島本理生
(りお)作品のページ No.3



21.夏の裁断


【作家歴】、シルエット、リトル・バイ・リトル、生まれる森、ナラタージュ、一千一秒の日々、大きな熊が来る前におやすみ、あなたの呼吸が止まるまで、クローバー、CHICAライフ、波打ち際の蛍

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君が降る日、真綿荘の住人たち、あられもない祈り、アンダスタンド・メイビー、七緒のために、B級恋愛グルメのすすめ、よだかの片想い、週末は彼女たちのもの、Red、匿名者のためのスピカ

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21.

「夏の裁断 ★☆




2015年08月
文芸春秋刊

(1100円+税)



2015/08/25



amazon.co.jp

若い女性作家=萱野千紘の前に現れたのは、悪魔のような編集者だった。その柴田によって千紘は、歯止めを失ったかのように振り回され、心理的に蹂躙され、傷を深くしていく、というストーリィ。

その柴田という編集者の異様さは、千紘に対して最初こそ丁寧な口のきき方をするものの千紘が弱みを見せるや一転して「お前」呼ばわり、傍若無人に振る舞い、確信的に千紘を踏みつけにする行動を繰り返していく処にあります。
そんな男だと分かっているのに、何故千紘は振り回され続けるのかと千紘自身に対して不信感を抱いてしまうのですが、そこは千紘があるトラウマを抱えているためと明かされます。

女を追い詰めてほくそ笑んでいるような男と、男に追い詰められて煩悶し続ける女という、バトルのような心理小説。 120頁余と短い作品ですが、その点に絞った作品だからと思えば納得がいきます。
葛藤の末に泥沼状態から何とか抜け出る千紘を描いたストーリィなのですが、どうもなァ・・・私には好きになれない手合いの作品と言わざるを得ません。

※なお、千紘は母親から命じられ、祖父が遺した大量の蔵書を電子データ化するためにそれらの書物を作業完了後に裁断していくのですが、本書の表題はそのことを表しつつ、千紘がトラウマを断つという意味をシンクロさせているように感じます。

  

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