してこの「世界の果ての魔女学校」に連れてくる、魔女にするために・・・。
そして各章で主人公となる4人は、いずれも魔女の素質を多分に備えている少女たち、というのが本物語の基本設定。
だからといって、彼女たちが皆魔女になるために勉強に励んでいる、ということにはなりません。そこは各人各様、どのようなステップを踏むのか、どのような魔女になるのか、それは結局彼女たちの気持ち次第なのです。
だからこそ4つの魔女物語といっても、それぞれ主人公像、ストーリィ趣向は全く異なります。その多様性が何と言っても素晴らしい。

・ピーターパンのネバーランドへ行くつもりだったのに、曲がり角で右左を間違えてしまった結果「世界の果ての魔女学校」に行き着いてしまった「アンの物語」
・ボーイフレンドの、前の彼女との光景がいつも目に浮かんでしまい苦しむ
「ジゼルの物語」
・古書店でアルバイトをしているアリーシアの前に現れたのは、彼女が苦手な同級生の男の子。その2人が古書店の謎を知ろうとする
「アリーシアの物語」
・村の子供たちの手で生贄にされた
「シボーンの物語」
どの篇も、出だしのストーリィとは全く異なるストーリィへと途中から変化してしまうところが、まるで魔法のように怖ろしくもあり、深い魅力もあり、といった作品に仕上がっています。
児童だけでなく大人が読んでも傑作といいたい、魔法物語。
お薦めです。

アンの物語/ジゼルの物語/アリーシアの物語/シボーンの物語

 


  

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