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11.寝ても覚めても 12.よそ見津々 13.ビリジアン 14.虹色と幸運 15.わたしがいなかった街で 16.週末カミング 17.よう知らんけど日記 18.星よりひそかに 19.春の庭 20.きょうのできごと、十年後 |
【作家歴】、きょうのできごと、青空感傷ツアー、ショートカット、フルタイムライフ、いつか僕らの途中で、その街の今は、また会う日まで、主題歌、星のしるし、ドリーマーズ |
パノララ、かわうそ堀怪談見習い、千の扉、公園へ行かないか?火曜日に、つかのまのこと、待ち遠しい、百年と一日、大阪、続きと始まり、あらゆることは今起こる |
遠くまで歩く |
●「寝ても覚めても」● ★★ 野間文芸新人賞 |
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2014年05月
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いつもの柴崎作品のように、ごく普通の若い女性の平凡な日々がずっと描かれていきます。カメラで写真を撮るのが好き、というのもいつもの柴崎作品の主人公らしい。 しかし、異なるのは、主人公=泉谷朝子の22歳から31歳までという、10年間という長い時の流れが描かれていること。 大阪、朝子は麦(ばく)という青年と恋仲になるが、彼は去ったきり朝子の元に戻らず。 何気ない日常の繰り返し。ただ時間だけが経っていく。この中にどのような意味があるのかと思うものの、柴崎作品においてはその何でもない時間が居心地良いのです。 他の恋愛ストーリィとは趣を異にする、柴崎さんならではの恋愛ストーリィと言うべきでしょう。 |
●「よそ見津々」● ★★ |
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柴崎さん初のエッセイ集。 大阪から東京に住まいを移してからのエッセイなので、東京の景色が中心。そしてそれを語る柴崎さんの文章は、関西弁。 小説ではなくエッセイなので、余計なことを考えず、ただその柔らかさに浸っていればいい。それだけで気分は、充分楽しいのです。 東京の木/希望の場所/料理は、てきとうに塩梅に/ファッションの、なんとなく/本と映画と/小説を書くこと |
●「ビリジアン」● ★★ |
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2016年07月 2011/03/10 |
各章、ある日の記憶、つまり「点」を描いているという風。 20の掌篇からなる作品ですが、主人公は一人、山田解という女の子。彼女の10歳から19歳までの、ある日・ある時が描かれています。 「面」は大切ですが、ひとつひとつの「点」も愛おしい。 黄色の日/ピーターとジャニス/火花1/火花2/片目の男/金魚/十二月/ピンク/アイスクリーム/ナナフシ/スウィンドル/赤/終わり/Fever/フィッシング/目撃者/白い目/赤の赤/船/Ray |
●「虹色と幸運」● ★★☆ |
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2015年04月
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本田かおり、水島珠子、春日井夏美という、高校〜大学時代からの友人という関係にある、30歳を越えたばかりの女性3人を主役にした長篇小説。 ドラマチックな出来事が起こる訳でもなく、ごく普通の日常が淡々と描かれていくところは、いつもの柴崎作品どおりの展開。 小説のストーリィとはとかく急ぎ足、あるいは駆け足で展開していくものなのですが、本作品では散策ペースでじっくり歩いている、という感じ。 人それぞれ、生き方もそれぞれ、本作品に描かれる3人の女性の1年間は、まさに人生の縮図と言えるのではないでしょうか。 |
15. | |
●「わたしがいなかった街で」● ★★ |
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2014年12月
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柴崎友香作品といえば、あるがままの今を肯定するといった姿勢が基調でしたが、その点で本書は転機となる一冊ではないかと感じられます。 今までの肯定的な作品と異なり、このままでいいのか、という疑問が本作品では投げかけられています。 これまでの柴崎作品からみて転機と言える作品ですが、疑問と同時に希望もきちんと呈示されています。 わたしがいなかった街で/ここで、ここで |
16. | |
●「週末カミング」● ★★ |
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2017年01月
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ごく普通の日常生活から大切なものを掴みだす、といった趣向の作品が多い柴崎さんですが、その中でも本書はとりわけ“ありふれた日常生活”という印象が強い。 ありふれた日常生活の中にも“いいなァ”と感じる瞬間、時がそれなりにあるものです。本書では、訪れた先で感じた居心地の良さ、知り合いとの会話の中においてと、そこは様々。 結局、特別なことは何も起きないストーリィばかりですが、読み終えた後になって振り返る度に、ふっくらして、愛しいという思いが増してくる、そんな気がします。 ※今回柴崎さんの作品を読んでいて、片岡義男さんの作品とどこか通じるものがあるのではないか、とふと感じました。片岡作品は日常生活の中から洒落た時間、光景を引き出す風であるのに対し、柴崎作品はあくまで徹底してありふれた日常の時間、日々を大切なものとして描くという違いはありますが、ごく普通の日常生活を題材にしているという点において共通するものを感じた次第です。 鮭王子とハリウッド/ハッピーでニュー/つばめの日/なみゅぎまの日/海沿いの道/地上のパーティー/ここからは遠い場所/ハルツームにわたしはいない |
17. | |
「よう知らんけど日記」 ★☆ |
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2013/10/12 |
柴崎さんが生活の中で実感したこと、身の回りで気になること等を、普段しゃべっているとおりそのまま大阪弁で書き綴っているWEBサイト「エルマガbooks」への連載記事を書籍化したもの、とのこと。 柴崎作品の登場人物が基本的に関西人であることはいうまでもありませんが、皆々割りと静かな人物設定です。 東京に現在住んで大阪とをしばしば往ったり来たりしているからこそ、なおのこと大阪人風になってしまうのでしょうか。柴崎さん、これ程大阪人風とはなぁ・・・。(^^;) |
18. | |
「星よりひそかに」 ★★ |
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これが恋愛小説だったら、好きという気持ちを主体として物語られるのでしょう。 人を好きという気持ちを割り切って考えることができたらきっと楽でしょう。逆に固執すれば苦しいし。 柴崎さんらしい静かな口調による語らいの中に、(考え方次第なのでしょうけれど)ふとした可笑しさが入り混じる、そんな印象を受ける短篇集。 |
19. | |
「春の庭」 ★★☆ 芥川賞 |
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2017年04月
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柴崎作品には珍しく男性が主人公。 男性主人公といい、隣の家を覗く西さんや巳さんという登場人物といい、これまでの作品より積極的な動きがあるのが印象的。 従来作品同様、特にこれといったドラマは何も展開しないストーリィですけれど、そこに家があり、住む人がいて、ひとつの街として息づいている、そんな姿が浮かび上がってくるのが秀逸。 ※候補4回目での芥川賞受賞となった所為か、出版社紹介文等では「集大成」という言葉がやたら聞こえますが、私は少々違和感を覚えます。 |
20. | |
「きょうのできごと、十年後」 ★★☆ |
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2018年08月
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柴崎さん初の単行本作品「きょうのできごと」に登場した大学生たちの十年後、中沢がオープンしたカフェの5周年祝パーティをきっかけに再会した彼らの現在の様子を描くストーリィ。 私が「きょうのできごと」を読んだのは、柴崎作品としては3冊目。まだ十分に柴崎作品の良さ、魅力を読み取れていたとは言えない時期で、勿体なかったかなぁという思いをずっと引きずっていました。そういう思いがあったからこそ、彼等の十年後を描くという設定の本書を読めたことが嬉しい。 気楽な大学生生活から、社会に出てそれなりに年月を重ねてきた現在、彼らの言動の端々から10年という年月の重みが感じ取れます。 |
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