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1.冷たい校舎の時は止まる 2.ロードムービー 3.太陽の坐る場所 4.ふちなしのかがみ 6.光待つ場所へ 7.ツナグ 8.本日は大安なり 10.水底フェスタ |
ネオカル日和、サクラ咲く、鍵のない夢を見る、島はぼくらと、盲目的な恋と友情、ハケンアニメ!、家族シアター、朝が来る、きのうの影踏み、図書室で暮したい |
東京會舘とわたし(上)−旧館、東京會舘とわたし(下)−新館、クローバーナイト、かがみの孤城、青空と逃げる、噛みあわない会話とある過去について、傲慢と善良、ツナグ−想い人の心得、琥珀の夏、闇祓 |
レジェンドアニメ!、嘘つきジェンガ、Another side of 辻村深月、この夏の星を見る |
●「冷たい校舎の時は止まる」● ★☆ メフィスト賞 |
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2007年08月
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雪の激しく降る日、深月が幼馴染の鷹野と一緒に青南高校に登校すると、何故か教師や大勢の生徒の姿がまるで見当たらない。 結局顔を揃えたのは、梨香、菅原、景子、昭彦、清水、充という8人だけ。 しかもチャイムは鳴らず、時計は5時53分で止まったまま。 ここは誰かの想念によって生み出された世界に違いない、と8人は気づく。 2ヶ月前学園祭の最中に起きた、同級生の校舎からの飛び降り自殺。衝撃的な事件だった筈なのに、8人ともその同級生の名前が思い出せない。 これは自殺した生徒の作り出した世界なのか? そしてその生徒は8人の中の誰かなのか? 何故8人は閉じ込められたのか? やがて8人の内から一人ずつが姿を消していく・・・。 さしづめ、青春+ファンタジー+ミステリ・ストーリィ。 ただ、本作品の読み処は、謎解きより彼ら一人一人の心の内と彼らの間に結ばれた絆の強さを描いた学園青春ストーリィ部分にあります。 |
●「ロードムービー」● ★★☆ |
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2010年09月 2011年09月
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上手い! 思わず唸ってしまう程。
辻村深月さんを読み始めたきっかけは、このサイトで「冷たい校舎の時は止まる」を勧められたことから。同作品でかえって青春ミステリ作家と思い込んでしまった嫌いがあったようです。 まず冒頭の「ロードムービー」がただもう圧巻、素晴らしいというに尽きます。 「道の先」は学習塾のバイト教師と、中3の女子生徒の関わりを描いたストーリィ。上記のような感動はありませんが、主人公が大宮千晶に送ったメッセージ、これが貴重。千晶だけでなく、今悩みを抱える小学生から高校生まで、皆に共通する、大切なメッセージと信じます。 どの篇も出来過ぎ、理想的過ぎる、という面はあるかもしれません。でもいいじゃないですか。理想、夢がなくなったら、小説を読む意味はないのですから。 ※なお、3篇に登場する人物は(判り難いとは思いますが)、「冷たい校舎の時は止まる」に登場した彼らたち。 ロードムービー/道の先/雪の降る道 |
●「太陽の坐る場所」● ★★ |
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2011年06月
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高校を卒業して10年目。毎年のように開かれるクラス会に、皆が気にしている彼女はいつも欠席。 その彼女とは、今や新進女優として成功した「キョウコ」。何とかキョウコをクラス会に誘い出せないか。 どうしたらいいかと声を掛け合う中、高校時代から現在まで、彼らが同級生達に隠し通してきた胸の内を、一人一人露わにしていくという、苦味ある青春ストーリィ。 キョウコが来ない理由は元カレの清瀬陽平に会いたくないからではないか、という彼らの推測。その清瀬との間に何があったのか。また、途中で転校していった浅井倫子に起きた事件とは何だったのか。 その一方、釈然としない思いが一点残ります。 プロローグ/出席番号二十二番/出席番号一番/出席番号二十七番/出席番号二番/出席番号十七番/エピローグ |
●「ふちなしのかがみ」● ★★ |
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2012年06月
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辻村さん初の怪談!とのこと。5篇収録。
冒頭の「踊り場の花子」、まずこの篇に魅せられました。 本書5篇に共通するのは何か。そのヒントは、辻村さんの「あとがき」にあります。 ・「ブランコをこぐ足」:いかにもありそうな出来事。 踊り場の花子/ブランコをこぐ足/おとうさん、したいがあるよ/ふちなしのかがみ/八月の天変地異 |
●「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」● ★★☆ |
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2012年04月
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冒頭、望月チエミが母親を刺し殺して家を出奔する場面が、本ストーリィのプロローグ。 その後、チエミと幼馴染である神宮司みずほが、かつての友人・知人たちを訪ね歩いてチエミの行方を捜そうとするストーリィ。 何故チエミが母親を刺し殺したのか。今は故郷の山梨を離れ東京でフリーライターをし、結婚もしたばかりというみずほが、何故チエミを探そうとするのか、その点も冒頭からの謎。 しかし、ストーリィはチエミ探しより、かつての友人たちとの語らいを通じて、チエミとみずほたちの20代の姿をくっきりと浮かび上がらせていく。さらに、チエミとみずほ、各々の母親との関係も回想をもって語られていく。 地方に住む結婚適齢期の女性が追い詰められていく状況を背景としたサスペンス・ストーリィ。 |
●「光待つ場所へ」● ★★☆ |
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2012年06月 2013年09月
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清冽、鋭角、光の差し込みを感じる青春小説、3篇。
「しあわせなこみち」の主人公は、絵を目指す大学生(文学部)の清水あやめ。 「チハラトーコの物語」の主人公は、少女の頃からモデルを続けて現在29歳という千原冬子。 「樹氷の街」は、高校生たちの青春群像。 3篇とも、自分の殻を破って新たな一歩を踏み出す姿を描いた青春小説。主人公の年代を変えての、この3篇の取り合わせが実に良い。 しあわせのこみち/チハラトーコの物語/樹氷の街 |
●「ツナグ」● ★★☆ 吉川英治文学新人賞 |
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2012年09月
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たった一度だけ、死んでしまった人に再会することができる。ただし、死者もまた生きている人間に再会できるのはたった一度だけ。生きている者と死んでしまった者、その望みを仲介する役割を背負った者を“ツナグ(使者)”という。 使者を仲介にした生者と死者の再会ストーリィ、連作5篇。 いつか何処かで読んだ気がする、懐かしさ感じるストーリィ。でも本作品で何より感じるのは、その優しさです。 残された者が死んでしまった相手に対して抱く、もう一度だけ会いたいという気持ち。死んでしまった者が生きている者に対して、せめて何か残したいという気持ち。その気持ちが双方に成り立ってこそツナグによる再会が成る訳で、優しさなくしてこのストーリィは成り立ちません。 再会ストーリィ、そこにミステリはありません。敢えて言えば、「待ち人の心得」において行方知れずとなった恋人の身の上がややミステリアス。 しかし、辻村深月さんにとってミステリはなくてはならないストーリィ要素なのか。最後はミステリの種明かしのような展開が読者を待ち受けています。 辻村深月さん、その“ミステリ”の使い方が実に上手い! “ミステリ”がストーリィに絶妙の余韻を与えているのです。辻村作品にあって、ミステリはもはや題材ではなく、香しいスパイスです。 なお、余韻という点では「待ち人の心得」がことに美しい篇。 最後の「使者の心得」では、底辺に流れるひとつ家族としての愛情が胸を打ちます。 アイドルの心得/長男の心得/親友の心得/待ち人の心得/使者の心得 |
※映画化 → 「ツナグ」
●「本日は大安なり」● ★★ |
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2014年01月
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結婚式場として評判の高いホテル・アールマティ。 とある大安吉日、そのアールマティで挙式・披露宴を行う4組のカップルの、悲喜こもごもを織り込んだドラマを同時並行で描いた巧作。 特定の場所にたまたま集まった何組かのドラマを同時並行して描いていくという手法は、小説・映画でも時々見かけるもので、本作品が初めてという程珍しいものではありませんが、ともかくも本書では、深月さんの上手さが光ります。 それ程感動的なストーリィという訳ではありませんが、様々な人間の姿を巧妙に描き出すという辻村さんの技が、練りに練られて本書にて見事に活かされている、という印象です。 4組の新婚にまつわるドラマといっても、主人公(=語り手)の設定が各々異なり、一様ではないのがまず良い。 ある式では曰くありげな双子姉妹の2人共々であり、他ではクレーマーの新婦に振り回されるウェディングプランナーであり、式に不安を抱く幼い甥っ子であり、ある大きな秘密を抱え込んでしまった新郎である、といった具合。 また、各々結婚に至るまでに様々なドラマがあり、それは本日の結婚式にまで持ち込まれている、という展開。 即ち、単に派手な儀式というだけとみられる結婚式ですが、当人たちにとっては、自らの人生を象徴するような大きなヒトコマであると実感させてくれるところが、巧妙なところ。 そしてそこへ更に、辻村さんらしい、サスペンスとミステリ要素が加わって本書の面白さを盛り上げてくれます。 なお、イヴニング挙式の新郎である鈴木睦雄が主人公とするドラマには絶句するばかり、その人物造形も抜群と言いたい。 ストーリィは格別なものではありませんが、辻村さんの熟達した上手さが光る一冊。 若い女性にとってはリアル、若い男性は怖れを感じてしまうストーリィかもしれませんが、お薦め。 10:30相馬家・加賀山家、12:30十倉家・大崎家、13:30東家・白須家、17:30鈴木家・三田家 |
●「オーダーメイド殺人クラブ」● ★★ |
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2015年05月
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題名からして衝撃的。どんなストーリィかまるで見当もつかず、読み始める前にはちょっと恐れさえ感じます。 中学2年生の小林アン。クラスでは一応、芹香と倖が仲良しグループ。でもリーダーの芹香、気ままで自分勝手、アンと倖はいつも芹香に振り回されっ放しという風。 そんな学校生活、また母親との毎日に閉塞感を抱えるアン、同級生の昆虫系男子の一人徳川に、「私を殺して」と頼みます。 何ら迷うことなく応諾した徳川と、最悪の“少年A”犯罪を残そうと、2人は綿密な実行計画を練り上げていきます。 本当に2人は、自ら殺され、自ら殺す計画を実行に移すのか。 イジメ、ハブ(村八分)、今や学園小説では当たり前のストーリィ要素が本作品でも繰り返されます。 一人一人はこんなことしちゃいけないと思っても、グループでのこととなるとどうにもならない。 そんな空気の中から抜け出したいと、悲鳴をあげるようなアンの気持ち、判る気がします。 題名こそ衝撃的なものですが、ストーリィの本質は今の中学生たちが抱える閉塞感がテーマ。 とはいえ、ストーリィが展開していく中での緊迫感+戦慄感、そこは辻村さんらしく相当なもの、手応え十分です。 現代に相応しい、サスペンスティックな学園青春小説の佳作。 |
●「水底フェスタ」● ★★ |
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2014年08月
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ロックフェスだけが売り物の過疎の村。 自意識の強い高校生=湧谷広海の前に現れたのは、村に戻ってきた8歳年上のモデル・女優である織場由貴美。 「村に戻ってきた理由は復讐の為」と由貴美が広海に打ち明けた時、既に広海は半ば由貴美に取り込まれていた。 出版社の紹介文を読む限り、陰鬱そうで私の好みではないストーリィといった感じなのですが、そこは辻村深月作品、読んでおかないと後悔しそうというだけの信頼感・期待感があります。 村に復讐したい、ついては手伝ってと言う由貴美に、自意識が高いからこそ広海は取り込まれてしまったのか。 その広海に対し由貴美が語ることは、どこまでが真実なのか、それとも全くの虚偽なのか。 そしてまた、2人が巻き込まれた事故は本当に偶然のことだったのか、それとも必然的なものだったのか。 すべてが不確かであり、全てを疑わずにはいられません。だからこそミステリアス、スリリング。 しかし、本ストーリィで一番恐ろしいものは何か?と言ったら、それはおそらく“日常”なのでしょう。 さりげない日常の底に潜められた毒、最後に広海はそれを知ることになります。 ある意味、閉塞的な村から何とか逃れようとしている点で共通する2人の間に生じる必然的な恋愛は、「ロミオとジュリエット」の村社会バージョンとも思えます。 普通にある“日常”の中に、もしかするととんでもない非日常が潜んでいるのかもしれない不気味さを描いた意欲作。 ありきたりなようでいて、かなり深いところのある作品。 それでも、本ストーリィ、私の好みからすると面白かったとはちと言い難し。 |
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