上田早夕里
(さゆり)作品のページ No.1


1964年兵庫県生、神戸海星女子学院卒。2003年「火星ダーク・バラード」にて第4回小松左京賞を受賞して作家デビュー。11年「華竜の宮」にて第10回センス・オブ・ジェンダー賞大賞ならびに第32回日本SF大賞を受賞。


1.ラ・パティスリー

2.魚舟・獣舟

3.華竜の宮


4.菓子フェスの庭

5.ブラック・アゲート

6.妖怪探偵・百目<1>−朱塗の街−

7.薫香のカナピウム

8.妖怪探偵・百目<2>−廃墟を満たす禍−

9.セント・イージス号の武勲

10.妖怪探偵・百目<3>−百鬼の楽師−

夢みる葦笛、破滅の王、トラットリア・ラファーノ

 → 上田早夕里作品のページ No.2

 


      

1.

●「ラ・パティスリー La Patisserie」● ★☆


ラ・パティスリー画像

2005年11月
角川春樹事務所刊
(1600円+税)

2010年05月
ハルキ文庫化



2010/06/26



amazon.co.jp

製菓学校を卒業し、念願のフランス菓子店<ロワゾ・ドール>で働き始めたところの森沢夏織
そこは職人世界故に、仕事は今のところ店内の掃除や店頭販売の売り子。
ある朝いつもどおり店に出勤した夏織は、誰もいない筈の厨房に見知らぬパティシエがいて、見事な飴細工を熱心に作っているのを見出す。
彼は市川恭也と名乗り、この店<ロワゾ・アルジャンテ>のオーナーシェフだと言う。一体彼は何者なのか?

複雑な事情を抱えたまま、恭也は<ロワゾ・ドール>で臨時雇いの職人として働き始めます。
本書は、神戸にある洋菓子店<ロワゾ・ドール>を中心舞台として繰り広げられる、お客夫婦、オーナー母子の抱える問題、恭也自身の謎。
そして、恭也に次第に惹かれていく夏織の思いを、連作風に綴った長篇ストーリィ。

フランス菓子をめぐる人間模様に、菓子職人を目指す夏織の成長と恋の物語という趣向ですが、ミソはやはりフランス菓子にあります。
各場面で恭也が披露する菓子作りの鮮やかな手並み、<ロワゾ・ドール>で生み出されるその美味しそうな菓子の数々に関する語り、本作品の楽しさはその部分にあります。
フランス菓子が好きで興味を持っている方にはとても楽しい作品ですが、それ程でもない方には物足りない、ということで終わってしまうかもしれません。
ですから、お薦めするのは、フランス菓子が好きな方に。

春/夏/秋/冬/バレンタインデー/帰郷

     

2.

「魚舟・獣舟」 ★★


魚舟・獣舟画像

2009年01月
光文社文庫刊
(590円+税)


2017/09/20


amazon.co.jp

短編6作+中編1作を収録した未来ものSF中短篇集。

表題作
「魚舟・獣舟」は、陸地の大半が水没し海上民と地上民に別れた未来社会を描くストーリィで、長編華竜の宮」「深紅の碑文」の原点となる作品。
また、
「くさびらの道」は、寄生茸に体を食い尽くされるという奇病が日本全土に広がる危機的状況を描いたストーリィで、後のブラック・アゲートに繋がるものを感じる作品です。
そして
「真朱の街」は、妖怪探偵・百目”シリーズの起点となる一篇。

上田早夕里SF作品の原点といえる本短篇集を読んでいると、改めてその魅力を認識する気持ちになります。
何よりの魅力は、そのシャープな切れ味さ、そして今や地球を侵食しているだけではないかと思える人間社会が今後どのような未来を迎えるかを、警鐘と共に予想してみせるかのようなリアリティを秘めていること。

本書はまさに、上田早夕里作品については今後も全て読んでみたい、と思わせられるような一冊。

魚舟・獣舟/くさびらの道/饗応/真朱の街/ブルーグラス/小鳥の墓

          

3.

●「華竜の宮 The Ocean Chronicles」● ★★☆     日本SF大賞


華竜の宮画像

2010年10月
早川書房刊
(2000円+税)

2012年11月
ハヤカワ文庫化
(上下)



2011/01/08



amazon.co.jp

海底隆起により海面が 250mも上昇し、陸地の大半が水没したという25世紀が舞台。
人類は、僅かな土地+海上都市に住み高度な情報社会を築き上げた“
地上民”と、遺伝子改変で海に適合し“魚舟”という生物舟と共存し原始的に生きる“海上民”に大きく2分されていた。

人類は再び繁栄の時代を迎えたと思われていたが、徐々に問題が生じ始めます。海上民においては“
病潮”と呼ばれる悪性ウィルスの伝播拡大。一方の地上民においては、朋である海上民を失った魚舟が異形化した狂暴な“獣舟”の上陸による被害増加。
結果的に地上民の国家連合と、海上民たちとの間の軋轢が増し、ついに抜き差しならぬ対決の時を迎えます。
本ストーリィの中心的人物となるのは、海上民と地上民との利害調整を自らの使命に掲げる外洋公館・公使の
青澄誠司と、海上民のオサ(長)の一人であるツキソメ
そして青澄部分で一人称の語り手となるのは、青澄の思考を補助するアシスタント=人工知性体の
マキ

とにかく現在の地球とは全く異なる環境下で生きる人類の姿。その一方で、現代と何ら変わらず自分たちの利益さえ確保できれば何をしたって良いという身勝手な論理に走る国家連合、という構図の元に展開される本書ストーリィは、丹念に未来の地球が描かれており、読み応え十分です。
そしてそこに、人類は再び地球規模の過酷な試練を迎えることになります。人類は再びその危機を乗り越え、存続することができるのか。
ストーリィは、地球と人類ががっぷり四つに組んだ、壮大なスケールへと進んでいきます。

最後、どうストーリィを収めるのかと思っていたのですが、予想を遥かに超えたエンディングは真にお見事。
何故、青澄ではなくマキが主人公なのかという点も不思議でしたが、その理由がその最後で得心できました。
視点の大きさが本作品の魅力。黙示録的SF海洋巨篇と評して、まさに遜色ありません。

                  

4.

●「菓子フェスの庭」● ★☆


菓子フェスの庭画像

2011年12月
ハルキ文庫刊
(590円+税)



2011/12/30



amazon.co.jp

ラ・パティスリーの続編にして、文庫本書き下ろし。
ただし、主人公は
森沢夏織だけでなく、もう一人います。
西富百貨店の企画部に勤める
武藤隆史。今回その武藤が、初めて企画の責任者を任されます。ショッピングモールでの期間限定、お菓子フェスティバル。
ところが困ったことに武藤、子供の頃から甘いものが大の苦手、いや大嫌い。ケーキなど食べることもできない、という風。
ケーキ好きの同僚=
緒方麗子の助けを借りて、出店してもらう店への交渉が始まりますが、その中の一店が<ロワゾ・ドール>。
そして漆谷シェフから指名され、夏織がその菓子フェスの担当者に、という次第。
前作から5年後、まだまだ修行中とはいえ夏織、もうすっかり中堅パティシエという顔です。

武藤、ロワゾ・ドールで出された夏織が作ったという菓子、意外にもすんなりと美味しく味わえたことから、夏織、そして夏織の作るケーキに強く惹かれます。
そんな武藤を主人公とするストーリィと、関西で自分の店を開くつもりだと戻ってきた
市川恭也に再会した夏織が、菓子フェスを機にまた次の一歩を踏み出そうとするストーリィの二重構造。

前作で夏織に、またケーキがとても好き、という方にはそれなりに楽しめる続編になっています。
そして森沢夏織と市川恭也のストーリィ、夏織の成長物語として今後も続く気がします。そうなれば楽しみ。

                   

5.

●「ブラック・アゲート Black Agate」● ★★


ブラック・アゲート画像

2012年02月
光文社刊
(1700円+税)



2012/03/18



amazon.co.jp

世界中に新種の蜂が出現。その名は“アゲート蜂”。
ジガバチの一種であるこのアゲート蜂、何と人間の身体に卵嚢を産み付け、幼虫は人間の身体を栄養源に成長、最後はその人間の身体を食い破って羽化する。当然ながら寄生された人間は、羽化の直前には死を迎えている。
そして羽化の際だけでなく、体内における幼虫の成長により深刻な脳障害が引き起こされ、他人への殺傷行為に走ることもある。偶々薬が効いて卵・幼虫を退治できても意識障害の後遺症が起きることがあるという、とんでもない恐怖。
主人公は瀬戸内海に浮かぶ離島=
鰆見島にある唯一の総合病院で事務長を務める高寺暁生
鰆見島ではこれまでアゲート蜂による発症例はなかったが、ついに発生。島民を全員検査したところ、暁生の一人娘である
陽菜が陽性と診断される。
陽菜を救う手段はただ一つ。島を脱出してネットで囁かれる試験段階の特効薬を持つという病院に辿り着くこと。
しかし、AWS対策班が島に乗り込み、島を封鎖する。
レスキュー・ボランティアとの落合場所まで急ぐ高寺夫婦と陽菜+αと、それを阻止しようとする
AWS対策班の戦いを描く近未来サスペンス。
 
なお、ストーリィの主眼は、こうした危機に直面した時人間はどう行動するのか、ということにあるようです。
可能性がある限り全力で発症者を救おうとするのか、それとも発症者を救う方法などないと思い定め感染拡大要因として処分しようとするのか。前者が主人公であり、後者を体現しているのがAWS対策班の隊長である
村綺

都市化が進んでいく中でこのような脅威が今度発生しないとも限らない。そんな事態を迎えた時、個人的には右往左往するだけと思うのですが、どう対処するかで人間の叡智が問われる気がします。
なお本作品、驚異自体は底知れないものがありますが、ストーリィとしてはこじんまりと終わった気がして、ちと物足りず。

   

6.

「妖怪探偵・百目<1>−朱塗の街− ★☆


妖怪探偵・百目1画像

2014年07月
光文社文庫刊
(600円+税)



2014/08/27



amazon.co.jp

妖怪と人間が共生する街<真朱の街>。ある事件をきっかけに帰る場所を失った相良邦雄は、この街の妖怪探偵=百目の元で探偵助手として暮すことになります。
その百目、スリットの深く入ったノースリーブのロングドレスを纏う絶世の美女ながら、実は全身に百の目を持つ妖怪=
百目鬼。当然ながら百目の元に舞い込む事件はすべて妖怪絡みにしてその報酬はというと、依頼人の寿命。
それは邦雄も同様で、百目にこき使われる傍ら、時に百目の協力を得るため寿命を少しずつ吸い取られるという日々。
本書はそんな邦雄と百目コンビによる、真朱街を舞台にした妖怪探偵物語、という趣向の連作短篇集。
「<1>」とあるので、今後シリーズ化されるようです。

“妖怪”というと昔はホラー、最近はファンタジーでしょうか。すぐ思い浮かぶのは
畠中恵“しゃばけ”シリーズ荻原浩「愛しの座敷わらしといったところ。
それらに対しSF作家である上田さんが妖怪ものを書くと、こうも違うものかと思います。まず説明が緻密かつ合理的楓。そしてさらに、科学進歩により異形の生物になったと言うべき人間は、もはやある点では妖怪に伍する存在となった、と説明されています。
本書は<SF+妖怪>要素が妙味。何が起きても不思議ないという前提が、この街の特殊な雰囲気と相まって、スリリングな香りを色濃く漂わせています。
主人公の邦雄、いつまでその寿命が持つのやらという気持ちもありますが、今後のシリーズ化が楽しみです。

※本シリーズの第1篇
「真朱の街」短篇集「魚舟・獣舟に収録。相良邦雄と百目との出会い、この街に住み付くこととなった経緯が語られていますが、本書中でも繰り返し語られていますので、第1篇を未読でも本書を楽しむのに何ら支障はありません。
なお、登場する妖怪に何となく親しみを感じてしまうのは、
水木しげる「ゲゲゲの鬼太郎」のおかげでしょうか。(笑)

1.続・真朱の街(牛鬼篇)/2.神無しの社/3.晧歯/4.炎風/5.妖魔の敵

      

7.

「薫香のカナピウム ★★


薫香のカナピウム

2015年02月
文芸春秋刊
(1500円+税)

2018年09月
文春文庫化



2015/03/06



amazon.co.jp

未来社会、人類は地上を離れ、熱帯雨林で地上40mもの高さにあ林冠部(カナビウム)で生きていた。
主人公は
愛琉という少女。香路を辿って枝から枝へと跳ぶ生活スタイルを助ける愛玩動物としてモールをいつも胸のポケットに入れている。
大人の年代に近付きつつある愛琉が待ち望むのは、その中から共に生きる相手を選ぶことになる<巡りの者>の訪れ。
そしてついに
<巡りの者>の集団が愛琉の一族の元を訪れた時、愛琉はその内の一人に胸をときめかせます。
平穏な暮らしを営んできた愛琉たちでしたが、北の森が荒れ果てているという噂と共に今まで出会うことのなかった一族の者たちが愛琉たちの暮す地域に押し寄せ、次第に争い事が増えていく。そしてついに・・・・というストーリィ。

華竜の宮では地球の多くが水没して人類は水上に生きる道を選んだ訳ですが、今度は樹上かァというのが第一印象。
遠い進化の過程で樹上から地上に降りた猿たちから分岐して人類は誕生した訳ですが、今度は再び樹上に戻るのかと思うと何やら皮肉を感じるような気がします。
しかし、何故人類は樹上に登ることとなったのか、樹上での生態系にどんな変化が生まれたのか、が大いなる興味処。後半、驚くべき真相が明らかにされていきますが、如何にも上田早夕里さんならではの未来設定、「華竜の宮」にも通じるものがあります。
ただ、「華竜の宮」におけるリアル感、切実さまでには及ばなかったという印象です。

上田作品を読んでいると、未来の世界において人類はどんな変化を遂げながら存続し続けるのだろうかと、ついつい考えてしまうのですが、
H・G・ウェルズ「タイムマシン」以来の永遠のテーマかもしれません。
なお、熱帯雨林ではその上層部に枝と葉が集中した層ができ、これについて樹冠生態系といった表現をするそうです。
本書は、そんな樹々の緑が色濃く匂う未来世界に生きる少女を主人公としたSF版冒険&成長ストーリィ、結構面白いです。

1.林冠の少女たち/2.巡りを合わせる/3.パレの日々/4.巨人と会う/5.新しい森

     

8.

「妖怪探偵・百目<2>−廃墟を満たす禍− ★★


妖怪探偵・百目<2>

2015年04月
光文社文庫刊
(680円+税)



2015/05/06



amazon.co.jp

美女の妖怪=百目と希望を失って<真朱の街>にやってきた人間=相良邦雄コンビによる妖怪探偵もの連作短篇集と思っていたのですが、この第2巻を読むとどうも軌道修正しないといけないようです。

前巻で妖怪たちと死闘を演じた拝み屋の
播磨遼太郎32歳が、6年ぶりに真朱の街に帰ってきます。
一方、妖怪事件を扱う県警捜査第一課五係の刑事=
忌島抗一は、上司である諏訪原警察署長と大鋸課長から呼び出され、五係は解散し特殊安全対策課に改組、忌島は課長に昇進しその統括責任者となるよう命じられます。妖怪を始末する祓の銃<紫桜>もそのまま携帯することと合わせて。
どうやら県警上層部は播磨と提携・利用して妖怪殲滅作戦を決行するつもりでいるらしい。しかし、妖怪にも心を通わせる忌島は命令をそのまま実行する気にはなれず、百目と邦雄に相談。
それにより百目と邦雄は、播磨遼太郎を迎え撃つ為、彼の隠された秘密を探り始めます。
播磨遼太郎の目的は、妖怪までもむさぼり喰う凶悪な
妖怪<濁>を倒すことにあるらしい。
妖怪と人間、そして拝み屋、さらに<濁>も加わり、人間と共闘することに応じる妖怪と忌避する妖怪、妖怪殲滅を狙う警察と妖怪を救いたいと思う忌島と、様々な関係が複雑に交錯してストーリィは進んでいきます。

単なる妖怪ものに終わっていないのは、作者である上田さんが妖怪をひとつのSF的存在として描いているからでしょう。
そして長い先、人間と妖怪の未来には何が待ち受けているのか。そうした未来的視点を踏まえているところは、他の上田作品と共通するものではないかと思います。
第2巻に至ってこの“百目”シリーズは大きくスケールアップ、そして本ストーリィはその大きな物語の途中経過に過ぎないと思うと、次巻以降がますます楽しみです。

6.魔を追う者たち/7.来歴/8.隠された心/9.妖怪楼閣/10.マジューヌミーヒトゥ/11.兆しの黒雲/12.清姫

            

9.
セント・イージス号の武勲 His Majesty's Ship St.Aegis ★★


セント・イージス号の武勲

2015年09月
講談社刊

(1550円+税)



2015/10/03



amazon.co.jp

上田早夕里さんには珍しい、長編歴史小説。
背景となるのは、皇帝ナポレオン率いるフランス軍の攻勢を阻止しようとしたイギリス海軍が、スペイン・フランスの連合海軍と激突した
トラファルガー海戦です。
もっとも、純然たる歴史小説とはならず、海に棲む伝説の魔物<
大海蛇>と共生してきた古い海の民族を登場させているところは、華竜の宮の作者である上田さんらしいSF要素です。

主人公は、両親・妹が失意のうちに死んで天涯孤独となった少年
トビー・アディソン
そんなトビーが生きていくのに選択肢があろう筈もなく、船員向けの食堂でこき使われた後、志願し僅か13歳でイギリス軍艦に乗り込みます。しかし、交戦中に船から海へ転落、生死危ういところだったトビーを救い上げたのが、
セント・イージス(聖なる盾)号だったという次第。
トビーが驚いたことに、セント・イージス号の乗組員は若者や少年たちが主体。それは何故かというと、この船が新技術を実地に試すための実験船であるという特殊事情のため。

イギリス海軍の軍船とフランス・スペイン両海軍の軍船が激突する海戦シーンも見ものですが、歴史という過去の中において新技術、それを担うべき若者たちの未来へ向けた姿を描いたという構成が何とも魅力。
また、長編ストーリィともなれば登場人物の魅力も欠かせないのですが、本書においては何よりも、海の民族の末裔である少女
ファーダと彼女の大切な仲間であるココの存在が光ります。

従来の上田早夕里作品とは一味違う、でも魅力に富んだ一冊。


序章/1.コペンハーゲンの海戦/2.聖なる盾/3.イギリス海軍委員会艦政本部/4.地中海の蛇/5.従軍/6.トラファルガルの海戦/終章

     

10.
「妖怪探偵・百目<3>−百鬼の楽師− ★★


妖怪探偵・百目<3> 百鬼の楽師

2015年11月
光文社文庫刊
(640円+税)


2015/11/27


amazon.co.jp

“妖怪探偵・百目”というシリーズ名から想像される内容と2巻目から異なり出し、早やシリーズ完結編。

真朱の街に千もの触手を伸ばして妖怪、人間を問わずむさぼり喰おうとする巨大かつ凶悪な妖怪<
>と、拝み屋の播磨遼太郎百目相良邦雄を始めとする妖怪たち、警察特安課の刑事である忌島らとの凄絶な闘いに終始する巻。

闘いといってもそこは妖怪、そして妖怪退治の拝み屋らが主役なだけに、ファンタジーというよりもむしろ複雑怪奇、まさに“凄絶”という言葉が相応しい。
しかし、そうでありながらその凄絶な闘いについつい魅了されてしまうのですから、そこは上田早夕里作品の魅力と言うべきでしょう。
これまで登場してきた妖怪、人間らが勢揃いする展開にも満足至極。当然ながら前巻で登場した
皆月清夏も、本巻において重要な役割を果たします。

本巻の最後、妖艶な妖怪探偵=百目と別れを告げることに寂しさを感じてしまうのは、決して私だけではないだろうと思います。


13.紫桜/14.一絃琴の魔/15.未来からの声/16.もうひとりの陰陽師/17.前哨戦/18.鐘入り/19.楽音の呪/最終話.終極

           

上田早夕里作品のページ No.2

     


   

to Top Page     to 国内作家 Index