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1.夜空に泳ぐチョコレートグラミー 2.ぎょらん 3.うつくしが丘の不幸の家 4.52ヘルツのクジラたち 5.コンビニ兄弟 6.星を掬う 7.コンビニ兄弟2 8.宙ごはん 9.あなたはここにいなくとも 10.コンビニ兄弟3 |
夜明けのはざま、わたしの知る花、ドヴォルザークに染まるころ、コンビニ兄弟4 |
「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」 ★★★ |
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2021年04月
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「R-18文学賞」大賞を受賞した篇を含む、連作5篇。 デビュー作ということで特に期待してはいなかったのですが、冒頭2篇で驚かされました。まさに興奮する程の素晴らしさ。 ・「カメルーンの青い魚」: 出だしは、団子を食べたら差し歯である前歯2本が突き刺さってとれてしまったと、サチコと啓太が笑い合う場面から。主人公のサチコ、少々知的障害?と思ってしまったのですが、そんなことは決してなく、恋人りゅうちゃんとの再会から、これ以上ないくらい強い愛情をもった女性なのだと分かり、圧倒されました。 ・「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」: 前篇に登場した啓太が今度は主人公となり、啓太と晴子の物語。 地味で弱々しかった晴子が急に強くなった理由・・・なんて切ないことか。 頑張って生きていってと、晴子の背中に向かって心から呼びかけたい気持ちになります。 ・「波間に浮かぶイエロー」:男から女に変わる途中という芙美さんが経営する軽食屋に身を寄せた店員の沙世と、居候となった環の3人を描く篇。救われたい時、居場所を提供してもらえることがどんなに有難いことか、と感じます。 ・「溺れるスイミー」:ひとつ処に閉じ込められる怖さと、どこかへ逃げ出したいという本能。唯子はどちらを選ぶのか。 ・「海になる」:流産を繰返して子供が望めなくなった桜子。その直後から夫はDVを繰り返すようになる・・・。 その結末は思いも寄らぬもので、ただもうヤラレタ!の一言。 どの篇の登場人物もそれぞれに事情を抱えていて、決して順調とは言えない。それでも皆、懸命に泳いでいる(生きている)、その姿の何と素晴らしいことか。 各篇の登場人物がそれぞれ何らかの形で繋がっていることが、さらに感動を深めてくれています。 この素晴らしさをすっかり堪能しました。 是非、お薦め! ※なお、私の好きな作品を連想させる処があったのも嬉しい。 「チョコレートグラミー」は、白河三兎「私を知らないで」を。 「波間に浮かぶイエロー」は、古内一絵「マカン・マラン」を。 カメルーンの青い魚/夜空に泳ぐチョコレートグラミー/波間に浮かぶイエロー/溺れるスイミー/海になる |
「ぎょらん」 ★★★ | |
2023年07月
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人は死すとき、最期の願いを赤い珠にして残す。そしてそれを口に含んで噛み潰すと、死者の思いを知ることができるという。それが“ぎょらん”。 本作は、そのぎょらんをキーワードにした連作ストーリィ。 最初の篇「ぎょらん」に登場するのは、恋人が昨日バイク事故で死んだというOLの華子と、大学時代に親友が自殺、それ以来ヒキコモリとなった30歳の兄の朱鷺の2人。 その朱鷺が漫画で知ったというぎょらんを、2人が事故現場へ見つけに行くという出だし。 ファンタジーあるいはホラーと思える題材設定ですが、華子は恋人と言いつつ、実際はセフレとしてただ弄ばれていただけ。 冴えない2人から、それ程感銘を受ける作品ではないという第一印象でしたが、そこからが凄い。 章を追うごとに、切実な想い、衝撃的な過去、感動がどんどんヒートアップ、もう揉みくちゃにされたような気がする程、圧巻。どのストーリィも、何て濃い、そして何て深いことか。 死者ともう一度繋がろうとすることは、こんな深い想いを味わうことだったのかと、圧倒され尽くした思いです。 個々のストーリィにおける感動だけではありません。 最初、妹から「クソニート」と貶されていた朱鷺が、各章で顔を出し、徐々に立ち直っていく姿が描かれているところも、長編要素として胸を打たれます。 さらに、個々でも読み応えたっぷりだった各章ストーリィが最後に至ってひとつ輪に繋がり、朱鷺が10年以上も苦しんできた真相が明らかになるという展開も、思いがけないミステリ要素というべきところ。 そこに至ると、これまでのストーリィが大きく目の前で膨れ上がっていくような気がして圧巻、もうお見事としか言いようがありません。 「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」に引き続き、お薦め! ぎょらん/夜明けのはて/冬越しのさくら/糸を渡す/あおい落葉/珠の向こう側 |
「うつくしが丘の不幸の家」 ★★☆ | |
2022年04月
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単にかつての新興分譲住宅地を舞台にした連作ストーリィ、と思っていたのですが、町田そのこさん、そんなありきたりな設定で済ます作家ではありませんでした。 本作は、同じ家に代替わりで住んだ5つの家族の姿を、あたかも繫いでいくかの如くに描いた連作ストーリィ。それも・・・。 本当に町田さんは上手い! 失礼な言い方になるかもしれませんが、癪に障るくらいに上手い! どの家族ドラマも、実があって、懸命に幸せを求めているという風で、とても濃いのです。 そしてまた、登場人物それぞれの姿が実に鮮明です。 エピローグの一幕、確かに各篇で伏線が張られていたことに気づかされますが、この締めくくり方が実にお見事。 それにしても各篇に登場する男たちといったら、クズのような男たちばかりで、呆れると同時に我が身を振り返って反省させられることしきりです。 なお、隣人の荒木信子という老女の存在が、実に良い効果を上げています。幸せを実感するのに、良い隣人の存在が欠かせないものなのでしょうか。 ちなみに、 ・「おわりの家」は、新たに理容店を開業する夫婦が主人公。 ・「ままごとの家」は、社宅から戸建住宅に引っ越したところ、かえって家族がバラバラになってしまった家族の話。 ・「さなぎの家」は、それぞれ男に失敗した高校の同級生2人が、先輩の持ち家で共同生活を送る話。 ・「夢喰いの家」は、妊活に苦しむ夫婦の挫折と再生。 ・「しあわせの家」は、バツイチで子持ちのとんでもない男と結婚した女性が主人公。 1.おわりの家/2.ままごとの家/3.さなぎの家/4.夢喰いの家/5.しあわせの家/エピローグ |
「52ヘルツのクジラたち」 ★★★ 本屋大賞 | |
2023年05月
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大分県の小さな海辺の村、亡祖母が暮らしていた古い一軒家に主人公の三島貴瑚(きこ)が引っ越してきたところから本ストーリィは始まります。 和やかな雰囲気に今回は割と平凡なストーリィかと思ったのですが、ヤラレマシタ。町田作品には底知れぬ深さがあります。 さて題名。普通のクジラは周波数10~39ヘルツで歌うのですが、52ヘルツで歌うクジラは、仲間と周波数が合わず、世界で一番孤独なのだと言う。 本作は、悲惨な状況に置かれ、誰かに自分の声が届いて欲しいと願い続ける、孤独な魂の持ち主たちを描く物語。 この村で貴瑚は、「ムシ」と呼ばれ、家族から虐待を受けている一人の少年と出会います。 そして貴瑚は、何とかこの少年が発している声にならない声を受け留め、守ってやりたいと思う。何故なら貴瑚本人も、そうした過去を持ち、貴湖の悲鳴を聞き取った人たちに救われたことがあるから。 貴瑚の過去、また貴瑚が「52」と呼ぶことにした少年の状況は、悲惨極まりない。ことに虐待よりも育児放棄の酷さに、目を覆いたくなる程です。 その分、貴瑚を「キナコ」と親しく呼び、その声を聞き取り、キナコを家族の元から救い出してくれたアンさん、美晴らの姿に胸熱くなります。 しかし、それ以上に衝撃的だったのは、声にならない声を上げていたのはキナコや少年だけではなかった、という事実。 そしてそれを補うのは、キナコを囲む人の繋がりです。 声にならない声をきちんと聞き取るには、どれだけの覚悟が必要なのでしょうか。 本作は、貴瑚と少年を中心にしたストーリィですが、苦しんでいるのは決して2人だけではない、と感じさせられます。 その意味で本作は、遥かな広がりを持った作品です。お薦め。 1.最果ての街に雨/2.夜空に溶ける声/3.ドアの向こうの世界/4.再会と懺悔/5.償えない過ち/6.届かぬ声の行方/7.最果てでの出会い/8.52ヘルツのクジラたち |
「コンビニ兄弟-テンダネス門司港こがね村店-」 ★★☆ Mojiko Tenderness Brothers |
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九州だけで展開するコンビニチェーン“テンダネス”は、提供する食べ物に拘っていて、実力は大手コンビニに引けを取らない。 そして、その門司港こがね村店はというと、大人の女性向けのフェロモン垂れ流しのイケメン店長=志波(しば)三彦の存在のおかげで、志波がレジに立つと女性客たちが殺到、知らずに来店した客は一体ここは何処?と困惑する有り様。 さらに、入居するビルの階上は高齢者向けのマンションになっており、居住する老婦人たちによるファンクラブまである程。 ・・・というのが、本連作ストーリィの舞台設定。 表紙絵といい、その志波店長が主人公かと思いきや、そうではないのです。 各章毎、それぞれの主人公が設定されていますが、本質的には、門司港こがね村店に集まる店員、常連客たちによる群像劇、と言って良いでしょう。 高校生の息子を持つ主婦パートの中尾光莉(みつり)、この女性の活躍が特に目を引きます。 さらに、伸び放題の髪に顔の下半分を覆い尽くす髭、ツナギの背に「なんでも野郎」と白抜きされている廃品回収+α業者である「ツギ」の行動力がまるで“怪傑なんでも野郎”的で楽しい。 実はこのツギ、志波の次兄である二彦(にひこ)。 本作は新潮文庫でもライトノベル系のnex なのですが、各登場人物の魅力あるキャラクターといい、ストーリィ展開の見事さといい、すこぶる面白い、と言う他ありません。 町田そのこさんにはいつも脱帽です。 ・「あなたの、わたしのコンビニ」:大学生バイト店員でマッチョの野宮、後悔再びで・・・。 ・「希望のコンビニコーヒー」:常連客の桐山良郎、夢は一向に叶わないまま挫折続き・・・。 ・「メランコリックないちごパフェ」:中三女子=桧垣梓の、新たな友情と決別の物語。 ・「偏屈じじいのやわらか玉子雑炊」:大塚多喜二が定年退職した後の、老夫婦の暮らし方は・・・。 ・「愛と恋のアドベントカレンダークッキー」:光莉の息子である恒星は恋愛を信じられず・・・、でも母親が不倫? ・「クリスマス狂騒曲」:志波三彦を訪ねて超絶美少女が店に。一体何が起きたのか・・・。 ※是非、シリーズ化して欲しい・・・です。 プロローグ/1.あなたの、わたしのコンビニ/2.希望のコンビニコーヒー/3.メランコリックないちごパフェ/4.偏屈じじいのやわらか玉子雑炊/5.愛と恋のアドベントカレンダークッキー/6.クリスマス狂騒曲/エピローグ |
「星を掬う」 ★★☆ | |
2024年09月
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主人公の芳野千鶴はギリ20代ですが、恵まれない少女時代を送った上に今は、数年前に離婚した元夫の弥一に未だ纏わりつかれては、暴力を奮われ金を奪われ続けている。 自分が今不幸せな理由は、幼い頃に母親に捨てられたからと決め込んでいる千鶴は、ただ諦めているだけ。 そんな千鶴に、ラジオ番組のディレクターを介して会いたいと申し出てきたのが、派手な服装の若い女性=芹沢恵真。何と、幼い頃に千鶴を捨てた実母の聖子を「ママ」と呼んで慕い、一緒に暮らしているのだという。 シェルター代わりに2人が暮らす家に同居することになった千鶴ですが、その家には娘に捨てられたというケアマネージャーの九十九彩子も同居していた。 若年性認知症を発症したという実母との距離関係に戸惑いながらも、千鶴と3人の女性の共同生活が始まる・・・。 親と子の関係を巡るストーリィ、です。 親に捨てられた過去、子に捨てられた過去、決して忘れられない辛い思い出でしょうけれど、捨てた親・子はいつまでそれに責任を負い、あるいは責められなければならないのでしょうか。 4人の共同生活に思わぬ人物が飛びこんできて、千鶴は自分の甘えに気付かされます。 千鶴、恵真、彩子、そして聖子と、それぞれの人生ドラマが実に濃く、個性的な各人の人物像も合わせて惹きつけられます。 とくに興味を惹かれるのは千鶴の実母=聖子。どこまでが真からの言葉なのか、それとも認知症の為せる虚言なのか、はっきり分からない処が面白い。 そのうえで、親子であっても別の人間、家族だから、親だから、という言葉に縛られてはいけない、という聖子のセリフは、冷徹なナイフを奮われたように、鋭く冷たく読者の胸に突き刺さります。 「52ヘルツのクジラたち」からさらに一歩進んだストーリィ。 町田そのこさん、流石です。 お薦め。 1.廃棄パンの絶望/2.きっと母に似た誰か/3.追憶のバナナサンド/4.双子の三日月/5.永遠の距離感/6.見上げた先にあるもの |
「コンビニ兄弟2-テンダネス門司港こがね村店-」 ★★☆ Mojiko Tenderness Brothers |
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シリーズ第2弾。やっぱり良いなぁ、本シリーズ。 何といっても魅力なのは、各篇ストーリィの鍵となるのが、他人を思いやる気持ち、であることです。 ただし、それに気付くのは、自分が傷つけられてから。それでもそうして反省、後悔できるというのが貴重です。そこからやり直すことができるのですから。 ・「恋の考察をグランマと」:高一の永田詩乃、家のローン返済のため同居することになった祖母はいつも不機嫌そうで近寄り難かったのですが、突然おしゃれして大変身、さらに思いがけない場所で出会ってびっくり・・・。 ・「廣瀬太郎の憂鬱」:廣瀬はコンビニ店の大学生バイト。フェルモンまき散らしの店長ばかりか、超絶美少女の樹恵琉まで住み着いたことから更に被害増加中。さらに廣瀬を振って去っていった元カノ=椿にも被害を受けている。そんな廣瀬の転機は? ・「クイーンの失脚」:前作「メランコリックないちごパフェ」に登場した村井美月が高校生となって本篇の主人公。 この篇が、とても良い。前作上記篇のテーマを引き継いだ続編と言えます。 美月はこれまで「正しいこと」をしてきたつもり。でもそれは、本当に良いことだったのか・・・。 この篇が、本巻における白眉。是非お楽しみに。 本シリーズ、まだまだ続きそう。とても楽しみです。 プロローグ/1.恋の考察をグランマと/2.廣瀬太郎の憂鬱/3.クイーンの失脚/エピローグ |
「宙ごはん」 ★★☆ | |
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親が滅茶苦茶なことをすれば、一番被害を受けるのは子ども。 本作は、身勝手な親に振り回されて苦しんできた子供たちを描くストーリィです。 主人公は川瀬宙(そら)、冒頭章では保育園を卒業したばかりの幼い女の子。 宙には2人の母親がいます。一人は宙を産んだお母さん(川瀬花野、カノさん)。もう一人は宙を育ててくれているママ(叔母、日坂風海)。 ところがパパがシンガポール転勤となり、ママと従姉の萌が同行するのに対して、宙は花野の元に留まることになります。 その花野は、古く大きな屋敷に住む画家で、家事能力・子育て能力を全く欠いた女性。 そんな宙の食事の世話をしてくれたのは、花野の後輩だという料理人の佐伯恭弘(やっちゃん)。 美味しい料理は人を元気づけることを教えてもらった宙は、恭弘から料理を教えてもらいながら成長していきます。 そこから長い年月に亘る、宙の苦労&成長ストーリィ。 親だからといって完全な人間である訳ではありません。その親の育て方から影響を受けますし。 大事なことは、自分のできる範囲を越えたら、誰かに助けを求めること。そしてできる時には、その求めに応じること。 その連環が、どれだけ多くの子どもたちを救うことになるのか、というストーリィ。 悲惨、過酷な部分は勿論あります。それでも本ストーリィに明るさ、希望を感じ取れるのは、宙を助けようとしてくれた人たちの存在、その人たちを宙が深く信頼できたからです。 上記の理屈は抜きにして、とにかく宙という少女が魅力的であるうえに、各章ごとのストーリィが面白く、濃く、ぐっと心を掴まれて一気読み。また、料理絡みである処が楽しい。 そして、冒頭は宙だけの物語であったものが、次第に多くの人の物語へと広がっていく、その展開の上手さに唸らされます。 苦労と成長、面白さ、魅力、読み応え、感動、それらすべてがこの一冊に籠められています。 是非お薦め。 なお、宙とやっちゃん、好いコンビだったなぁ・・・。 1.ふわふわパンケーキのイチゴジャム添え/2.かつおとこんぶが香るほこほこにゅうめん/3.あなたのための、きのこのとろとろポタージュ/4.思い出とぱらぱらレタス卵チャーハン/5.ふわふわパンケーキは、永遠に心をめぐる |
「あなたはここにいなくとも」 ★★☆ | |
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各篇、いろいろなおばあちゃんが登場します。 今の生活に行き詰った主人公たちを、さりげなくおばあちゃんたちが助け、励ましてくれる、そうした趣向の短編集。 おばあちゃんたち皆が皆、人格者だったり、人より優れていたということではない筈。ただ、長年生き抜いてくれば、それなりの経験もし、智慧も得てきたというもの。 老人だからと阻害することなかれ、おばあちゃんたちから学ぶことも充分ある、ということでしょう。 ※各篇主人公がいずれも女性だからおばあちゃん、という設定なのでしょう。もし主人公が男性だったら、おじいちゃんということになったかもしれませんが、男性はとかく我が儘で、融通が利かない、ということもあるからなぁ・・・。 ・「おつやのよる」:清陽。祖母死去の連絡を受けて実家へ。恋人の章吾が同行するというのを断り、つい喧嘩。 ・「ばあばのマーチ」:就職先で大勢からイジメに遭い退職した香子。恋人の浩明からハッパを受けるが、前向きに動けず。 ・「入道雲が生まれるころ」:萌子。恋人の海斗からプロポーズされるが怖くなり、ちょうど葬儀の連絡を受け実家へ戻る。 ・「くろい穴」:美鈴。不倫関係にある真淵から妻のために祖母直伝の渋皮煮を作ってほしいと頼まれ、悪意の一粒を混入。 ・「先を生くひと」:高一の加代。幼馴染の藍生が誰かに恋? 相手を突き止めようと後をつけたところ・・・。 おつやのよる/ばあばのマーチ/入道雲が生まれるころ/くろい穴/先を生くひと |
「コンビニ兄弟3-テンダネス門司港こがね村店-」 ★★ Mojiko Tenderness Brothers |
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登場人物たちに会うのが嬉しい、シリーズ第3弾。 本シリーズを読み始めて以来、まだ訪れたことのない門司という街が魅力的に思えてなりません。 良い作品は、そんな素敵な効果ももたらしてくれますね。 ・「押しが門司港を熱くする」:主婦パート店員=中尾が大ファンである男性アイドルユニットQ-wickの<采原或る>が、何と門司にやって来ると知り、中尾は大興奮。しかも、その本人が来店し・・・。 ・「ハロー、フレンズ」:滋賀県から別府市に喜び勇んで嫁いできた井上佳織(23歳)、幸せいっぱいの筈だったのに、酷いホームシックに。そんな佳織が偶然出会ったのは、派手なファッションに身を包んだ榎本宝(22歳)。すっかり意気投合した宝のお蔭で、佳織の前に新たな景色が広がってきます・・・。 ・「華に嵐」:かつてツギを酷く傷つけ、三彦や樹恵琉までも平静ではいられないというその因縁ある女性=神崎華が来店。たまたま店に来ていた大学生バイトの廣瀬太郎、ちょっと付き合ってほしいと華に強引に拉致され・・・。 「ハロー・フレンズ」、井上香織と榎本宝の出会いが本当に楽しい。まさにこれぞ、運命の出会い、と言うべきでしょう。 「華に嵐」は、ツギのちょっとした過去が知れる篇。 魔性の女と言われた神崎華の抱えていた辛さがわかり、ホロッとさせられますが、やはりただの女性ではないですね。サスペンスとミステリの風味が効いていて、読み応えある一篇。 プロローグ/1.推しが門司港を熱くする/2.ハロー、フレンズ/3.華に嵐/エピローグ |