辻村深月
(みづき)作品のページ No.1


1980年生、山梨県笛吹市出身、千葉大学教育学部卒。2004年
「冷たい校舎の時は止まる」にて第31回メフィスト賞を受賞し作家デビュー。09年「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」が第142回直木賞候補、11年「ツナグ」にて第32回吉川英治文学新人賞、12年「鍵のない夢を見る」にて 第147回直木賞、2018年「かがみの孤城」にて本屋大賞を受賞。


1.
冷たい校舎の時は止まる

2.ロードムービー

3.太陽の坐る場所

4.ふちなしのかがみ

5.ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。

6.光待つ場所へ

7.ツナグ

8.本日は大安なり

9.オーダーメイド殺人クラブ

10.水底フェスタ


ネオカル日和、サクラ咲く、鍵のない夢を見る、島はぼくらと、盲目的な恋と友情、ハケンアニメ!、家族シアター、朝が来る、きのうの影踏み、図書室で暮したい

 → 辻村深月作品のページ No.2


東京會舘とわたし(上)−旧館、東京會舘とわたし(下)−新館、クローバーナイト、かがみの孤城、青空と逃げる、噛みあわない会話とある過去について

 → 辻村深月作品のページ No.3

 


            

1.

●「冷たい校舎の時は止まる」● ★☆        メフィスト賞


冷たい校舎の時は止まる画像

2004年6-8月
講談社刊

NOVELS
(上中下)

2007年08月
講談社文庫化
(上下)



2008/12/23



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雪の激しく降る日、深月が幼馴染の鷹野と一緒に青南高校に登校すると、何故か教師や大勢の生徒の姿がまるで見当たらない。
結局顔を揃えたのは、梨香、菅原、景子、昭彦、清水、充という8人だけ。
しかもチャイムは鳴らず、時計は5時53分で止まったまま。
ここは誰かの想念によって生み出された世界に違いない、と8人は気づく。
2ヶ月前学園祭の最中に起きた、同級生の校舎からの飛び降り自殺。衝撃的な事件だった筈なのに、8人ともその同級生の名前が思い出せない。
これは自殺した生徒の作り出した世界なのか? そしてその生徒は8人の中の誰かなのか? 何故8人は閉じ込められたのか?
やがて8人の内から一人ずつが姿を消していく・・・。

さしづめ、青春+ファンタジー+ミステリ・ストーリィ。
登場する8人がそれぞれに高校生活を通して抱えていた想いの深さ、濃さ、強さ、それには圧倒されるものがありました。が、如何せん、余りに長い。率直に言ってこれには参りました。
そもそもミステリを別にして、彼らの高校生活だけで充分一つのストーリィに成り得るもの。高校時代へ想いを作者が洗いざらいぶちこんだ、という観がありますから。その2つをくっつけて、さらに舞台をホラー・ファンタジーに設定したのですから、ストーリィがその分長くなったのも当然といえば当然。
なおミステリとしては、冒頭でひとつの糸口は示されていて、何でだろう?と私が最初からずっと引っかかっていた点と合わせ、それがそののまま事件の謎を解く鍵になっているという構成は、正直過ぎる気がしてちと物足りず。

ただ、本作品の読み処は、謎解きより彼ら一人一人の心の内と彼らの間に結ばれた絆の強さを描いた学園青春ストーリィ部分にあります。
一見順調そうな表情からはとても窺い知れない、深い孤独感や不安、自分という人間への自信欠如、中学時代のトラウマ等々、各人なりに不安に揺れ動く高校生活の日々。
それでも彼らのことを好きになれるのは、自分のことをさておいても仲間を気遣って止まない篤い心を彼らが持っているから。
そして本ストーリィの長さは、高校時代への深い想いがあってこそ。
読み終えた後、その想いの程度は高校時代との時間的距離と相関関係があるなぁとしみじみ感じた次第。

         

2.

●「ロードムービー」● ★★☆


ロードムービー画像

2008年10月
講談社刊
(1500円+税)

2010年09月
講談社NOVELS

2011年09月
講談社文庫化



2010/08/28



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上手い! 思わず唸ってしまう程。

辻村深月さんを読み始めたきっかけは、このサイトで「冷たい校舎の時は止まる」を勧められたことから。同作品でかえって青春ミステリ作家と思い込んでしまった嫌いがあったようです。
しかし、ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。から光待つ場所へを読み、心の内を細やかに描いていくその作風に魅了されました。そのうえで読んだのが、本書。

まず冒頭の「ロードムービー」がただもう圧巻、素晴らしいというに尽きます。
いじめ、もはや小中学校ストーリィにいじめは欠かせない題材になっている観がありますが、本作品でいじめの標的にされた小5のトシワタルの友情は、数ある友情ストーリィの中でも群抜くものの一つ!と言って良いものでしょう。
優等生のトシに対し、いつもオドオドしているため嫌われているワタルという組み合わせ。
しかし、最終場面、そのワタルがトシを、そして読み手を胸いっぱいに感動させてくれます。
もうひとつ、終盤、辻村さんにヤラレタ!と呻いてしまう場面あり。必ずしも必須とは思わないこの部分、ミステリ作家でもある辻村さんの面目躍如というところでしょう。

「道の先」は学習塾のバイト教師と、中3の女子生徒の関わりを描いたストーリィ。上記のような感動はありませんが、主人公が大宮千晶に送ったメッセージ、これが貴重。千晶だけでなく、今悩みを抱える小学生から高校生まで、皆に共通する、大切なメッセージと信じます。
「雪の降る道」は、ずっと小学校を休んでいるヒロと、そのヒロの元をひたむきに通い続ける同級生みーちゃんとのストーリィ。この篇にも終盤、謎解き要素があるのを見逃せません。

どの篇も出来過ぎ、理想的過ぎる、という面はあるかもしれません。でもいいじゃないですか。理想、夢がなくなったら、小説を読む意味はないのですから。
細やかな心の動きを描き出すところ、重松清さんも上手いのですが、大人から子供を見ているという視線が否めない。その点、辻村さんには、少年少女たちの心の内を同じ目線で見ている、という印象があります。
辻村深月さん、気持ちを改めて、注目していきたい作家です。

※なお、3篇に登場する人物は(判り難いとは思いますが)、冷たい校舎の時は止まるに登場した彼らたち。

ロードムービー/道の先/雪の降る道

  

3.

●「太陽の坐る場所」● ★★


太陽の坐る場所画像

2008年12月
文芸春秋刊
(1429円+税)

2011年06月
文春文庫化



2009/01/06



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高校を卒業して10年目。毎年のように開かれるクラス会に、皆が気にしている彼女はいつも欠席。
その彼女とは、今や新進女優として成功した「キョウコ」。何とかキョウコをクラス会に誘い出せないか。
どうしたらいいかと声を掛け合う中、高校時代から現在まで、彼らが同級生達に隠し通してきた胸の内を、一人一人露わにしていくという、苦味ある青春ストーリィ。

キョウコが来ない理由は元カレの清瀬陽平に会いたくないからではないか、という彼らの推測。その清瀬との間に何があったのか。また、途中で転校していった浅井倫子に起きた事件とは何だったのか。
朝倉かすみ「田村はまだかは、クラス会になかなか現れない同級生を待つ内に彼への熱い思いが高まっていくというストーリィでしたが、本書はいつも現れない同級生=キョウコのことを語らう内に同級生各々の胸の内、忘れていた過去のことが蘇ってくるいう、サスペンスタッチになっているところが対照的。
そしてまた、各自の視点から当時が思い出されていくに連れ、徐々に謎が明らかになっていくという展開は、まさしくミステリの手法。
それにしても濃いなぁ。この高校時代への想いの濃さは冷たい校舎の時は止まると共通するもの。
私の高校時代にはこんな深刻な葛藤はなかったと思う。これはまるで、会社に入社した頃、同期生との間にあった仲間意識と対抗心のようです。その濃さこそが辻村さんの持ち味なのでしょうけど。
「冷たい校舎」の時は余りの長ったらしさに辟易しましたが、本書は密度は濃いもののテンポ良く、まとまりも良い。その点で読み応え充分です。デビュー作と比べて、辻村作品の成熟度が感じられます。

その一方、釈然としない思いが一点残ります。
それは「冷たい校舎」と同様に読者への引っ掛けがあること。
ストーリィの中にある謎ではありません。登場人物たちには自明のことですから、それはあくまで作者からの読者に対する引っ掛けに他なりません。
そしてそれは本ストーリィに必然的なものかというと、決してそんなことはない。ストーリィ自体には本来必要ないものです。
結局、その引っ掛けを是とするか非とするかは、もう読者の好みと言う他ありません。それでも、本書が読み応えある連作風サスペンスであることに間違いはありません。

プロローグ/出席番号二十二番/出席番号一番/出席番号二十七番/出席番号二番/出席番号十七番/エピローグ

   

4.

●「ふちなしのかがみ」● ★★


ふちなしのかがみ画像

2009年06月
角川書店刊
(1500円+税)

2012年06月
角川文庫化



2010/10/06



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辻村さん初の怪談!とのこと。5篇収録。

冒頭の「踊り場の花子」、まずこの篇に魅せられました。
若草南小学校に現れるのは“トイレの花子”さんならぬ、階段の途中に現れる花子さん。
何気なく始められる出だし、ストーリィ運びの上手さといい、“花子さんの七不思議”をモチーフにした仕掛けの巧妙さ、突如として襲いかかって来る怖さといい、学校を舞台にした現代怪談話としては切れ味のいい逸品。

本書5篇に共通するのは何か。そのヒントは、辻村さんの「あとがき」にあります。
現実と夢、現実世界と虚構世界の交わり、その境がぼやけて交錯するところに、ストーリィが生まれる。
本書中、その代表例とも言えるのが、現実と鏡の境界、真実と夢の境界を見失った主人公の悲劇を描いた表題作「ふちなしのかがみ」
そのストーリィ構造は、デビュー作冷たい校舎の時は止まるにも共通するものだと思います。それはまた、辻村作品の原点と言うべきものでしょう。

「ブランコをこぐ足」:いかにもありそうな出来事。
「おとうさん、したいがあるよ」:認知症の祖母をモチーフにしている篇。ひょっとしてそんなことがあったらどうしよう?というリアル感を引き出していて、実に怖い。
「八月の天変地異」:仲間外れにされた小学生2人の想いが切ないのですが、その2人の前に現れた少年の謎解きストーリィが何と巧いことか。

踊り場の花子/ブランコをこぐ足/おとうさん、したいがあるよ/ふちなしのかがみ/八月の天変地異

  

5.

●「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」● ★★☆


ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。画像

2009年09月
講談社刊
(1600円+税)

2012年04月
講談社文庫化



2010/02/12



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冒頭、望月チエミが母親を刺し殺して家を出奔する場面が、本ストーリィのプロローグ。
その後、チエミと幼馴染である神宮司みずほが、かつての友人・知人たちを訪ね歩いてチエミの行方を捜そうとするストーリィ。
何故チエミが母親を刺し殺したのか。今は故郷の山梨を離れ東京でフリーライターをし、結婚もしたばかりというみずほが、何故チエミを探そうとするのか、その点も冒頭からの謎。

しかし、ストーリィはチエミ探しより、かつての友人たちとの語らいを通じて、チエミとみずほたちの20代の姿をくっきりと浮かび上がらせていく。さらに、チエミとみずほ、各々の母親との関係も回想をもって語られていく。
みずほの視点から眺めると、片や独身OL・失踪中の容疑者、片や仕事も夫も勝ち得た同年齢の女性という違いはあれど、運命はどちらに転んでも不思議はなかった、という状況が浮かび上がってきます。
終盤、やっと見えてきた事件の背景、そしてチエミの視点から語られた内容は衝撃的です。

地方に住む結婚適齢期の女性が追い詰められていく状況を背景としたサスペンス・ストーリィ。
これまで辻村さんについては青春ミステリの書き手というイメージが強く、最初に勧められて読んだ冷たい校舎の時は止まるにはもう一つ入り込めなかったのですが、本作品から受ける衝撃度は大きい、まさに圧倒されんばかり。
辻村さんが「29歳の今だからこそ描く」作品、というその意味が納得できました。
事件、ミステリ、サスペンスの枠を超え、若い女性たちの行き場を問い詰めた長篇小説。 お見事!の一言に尽きます。

  

6.

●「光待つ場所へ」● ★★☆


光待つ場所へ画像

2010年06月
講談社刊
(1500円+税)

2012年06月
講談社ノベルス

2013年09月
講談社文庫化



2010/07/13



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清冽、鋭角、光の差し込みを感じる青春小説、3篇。

「しあわせなこみち」の主人公は、絵を目指す大学生(文学部)の清水あやめ
ずっと絵を描いてきて、かなりの才能を持っているのは自他認めるところ。しかし、授業で見せられた3分間のフィルムがあやめを打ちのめす。あやめが初めて味わった敗北感。
絵の才能がありながら、もうひとつ絵に確信がもてないあやめ。そのフィルムを撮った男子学生・田辺と知り合ったことをきっかけに、あやめが新たな段階へ踏み出す様子を描く青春小説。

「チハラトーコの物語」の主人公は、少女の頃からモデルを続けて現在29歳という千原冬子
母親、周りを嬉しがらせる為についていた嘘が常習化し、同級生から「病気」と言われた言葉がトラウマとなり、自分自身の今後を描けないまま。
その冬子があることをきっかけに、ようやく自分を取り戻し、新たな挑戦に踏み出す様子を描く青春小説。

「樹氷の街」は、高校生たちの青春群像。
校内の合唱コンクールに向けての練習の中で生じる、同級生間の確執、新たな発見、新たな結びつき。
本ストーリィで新たな扉を開けるのは、その内の一人です。彼が初めて知る友情の輝き、そこには感動すら覚えます。
前の2作があるからこそ、高校生たちのもつ瑞々しさが一層印象的で、圧巻。

3篇とも、自分の殻を破って新たな一歩を踏み出す姿を描いた青春小説。主人公の年代を変えての、この3篇の取り合わせが実に良い。
「光待つ場所へ」という本書題名は、上記3篇を包括し、扉を開けて新しい光の中に立つ、という意味か。
ドラマチックなストーリィではありませんが、その鋭いまでの清冽さが私には心地よい。

しあわせのこみち/チハラトーコの物語/樹氷の街

            

7.

●「ツナグ」● ★★☆         吉川英治文学新人賞


ツナグ画像

2010年10月
新潮社刊
(1500円+税)

2012年09月
新潮文庫化



2010/11/10



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たった一度だけ、死んでしまった人に再会することができる。ただし、死者もまた生きている人間に再会できるのはたった一度だけ。生きている者と死んでしまった者、その望みを仲介する役割を背負った者を“ツナグ(使者)”という。
使者を仲介にした生者と死者の再会ストーリィ、連作5篇。

いつか何処かで読んだ気がする、懐かしさ感じるストーリィ。でも本作品で何より感じるのは、その優しさです。
残された者が死んでしまった相手に対して抱く、もう一度だけ会いたいという気持ち。死んでしまった者が生きている者に対して、せめて何か残したいという気持ち。その気持ちが双方に成り立ってこそツナグによる再会が成る訳で、優しさなくしてこのストーリィは成り立ちません。

再会ストーリィ、そこにミステリはありません。敢えて言えば、
「待ち人の心得」において行方知れずとなった恋人の身の上がややミステリアス。
しかし、辻村深月さんにとってミステリはなくてはならないストーリィ要素なのか。最後はミステリの種明かしのような展開が読者を待ち受けています。
辻村深月さん、その“ミステリ”の使い方が実に上手い! “ミステリ”がストーリィに絶妙の余韻を与えているのです。辻村作品にあって、ミステリはもはや題材ではなく、香しいスパイスです。
なお、余韻という点では
「待ち人の心得」がことに美しい篇。
最後の
「使者の心得」では、底辺に流れるひとつ家族としての愛情が胸を打ちます。
   

アイドルの心得/長男の心得/親友の心得/待ち人の心得/使者の心得

※映画化 → 「ツナグ

             

8.

●「本日は大安なり」● ★★


本日は大安なり画像

2011年02月
角川書店刊
(1600円+税)

2014年01月
角川文庫化



2011/03/21



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結婚式場として評判の高いホテル・アールマティ
とある大安吉日、そのアールマティで挙式・披露宴を行う4組のカップルの、悲喜こもごもを織り込んだドラマを同時並行で描いた巧作。
特定の場所にたまたま集まった何組かのドラマを同時並行して描いていくという手法は、小説・映画でも時々見かけるもので、本作品が初めてという程珍しいものではありませんが、ともかくも本書では、深月さんの上手さが光ります。
それ程感動的なストーリィという訳ではありませんが、様々な人間の姿を巧妙に描き出すという辻村さんの技が、練りに練られて本書にて見事に活かされている、という印象です。

4組の新婚にまつわるドラマといっても、主人公(=語り手)の設定が各々異なり、一様ではないのがまず良い。
ある式では曰くありげな双子姉妹の2人共々であり、他ではクレーマーの新婦に振り回されるウェディングプランナーであり、式に不安を抱く幼い甥っ子であり、ある大きな秘密を抱え込んでしまった新郎である、といった具合。
また、各々結婚に至るまでに様々なドラマがあり、それは本日の結婚式にまで持ち込まれている、という展開。
即ち、単に派手な儀式というだけとみられる結婚式ですが、当人たちにとっては、自らの人生を象徴するような大きなヒトコマであると実感させてくれるところが、巧妙なところ。
そしてそこへ更に、辻村さんらしい、サスペンスとミステリ要素が加わって本書の面白さを盛り上げてくれます。
なお、イヴニング挙式の新郎である
鈴木睦雄が主人公とするドラマには絶句するばかり、その人物造形も抜群と言いたい。

ストーリィは格別なものではありませんが、辻村さんの熟達した上手さが光る一冊。
若い女性にとってはリアル、若い男性は怖れを感じてしまうストーリィかもしれませんが、お薦め。

10:30相馬家・加賀山家、12:30十倉家・大崎家、13:30東家・白須家、17:30鈴木家・三田家

            

9.

●「オーダーメイド殺人クラブ」● ★★


オーダーメイド殺人クラブ画像

2011年05月
集英社刊
(1600円+税)

2015年05月
集英社文庫化


2011/06/12


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題名からして衝撃的。どんなストーリィかまるで見当もつかず、読み始める前にはちょっと恐れさえ感じます。

中学2年生の
小林アン。クラスでは一応、芹香が仲良しグループ。でもリーダーの芹香、気ままで自分勝手、アンと倖はいつも芹香に振り回されっ放しという風。
そんな学校生活、また母親との毎日に閉塞感を抱えるアン、同級生の昆虫系男子の一人
徳川に、「私を殺して」と頼みます。
何ら迷うことなく応諾した徳川と、最悪の“少年A”犯罪を残そうと、2人は綿密な実行計画を練り上げていきます。
本当に2人は、自ら殺され、自ら殺す計画を実行に移すのか。
 
イジメ、ハブ(村八分)、今や学園小説では当たり前のストーリィ要素が本作品でも繰り返されます。
一人一人はこんなことしちゃいけないと思っても、グループでのこととなるとどうにもならない。
そんな空気の中から抜け出したいと、悲鳴をあげるようなアンの気持ち、判る気がします。
題名こそ衝撃的なものですが、ストーリィの本質は今の中学生たちが抱える閉塞感がテーマ。
とはいえ、ストーリィが展開していく中での緊迫感+戦慄感、そこは辻村さんらしく相当なもの、手応え十分です。

現代に相応しい、サスペンスティックな学園青春小説の佳作。

           

10.

●「水底フェスタ」● ★★




2011年08月
文芸春秋刊
(1429円+税)

2014年08月
文春文庫化



2011/09/15



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ロックフェスだけが売り物の過疎の村。
自意識の強い高校生=
湧谷広海の前に現れたのは、村に戻ってきた8歳年上のモデル・女優である織場由貴美
「村に戻ってきた理由は復讐の為」と由貴美が広海に打ち明けた時、既に広海は半ば由貴美に取り込まれていた。
 
出版社の紹介文を読む限り、陰鬱そうで私の好みではないストーリィといった感じなのですが、そこは辻村深月作品、読んでおかないと後悔しそうというだけの信頼感・期待感があります。

村に復讐したい、ついては手伝ってと言う由貴美に、自意識が高いからこそ広海は取り込まれてしまったのか。
その広海に対し由貴美が語ることは、どこまでが真実なのか、それとも全くの虚偽なのか。
そしてまた、2人が巻き込まれた事故は本当に偶然のことだったのか、それとも必然的なものだったのか。
すべてが不確かであり、全てを疑わずにはいられません。だからこそミステリアス、スリリング。

しかし、本ストーリィで一番恐ろしいものは何か?と言ったら、それはおそらく“日常”なのでしょう。
さりげない日常の底に潜められた毒、最後に広海はそれを知ることになります。
ある意味、閉塞的な村から何とか逃れようとしている点で共通する2人の間に生じる必然的な恋愛は、「ロミオとジュリエット」の村社会バージョンとも思えます。
普通にある“日常”の中に、もしかするととんでもない非日常が潜んでいるのかもしれない不気味さを描いた意欲作。
ありきたりなようでいて、かなり深いところのある作品。
それでも、本ストーリィ、私の好みからすると面白かったとはちと言い難し。

    

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