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1.月の扉 2.扉は閉ざされたまま−碓氷優佳の推理 No.1− 3.まっすぐ進め 4.心臓と左手−座間味くんの推理 No.1− 5.Rのつく月には気をつけよう 6.温かな手 7.君の望む死に方−碓氷優佳の推理 No.2− 9.彼女が追ってくる−碓氷優佳の推理 No.3− 10.玩具店の英雄−座間味くんの推理 No.2− |
フライ・バイ・ワイヤ、届け物はまだ手の中に、わたしたちが少女と呼ばれていた頃、相互確証破壊、凪の司祭、罪びとよやすらかに眠れ パレードの明暗、殺し屋やってます、鎮憎師、賛美せよと成功は言った |
崖の上で踊る、不老虫、Rのつき月には気をつけよう−賢者のグラス、殺し屋続けてます。、君が護りたい人は、新しい世界で、高島太一を殺したい五人、あなたには殺せません |
1. | |
「月の扉」 ★★ |
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2006年04月
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那覇空港から飛び立とうとしていた旅客機が僅か3人の男女によってハイジャックされます。 犯行グループはまず赤ん坊3人を抑え、結果として乗客 240人を人質にとります。犯行グループの要求は、警察に逮捕されている彼らが“師匠”と呼ぶ石嶺孝志を彼らの元に連れてくること。 しかし、ハイジックされた機内で、女性乗客の一人が死体となって発見されるという事態が発生。 ハイジャック犯たちも戸惑う中、座間味島のTシャツを着ていたため彼らから“座間味くん”と呼ばれることになった男性が、その冷静さ故に女性乗客不審死の真相を推理するよう命じられることとなります。 その石嶺孝志は、不登校児童を立ち直らせるための教育キャンプを開催している人望ある人物。さらに犯行グループ3人はその活動をボランティアで手伝っている善良な人物たち。そんな彼らが何故ハイジャックという凶悪事件を起こすに至ったかも謎なのですが、密閉された機体の中、さらなる密室というべき場所で女性が死んだという事件こそ、究極の謎。 なお、不謹慎かもしれませんが、ハイジャック犯たちの犯行ぶりがスリリングでつい惹きつけられてしまいます。この辺り、「凪の司祭」に通じるものを感じます。 後に“座間味くん”シリーズの主役となる座間味くんが初めて登場した長編ミステリ。 犯行グループ側、ハイジャック事件に対する警察側、民間人でありながら事件に巻き込まれることとなった座間味くんという、3者それぞれの側に面白さがあります。 最後、事件はどう収斂したのか。少々突拍子のない処もありますが、見事にうまくまとめたという印象です。 本書は“座間味くん”の原点。同シリーズを追うなら見逃せない一冊です。 |
2. | |
「扉は閉ざされたまま THE DOOR IS STILL CLOSED」 ★☆ |
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2008年02月
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一風変わったミステリなのでしょうか、“碓氷優佳の推理”シリーズ第1弾。 序章にて、大学時代のサークル仲間同士で殺人が行われ、犯人は密室殺人の状況を作り上げるところから始まります。 大学時代に軽音楽部、その中でも酒好きなことから「アル中分科会」と言われ仲の良い仲間だった6人+αが、久々の同窓会ということで集まります。 6人の共通点は、酒好き外にもう一つ、全員が臓器提供意思表示カードを持っていること。 宿泊場所は成城学園、メンバーの一人の兄が祖父の遺した大邸宅を使ってオーナー兼料理人(フレンチ)としてペンションを開いたので、そこに職業も現住所もバラバラとなっていたかつてのサークル仲間が一堂に会した、という次第。 男性4人、女性2人。そして女性メンバーの旧姓・碓氷礼子の妹である大学院生の優佳も、かつて(当時は高校生)と同じように参加しており、計7名。 ミステリとして風変わりなのは、一人が死んだという事態が、登場人物たちに全く明らかにならないまま、ストーリィが進行すること。 というのは、殺されたメンバーの部屋には鍵どころかストッパーまで掛けられ、誰も中に入れないため。眠っているのか、何か事故が起きたのか、犯人以外には誰も分かりません。 しかも、合鍵は手元になく、外から窓を破って侵入しようとしても厳重なセキュリティが設定されており、どちらも困難という訳です。 事件を知っているのは、犯人と読者だけ。そのうえ、何故犯人が現場に誰も入れないような状態を作ったのかという謎かけをされたのは、読者だけ、という次第です。 そうした中、何故碓氷優佳のみ事件に気付き、平然と真相を言い当てることができたのか。 そして殺人の動機、入室不可とした理由はなにか。 なお、犯人は「冷静で熱い」人物。それに対して探偵役である碓氷優佳は「冷静で、冷たい」人物とのこと。 なお、上記を明らかにしても、本作から得られる面白さは、全く揺るぐことなし、と思います。 序章/1.同窓会/2.談笑/3.不審/4.対話/終章.扉は開かれた |
3. | |
「まっすぐ進め」 ★☆ |
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2014年05月
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知り合い、そして恋人関係に進んだ若いカップルを主役にした、真っ向直球勝負の連作ミステリ、というところでしょうか。 徐々に探偵役であることがはっきりしてくる主人公は、川端直幸という27歳の会社員。 直幸とは、「幸せに向かってまっすぐ進め」という意味だそうです。本書題名もそこから、でしょう。 まとも過ぎて、それじゃぁつまらないという向きもあるかもしれません。しかし、真っ直ぐに前を向いて進む、というのは中々できることではありません。 それについて行こうと決めた人に、エールを送りたい。 5篇のうち3篇は元々の連作で、主人公は直幸。 間に入る2篇は書き下ろしで、この2篇に限り、主人公は川端の友人である黒岩正一の恋人=太田千草が務めます。 ・「ふたつの時計」:直幸が目を惹かれた女性=高野秋は、千草の先輩社員。2人のおかげで秋と出会った直幸は、秋の謎を解き明かします。 ・「ワイン合戦」:2カップルの2度目の飲み会。その居酒屋で見かけた男女の奇妙な振る舞いを、直幸が謎解きします。 ・「いるべき場所」:直幸と秋が買い物にでかけたショッピングモールで出会った幼女。その幼女がもつ謎の真相とは・・・。 ・「晴れた日の傘」:黒岩と千草が婚約。千草の亡き父親が千草の婚約者に託したのは傘・・・その意味は? ・「まっすぐ進め」:秋がついに5年前の出来事を直幸に打ち明けます。それを直幸はどう受け止めるのか。そして、どう秋に対しどんな謎解きをするのか・・・・。 ふたつの時計/ワイン合戦/いるべき場所/晴れた日の傘/まっすぐ進め |
4. | |
「心臓と左手−座間味くんの推理−」 ★☆ |
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2009年09月
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長編「月の扉」にて、民間人ながらハイジャック犯と対峙して事件を解決に導いたあの“座間味くん”が安楽椅子探偵となって再登場する連作短編集“座間味くんの推理”シリーズ第1弾(座間味くんものとしては2冊目)。 警視庁の大迫警視、立ち寄った新宿にある大型書店の雑誌売り場で見覚えのある顔に出会います。それが数年前に起きたハイジャック事件で出会った「座間味くん」。 大迫警視、その場で声を掛け、飲みに行こうと誘います。誘いに応じた座間味くんを連れて大迫警視は馴染みの小料理屋へ。 個室に収まった大迫警視は、既に決着がついた事件について語り出します。それに対して座間味くん、大迫警視、即ち警察が思いもしなかった真相を指摘し、大迫警視を驚愕させます。 季節ごとに1回くらいのペースで繰り返される上記パターンによる連作短編集。 安楽椅子探偵ものミステリですが、対象となる事件が解決済という処が異色。そのくせ意表を突く真相、でもそれが事実かどうか明らかになることはない、というのが心憎い演出です。 警視庁幹部と民間人という異色の組み合わせもまた本作の妙。 ストーリィ設定が、まず私好みです。 ・「貧者の軍隊」:テロ組織メンバーの一人が殺されて発見される。しかも賃貸マンションの中、密室状態で。 ・「心臓と左手」:新興宗教団体、教祖と信者たち数人の死体が発見されます。異常な事態。一体何があったのか? ・「罠の名前」:犯人は転落死したにも関わらず、何故人質は死ぬに至ったのか? ・「水際で防ぐ」:在来種を守る会内部での殺し合い。その背景に一体何があったのか? ・「地下のビール工場」:規制品の無許可輸出を企んでいた会社社長、恋人である部下に密告され殺される。しかし、・・・。 ・「沖縄心中」:米軍兵士と恋人である通訳女性の心中死。過失致死事件の責任をとったものと認められたが・・・。 ・「再会」:「月の扉」の11年後に設定した後日ストーリィ。 主人公はハイジャック事件当時に人質になった玉城聖子。敗北者となり暴力を振るう父親を嫌う彼女の前に、かつての命の恩人が現れます。前6篇と趣向は異なりますが、嬉しい一篇。 貧者の軍隊/心臓と左手/罠の名前/水際で防ぐ/地下のビール工場/沖縄心中/再会 |
●「Rのつく月には気をつけよう」● ★★ |
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2010年09月
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長江高明、熊井渚、湯浅夏美の3人は学生時代からの飲み仲間。就職した今でも時折長江のワンルームマンションに集まっては、飲んで食べてを楽しむ。 本書は、酒と美味しいものを片手にした3人が、ゲストのため謎解きに挑むという、日常ミステリ連作短篇集。 なお、読み始めた最初から何となく引っ掛かりを感じるものがありました。その小骨のような?が氷解するのは最後の章にて。 Rのつく月には気をつけよう/夢のかけら麺のかけら/火傷をしないように/のんびりと時間をかけて/身体によくても、ほどほどに/悪魔のキス/煙は美人の方へ |
●「温かな手」● ★☆ |
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2010年05月
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軽やかなタッチの連作短篇ミステリ。 そんな寄生虫のような相手との同居に何故甘んじているかというと、この飽食の時代、食べ過ぎによる過剰エネルギーを吸い取ってもらって体型を維持できるのは、かえって有難いという訳。 そんなギンちゃん、ムーちゃんの存在が、殺人事件があってさえなんとなくファンタジーで、軽やかな面白さを味わわせてくれるという、私好みのミステリ。 白衣の意匠/陰樹の森で/酬い/大地を歩む/お嬢さんをください事件/子豚を連れて/温かな手 |
7. | |
「君の望む死に方 THE DEATH YOU DESIRE」 ★☆ |
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2011年09月
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一風変わったミステリ、“碓氷優佳の推理”シリーズ第2弾。 本作の主人公は、優良企業「ソル電機」の創業者かつ社長である日向貞則。膵臓がんで余命6ヶ月と宣告されたところ。 生きているうちにしかできないことは何かと考えた日向、自分に怨みを抱いている筈の、かつての共同創業者の遺児である梶間晴征に、逮捕されない方法で自分を殺させようと計画します。 場所は熱海にある会社の保養所。そこで行う<幹部候補生研修=実はお見合い研修>に参加する男女社員4名の一人として、日向は梶間を選びます。 その保養所で隙を作り、また道具立てを揃え、梶間が犯行に及ぶ舞台設定を日向は整えます。 その梶間の方も、またとない、海外赴任する前の格好のチャンスと見て、日向に復讐する気満々で乗り込んできます。 ところが、そんな2人の前に立ち塞がったのが、ゲストとして呼んだ甥の安東章吾とその婚約者である国枝真里子が伴って来た友人の碓氷優佳。その碓氷の存在が全てを狂わせる・・・。 推理小説のタイプとしては“倒叙”型。 倒叙型というと普通は、犯人による犯行をまず描き、その後に探偵が登場して事件を推理・解決するというパターンになるのですが、本作では日向の施した仕掛けが悉く除かれてしまい、殺人計画が果たされないというパターン。そこが面白いのです。 そして、思いも寄らぬ結末。それこそが、碓氷優佳が探偵にはならない所以、本シリーズの独特の妙味なのです。 ※本シリーズはあと2作。機会を見つけて読んでいこうと思っています。 序章/1.保養所/2.研修/3.懇親会/4.対話/終章 |
8. | |
「ブック・ジャングル BOOK JUNGLE」 ★★ |
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2013年11月
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懐かしの図書館にもう一度だけ入館したい、貰える筈だった除籍本を1冊入手したい、そんなちょっとした理由から閉鎖された図書館に忍び込んだ、大学を卒業したばかりの男2人、高校を卒業したばかりの女子3人。 誰もいない筈の図書館で遭遇した2人と3人は、お互いにギョッとしますが、それだけで終わる筈だったこと。 ところがその5人に突如、ラジコンヘリが襲い掛かってきます。しかも・・・・。 真夜中の図書館という閉鎖空間の中で、次々と襲い掛かって来るラジコンヘリ、しかも妨害電波により携帯電話で外に助けを求めることもできない。 いったい誰が、何のために、何を狙って襲ってくるのか。 いくらラジコンヘリを叩き落としても、新たなヘリが際限なく襲ってきます。主人公たちは防御するのが精一杯で、逃げ出す余地を全く掴むことができません。 攻撃道具が道具だけに、まるでゲーム感覚の攻防戦ですが、襲い掛かってくるのが毒針を付けたヘリだけに、逃げ回る方はもう必死です。 追い詰められる恐怖、圧迫感、そしてその臨場感は並大抵のものではありません、凄い!の一言。 主犯は誰なのか、目的は、動機は、それは次第に明らかになっていきます。その意味で本作は、ミステリには非ず。 閉鎖空間での恐怖、それこそが本作の狙いでしょう。 こういうところが、石持作品を読む醍醐味ですねぇ〜。 読んでいるだけですから、所詮読者は安全でいられますし。 序章/1.侵入者/2.ヘリコプター/3.三機、五分、五メートル/4.攻防/5.決着/終章 |
9. | |
「彼女が追ってくる SHE RUNS AFTER ME」 ★★ |
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2014年06月 2021/11/28 |
“碓氷優佳の推理”シリーズ第3弾。 中条夏子、かつての同僚で親友。同時期に独立起業した仲間でもある黒羽姫乃を殺害する。 舞台は、旧知の経営者たちが箱根の宿に集まって旧交を温める“箱根の会”。 そして殺害現場は、姫乃が一人で泊まったコテージ。 殺害の理由は、夏子と姫乃が共に恋人であったシンガポール人の実業家を姫乃が死に追い込んだこと。 しかし、夏子の計算に狂いが生じたのは、翌朝遺体となって発見された姫乃が参加者の一人である男性のカフスを手に握りしめていたこと、そして碓氷優佳がその場にいたこと。 参加者たちの推理により、実はそこに裏があったのではないか、と判ってきます。 しかし、それを超える展開を見せてくれるところが、石持作品の魅力。そこはやはり石持ならではのところで流石、と脱帽です。 序章/1.箱根会/2.証拠品/3.容疑者/4.対話/終章 |
10. | |
「玩具店の英雄−座間味くんの推理−」 ★☆ |
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2015年03月
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連作ミステリ“座間味くんの推理”、第2弾。 警視庁幹部の大迫と民間人の座間味くんが、飲み会での語らいという舞台設定の中で繰り広げる、驚愕の謎解きもの。 本書で大迫は警視正、座間味くんは30代半ばから後半という年代で途中2児の父親となります。 連作もの第1作である「心臓と左手」では2人だけの飲み会でしたが、本書では大迫の後輩にして、科学警察研究所に配属されているエリート女性警官の津久井操がそれに加わります。 その津久井操が担っている課題は、警備の成功例と失敗例を分析してその分かれ目を標準化し、今後に役立てようというもの。 研究対象としている事例を津久井が語ると、およそ警察が考えもしなかった真相を座間味くんがあっさり解き明かし、大迫と津久井が呆然とする、というのが本書でのパターン。 事件としては既に決着済。真相が判ったからといって今更どうこうしようもないというこのパターン、面白いと思うかどうかは好み次第と思いますが、私は好きです。 ・「傘の花」:国会議員殺害事件。警護の失敗にどんな隠された真相があったのか。座間味くん、「事件はまだ終わっていないのかもしれません」と一言。 ・「最強の盾」:台湾企業脅迫事件。犯人がテロに失敗した理由はベビーカーにぶつかってしまった所為。座間味くん、不自然と指摘。 ・「襲撃の準備」:修仁高校における野球部員殺傷事件。座間味くん、警官OBの行動は褒められたものではない、と。 ・「玩具店の英雄」:包丁をもった中年ストーカーの突進から救われたのは警察官、救ったのは民間人。警察の恥と思われた事件に隠されてしまった真相とは? ・「住宅街の迷惑」:新興宗教団体の庭で爆弾を炸裂させようとした犯人が取り押さえられた事件。敵対するのは誰か? 座間味が不思議な指摘を2人に。 ・「警察官の選択」:トラックが釣具屋に突っ込んだ事件。トラックを素手で止めようとした警官の真意は? ・「警察の幸運」:新幹線に試乗した外国の高官を襲おうとした事件の真相は? 傘の花/最強の盾/襲撃の準備/玩具店の英雄/住宅街の迷惑/警察官の選択/警察の幸運 |
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