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1.双眼 2.柳影 3.やみとり屋 4.秘剣の黙示 5.甘水岩 6.月下妙剣 7.柳生双剣士 8.柳生平定記 10.諸刃の燕 ※すぎすぎ小僧(短篇 → 藤水名子監修「夢を見にけり」収録) |
おばちゃんくノ一小笑組、忍女隊の罠、寝太郎与力映之進 |
●「双 眼」● ★☆ |
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2002年05月 2008年07月
2002/06/21 |
20代の女性が時代小説を書いた、というだけでも興味を惹かれます。 本書は、そんな多田さんのデビュー作。柳生十兵衛を描いた剣豪小説です。 ストーリィは、柳生十兵衛伝説とも言うべき、薩摩への隠密行。そこは当然、柳生新陰流と示現流との闘いが繰り広げられます。 しかし、本作品の主眼は剣あるいは術をもっての闘いではなく、十兵衛が隠密行の傍ら、自らの剣を試練を経て高めようとするところにあります。あたかも、与えられた使命は隠密ながら、自らの目的はそれと異なり、剣の理をさらに極めることにある、というように。 柳生十兵衛は何故隻眼だったのか。見えない目をもって、十兵衛は別の世界を同時に見ていたのではないか、というのが多田さんの着想。そこが本作品の斬新な特徴です。 そんな十兵衛像の新鮮さとともに、エロティシズムがかすかに漂うところに、本作品の魅力があります。 ※本作品では、父・柳生宗矩と十兵衛を好一対として描いていますが、私としては、剣における宗矩、ひいては十兵衛にこだわりがあります。剣の達人としては信用できない、ということ。 |
●「柳 影(やなぎかげ)」● ☆ |
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2003年06月 |
主な登場人物は、陰間茶屋・茉屋にて“られん香の柳次”と異名をとる柳次、その茶屋主人である茉屋兵蔵、公儀隠し目付の役を担う旗本・長坂血槍九郎の3人。 |
●「やみとり屋」● ☆ |
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2004年07月 2003/02/27 |
綱吉の“生類憐れみの令”の下、向島の外れの森の中に、密かに鳥を焼いて食わせるという“やみとり屋”があった。そしてそこに集うのは、いずれも一癖二癖ある男たち。 そんな男たちを描くストーリィ。 とはいうものの、最初から何となくストーリィが腑に落ちず、今ひとつ、というのが実感。 |
●「秘剣の黙示」● ★★☆ |
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2006年12月 |
本書を読んでいると、他の時代小説と異なる、ひんやりと冷たいものを感じます。それは近寄り難いものでもあり、その一方で気持ち良さにも通じています。 主人公おれんは、江戸市井の堤燈職人の娘でしたが、兄の死をきっかけに父親から名流“如月流”の隠れた宗家であることを告げられます。その時からおれんは、一子相伝の如月流7代目・如月練之介として生きることになります。 |
●「甘水岩(あまみいわ)」● ★☆ |
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2009年02月 2004/03/10 |
「女性作家初の本格的忍者小説」というのが本書の帯文句。 主人公は、嗅ぎ忍と呼ばれる小勢力の忍者集団の頭・伊真。時代は、すでに戦国時代が終焉し、公的な存在以外の忍びは公儀狩りにより存在自体が許されなくなった頃のこと。 甘水岩と呼ばれる水源地の所有をめぐって隣藩同士が争う中、その一方に雇われた伊真は、単身で相手方の甲賀忍者群と対決することになります。 華々しい忍び合戦などまるでなく、ただ雇われたが故に利権争いの手先となって血みどろの争いを繰り広げる、忍び故の悲しい性がそこには感じられます。また、伊真の心象には常に荒涼としたものが窺える、それらの点が印象的です。 |
●「月下妙剣」● ★★★ |
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2005/02/14
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久しぶりに絶品と言いたい時代小説。 本書において多田さんは、十兵衛を直接描くのではなく、十兵衛に仕えた狭川牛之介という少年の目を通して描く方法をとっています。それにより、柳生十兵衛三厳とはどういう人物だったのか、新陰流とはどういう流儀だったのかという視点が明快になっていて、小気味良い。 十兵衛を取り巻く踏水鬼、小霧ら登場人物をはじめとし、本作品全体が軽やかで爽快、読後感はすこぶる気分が好い。 |
●「柳生双剣士」● ★★ |
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2006/07/17
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またまた柳生十兵衛を主人公とした作品です。 前半は赤鍔の眼帯をした十兵衛と黒鍔の眼帯をした十兵衛のせめぎ合いが描かれます。表題からしてこれが本書の主ストーリィと思うのが当然なのですが、さにあらず。 それにしても、ここまで剣理を深く追求しようとする時代小説はなかったのではないでしょうか。 |
●「柳生平定記」● ★★ |
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2009年09月
2006/09/14
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「双眼」「月下妙剣」「柳生双剣士」に続く柳生十兵衛もの。 本書ストーリィは、十兵衛が公儀隠密として全国行脚するという恒例のパターンですが、中心は切支丹。 ですから、いきなり本書を読むのはちとシンドイでしょう。本書の前にまず「月下妙剣」「柳生双剣士」を読むことをお薦めします。 |
9. | |
「新陰流サムライ仕事術」 ★☆ |
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2013/04/02
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仕事の進め方や対人関係に応用できる柳生新陰流の極意を判り易く紹介した一冊。 読んでみると成る程、新陰流の教えは現代社会にも通じるものがあります。我が身をどう処するか、出処進退を教えているところはまさにそう。初級段階ではまことに同感、長年の会社員生活から学んだところもそうだったよなぁと思っていられたものの、後半の上級段階に進んで対人関係の技ともなると私レベルではやっぱりハードルが高いなぁと感じます。 最終章は、柳生新陰流の代名詞というべき“無刀取り”について。そうかぁ、無刀取りとはそういう意味を持っていたのかと、ちょっと新鮮な感動でした。 からだの章/こころの章/対人の章/武略の章/無刀の章 |
10. | |
●「諸刃の燕」● ★★☆ |
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2012/10/01
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柳生ものが多い多田さんにあっては久々の非柳生作品。 主人公の隼四郎、生まれ落ちてからずっと放浪の武芸者である祖父=日下雲楽に育てられてきましたが、16歳になって林羽家で書物学問奉行を務める実父=泊虚山の元に跡継ぎとして引き取られます。 武家は領民を犠牲にして当然、自分たちの利を図って当然という凝り固まった考えの大人たちに対する、純真な若者たちという対立構図も窺えて、米村圭伍さんの青春時代ものとはまた違った趣きを味わせてくれます。 数ある時代小説の中でも珍しい、青春成長小説であると同時に剣豪小説であるという逸品。文庫書下ろしなんて、何と勿体ない。 |