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11.あえてよかった |
【作家歴】、ダッシュ!、うたうとは小さないのちひろいあげ、空はいまぼくらふたりを中心に、青春は燃えるゴミではありません、こんとんじいちゃんの裏庭、夏に泳ぐ緑のクジラ、みつばちと少年 |
職員室の日曜日、ねこ探! |
「あえてよかった」 ★★☆ | |
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大事な妻の美月に先立たれた小野大地・58歳は、生きる気力を失い、仕事も辞め一軒家も売り払い、アパートへ引っ越し。 大地のただ一つの慰めは、夜、月を見上げながら亡き美月と会話すること。 私の代わりに子どもを育ててみてほしい、という美月の願いに応えるべく、大地は<放課後学童指導員>の仕事に応募します。 しかし、初めて大地が向き合った小さな子供たちの実像は、大地の想像を絶するものだった・・・。 子どもたちの相手をする学童指導員の仕事が決して楽なものではないとは思っていましたが、本当にこんなに大変なの?と、呆然とさせられました。 なにしろ、小学生たちひとりひとりが特有の問題(性格だったり家庭状況だったり)を抱えていて、そのくせその問題が簡単にわかるようなものではない。 子どもたちはそうした問題を口にする訳ではなく、普段とは異なる行動で示す、余程注意しなければ学童指導員たちも気づけるようなものではなく。 一方、指導員たちだって所詮一人の人間であり、それぞれに抱えている問題があると、次第に大地にも分かってきます。 大地以外の指導員たちは女性で、しかも大地より余程若い。 昭和年代に育った大地が抱く大人と子供の関係は、もはや現代では通じず、時々大地が漏らす言葉には、時々失笑せざるを得ません。 本作を読みながら、大人と子どもの関係は決して大人から子どもへの一方的なものではなく、本来対等なものなのだと気づかされます。 子どもと付き合うことで、自分もまた新たな発見、そして成長があると気づくことを通じて、いつしか大地に生きていこうという前向きな気持ちが生まれていきます。そこに胸熱くなると共に、この先への希望を見出す思いです。 全く気付かなかった子どもたちそれぞれの個性的な姿に出会える逸品、是非読んでいただきたい一冊です。 プロローグ/1.唐木朋子は笑わない/2.子どもはいつも全力/3.男はつらいよ/4.子どもは天使ではない/5.苦しいんだよね/6.行く人・くる人/7.ごめんなさいのあと/8.傷つけてしまったかもしれない/9.手に負えない子/10.女児が女子に変わるとき/11.ここには未來がある/エピローグ |
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