佐藤多佳子作品のページ No.2



11.夏から夏へ

12.第二音楽室

13.聖夜

14.シロガラス1−パワー・ストーン−

15.シロガラス2−めざめ−

16.シロガラス3−ただいま稽古中−

17.シロガラス4−お神楽の夜へ−

18.明るい夜に出かけて

19.シロガラス5−青い目のふたご−


【作家歴】、サマータイム、九月の雨、ごきげんな裏階段、しゃべれどもしゃべれども、イグアナくんのおじゃまな毎日、神様がくれた指、黄色い目の魚、一瞬の風になれ−第一部〜第三部

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11.

●「夏から夏へ」● ★★


夏から夏へ画像

2008年07月
集英社刊

(1500円+税)

2010年06月
集英社文庫化



2008/09/03



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日本陸上 4x100mリレー の4人のスプリンターを佐藤さんが取材したノンフィクション。
取材の契機が一瞬の風になれにあることは、言うまでもありません。
4人のスプリンターとは、塚原直貴(23歳)、末續慎吾(28歳)、高平慎士(24歳)、朝原宣治(36歳)
つい先日の北京オリンピックで、トラック競技日本初のメダルを獲得したリレーチームの4人です。
本書題名の「夏から夏」とは、昨年夏の世界陸上大阪大会と、本年夏の北京オリンピックとを繋ぐノンフィクションだから。
オリンピックでのレース直前、あるいは直後に本書を読んでいればさぞ期待、あるいは興奮がどんなに高まったことかと思うのですが、図書館予約の順番待ち故のことで致し方なし。でも未だあの興奮の余韻は残っています。

何故こんなにも4x100mリレーに興奮するのか。
日本のメダル獲得に一番近い可能性がある、ということもひとつでしょうけれど、佐藤さんの「学校の運動会の延長上」にあるのかもしれないというコメントも言い得て妙。
走者順位を如何にという作戦、バトン渡しというテクニカル要素があるうえに、1レースでスプリンター4人の走りを楽しめるという面もあります。
正直なところ、スプリンターというのは、早く走れるという身体的能力を人並み以上に持っている人、とこれまで単純に考えていました。ところが本書で佐藤さんが描くスプリンター像はそんなものではありません。
前向きな性格であることは最低条件として、繊細さと大胆さ、そして走るという能力を大舞台において極限まで発揮できる強靭な精神力、緊張を爆発力に繋げられる強かさ、まるで超人としか思えなくなってきます。
特にそれは、10年以上もトップスプリンターであり続けている朝原選手、スター性を備えた末續選手について特に感じること。
そんな4人の間には、リレーにおいて絶対的な信頼関係があるのだという。
本書で佐藤さんは繰返し繰返し取材し、トップ・アスリートとはどんな人間にして初めて成り得るものなのか、を深く掘り下げていきます。
そこから浮かび上がってきたものは、とても一言二言で伝えられるものではない。後は本書を読んでもらう他ありません。

4人のスプリンターについて、その人間性にアプローチした傑作ノンフィクション。お薦めです。

第一部 世界陸上大阪大会(2007年08月)/第二部 スプリンター

        

12.

●「第二音楽室 School and Music」● ★★☆


第二音楽室画像

2010年11月
文芸春秋刊

(1429円+税)

2013年05月
文春文庫化



2010/12/08



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時代、小学校・中学校・高校という舞台は様々ですが、音楽をモチーフにしたスクール小説。

学校の良さは、いろいろな個性をもつ生徒たちが集まって、時にぶつかり合い、時に協力し合って成長していくというところにある筈(イジメの協力は困りますが)。とくにそれが音楽となると、過程、結果にはっきりと出てくるだけに、良いモチーフだなぁと思います。音楽自体、楽しいものですし。

ストーリィ順に紹介すると、鼓笛隊のピアニカ隊(6人)、男女デュエット(2人)、リコーダー・アンサンブル(4人)、バンド(4人)という趣向。
表題作の
「第二音楽室」は、有沢佳映「アナザー修学旅行に似た味わいのあるストーリィ。
「デュエット」は小品ですが、コミカルな味わいがあって好きだなぁ。
「FOUR」は、練習を重ねた結果4人の気持ちが揃っていくところが、何とも気持ち良い。
最後の
「裸樹」は、前3篇と違ってちょっと陰影のある中篇作品ですが、救いがきちんと描かれているところがう嬉しい。成長小説としての趣きは4篇中一番強い作品です。

どの作品も、学校生活ならではの楽しさに加えて、演奏を一緒に作っていくという喜びがきちんと描かれています。
幸せな時代だったなぁと思わず感じてしまう、味わい良い中短篇集。
※なお、本書を気に入った方には、
中沢けい「楽隊のうさぎも是非お薦めしたいところです。

第二音楽室/デュエット/FOUR/裸樹

  

13.

●「聖 夜 School and Music」● ★☆


聖夜画像

2010年12月
文芸春秋刊

(1381円+税)

2013年12月
文春文庫化



2011/01/03



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「第二音楽室」に続く、「School and Music」
音楽と学校を二本柱にした短篇集、7篇が目処、というのが当初の構想だったそうです。
ところが「第二音楽室」に収録した
「FOUR」が思ったより長くなり、「裸樹」はさらに長くなり、「聖夜」に至っては長篇並みの長さになってしまったことから、2冊本という結果になってしまったのだそうです。
佐藤さん曰く、
「掌、短、中、長編集という、ちょっと類を見ない珍品のシリーズ」とのこと。

「第二音楽室」と異なる点はもう一つ、前書4篇がいずれも複数人による合唱・合奏という趣向だったのに対し、本篇は一人による演奏であること。
楽器はオルガン。高校のオルガン部(存在としては珍しいらしい)なので、孤高ということではないのですが、弾き時は一人ですから。
主人公は
鳴海一哉、高校3年生で、オルガン部の部長。
父親が聖職者、母親が元ピアニストという境遇だったので、物心つく前からピアノ、オルガンに親しんできたという設定。
ところが、鳴海の幼い頃に母親がドイツ人のオルガニストと結婚するため家を出ており、母親に捨てられたというトラウマを持っており、そのため母親の記憶と結びつく音楽には複雑な思いを抱えています。
折りも折り、音大のオルガン科大学院生である倉田ゆかりが臨時コーチにやってきて、部員たちにコンサートをやろうと提案します。
鳴海は、母親が好んで弾いていたオルガンの難曲メシアンに挑戦すると宣言しますが、さて・・・・。

メシアンへの挑戦はトラウマを乗り越えるのと同じ。本書は、鳴海一哉の成長物語に他なりません。
それでも、他の部員たちが各々オルガン演奏においてみせる個性もしっかり描かれており、それなりに「School and Music」物語として楽しめます。
「第二音楽室」を読まれた方は是非本書も、本書を読まれようとする方は是非「第二音楽室」からの読書がお勧めです。

   

14.

「シロガラス1−パワー・ストーン− ★☆


シロガラス1

2014年09月
偕成社刊

(900円+税)


2015/05/20


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遠来町にある古い神社、白烏神社
パワー・スポットとして知られるその神社には3不思議あり。
第一は1対ある筈の神使である石像のカラスが1体しかないこと、第二は拝殿の天井画、第三は
星明石(ほしあかりの石)。
その白烏神社で毎年演じられている伝統芸能が“子ども神楽”。その来年の演者として6人の小学生が集められます。

以前から演じてきた3人は、宮司であり古武術「星芒一心流」の当主である祖父に幼い頃から指導を受け天才少女と言われる藤堂千里と、その幼馴染である藤堂星司筒井美音
それに対し新たに集められたのは、クラスのボス的存在である
北川礼生、ひねた性格の岡崎有沙、頭脳優秀にして運動神経劣悪の三上数斗という、性格もキャラクターもバラバラな3人。そのうえ、礼生はやたら千里たちに敵愾心を抱いているといった具合で先行き不穏。

三部作の第1巻である本書ストーリィは、6人の小学生+周囲の大人たちの人物紹介ならびに舞台設定、そしてこれから何か起きるぞという兆しの発現まで。
したがって、これからどんな展開が待ち受けているのかは次巻以降に「乞うご期待!」となる訳で、本巻のみでは評価のしようもありませんが、期待してワクワクする気持ちが生まれたことは確かです。

   

15.

「シロガラス2−めざめ− ★☆


シロガラス2

2014年10月
偕成社刊

(900円+税)


2015/05/28


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第1巻がプロローグ、主人公となる6人の小学生とその登場舞台をひととおり紹介した巻だとすれば、本巻は本番ストーリィの始まり、と言って良いでしょう。

前巻の最後で青い光に撃たれて気を失った6人ですが、意識を取り戻した後、それぞれの身に不思議なことが起きていることに気付きます。
6人が6人とも同一ではなく、それぞれに異なる、それも各自の性格に合わせたように、という処がミソ。

そうした事態に6人は、驚き、怖れを抱く一方で、否定しようとし、あるいは見極めようとする等々、各人各様です。
何故こんな事態が生じたのか、その答えもまた、信じ難いような経緯を辿って6人に知らされます。

何故こんな事態に疑問、また白烏神社には一体どんな秘密が隠されているのかという恐れ、そして星司の母親は何故突然姿を消してしまったのかという秘密も残されたまま。
本物語への興味は、当然ながら第3巻へと向かいます。 

      

16.

「シロガラス3−ただいま稽古中− ★☆


シロガラス3

2014年12月
偕成社刊

(900円+税)


2015/05/29


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白烏神社で青い光に撃たれ気を失って以降、不思議な力を身に付けるに至った6人のその後を描く巻。

力を使った後はひどく疲れてしまう6人でしたが、彼らの前に現れた
“雪気”から、慣れれば疲れなくなると聞いた6人はそれぞれに練習に励むようになります。副題の「ただいま稽古中」とはその意味。
一方、この不思議な事態の原因は、白烏神社の創建者であると同時に星芒一心流の創始者である古の武士=
森崎古丹に関わっていることがやはり“雪気”から告げられます。
その戦国時代に一流の武芸者であったという森崎古丹とは、一体如何なる人物なのか。


そこからの展開がまた驚くべきもの。
本作品、ファンタジーな小学生たちの冒険物語と思っていたのですが、いつの間にかSF?
いくらなんでもという展開なのですが、これってアリ?

※読み始めた時は、本作品=3巻で完結とばかりに思い込んでいたのですが、少しも終わる気配はありません。本ストーリィ、さらに4巻へと続いていくとのこと。

    

17.
「シロガラス4−お神楽の夜へ− ★☆


シロガラス4

2015年11月
偕成社刊

(900円+税)


2015/12/16


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前巻で、森崎古丹が実は遠い過去に宇宙から地球に飛来した宇宙人(リサンダール人)だったと知らされた6人、それぞれ身に付いた不思議な力を高めようと練習に励む傍ら、森崎古丹が眠るコールドスリープ装置を見つけようと行動します。

一方、白烏神社のカラスの石像である
雪気の前に、森崎古丹と同じ宇宙船のクルーだったという、ハルスと名乗る老人が現れ、同じく石像の雪花を攫って姿を消すという出来事のあったことが語られます。

さて、例大祭での神輿担ぎ等々の興奮を経て、いよいよ
“子ども神楽”の夜。千里礼生が剣士、美音有沙星司数斗が2組の舞い手となって舞いを繰り広げます。
その時、何か起きるのか、青い光は現れるのか。
そして最後に、とても危険なことが近づいていることを告げて、本巻は終了、興味は次巻へと引き継がれます。

一気にストーリィが展開することなく、遅々として中々進まず、という雰囲気。
前巻との比較では、一歩前進、次巻での進展待ち、というところでしょうか。
これは仕方なし、我慢して次巻を待つしかないようです。

      

18.
「明るい夜に出かけて ★★☆       山本周五郎賞


明るい夜に出かけて

2016年09月
新潮社刊

(1400円+税)

2019年05月
新潮文庫



2016/10/10



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ある出来事が原因となってネット上でプライバシーを晒され、大学を休学し、実家も出てアパートで独り暮らし、コンビニで深夜バイトを始めた富山一志が主人公。
色々あった主人公が唯一自分を保っていられるのは、毎週金曜日深夜のラジオ番組
「アルコ&ピースのオールナイトニッポン」があってこそ。
そんな主人公の前にある夜、強烈な個性を爆発させるチビの女子高生が登場します。彼女は上記のラジオ番組で度々投稿を読み上げられるハガキ職人
“虹色ギャランドゥ”だった。
他人を避けるようにしていた富山の密かな生活は、その時から彼女によって揺さぶられ、さらに先輩バイトの
鹿沢、高校時代の友人=永川を巻き込んだ力強いうねりとなって動き出します。

私はまるで知らなかったのですが、本書中再三取り上げられる上記のラジオ番組は、実在した人気番組だったそうです。
私が深夜のラジオ番組に嵌ったのは高校〜大学生の時ですからもう40年以上も前。その時と今では、ラジオ番組の内容もかなり違っているのではないかと思いますが、懐かしい気がします。

深夜のコンビニ、深夜のラジオ番組というと、一般社会からちょっとドロップアウトした人たちが憩いを求める場、という感じを受けます(勿論そうではない人も多いと思いますが)。
主要登場人物の中で唯一順調と思えた永川も、実は心の中に重荷を抱えていたことが、後日判ります。
そんな4人が、本来の自分らしさをさらけ出せる、信頼しまたお互いに心配し合える仲間として繋がっていく。そして、そこから次の進路へと足を踏み出すことができるようになっていくという展開が、他人事とは思えない読み手としてとても嬉しい。
「明るい夜に出かけて」という題名は、これからへの希望を感じさせてくれる青春群像劇に、如何にも相応しいものです。

※本書題名からふと思い出したのは、
ダニエル・アラルコン「夜、僕らは輪になって歩く。比べるのは適切でないのかもしれませんが、共通するものがある、と思うのです。

1.青くない海を見てる/2.ミス・サイコ/3.二つの名前/4.ただの落書きなのに/5.エンド・オブ・ザーワールド

                  

19.
「シロガラス−5.青い目のふたご− ★★


シロガラス5

2018年07月
偕成社刊

(900円+税)


2018/07/20


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前作から約3年ぶりとなる、シリーズ第5巻。
久しぶりとあって、“シロガラス”の世界に戻るまで、少々手間取りました。

白烏神社のはなれの庵から発見された古文書、それは江戸時代後期に宮司だった藤堂友清が遺したもの。
そこに記載されていたのは、白烏神社の神宝、本殿に関わる思いも寄らぬ事柄だった。
一方、
千里たち子ども神楽メンバー6人は、獲得した超能力のトレーニングに励み、それぞれの力を増していく。
そんな千里たちの前に姿を現したのは、猫のような青い目をもつ双子の少年=
リサンダール星人

白烏神社の秘密が一部明らかになると共に、現実のリサンダール星人が登場。そして千里たちの超能力はパワーアップ。
その象徴ともいえるのが最終場面であり、同時に次の巻への期待を高めています。
ようやく面白くなってきたゾー、とワクワクする気分。

※次巻は、あまり間を開けずに読みたいものです。

  

佐藤多佳子作品のページ No.1

  


 

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