坂木 司作品のページ No.2



11.肉小説集

12.何が困るかって

13.アンと青春

14.女子的生活


切れない糸、シンデレラ・ティース、ワーキング・ホリデー、ホテルジューシー、夜の光、短劇、和菓子のアン、ウィンター・ホリデー、大きな音が聞こえるか、ホリデー・イン

  坂木司作品のページ No.1

  


        

11.

「肉小説集」 ★☆


肉小説集画像

2014年10月
角川書店刊
(1400円+税)

2017年09月
角川文庫化



2014/11/24



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肉屋さんに入った時目に留まったのが、壁に貼られた部位図。これが小説の目次だったら面白いという発想から生まれた短篇集だそうです。
なお、肉が牛肉ではなく豚肉なのは、坂木さんが関東者だから、とのこと。

とにかくどの篇も豚肉に関わっていますから、ユニークです。
私のように刺身・海老・蟹・牡蠣・鶏肉等々がダメという変わり者もいますから、豚肉が嫌いという方もいない訳ではないと思いますが、大抵の人は好きですよね?
各篇で当然ながら部位は異なり、
豚足、トンカツ(ロース)、バラ肉、肩肉、ヒレ肉、ハムという順番。
どの篇が好きかという感想も、どの部位が好きかということにどうも影響されているような気がします。(笑)

冒頭の
「武闘派の爪先」、こんな結末になろうとは思いもしませんでした。この脱線具合は6篇中でも図抜けています。
展開が面白くて主人公の嗜好に同情したくなったのが
「アメリカ人の王様」。王様と王子、どっちもどっちという点が楽しい。
「肩の荷(+9)」は、同じ中年サラリーマンとして共感を抱きますが、ほのぼのとした温かさがあって良いですね。
「魚のヒレ」は、冗談毎の様な<青春の一ページ>篇。
「ほんの一部」は小学生が主人公ですが、ちょっぴり艶めかしいところが、肉の美味しさを引き出す胡椒のようで、言葉にし難い楽しさあり。

武闘派の爪先/アメリカ人の王様/君の好きなバラ/肩の荷(+9)/魚のヒレ/ほんの一部/あとがき

              

12.

「何が困るかって」 ★☆


何が困るかって画像

2014年12月
東京創元社刊
(1400円+税)

2017年12月
創元推理文庫化



2015/01/05



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短劇に続く、坂木さんとしては2冊目のショートストーリィ集、収録18篇。

かつて「ショートショート」と言えば星新一さんの代名詞のようなものでしたが、星さんが亡くなった後はこのジャンル、寂しいものがありました。
ショートストーリィの面白さは、遊び心に富んだ多種多様な作品群を手軽に味わえるところにあると思いますが、坂木さんが新たな書き手として登場してくれたのは嬉しい限りです。
本書に収録された作品にも、ひねりの効いたジョーク的なものから、温かさのあるファンタジー的なもの、奇想天外なものもありといったところで、喩えてみれば小粒チョコレートの詰め合わせを食するようなものでしょう。
ただし、好みに合うものもあれば合わないものもある、というのは仕方ないことで、好みにヒットした篇が十分それをカバーしてくれるのが、ショートストーリィ集の良さと思います。

18篇の中で特に私が気に入ったのは、
「怖い話」「勝負」「入眠」「仏さまの作り方」「神様の作り方」の5篇。

ちょっとした折の時間潰し、あるいは気分転換にお薦めです。


いじわるゲーム/怖い話/キグルミ星人/勝負/カフェの風景/入眠/ぶつり/ライブ感/ふうん/都市伝説/洗面台/ちょん/もうすぐ五時/鍵のかからない部屋/何が困るかって/リーフ/仏さまの作り方/神様の作り方

  

13.
「アンと青春 ★★


アンと青春

2016年03月
光文社刊
(1600円+税)

2018年10月
光文社文庫化



2016/04/12



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「赤毛のアン」に引っ掛けて和菓子のアンと題した、デパ地下にある和菓子屋「みつ屋」のバイト店員=梅本杏子を主人公にしたシリーズの続編。

美人でやり手の
椿店長、乙女チックなイケメン男性の立花、元ヤンの人妻大学生である桜井から“杏ちゃん”と呼ばれて親しまれている主人公、高卒で何の資格も取り得もないと謙遜しますが、何でも美味しそうに食べ、幸せそう、と周囲の皆々から好かれるキャラクター。
本シリーズの魅力は、そんな杏のキャラクターと、杏を囲む「みつ屋」の個性的な面々とのチームワークの良さにあると言って間違いありません。

物事に対していつも真摯かつ謙虚に向かい合い、学ぶ姿勢を崩すことなく、美味しそうに食べる様子は周囲の皆にまで幸せを感じさせてくれるというのですから、楽しく読めるシリーズものにとっては格好の主人公像でしょう。

本書でも、悩み、究め、成長しようとする様子はまさに“青春”という題名に相応しい。
そんな中に日常ミステリの要素が取り入れられています。

今回も
「アンの青春」にもじって「アンと青春」と題名が付けられていますが、この分ならアン”シリーズ同様、今後の続編も大いに期待できそうです。楽しみ。

空の春告鳥/女子の節句/男子のセック/甘いお荷物/秋の道行き

         

14.
「女子的生活 Life As a Girl ★★


女子的生活

2016年08月
新潮社刊
(1500円+税)



2016/09/13



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「女子的生活」という本書題名、“的”なのである。
その一文字に何か含みがありそうだなぁーと思っていたのですが、そうか、そういう仕掛けだったのか。

主人公の
みきはブラック気味のアパレルメーカー勤め。毎朝メイクも着る服もバッチリ決め、鏡の前で一回転してから出かけるのが常。まるで戦闘服をまとって闘いに出て行く気分満載なんですよねー。
住まいは都会の2LDK。それが可能であったのもルームメイトがいたから。しかし、そのルームメイト=
ともちゃんが彼氏と同棲するため同居を解消。
困っていた処へちょうど転がり込んできたのが、故郷で高校の同級生だった
後藤。彼女がヤミ金に手を出し行方をくらましたことから、業者に身ぐるみ剝がれて住むところがないと泣きついてきた次第。
と言っても独身女子のマンションにいくら同級生とはいえ、男を居候させていいものか・・・。でも居候させる羽目になってしまうのですから面白い。似たような話に
有川浩「植物図鑑がありますが、全く異なる展開です。

何より面白く、かつ痛快なのは、みきの女子力が半端でないこと。
合コンで競い合うことになった女子に一歩も引かず、自分を見下す男には徹底的に反撃、テンプレ男は余裕をもって見下す等々、次々と相手をなぎ倒していくという風なのです。
“女子力”とは本質的に、決して負けないという覚悟と何があっても自分を押し通すという突進力のことだったのか、と圧倒されるばかりです。

“女子力”とは何ぞや。それをリアルに実感できる、ユニークで痛快な傑作。読み終えた後はきっと、みきや後藤を心から応援したくなることでしょう。 是非、お薦め!

   

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