| 「絞め殺しの樹」 ★★ | |
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題名からして暗い雰囲気のサスペンスか、と思ったのですが、さにあらず。根室という北海道の荒涼とした東端の土地で、しっかり生き抜いた一人の女性像を描く力作長編。 主人公の橋宮ミサエは、母・祖母を喪った後、祖母の縁戚である新潟の橋宮本家で育ちますが、10歳の時にかつて祖母が仕えていたという根室の吉岡家から申し出があり、吉岡家に引き取られることになります。 しかし、「養育」とは言葉だけ、着いたその日からまるで奴隷のようにこき使われ、人並みの扱いなど全くされず。 それでも耐えて働き続けるミサエを見守ってくれる人もいた。 そのおかげで札幌の薬問屋に奉公することになり、看護師の資格も取ったミサエは、根室の人々のためにと請われて覚悟を決め、保健婦の資格を取ったうえで根室の地に再び戻ります。 根室に住む人々のためになりたいと真摯に働くミサエは、この人ならと思った相手と夫婦になりますが、その結果は・・・。 そんなミサエの過酷すぎる人生を描いたのが第一部。 第二部は、訳あって養子に出されたミサエの息子＝雄介の物語。 幼い頃から「貰い子」だと言われ続けて育った雄介は、人々の言葉から実母が保健婦である橋宮ミサエと知りますが、結局ミサエとは全く接することがないままになってしまう。 しかし、様々な人の口から、実母がどんな人生を歩んだのかを徐々に知っていくことになります。 題名の「シメゴロシの樹」とは、芯となる木に絡み付き、その栄養を奪いながら締め付け締め付けていき、最後には芯であった木を殺してしまう。その頃には芯となる木がなくても蔓が自立できるほどに太くなっている、という木を言うのだそうです。 本ストーリィでいえば、善良で強い女性のミサエを、悪の性質である吉岡夫婦、木田浩司、小山田俊之らが絡みついて離さず、ミサエを傷つけ続けてやまない、その関係を象徴する題名と言えます。 ハッピーエンドと勧善懲悪が好きな私としては、ミサエに幸せを感じる時は有ったのだろうか、吉岡夫婦ら悪人は罰せられることがないままなのか、と本物語に問い掛けたくなります。 その答えは、是非ご自身で本作を読み、考えてみてください。 第一部：1.捻じ花／2.蔓梅擬き／3.山葡萄 第二部：1.無花果／2.菩提樹 |
