門井慶喜
(かどいよしのぶ)作品のページ


1971年群馬県桐生市生、栃木県宇都宮市出身、同志社大学文学部文化学科文化史学専攻(日本史)卒。2003年「キッドナッパーズ」にて第42回オール読物推理小説新人賞、18年「銀河鉄道の父」にて 第158回直木賞を受賞。


1.おさがしの本は

2.
銀河鉄道の父

  


 

1.

「おさがしの本は」 


おさがしの本は

2009年07月
光文社刊

(1600円+税)



2009/09/05



amazon.co.jp

N市立図書館の調査相談課員、つまり利用者からの相談等に応じるレファレンス・カウンター担当の和久山隆彦が、本物語の主人公。
その和久山が、利用者から持ちかけられた相談の解決に奮闘、ならびに市財政悪化の中図書館など廃止すべきという意見に対して一職員として奮闘する姿を描いた連作短篇集。

本に関わる問題、図書館の存在意義に関わるストーリィ、ということであればまず面白い筈、と思って読み進んだのですが、余り盛り上がらなかったなぁ。
本に関わるミステリという程でなく、お仕事小説という域には届かず、といった風で、その中間、中途半端なところに留まった、という印象。
また、和久山隆彦自身、また和久山に協力する後輩図書館員の藤崎沙理も、もう一歩魅力不足。

「図書館ではお静かに」:レポートの課題だと林森太郎「日本文学史」を探しに飛び込んできた短大生を教え諭す篇。
「赤い富士山」:子供の頃図書館に寄贈したという本を探しにやってきた老人のため、本探しに頭をひねる篇。
「図書館滅ぶべし」:図書館廃止論者の新副館長から出された難題を、レファレンス担当の意地をかけて解こうとする篇。
「ハヤカワの本」:図書館に本を返したいという亡夫の遺言に、どの本だか判らないと相談にきた老婦人に応えようとする篇。
「最後の仕事」:図書館廃止の是非が市議会にかけられ・・・の篇。

図書館ではお静かに/赤い富士山/図書館滅ぶべし/ハヤカワの本/最後の仕事

       

2.

「銀河鉄道の父 ★★☆       直木賞


銀河鉄道の父

2017年09月
講談社刊

(1600円+税)



2018/01/12



amazon.co.jp

題名の「銀河鉄道の父」とは誰のことか?と言えば、言うまでもなく宮沢賢治の実父である、宮沢政次郎のこと。
本作は、宮沢賢治の生涯を父親である政次郎の視点から描いた、だからこそ見えてくる宮沢賢治の新たな側面を描き出した、類まれと言える逸品です。

賢治の祖父=
喜助が傾いた宮沢家を質屋業で立て直し、それに加え古着卸商売を新たに付け加えて宮沢家を盤石の資産家にした政次郎は、まさに実務に長けた経営者という人物像。
従来、賢治の側から見たその人物像は、賢治の優れた面を理解しない厳しい父親というイメージを持っていたのですが、本作で描かれる政次郎はいやはや、何と深い愛情に満ちた人物であったことか。

跡継ぎ息子の誕生に狂喜する気持ちを懸命に抑えようとするところ、病気で入院した息子を、他人から何と言われようと付き添い看護したところ、賢治への格別な愛情を感じさせられます。
あぁ、それなのに政次郎の期待どおりに成長しなかった賢治はどんなに歯がゆかったことか、そして賢治はどんなに政次郎を失望させたことか。しかし、勘当しても不思議ないような状況に至っても、政次郎は決して賢治を見捨てるまでには至らず、愛情を失うことはなかった。
一方、賢治からすれば、父親の期待に応えられないこと、父親の脛をいつまでもかじっていることにつきどんなに自分を不甲斐なく感じていたことか。

賢治が理想を追いかけた人物であるのは間違いないにしても、それは父親である政次郎の支え(金銭的等)があってのこと。
それだけに、賢治と政次郎の親子関係を密に描き、さらに宮沢賢治の生涯を
妹トシらその家族との結びつきにおいて描き出した本作はまさに、素晴らしい、の一言。
宮沢賢治ファンにとっては、見逃せない、貴重な一作であることに間違いありません。

※なお、「風の又三郎」は賢治作品の中でも有名な作品の一つですが、本書に名前が登場する
「風野又三郎」はそれとは異なる作品ですので念のため。

※井上ひさしの評伝劇イーハトーボの劇列車もお薦め。

1.父でありすぎる/2.石っこ賢さん/3.チッケさん/4.店番/5.文章論/6.人造宝石/7.あめゆじゅ/8.春と修羅/9.オキシフル/10.銀河鉄道の父

   


  

to Top Page     to 国内作家 Index