東野圭吾作品のページ No.2



11.新参者

12.麒麟の翼

13.真夏の方程式

14.ナミヤ雑貨店の奇蹟

15.禁断の魔術

16.祈りの幕が下りる時

17.沈黙のパレード


【作家歴】、放課後、秘密、百夜行、超・殺人事件、サンタのおばさん、トキオ、容疑者Xの献身、流星の絆、聖女の救済、ガリレオの苦悩

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11.

●「新参者」● ★★☆


新参者画像

2009年09月
講談社刊
(1600円+税)

2013年08月
講談社文庫化



2010/02/21



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日本橋のマンションで独り暮らししていた45歳の女性が絞殺されて発見された殺人事件。
捜査が行なわれている最中、練馬署から日本橋警察署に異動してきたばかりという刑事・加賀恭一郎は、何故か人形町の商店街をノンビリとぶらつく風。本人曰く、まず街を観察するところから始めているというのだが・・・。

殺人事件を解明するミステリの筈なのに、本作品はここ日本橋人形町を舞台に、“町物語”として、そして人情物語として連作風に展開していきます。
刑事による綿密な捜査を背景に、それと相容れないような町&人情物語が展開していく、これが中々の味わい。
淡々と街を歩き回り、飄々と人々に接していく加賀刑事の姿は大人しいものに感じられ、ここ人形町の景色の邪魔になりません。
このさじ加減が、癪に思えるほど巧妙にして巧い。

加賀刑事は何故こうした行動を取るのか。その答えは第6章「翻訳家の友」に至ると判ります。
なるほど、こうした視点かと、新鮮な気分。
しかし、そこは東野さん、最後の章「日本橋の刑事」においてきちんとミステリ小説としての決着をつけているところは、流石です。

ちょっと風変わりで気持ち良く、それでいて味のある、連作町物語風ミステリ。
この面白さは新鮮です。

煎餅屋の娘/料亭の小僧/瀬戸物屋の嫁/時計屋の犬/洋菓子屋の店員/翻訳家の友/清掃屋の社長/民芸品屋の客/日本橋の刑事

       

12.

●「麒麟の翼」● ★★


麒麟の翼画像

2011年03月
講談社刊
(1600円+税)

2014年02月
講談社文庫化



2011/04/07



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東野圭吾さん、作家生活25周年記念・第一弾作品とのこと。
そして、「加賀シリーズ最高傑作」という売り言葉と、「その看板に偽りなし」という作者からの一言。

所轄署勤務の警部補・加賀恭一郎を主人公とするシリーズは、本書以外には新参者しか読んでないので、シリーズ中云々についてはどうこう言えませんが、最高傑作なのかなぁ、というのが正直なところ。
それでも、冒頭から面白いことは面白いです。
他の刑事たちとは捜査において行動を異にし、街を丹念に歩き回り、僅かな疑問を粘り強く追及し続ける。そして、捜査陣に都合の良い結着は事件の解決ではない、被害者側と加害者側の縁者たちが納得できてこそ事件は解決したと言えるというのが信条の加賀恭一郎、そのキャラクターがあるからこそ、ストーリィは面白いのです。
逆に言うならば、加賀恭一郎が登場するのだから、当然に本書は面白い筈、という確信を覚える。加賀恭一郎シリーズの魅力とは、そうしたものだと思います。

ある夜、よろめきながら歩いてきて日本橋の欄干にもたれかかった男。交番の警官が声をかけると、男の胸にはナイフが深々と刺さっていた。一方、警官が職務尋問しようとしたところいきなり逃げ出して、トラックにはねられ意識不明の重態となった若い男。
被害者は、何故翼をもつ麒麟の像がある欄干のところまで、刺されたまま歩いてきたのか。逃げ出した男は本当に犯人なのか。
その疑問に、加賀恭一郎が応えます。

加賀が解決するのは、事件の謎・真相だけではありません。事件の奥底にある人間ドラマ、死んでいく者から愛する者へのメッセージも解きほぐしていきます。加賀恭一郎シリーズの魅力の真髄は、そこにこそあると思います。
所轄署の刑事=加賀恭一郎、また会いたいものです。

※映画化 →「麒麟の翼

          

13.

●「真夏の方程式」● ★☆


真夏の方程式画像

2011年06月
文芸春秋刊
(1619円+税)

2013年05月
文春文庫化



2011/11/25



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“ガリレオ”シリーズ、長篇第3作目。
今回は、事件解決への協力を警察が湯川の元に持ち込むのではなく、湯川が草薙、内海の両刑事に調査を依頼するといった、これまでとは逆の展開からスタートします。

海底資源開発に関する地元説明会への出席を請われて海岸の美しい玻璃ヶ浦にやってきた帝都大学物理学科准教授の湯川学、東京から伯母夫婦の元にやって来た小学生の柄崎恭平と知り合った縁で、その伯母夫婦が営む旅館「緑岩荘」に滞在することになります。
夫婦の一人娘である
川畑成実は環境保護活動に熱心に取り組んでいるところで、その点からも湯川と関わることになります。
しかし、もう一人の宿泊客が翌朝、遺体となって発見されるという事件が起きます。崖からの転落事故と思われたのですが、その本人が元警視庁捜査一課の腕利き刑事だったことから疑念が持たれ、捜査が開始されます。
一方、湯川は滞在している旅館で何らかの疑問を感じたらしく、草薙にある調査を依頼します。

ストーリィは、捜査陣からは茅の外であるものの、実質的に湯川と小学生の恭平という2人を中心軸にして進んでいきます。
定石通りの捜査が地元県警の刑事たちによって進められている一方、湯川の示唆を基に事件の深層に迫る捜査が東京で、
草薙俊平内海薫の2刑事によって進められていく、という2重構成のストーリィが楽しめます。
これまでのシリーズ長篇2作に比べると、事件そのものはそう驚くべきものではありませんが、事件の決着後に湯川が、成実、そして恭平の2人にかける言葉が、本作品の真骨頂。
事件というのは形式的な解決だけが全てではない、事件に関わった人のその後の人生をどうケアするかこそ重要なこと、と語っているようです。ミステリすべてに通じる真理かもしれない、と思う次第。

※映画化 → 「真夏の方程式

        

14.

「ナミヤ雑貨店の奇蹟」 ★★       中央公論文芸賞


ナミヤ雑貨店の奇蹟画像

2012年03月
角川書店刊
(1600円+税)

2014年11月
角川文庫化



2013/05/05



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何か悪事を働いたらしい若者三人組が逃げ込んだ廃屋は、昔店主が悩みごとを書いた手紙にひとつひとつ丁寧に回答するということで評判になったナミヤ雑貨店の跡だった。
すると不思議なことに、悩み相談の手紙が投函される。その手紙を読んだ3人は、さっそく返事を書くことに。
その3人はやがて気付きます。手紙を出す側と受け取る3人の側で時間が隔たっていることに。さらに時間の進行速度までが異なる。
その時間のズレがどういう意味を持っているのか、それは読んでのお楽しみです。

面白く感じたのは、3人の回答の底の浅さ、拙さが歴然としているにもかかわらず、受け取った側が深い意味でとらえて感謝すること。それはナミヤ雑貨店が昔雑誌に取り上げられたというブランド力を持っている所為か、いやいや受け取る側が真剣に迷い、答えを求めているからでしょう。
東野作品、久々に読みましたが、相変わらず発想の見事さ、ストーリィ作りの上手さには相変わらず感嘆するばかりです。

なお、本書中何度も丸光園という児童養護施設、その施設育ちの子供たちが登場するのですが、ナミヤ雑貨店と何か関係があるのかないのか。
結局それは、判ったようで判らなかった気がします。(苦笑)
本書から感じたメッセージは、結局選択は自分自身でせざるを得ないこと、そして自分は正しい選択をしたと信じることが大切である、ということ。

1.回答は牛乳箱に/2.夜更けにハーモニカを/3.シビックで朝まで/4.黙祷はビートルズで/5.空の上から祈りを

        

15.

「禁断の魔術」 ★☆


禁断の魔術画像

2012年10月
文芸春秋刊
(1400円+税)

2015年06月
文春文庫化



2013/05/24



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毎度お馴染み、天才物理学者=帝都大学の湯川准教授を探偵役にしたシリーズ“ガリレオ8”。本書は短篇集です。

ミステリにしては風変わりなのは、湯川が解くのが事件絡みではあるものの、犯行にかかる謎ではなく、事件の側面における謎であること。ミステリとしてはかなりの変化球でしょう。
その所為かストーリィにスリリングさは余り感じられませんが、小さな謎という点では短篇集に相応しいようです。
それでも楽しいのは、湯川学という物理学者の個性的なキャラクターにある、と言って良いでしょう。湯川独特の言い回しといい、友人である刑事の
草薙に対しても時に食わせ者といった表情を見せるところに、やり取りの面白さがあります。

「透視す」:殺害されたホステスがいつも披露していた透視力は本物か。
「曲球る」:戦力外通告を受けたプロ野球の投手は物理学によって再生できるのか。
「念波る」:姉の事件を察知した双子の妹は、本当にテレパシーで姉と繋がっているのか。
「猛射つ」:湯川が助言した実験装置は、本当に犯罪に使われるのか。

“ガリレオ”シリーズにおいて私が、あるいは湯川以上に好きな登場人物は女性刑事の内海薫。その内海の活躍が少々楽しめるのは「余波る」と「猛射つ」の2篇。

1.透視す(みとおす)/2.曲球る(まがる)/3.念波る(おくる)/4.猛射つ(うつ)

        

16.

「祈りの幕が下りる時」 ★★         吉川英治文学賞


祈りの幕が下りる時

2013年09月
講談社刊
(1700円+税)

2016年09月
講談社文庫化



2013/10/26



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所轄署勤務の警部補“加賀恭一郎”シリーズの長編。今回は加賀自身のプライベートにも波及する感動ミステリ。

プロローグは今から遡る20年余前、夫と子を捨てて家を出てきたという田島百合子という女性が仙台のスナックで働き始めるところから始まります。その百合子こそ加賀恭一郎の実母。
そして現在、ある女性が所縁もない男性のアパートで絞死体となって発見されます。彼女は、幼馴染で現在は演出家兼脚本家として評判の元女優=
角倉博美を訪ねて上京してきたところだった。
加賀の従弟である
松宮の所属する警視庁捜査一課は角倉博美の周辺から探索を始めますが、いつしかそれは加賀の実母に関わる秘密にも絡んでいく、というストーリィ。
一見何の関係もなさそうな事実を丹念に調べ上げていくところから、徐々に真相が明らかになっていくという展開は、まさに
F・W・クロフツばり。

事件の裏に苦難を乗り越えてきた過去を秘さねばならない事情があったという点では、松本清張「砂の器」、水上勉「飢餓海峡という過去の名作と共通するところがあります。しかし私としてはむしろ、子に対する親の深い愛情が事件の底辺にあったという点で、小杉健治「父からの手紙」「父と子の旅路の方が思い浮かびます。
そういった訳で、必ずしも目新しい趣向のストーリィとは思いません。ただ、加賀親子の確執、そして加賀恭一郎が日本橋署勤務に固執していた理由が明らかになるという点に加え、加賀恭一郎にもロマンス?という展開が、“加賀恭一郎”シリーズのファンとしては見過ごせないところ。
相変わらず東野圭吾作品は語りが上手い。一気読みでした。

※映画化 →「祈りの幕が下りる時

      

17.

「沈黙のパレード ★☆


沈黙のパレード

2018年10月
文芸春秋刊

(1700円+税)



2018/11/09



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“探偵ガリレオ”シリーズ、6年ぶり、9作目。

美人で歌の才能にも恵まれ、東京都秋野市の秋祭りで評判になった19歳の
並木佐織が失踪してから3年。その佐織の遺体が、静岡県で起きたゴミ屋敷の火事跡から発見されます。
事件捜査の担当を命じられたのは、今や警部に昇格し、警視庁捜査一課の係長となった
草薙

その草薙に、事件の容疑者は
蓮沼寛一という男であることが告げられます。何とそれは、23年前に起きた12歳の少女=本橋優奈殺害事件の重要容疑者でありながら証拠不十分で無罪となった男。当時その捜査には、新人だった頃の草薙も参加していた。
今度こそと意気込む草薙らでしたが、状況は以前と全く同様。状況証拠ばかりで先へ進めないのは、蓮沼が一切の供述を拒否し黙秘を貫いているため。
その蓮沼が、佐織の家族が営む定食屋に姿を現し、逆に脅しをかけてきたことから、並木一家や佐織と懇意だった者たちは怒りの念をかき立てられます。
しかし、その後思いもしなかった事件が起きる・・・・。

折しもその渡米していた筈の
湯川学が昨年帰国、帝都大学でこちらも今や教授となり、秋野市に新しくできた研究施設に通っていることが分かり、さっそく草薙は湯川に連絡を取ります・・・。

どこかで見たような、既視感ある展開。
しかし、事件の真相を明らかにしていく湯川の着眼点、事件の真相が明らかになった後のひねりに次ぐひねり。そこが東野圭吾さんらしいというか、ガリレオシリーズらしいところでしょう。
しかし、着想とひねりだけ、という気がしないではない。

実は私が本シリーズで魅力を感じているのは、ガリレオこと湯川教授ではなく、女性刑事の
内海薫
ストイックで粘り強く、中々の洞察力も備えているというキャラクター。映画等でかつて柴咲コウさんが演じたこともあり、私の中ではしっかり、内海薫刑事=柴咲コウ。
女性刑事の内海薫が登場し続ける限り、今後も本シリーズを読む続けるかもなぁ。

      

東野圭吾作品のページ No.1

   


 

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