上田早夕里
(さゆり)作品のページ No.1


1964年兵庫県生、神戸海星女子学院卒。2003年「火星ダーク・バラード」にて第4回小松左京賞を受賞して作家デビュー。11年「華竜の宮」にて第10回センス・オブ・ジェンダー賞大賞ならびに第32回日本SF大賞を受賞。


1.火星ダーク・バラード

2.ラ・パティスリー

3.ショコラティエの勲章

4.魚舟・獣舟

5.華竜の宮


6.菓子フェスの庭

7.ブラック・アゲート

8.深紅の碑文

9.
薫香のカナピウム

妖怪探偵・百目<1>、妖怪探偵・百目<2>、妖怪探偵・百目<3>、 セント・イージス号の武勲、夢みる葦笛、破滅の王、トラットリア・ラファーノ、リラと戦禍の風

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1.
「火星ダーク・バラード ★★★         小松左京賞




2003年12月
角川春樹事務所
(1800円+税)

2008年10月
ハルキ文庫



2020/04/25



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デビュー作というのにこのレベルの高さ、この完成度は、本当に凄い!
17年経った今でも、SF的設定の確かさといい、ストーリィ展開といい、作品の魅力は少しも色褪せていない、今なお鮮烈、そう思います。
コロナ感染対応の自粛中だからやっと手を出せたようなものですが、本作を読めたことは本好きとして本当に幸せなことです。

舞台は火星。今や火星には大きな温室のような空間が作られ、地球とは別の密閉型都市、火星社会が築かれています。
主人公は、火星治安管理局のPD(刑事)=
水島烈・30歳
相棒の
神月璃奈と共に凶悪な女性殺人鬼のジョエル・タニを護送中、信じ難い襲撃を受けて意識を失います。
水島が意識を取り戻した時、璃奈は無残な死を遂げ、自身は重要容疑者とされていた。
退院した後、水島は独力で事件の真相を追おうとしますが、あらゆる妨害がその前に立ち塞がります。

そんな水島が出会ったのは、
アデリーンという美少女・15歳。
アデリーンは水島に、自分は宇宙適応のため遺伝子操作されて生みだされた新人類=
プログレッシヴであり、そして事件発生は自分と関わりがあると告げます。
そこから水島とアデリーン2人による、強力な組織を相手にした真相究明、自由を獲得するための戦いが始まります・・・。

まず、上田さんの描く火星社会の姿がお見事。くっきりその姿が浮かび上がってくる気がして納得感があります。
そして水島とアデリーン、まさに運命的な出会いという印象。その2人の行き先がどうなるのか、目まぐるしい展開の中で全く予想がつかず、そのうえ息詰まるような緊迫感とあって、ただただ圧倒されるばかりです。

未読の方に、是非お薦めしたい傑作!


プロローグ/1.安息の地/2.プログレッシヴ/3.孤立/4.玻璃の天使/5.焦熱の塔/エピローグ

         

2.

「ラ・パティスリー La Patisserie ★☆


ラ・パティスリー画像

2005年11月
角川春樹事務所刊
(1600円+税)

2010年05月
ハルキ文庫化



2010/06/26



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製菓学校を卒業し、念願のフランス菓子店<ロワゾ・ドール>で働き始めたところの森沢夏織
そこは職人世界故に、仕事は今のところ店内の掃除や店頭販売の売り子。
ある朝いつもどおり店に出勤した夏織は、誰もいない筈の厨房に見知らぬパティシエがいて、見事な飴細工を熱心に作っているのを見出す。
彼は市川恭也と名乗り、この店<ロワゾ・アルジャンテ>のオーナーシェフだと言う。一体彼は何者なのか?

複雑な事情を抱えたまま、恭也は<ロワゾ・ドール>で臨時雇いの職人として働き始めます。
本書は、神戸にある洋菓子店<ロワゾ・ドール>を中心舞台として繰り広げられる、お客夫婦、オーナー母子の抱える問題、恭也自身の謎。
そして、恭也に次第に惹かれていく夏織の思いを、連作風に綴った長篇ストーリィ。

フランス菓子をめぐる人間模様に、菓子職人を目指す夏織の成長と恋の物語という趣向ですが、ミソはやはりフランス菓子にあります。
各場面で恭也が披露する菓子作りの鮮やかな手並み、<ロワゾ・ドール>で生み出されるその美味しそうな菓子の数々に関する語り、本作品の楽しさはその部分にあります。
フランス菓子が好きで興味を持っている方にはとても楽しい作品ですが、それ程でもない方には物足りない、ということで終わってしまうかもしれません。
ですから、お薦めするのは、フランス菓子が好きな方に。

春/夏/秋/冬/バレンタインデー/帰郷

                   

3.
「ショコラティエの勲章 La decoration du chocolatier ★☆




2008年03月
東京創元社

2011年03月
ハルキ文庫

(762円+税)



2020/05/16



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神戸の人気ショコラトリー(チョコレート専門店)=<ショコラ・ド・ルイ>を舞台にした、チョコレート風味とミステリ風味をかけ合わせた連作短編集。

主人公は、老舗の和菓子店=
<福桜堂>神戸店で売り子として働く絢部あかり
その2軒隣に新しく開店したのが<ショコラ・ド・ルイ>。
常連の年配客主体で落ち着いた雰囲気の福桜堂と対照的に、<ルイ>には若い女性客たちが押し寄せて賑やか。
そんな対照的な光景と、若い女性ですから当然に美味しいスイーツは見逃せないと<ルイ>に足を向けたところ、早速出くわしたのが万引き事件。
その事件がきっかけとなってショコラティエの
沖本、実は和菓子が大好きだというシェフの長峰和輝と親しくなったあかり、<ルイ>にまつわる様々な出来事に絡むようになり、度々<ルイ>に足を運ぶようになります。

ラ・パティスリーと姉妹編?と思われる本作ですが、そのとおり、長峰は雇われシェフで、オーナーは<ロワゾ・ドール>のオーナーでもあるということで繋がっていました。
※本作中、
森沢夏織も顔を見せます。
魅力は、登場するチョコレートスイーツの美味しそうな描写、とちょっとした謎解きストーリィ。
そして、強面の長峰シェフとそれなりに存在感のあるあかりとの掛け合い。
デザートのように、軽く楽しめました。

「鏡の声」:<ルイ>の店頭で女子中学生グループと中年女性が万引きを巡り騒動に・・・。
「七番目のフェーヴ」:友人・桃香の結婚祝いに学生時代の仲間たちのガレット・デ・ロワをプレゼント。しかし、その菓子の中に依頼していない7個目のフェーヴ(陶器製人形)が。一体誰が、何のために?
「月人壮士」:売り子仲間の美奈ちゃんから、福桜堂の若手職人である三好を長峰シェフに紹介して欲しいとの依頼。しかし、その結果は・・・。
「約束」:恒例にしている知人経営の南仏料理店へ、長峰の代わりにと沖本から誘われたあかり、その店で沖本から思い出話を聞きます。長峰との出会い、ライバルだった職人のこと。
「夢のチョコレートハウス」:糖尿病なのにチョコレートハウスを開業するのが夢だという田山さん。おかげで田山夫人の攻撃に長峰やあかりまで巻き込まれることに・・・。
「ショコラティエの勲章」愛好家たちが集まる<関西ショコラ倶楽部>。田山から誘われたあかり、その例会に同行します。そこで長峰シェフが作ったスイーツを、有名店<ショコラティエ・アマノ>シェフの娘である天野花梨が酷評するところを目撃。一体花梨が求める味とは・・・。

1.鏡の声/2.七番目のフェーヴ/3.月人壮士/4.約束/5.夢のチョコレートハウス/6.ショコラティエの勲章

      

4.

「魚舟・獣舟」 ★★


魚舟・獣舟画像

2009年01月
光文社文庫刊
(590円+税)


2017/09/20


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短編6作+中編1作を収録した未来ものSF中短篇集。

表題作
「魚舟・獣舟」は、陸地の大半が水没し海上民と地上民に別れた未来社会を描くストーリィで、長編華竜の宮」「深紅の碑文」の原点となる作品。
また、
「くさびらの道」は、寄生茸に体を食い尽くされるという奇病が日本全土に広がる危機的状況を描いたストーリィで、後のブラック・アゲートに繋がるものを感じる作品です。
そして
「真朱の街」は、妖怪探偵・百目”シリーズの起点となる一篇。

上田早夕里SF作品の原点といえる本短篇集を読んでいると、改めてその魅力を認識する気持ちになります。
何よりの魅力は、そのシャープな切れ味さ、そして今や地球を侵食しているだけではないかと思える人間社会が今後どのような未来を迎えるかを、警鐘と共に予想してみせるかのようなリアリティを秘めていること。

本書はまさに、上田早夕里作品については今後も全て読んでみたい、と思わせられるような一冊。

魚舟・獣舟/くさびらの道/饗応/真朱の街/ブルーグラス/小鳥の墓

          

5.

「華竜の宮 The Ocean Chronicles ★★☆     日本SF大賞


華竜の宮画像

2010年10月
早川書房刊

(2000円+税)

2012年11月
ハヤカワ文庫化
(上下)



2011/01/08



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海底隆起により海面が 250mも上昇し、陸地の大半が水没したという25世紀が舞台。
人類は、僅かな土地+海上都市に住み高度な情報社会を築き上げた“
地上民”と、遺伝子改変で海に適合し“魚舟”という生物舟と共存し原始的に生きる“海上民”に大きく2分されていた。

人類は再び繁栄の時代を迎えたと思われていたが、徐々に問題が生じ始めます。海上民においては“
病潮”と呼ばれる悪性ウィルスの伝播拡大。一方の地上民においては、朋である海上民を失った魚舟が異形化した狂暴な“獣舟”の上陸による被害増加。
結果的に地上民の国家連合と、海上民たちとの間の軋轢が増し、ついに抜き差しならぬ対決の時を迎えます。
本ストーリィの中心的人物となるのは、海上民と地上民との利害調整を自らの使命に掲げる外洋公館・公使の
青澄誠司と、海上民のオサ(長)の一人であるツキソメ
そして青澄部分で一人称の語り手となるのは、青澄の思考を補助するアシスタント=人工知性体の
マキ

とにかく現在の地球とは全く異なる環境下で生きる人類の姿。その一方で、現代と何ら変わらず自分たちの利益さえ確保できれば何をしたって良いという身勝手な論理に走る国家連合、という構図の元に展開される本書ストーリィは、丹念に未来の地球が描かれており、読み応え十分です。
そしてそこに、人類は再び地球規模の過酷な試練を迎えることになります。人類は再びその危機を乗り越え、存続することができるのか。
ストーリィは、地球と人類ががっぷり四つに組んだ、壮大なスケールへと進んでいきます。

最後、どうストーリィを収めるのかと思っていたのですが、予想を遥かに超えたエンディングは真にお見事。
何故、青澄ではなくマキが主人公なのかという点も不思議でしたが、その理由がその最後で得心できました。
視点の大きさが本作品の魅力。黙示録的SF海洋巨篇と評して、まさに遜色ありません。

                  

6.

「菓子フェスの庭」 ★☆


菓子フェスの庭画像

2011年12月
ハルキ文庫刊
(590円+税)



2011/12/30



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ラ・パティスリーの続編にして、文庫本書き下ろし。
ただし、主人公は
森沢夏織だけでなく、もう一人います。
西富百貨店の企画部に勤める
武藤隆史。今回その武藤が、初めて企画の責任者を任されます。ショッピングモールでの期間限定、お菓子フェスティバル。
ところが困ったことに武藤、子供の頃から甘いものが大の苦手、いや大嫌い。ケーキなど食べることもできない、という風。
ケーキ好きの同僚=
緒方麗子の助けを借りて、出店してもらう店への交渉が始まりますが、その中の一店が<ロワゾ・ドール>。
そして漆谷シェフから指名され、夏織がその菓子フェスの担当者に、という次第。
前作から5年後、まだまだ修行中とはいえ夏織、もうすっかり中堅パティシエという顔です。

武藤、ロワゾ・ドールで出された夏織が作ったという菓子、意外にもすんなりと美味しく味わえたことから、夏織、そして夏織の作るケーキに強く惹かれます。
そんな武藤を主人公とするストーリィと、関西で自分の店を開くつもりだと戻ってきた
市川恭也に再会した夏織が、菓子フェスを機にまた次の一歩を踏み出そうとするストーリィの二重構造。

前作で夏織に、またケーキがとても好き、という方にはそれなりに楽しめる続編になっています。
そして森沢夏織と市川恭也のストーリィ、夏織の成長物語として今後も続く気がします。そうなれば楽しみ。

                   

7.

「ブラック・アゲート Black Agate ★★


ブラック・アゲート画像

2012年02月
光文社刊
(1700円+税)



2012/03/18



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世界中に新種の蜂が出現。その名は“アゲート蜂”。
ジガバチの一種であるこのアゲート蜂、何と人間の身体に卵嚢を産み付け、幼虫は人間の身体を栄養源に成長、最後はその人間の身体を食い破って羽化する。当然ながら寄生された人間は、羽化の直前には死を迎えている。
そして羽化の際だけでなく、体内における幼虫の成長により深刻な脳障害が引き起こされ、他人への殺傷行為に走ることもある。偶々薬が効いて卵・幼虫を退治できても意識障害の後遺症が起きることがあるという、とんでもない恐怖。
主人公は瀬戸内海に浮かぶ離島=
鰆見島にある唯一の総合病院で事務長を務める高寺暁生
鰆見島ではこれまでアゲート蜂による発症例はなかったが、ついに発生。島民を全員検査したところ、暁生の一人娘である
陽菜が陽性と診断される。
陽菜を救う手段はただ一つ。島を脱出してネットで囁かれる試験段階の特効薬を持つという病院に辿り着くこと。
しかし、AWS対策班が島に乗り込み、島を封鎖する。
レスキュー・ボランティアとの落合場所まで急ぐ高寺夫婦と陽菜+αと、それを阻止しようとする
AWS対策班の戦いを描く近未来サスペンス。
 
なお、ストーリィの主眼は、こうした危機に直面した時人間はどう行動するのか、ということにあるようです。
可能性がある限り全力で発症者を救おうとするのか、それとも発症者を救う方法などないと思い定め感染拡大要因として処分しようとするのか。前者が主人公であり、後者を体現しているのがAWS対策班の隊長である
村綺

都市化が進んでいく中でこのような脅威が今度発生しないとも限らない。そんな事態を迎えた時、個人的には右往左往するだけと思うのですが、どう対処するかで人間の叡智が問われる気がします。
なお本作品、驚異自体は底知れないものがありますが、ストーリィとしてはこじんまりと終わった気がして、ちと物足りず。

            

8.
「深紅の碑文 The Ocean ChroniclesU ★★


深紅の碑文

2013年12月
早川書房

2016年02月
ハヤカワ文庫
上下
(各920円+税)



2019/05/30



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SF小説の傑作「華竜の宮」の姉妹編。
「華竜の宮」のエピローグにおいて、同作の主人公であり語り手であった
アシスタント知性体のマキがその主人である青澄誠司と再会したのは30年後だったと書かれていましたが、本作はその空白の年月を描いたストーリィ。
したがって、本書冒頭で、用語等の詳細は先行作品を参照してくださいと注記されています。

来るべき
<大異変><フルームの冬>を前にして陸上民と海上民の対立は、融和・協力どころか、対立激化の方向に進みます。原因は、陸上民が危機に備えて必要物資の備蓄に走ったことから、海上民に渡るべきワクチン等必要物資が先細りとなったため。

本ストーリィは3つの立場から描かれます。
第一は、あくまで地上民と海上民の融和・協力を目指す立場。外洋公館を退職し、
事業型救援団体「パンディオン」を立ち上げ今は理事長の職にある青澄誠司の視点から描かれます。
第二は、青澄のような考え方に反発し、略奪行動に走る海上民の闘争派
<ラブカ>。そのリーダーの一人である元医師ザフィールの視点から描かれます。
第三は、核融合エンジンを実用化した無人宇宙船にアシスタント知性体を搭乗させ、25光年先にある地球類似の惑星マイーシャに人類がいたという事実を繋ごうと活動する人々とそれを支持する立場。
深宇宙開発協会<DSRD>に就職した星川ルイの視点から描かれます。
 
壮大なストーリィ。
人類絶滅の危機を前にしても、人類は自分たちと異なるからと言って排斥し続けるのか、融和は図れないのか。
自分たちの危機を訴えるためとはいえ、テロは許されるべき行為なのか。
絶滅の危機目前だからといって、夢を見てはいけないのか、夢に生きる希望を繋いではいけないのか。
 
刊行されてからずっと未読が気になっていた作品。
やっと読めて、満足です。


第一部:書簡#1/1.ラブカ/書簡#2/2.パンディオン/3.救世の子
第二部:書簡#3/書簡#4/4.錯綜/5.ヴィクトル/ザフィール/書簡#5/書簡#6
第三部:6.マルガリータ/7.接触/8.空への架け橋/9.血に啼く海/10.燭光/11.さいはての地/12.アキーリ

※先行作品:「魚舟・獣舟」「華竜の宮」「リリエンタールの末裔」

      

9.

「薫香のカナピウム ★★


薫香のカナピウム

2015年02月
文芸春秋刊
(1500円+税)

2018年09月
文春文庫化



2015/03/06



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未来社会、人類は地上を離れ、熱帯雨林で地上40mもの高さにあ林冠部(カナビウム)で生きていた。
主人公は
愛琉という少女。香路を辿って枝から枝へと跳ぶ生活スタイルを助ける愛玩動物としてモールをいつも胸のポケットに入れている。
大人の年代に近付きつつある愛琉が待ち望むのは、その中から共に生きる相手を選ぶことになる<巡りの者>の訪れ。
そしてついに
<巡りの者>の集団が愛琉の一族の元を訪れた時、愛琉はその内の一人に胸をときめかせます。
平穏な暮らしを営んできた愛琉たちでしたが、北の森が荒れ果てているという噂と共に今まで出会うことのなかった一族の者たちが愛琉たちの暮す地域に押し寄せ、次第に争い事が増えていく。そしてついに・・・・というストーリィ。

華竜の宮では地球の多くが水没して人類は水上に生きる道を選んだ訳ですが、今度は樹上かァというのが第一印象。
遠い進化の過程で樹上から地上に降りた猿たちから分岐して人類は誕生した訳ですが、今度は再び樹上に戻るのかと思うと何やら皮肉を感じるような気がします。
しかし、何故人類は樹上に登ることとなったのか、樹上での生態系にどんな変化が生まれたのか、が大いなる興味処。後半、驚くべき真相が明らかにされていきますが、如何にも上田早夕里さんならではの未来設定、「華竜の宮」にも通じるものがあります。
ただ、「華竜の宮」におけるリアル感、切実さまでには及ばなかったという印象です。

上田作品を読んでいると、未来の世界において人類はどんな変化を遂げながら存続し続けるのだろうかと、ついつい考えてしまうのですが、
H・G・ウェルズ「タイムマシン」以来の永遠のテーマかもしれません。
なお、熱帯雨林ではその上層部に枝と葉が集中した層ができ、これについて樹冠生態系といった表現をするそうです。
本書は、そんな樹々の緑が色濃く匂う未来世界に生きる少女を主人公としたSF版冒険&成長ストーリィ、結構面白いです。

1.林冠の少女たち/2.巡りを合わせる/3.パレの日々/4.巨人と会う/5.新しい森

             

上田早夕里作品のページ No.2

     


   

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