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12.真綿荘の住人たち 13.あられもない祈り 14.アンダスタンド・メイビー 15.七緒のために 16.B級恋愛グルメのすすめ 17.よだかの片想い 18.週末は彼女たちのもの 19.Red 20.匿名者のためのスピカ |
【作家歴】、シルエット、リトル・バイ・リトル、生まれる森、ナラタージュ、一千一秒の日々、大きな熊が来る前におやすみ、あなたの呼吸が止まるまで、クローバー、CHICAライフ、波打ち際の蛍 |
夏の裁断 |
●「君が降る日」● ★☆ |
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2012年04月
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表題作である中篇「君が降る日」は、恋人の死をテーマにした作品。島本さんにとってハードルが高く、これまで挑戦を避けてきたテーマだそうです。 中学生時代に知り合ってずっと恋人関係にあった降一。その彼は大学で一歳年上の友人=五十嵐とドライブ中、飛び出してきた幼児を避けようとした事故で突然に死んでしまう。 「野ばら」は、恋人未満友人以上の関係がついに発展することのなかった、佳乃と祐という2人の青春期ストーリィ。 3篇中では一番軽い作品となるのでしょうけれど、私が一番好きなのはその「冬の動物園」。 君が降る日(長き夜の章・浅き春の章)/冬の動物園/野ばら |
●「真綿荘の住人たち」● ★☆ |
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2013年01月
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さる下宿を舞台にした、住人達の様々な“恋愛のようなもの”を描いた連作風小説。 東京の大学に入学するため北海道から上京した大和葉介が住むことになったのは、朝夕賄い付という古風な下宿、真綿荘。 恋愛のようなもの、という言い方をしたのは、恋愛に行きつく以前の状況に彼女たちが留まっているから。恋愛に関して未成熟、と表現するのがもっとも適切のように感じます。 青少年のための手引き/清潔な視線/シスター/海へ向かう魚たち/押し入れの傍観者/真綿荘の恋人 |
●「あられもない祈り」● ★ |
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2013年06月
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帯にある推奨文を読むと、絶賛という他ない評価。 端的に言ってしまえば、既婚男性との不倫愛。 小説作品としての評価は別にして、どうも私は、こうしたストーリィは生理的に受け入れられないのです。 最後ようやくヒロインが、自分の道を歩みだそうとする結末はホッとするのですが、結末は小説の最後の部分に過ぎませんから。 |
14. | |
●「アンダスタンド・メイビー」● ★★☆ |
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2014年01月
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隙あらば少女たちを餌食にしようとする男たち。 下巻は、住んでいた街にいられなくなって家を飛び出したまま、カメラマンの住み込みアシスタントになった黒江の、2年半後からのストーリィ。 母親と断絶したことにより、たった一人、もがくようにして自分の居場所を見つけようとする少女の、年代記と言ってもよいストーリィ。そんな中、性に翻弄されるような部分は、いかにも島本さんらしい要素。 |
15. | |
●「七緒のために」● ★★ |
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島本さんとしては久しぶりの中篇小説2篇。 「七緒のために」は、互いに孤立を深める女子中学生2人の微妙な友人関係を描いた作品。 友情、孤立、嘘、友人のために何かしたい気持ち、というストーリィ要素は、割りとよくあるものではないかと思います。 「水の花火」は、高校生男女2人の友情以上恋愛未満の関係を描くストーリィですが、2人の前からいなくなったある同級生の存在が大きなインパクトになっています。 青春期における心の欺瞞と揺らぎを鮮やかに描き出した2篇、共に秀作です。 七緒のために/水の花火 |
16. | |
「B級恋愛グルメのすすめ」 ★☆ |
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2016年01月 2013/02/27 |
「CHICAライフ」に続く、2冊目のエッセイ集。 食べ物、酒、恋愛、男女関係等々、日常生活を自然体で語っているところは「CHICAライフ」と変わりなし。 エッセイ各篇の楽しさ、面白さは実際に読んでもらえば良いことですが、ファンにとって見逃せないのは、元夫さんとの再婚経緯がさらりと語られているところ。 また、学生時代の後輩だという「柴君」について語ったエッセイにも注目。男女の恋愛関係には私も疎いのですが、そんな私でも呆れてしまうのがこの柴君。日本の将来が心配になるなァ。 |
17. | |
「よだかの片想い」 ★★☆ |
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2015年09月
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島本さんというと恋愛小説、というイメージが強いのですが、まず「片想い」という表題にいつもの作品とは違うのかと、読み始める前から少々困惑する思いがありました。 ひとつは、主人公である前田アイコ24歳が引っ込み思案で地味な女性であること。またこれまで特に恋愛経験もなく、極めて奥手の女性。どちらかというと強い自我を持ったこれまでの主人公像と対照的な位置にある女性です。 恋愛を差し置き、恋愛を梃子にアイコが人間的に成長する姿を描いているところが実に良い。恋愛と成長、どちらが重要かといえば、恋愛が永遠のものとは限らないのに対し成長は一生のものという点で、自ずと答えは決まっているようなものです。 ※なお、題名の「よだか」は、宮沢賢治の短篇「よだかの星」から。同作品に登場するよだかは実に醜い鳥で、誰からも目を背けられる存在という設定です。 |
18. | |
「週末は彼女たちのもの」 ★☆ |
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LUMINEのホームページに連載されていたショートストーリィに、3篇を追加書き下ろしてまとめた一冊。 写真に合わせてLUMINEを舞台にした物語を書く、という企画だったそうです。 何人もの男女が街中で様々に交錯するように、各篇で主人公を入れ替えながら、繋がるストーリィを交互に入れ混ぜながら、男女が新しく出会い、恋が芽生える模様がアラベスクのように語られていきます。 いかにも都会的な洒落たロマンス・ストーリィ。 洒落たショートストーリィという点で共通する片岡義男作品を連想しますが、片岡作品が洒落た雰囲気が優先している印象であるのに対し、本短篇集は女性作家らしい優しさに満ちているように感じます。 誰よりも美しい彼女/スポットライト/急降下/小さな紳士/同窓会/Your Days/Color/ショート・トリップ/甘くない男/再会 sideA/再会 sideB/タイムリミット/奇妙に美しかった夜/忘れ物/偶然の家族/一番似合う相手/変身/横顔/男同士/秘密の後で/夜を分け合う/クリスマスはあなたと/午前0時のクリスマスツリー |
19. | |
「Red」 ★★ 島清恋愛文学賞 |
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島本理生さん初の官能小説、とのこと。 主人公は30歳過ぎの専業主婦、村主塔子。家庭は夫の義父母と同居。姑は友達感覚でいられる相手、というのが塔子本人の位置づけ。 世間からみると申し分のない家族関係のように見えますが、塔子が密かに抱える不満は、3年間も夫とセックスレスであること。そんな塔子、友人の結婚式で偶然、10年前に塔子が愛人(不倫)関係を結んでいた相手=鞍田秋彦と偶然に再会します。 今は離婚して独り身となっている鞍田は、塔子が人妻であることなどまるで関係ないとばかりに、すぐさまセックス関係の復活を仕掛けてきます。そんな鞍田に対し嫌だと抵抗するものの、身体が正直に反応してしまうのを塔子は抑えることができません。 そして鞍田から勧められ鞍田が役員をしている会社で契約社員として働き始めると塔子は、あぁ自分は働きたかったのだと気づきます。そして・・・・ 官能小説という紹介文句、本ストーリィの滑り出しから、官能に目覚めた塔子がどう姿を変えていくのかを描いた作品とてっきり思っていました。しかし、あにはからんや。セックスは単なるきっかけ、一部のことに過ぎず、本ストーリィの根本は塔子が自分を取り戻す過程を描くものである筈。 なお、塔子の夫である真、いくら小説とはいえなんと鼻持ちならないマザコン男であることか。 本書は、自分を抑えて専業主婦に甘んじているかもしれない女性たちへ、新たな道を切り開いて見せた作品と感じます。 |
「匿名者のためのスピカ」 ★ |
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法科大学院へ通う主人公=笠井修吾の目の前で、付き合い始めていた同級生の館林景織子(きょうこ)が暗い目をした不審な男に拉致されてしまう。 その男は、景織子が高校生の時に彼女を監禁し逮捕歴のある高橋稔。しかもその際、景織子の弟が高橋に金槌で頭を殴られ重体。 ストーカー事件の再発かと思われたが、何故か景織子は進んで高橋の車に乗り込んでいったように見えた。 笠井のやはり同級生である七澤拓は、2人が波照間島へ向かったに違いないと断言し、笠井と七澤は2人の跡を追いかけ波照間島へと向かいます・・・・。 率直に言ってこうしたストーリィ、好きではないなァ。事件ものストーリィでもなく、スリリングでもなく、やりきれない思いばかりがストーリィ全体を覆っている印象を受けるので。 景織子の行動を何故七澤が推測できるのかと言えば、お互いに親子関係が破綻しているという共通点があるためか。 本作品の狙いがどこにあるのか。親子関係が健全ではないとこういう結果が起こりかねない、ということへの警鐘でしょうか。 登場人物も少なく、ストーリィも中途半端に終わってしまった観が否めず、残念。 |
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