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11.夏から夏へ 12.第二音楽室 13.聖夜 14.シロガラス1−パワー・ストーン− 15.シロガラス2−めざめ− 16.シロガラス3−ただいま稽古中− 17.シロガラス4−お神楽の夜へ− 18.明るい夜に出かけて 19.シロガラス5−青い目のふたご− 20.いつの空にも星が出ていた |
【作家歴】、サマータイム、九月の雨、ごきげんな裏階段、しゃべれどもしゃべれども、イグアナくんのおじゃまな毎日、神様がくれた指、黄色い目の魚、一瞬の風になれ−第一部〜第三部 |
●「夏から夏へ」● ★★ |
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2010年06月
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日本陸上 4x100mリレー
の4人のスプリンターを佐藤さんが取材したノンフィクション。 何故こんなにも4x100mリレーに興奮するのか。 4人のスプリンターについて、その人間性にアプローチした傑作ノンフィクション。お薦めです。 第一部 世界陸上大阪大会(2007年08月)/第二部 スプリンター |
12. | |
●「第二音楽室 School and Music」● ★★☆ |
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2013年05月
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時代、小学校・中学校・高校という舞台は様々ですが、音楽をモチーフにしたスクール小説。 学校の良さは、いろいろな個性をもつ生徒たちが集まって、時にぶつかり合い、時に協力し合って成長していくというところにある筈(イジメの協力は困りますが)。とくにそれが音楽となると、過程、結果にはっきりと出てくるだけに、良いモチーフだなぁと思います。音楽自体、楽しいものですし。 ストーリィ順に紹介すると、鼓笛隊のピアニカ隊(6人)、男女デュエット(2人)、リコーダー・アンサンブル(4人)、バンド(4人)という趣向。 どの作品も、学校生活ならではの楽しさに加えて、演奏を一緒に作っていくという喜びがきちんと描かれています。 第二音楽室/デュエット/FOUR/裸樹 |
13. | |
●「聖 夜 School and Music」● ★☆ 小学館児童出版文化賞 |
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2013年12月
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「第二音楽室」に続く、「School and Music」。 「第二音楽室」と異なる点はもう一つ、前書4篇がいずれも複数人による合唱・合奏という趣向だったのに対し、本篇は一人による演奏であること。 メシアンへの挑戦はトラウマを乗り越えるのと同じ。本書は、鳴海一哉の成長物語に他なりません。 |
14. | |
「シロガラス1−パワー・ストーン−」 ★☆ |
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遠来町にある古い神社、白烏神社。 以前から演じてきた3人は、宮司であり古武術「星芒一心流」の当主である祖父に幼い頃から指導を受け天才少女と言われる藤堂千里と、その幼馴染である藤堂星司、筒井美音。 三部作の第1巻である本書ストーリィは、6人の小学生+周囲の大人たちの人物紹介ならびに舞台設定、そしてこれから何か起きるぞという兆しの発現まで。 |
「シロガラス2−めざめ−」 ★☆ |
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第1巻がプロローグ、主人公となる6人の小学生とその登場舞台をひととおり紹介した巻だとすれば、本巻は本番ストーリィの始まり、と言って良いでしょう。 前巻の最後で青い光に撃たれて気を失った6人ですが、意識を取り戻した後、それぞれの身に不思議なことが起きていることに気付きます。 6人が6人とも同一ではなく、それぞれに異なる、それも各自の性格に合わせたように、という処がミソ。 そうした事態に6人は、驚き、怖れを抱く一方で、否定しようとし、あるいは見極めようとする等々、各人各様です。 何故こんな事態が生じたのか、その答えもまた、信じ難いような経緯を辿って6人に知らされます。 何故こんな事態に疑問、また白烏神社には一体どんな秘密が隠されているのかという恐れ、そして星司の母親は何故突然姿を消してしまったのかという秘密も残されたまま。 本物語への興味は、当然ながら第3巻へと向かいます。 |
「シロガラス3−ただいま稽古中−」 ★☆ |
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白烏神社で青い光に撃たれ気を失って以降、不思議な力を身に付けるに至った6人のその後を描く巻。 力を使った後はひどく疲れてしまう6人でしたが、彼らの前に現れた“雪気”から、慣れれば疲れなくなると聞いた6人はそれぞれに練習に励むようになります。副題の「ただいま稽古中」とはその意味。 一方、この不思議な事態の原因は、白烏神社の創建者であると同時に星芒一心流の創始者である古の武士=森崎古丹に関わっていることがやはり“雪気”から告げられます。 その戦国時代に一流の武芸者であったという森崎古丹とは、一体如何なる人物なのか。 そこからの展開がまた驚くべきもの。 本作品、ファンタジーな小学生たちの冒険物語と思っていたのですが、いつの間にかSF? いくらなんでもという展開なのですが、これってアリ? ※読み始めた時は、本作品=3巻で完結とばかりに思い込んでいたのですが、少しも終わる気配はありません。本ストーリィ、さらに4巻へと続いていくとのこと。 |
「シロガラス4−お神楽の夜へ−」 ★☆ | |
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前巻で、森崎古丹が実は遠い過去に宇宙から地球に飛来した宇宙人(リサンダール人)だったと知らされた6人、それぞれ身に付いた不思議な力を高めようと練習に励む傍ら、森崎古丹が眠るコールドスリープ装置を見つけようと行動します。 一方、白烏神社のカラスの石像である雪気の前に、森崎古丹と同じ宇宙船のクルーだったという、ハルスと名乗る老人が現れ、同じく石像の雪花を攫って姿を消すという出来事のあったことが語られます。 さて、例大祭での神輿担ぎ等々の興奮を経て、いよいよ“子ども神楽”の夜。千里と礼生が剣士、美音と有沙、星司と数斗が2組の舞い手となって舞いを繰り広げます。 その時、何か起きるのか、青い光は現れるのか。 そして最後に、とても危険なことが近づいていることを告げて、本巻は終了、興味は次巻へと引き継がれます。 一気にストーリィが展開することなく、遅々として中々進まず、という雰囲気。 前巻との比較では、一歩前進、次巻での進展待ち、というところでしょうか。 これは仕方なし、我慢して次巻を待つしかないようです。 |
「明るい夜に出かけて」 ★★☆ 山本周五郎賞 | |
2019年05月
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ある出来事が原因となってネット上でプライバシーを晒され、大学を休学し、実家も出てアパートで独り暮らし、コンビニで深夜バイトを始めた富山一志が主人公。 色々あった主人公が唯一自分を保っていられるのは、毎週金曜日深夜のラジオ番組「アルコ&ピースのオールナイトニッポン」があってこそ。 そんな主人公の前にある夜、強烈な個性を爆発させるチビの女子高生が登場します。彼女は上記のラジオ番組で度々投稿を読み上げられるハガキ職人“虹色ギャランドゥ”だった。 他人を避けるようにしていた富山の密かな生活は、その時から彼女によって揺さぶられ、さらに先輩バイトの鹿沢、高校時代の友人=永川を巻き込んだ力強いうねりとなって動き出します。 私はまるで知らなかったのですが、本書中再三取り上げられる上記のラジオ番組は、実在した人気番組だったそうです。 私が深夜のラジオ番組に嵌ったのは高校〜大学生の時ですからもう40年以上も前。その時と今では、ラジオ番組の内容もかなり違っているのではないかと思いますが、懐かしい気がします。 深夜のコンビニ、深夜のラジオ番組というと、一般社会からちょっとドロップアウトした人たちが憩いを求める場、という感じを受けます(勿論そうではない人も多いと思いますが)。 主要登場人物の中で唯一順調と思えた永川も、実は心の中に重荷を抱えていたことが、後日判ります。 そんな4人が、本来の自分らしさをさらけ出せる、信頼しまたお互いに心配し合える仲間として繋がっていく。そして、そこから次の進路へと足を踏み出すことができるようになっていくという展開が、他人事とは思えない読み手としてとても嬉しい。 「明るい夜に出かけて」という題名は、これからへの希望を感じさせてくれる青春群像劇に、如何にも相応しいものです。 ※本書題名からふと思い出したのは、ダニエル・アラルコン「夜、僕らは輪になって歩く」。比べるのは適切でないのかもしれませんが、共通するものがある、と思うのです。 1.青くない海を見てる/2.ミス・サイコ/3.二つの名前/4.ただの落書きなのに/5.エンド・オブ・ザーワールド |
「シロガラス−5.青い目のふたご−」 ★★ | |
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前作から約3年ぶりとなる、シリーズ第5巻。 久しぶりとあって、“シロガラス”の世界に戻るまで、少々手間取りました。 白烏神社のはなれの庵から発見された古文書、それは江戸時代後期に宮司だった藤堂友清が遺したもの。 そこに記載されていたのは、白烏神社の神宝、本殿に関わる思いも寄らぬ事柄だった。 一方、千里たち子ども神楽メンバー6人は、獲得した超能力のトレーニングに励み、それぞれの力を増していく。 そんな千里たちの前に姿を現したのは、猫のような青い目をもつ双子の少年=リサンダール星人? 白烏神社の秘密が一部明らかになると共に、現実のリサンダール星人が登場。そして千里たちの超能力はパワーアップ。 その象徴ともいえるのが最終場面であり、同時に次の巻への期待を高めています。 ようやく面白くなってきたゾー、とワクワクする気分。 ※次巻は、あまり間を開けずに読みたいものです。 |
「いつの空にも星が出ていた」 ★☆ | |
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久しぶりの佐藤多佳子作品ということで、何の予備知識もないままに読み始めてしまったのですが、横浜ベイスターズの熱烈ファンを主人公たちに据えたドラマを描いた4篇。 題名の「星」がベイスターズのマークだったとはなぁ、思いもしませんでした。 「大洋ホエールズ」、川崎球場時代のことにもちょっと触れながら、横浜ベイスターズ〜 横浜DNAベイスターズ時代が舞台。 ・「レストスタンド」:物静かな高校教師と、彼に誘われて神宮球場へプロ野球試合を観に行った囲碁部3人の話。 他の3篇に比べごく短い篇ですが、さりげなく心に残ります。 ・「パレード」:女子高生=美咲とその彼氏となった宏太との、とても熱いベイスターズ応援青春記。優勝とその前年という盛り上がった時期ですからね〜。題名は優勝パレードのこと。 ・「ストラックアウト」:町の家電屋の息子である良太郎と、良太郎に留守宅を任した老夫婦のどうしようもない息子との同居ドタバタ劇。負けてばかりなのに何故応援するのか。ベイスターズヘのエールのような篇。ちょうど最下位ばかりの時期。 ・「ダブルヘッダー」:野球少年である小学生の光希と、家族で営む洋食屋のコックという父親、共にベイスターズファンという父子の話。 終盤、光希がたった一人で福岡まで新幹線で旅する部分がとても印象深い。その旅を通じて光希がひときわ大きく成長したように思われます。 とにかくストーリィ全体に、ベイスターズへの熱烈ファン感情が溢れています。試合の様子、贔屓選手への期待ぶり、応援を受けた選手の活躍ぶりと、リアルでとても濃い。 ただ、その濃密さが、逆について行けずと感じてしまう部分があります。 横浜ベイスターズファンには、過去の試合もリアルに振り返れるだけに、見逃せない一冊でしょう。 レフトスタンド/パレード/ストラックアウト/ダブルヘッダー |