碧野 圭
(あおのけい)作品のページ


1959年愛知県生、東京学芸大学教育学部卒。卒業後フリーライターとしてタウン誌、アニメ誌等に寄稿。30歳になって出版社に入社、主にライトノベル編集を手がける。出版社勤務15年を経て退社、2006年実体験を元にした「辞めない理由」にて作家デビュー。


1.
辞めない理由

2.ブックストア・ウォーズ(文庫改題:書店ガール)

3.書店ガール2−最強のふたり−

4.駒子さんは出世なんてしたくなかった

 


     

1.

●「辞めない理由」● 


辞めない理由画像

2006年05月
パルコエンタテイメント事務局刊

(1300円+税)

2009年10月
光文社文庫化

2014年10月
実業之日本社文庫


2007/12/22


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出版社で女性雑誌の副編集長を務めているワーキング・マザー、七瀬和美が主人公。
小学校1年生の娘を持ちながら、ただでさえ忙しい出版社勤務を続けています。副編集長を務めているというのも、和美が能力の高い編集者であるということの証し。
それなのに、突然和美より能力の劣る年下の同僚が編集長に昇格し、しかもチーム内でことごとく和美を仕事から外すばかりか、和美のメンツを潰すばかりの仕打ち。
一体、何が悪かったというのだ、上司におべっか遣いをしなかったからなのか、だからといって何故これ程までの仕打ちを受けなければならないのか。所詮、女性は昇進ルートから仲間外れされる運命なのか。
そんな折も折、娘の絵里についても難題が振りかかってくる。
本書はワーキング・マザー=和美のサバイバル・ストーリィ。作者である碧野圭さんの実体験に基づく小説作品とのことです。

和美に対する余りに露骨な仕打ちには呆れ返る程ですが、本当にこんなこと今でもあるのでしょうか。でも、古い体質の会社だったらまだあるのかも。
仕事オンリーだけの男より仕事ができて、そのうえ夫も子供も手に入れている女性となったら、確かにやっかみを持たれても仕方ないかもしれません。だからといって我慢しろ、ということではもちろんありませんが。
もっとも、本書では和美自身にも問題がなかったとはいえないことが、その後の展開の中で明らかになっていきます。
自分だけが出来れば良いというものではない、人を使うことも、広い視野をもつことも、時にタイミングを見計らってうまく人を利用するということもビジネス社会においては大切なこと。

出版社を舞台にした仕事小説、一旦貶められたものの鮮やかに復活を決めてみせる、という点で面白く読める一冊です。
おっと、ワーキング・マザーという問題、今後前向きに考えていかなくてはならないことを忘れてしまってはいけません。

ワーキングマザー小説「辞めない理由」公式サイト

  

2.

●「ブックストア・ウォーズ」● ★★
 (文庫改題:書店ガール)


ブックストア・ウォーズ画像

2007年10月
新潮社刊
(1400円+税)

2012年03月
PHP文芸文庫化



2007/11/17



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店長に昇格したと思ったら半年余り先に閉店が決まっていたペガサス書房K店
女のくせにと差別視する男どもに負けてたまるかと、そりの合わなかったベテラン書店員と“お嬢ちゃん”店員の2人が女のプライドと意地をかけて立ち上がった書店員奮闘記、というワーキングガール小説。

新宿からJRで20分ほどの駅前、古い雑居ビルの3〜5階にある老舗書店が舞台。ビルは古いながらペガサス書店の1号店という歴史をもち、高級住宅地だけに客筋もいい。
主人公の一人は副店長の西岡理子40歳、独身。もう一人はコミック売場担当で結婚したての小幡亜紀27歳。
元々ウマの合わない2人だが、亜紀の結婚を機に亀裂はさらに大きくなる。というのは、亜紀はK店で同僚の三田と付き合っていたのにそれを振って高給取りの大手出版社の編集者に乗り換えたという悪評に加え、二股をかけて最後に理子を振ったその元恋人は小幡と同じ会社の営業マンで、なおかつ亜紀を可愛がっているという状況が余計に2人の状況をややこしいものにしている。
そんな中、店長が栄転して後任の店長に理子が昇格すると、会社の男どもの蔑視、理子の足を引っ張ることいったら並大抵ではない。しかも、K店は半年先に閉店が決まっているという。

同じ書店が舞台といっても大崎梢さんの描く“成風堂書店”とは似ても似つかぬ職場状況。契約社員、バイトの中で反目し合う連中は多いし、売場のレイアウトにしても保守的な理子と、BL(=ボーイズラブ)漫画を積極的に売っていこうとする直情的な亜紀とは対立してばかりで、職場の雰囲気もやや暗い。
それにまして呆れたのは、会社の経営陣や同僚の男どもの女性蔑視ぶり。女性上司などもう当たり前の時代でこだわるようなことではないと思うのですが、旧弊な会社ではまだまだなんですかねぇ。
前半は理子・亜紀が亀裂を深めていくストーリィ、そして後半はその亜紀が踏みつけられたままで我慢していられるかと理子の尻を叩き、2人で奮闘するストーリィ。さてその結果は?

男に理解されないどころか見下げられ、働く女性はツライ、今に見てろ、という観のあるお仕事小説。後半は読み応え十分です。

           

3.
「書店ガール2 Book Store Girl2−最強のふたり− ★★


書店ガール2

2013年03月
PHP文芸文庫

(720円+税)



2016/07/30



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ブックストア・ウォーズが文庫化時に「書店ガール」と題名を変えてシリーズ化、その第2弾。

ペガサス書房吉祥寺店の閉店後、新しく吉祥寺の商業ビル内にオープンした福岡本店の大型書店チェーン=新興堂書店にスカウトされ、
西岡理子42歳はその吉祥寺店の店長に。
新興堂書店生え抜きの副店長=田代が理子を支えます。
一方、理子と一緒に同店へ転職した
小幡亜紀29歳は念願の文芸書担当となり、“本屋大賞”のプレゼンターも務めて充実した書店員生活を送っていましたが、懐妊が判明して編集者である夫の伸光と仕事を続けるかどうかで揉めてしまいます。

今や“吉祥寺の女傑”とか“伝説”とか言われているらしい理子の颯爽とした女性店長ぶりとその活躍が楽しめる一冊ですが、それだけでなく、冒頭では“本屋大賞”が取り上げられていたり、東京の谷根千から始まり全国へ広がった“一箱古本市”のこと等々、書店業界や出版業界の現状も描き出されているところが貴重です。
さらに本書の終盤では、理子が吉祥寺周辺の書店と連携して開催するブックフェアの様子が、本好きとしてはワクワクするような楽しさです。

少しずつ、この後の本シリーズ各巻を読んでいこうと思っています。

               

4.
「駒子さんは出世なんてしたくなかった ★★


駒子さんは出世なんてしたくなかった

2018年02月
キノブックス

(1500円+税)



2018/05/06



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主人公である水上(みなかみ)駒子は、42歳。出版社で庶務を扱う管理課の課長職。家族は、元カメラマンで現在主夫の達彦、高校生の息子であるという3人家族。

ある日、同期でもう一人の女性課長である
岡村梓と2人呼び出され、突然にして次長への昇進を言い渡されます。
しかも、新規事業部を立ち上げ、2人とも同部へ異動。2人の内どちらか一方、成果を上げた方を部長に昇進させ、もう一人はその下で次長のまま、という内容。
とくに出世意欲もなく、余り苦労せずに働ければいい、現在の課長職も前任者が急病で離職したための偶然にしか過ぎないと考えていた駒子さん、戸惑うばかり。その一方、独身である岡村梓はやる気満々の様子。

何故そんな人事を突然会社が行ったかという疑問、それは後半で明らかになるのですが、何とまぁ。
本作は、独身・家族持ちであるかを問わず、女性が会社で働くうえでどんな苦労があるのか、それに対して企業の対応は如何なるものか、を問うた作品といって良いでしょう。

正直なところ、今更古いなぁ、まだこんなことをやっているのかと感じたのですが、世間一般的には今なお、こうした企業の方が多いというのが現実なのでしょうか。
ただ、女性が働きやすい場所に変革していくためには、女性が上層部に辿りつくことが不可欠というのは同感できること。
ただ、その過程では、女性を優先的に昇進させていくという傾向が生じるのも否めない事実であって、そうした必要性を社員全員に納得させていくことも必要なのだろうと思います。

会社における駒子さんだけでなく、主夫だった夫が仕事を再開しだしたり、息子が不登校になったりと、家庭内でも問題続出となるストーリィ。
好感がもてるキャラクターの駒子さん故に、好意的かつ面白く、本書を楽しむことが出来ました。

  


   

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