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1.配達あかずきん−成風堂書店事件メモNo.1− 2.晩夏に捧ぐ−成風堂書店事件メモNo.2− 3.サイン会はいかが?−成風堂書店事件メモNo.3− 4.片耳うさぎ 5.平台がおまちかね−出版社営業・井辻智紀の業務日誌シリーズNo.1− 6.夏のくじら 7.スノーフレーク 8.ねずみ石 9.背表紙は歌う−出版社営業・井辻智紀の業務日誌シリーズNo.2− 10.かがみのもり |
キミは知らない、プリティが多すぎる、クローバー・レイン、ふたつめの庭、ようこそ授賞式の夕べに、忘れ物が届きます、だいじな本のみつけ方、空色の小鳥、誰にも探せない、スクープの卵 |
よっつ屋根の下、本バスめぐりん。、横濱エトランゼ、ドアを開けたら、彼方のゴールド、さよなら願いごと、もしかしてひょっとして、めぐりんと私。、バスクル新宿、27000冊ガーデン |
春休みに出会った探偵は、百年かぞえ歌 |
●「配達あかずきん−成風堂書店事件メモ−」● ★★ |
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2009年03月
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書店を舞台にした本にまつわるミステリ、連作短篇集。 探偵役となるのは、成風堂書店・正社員の杏子+女子大生バイトの多絵という若い女性コンビ。 店に来る客から本に関わるいろいろな相談事を持ちかけられる杏子ですが、時には謎めいた相談事も多い。そうなると杏子が引っ張り込むのは、手先は折り紙つきの不器用ものですが勘はとても鋭いという多絵。 何にもまして書店が舞台というのが楽しいです。本好きにとってはすこぶる居心地の良い場所であり、大好きな場所のひとつですから。 表題作「配達あかずきん」に登場するとぼけた味のフリーター店員の女の子・吉川博美のキャラクターも微笑ましいのですが、不器用さと勘の鋭さを併せ持つアンバランスさ、そのくせ行動力はしっかりあるバイト店員・多絵が私はやはり一番好きです。 ※末尾の付録、ミステリ好きな妙齢の女性書店員を4人集めての対談も楽しめます。題名はどうもこの対談で決まったらしい。 パンダは呟く/標野にて 君が袖振る/配達赤ずきん/六冊目のメッセージ/ディスプレイ・リプレイ |
●「晩夏に捧ぐ−成風堂書店事件メモ(出張編)−」● ★☆ |
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2009年11月
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「配達あかずきん」の成風堂コンビ、杏子&多絵が活躍する第2作、それもなんと長篇! 短篇集でデビューしたばかりだというのにもう長篇が出たというのにはびっくりですが、「成風堂事件メモ」ファンとしては嬉しいの一言。 今回の舞台は、早くも成風堂書店を離れて信州へ。かつて成風堂で杏子と同僚であった美保が地元に帰って現在勤めている書店・まるう堂(正式には宇津木堂書店)、地元で愛されているその老舗書店になんと幽霊が出たという。しかも27年前に起きた小説家刺殺事件、その犯人とされ獄中死した青年の幽霊らしいという。そこで美保が、杏子と多絵に事件解決を頼んできたという次第。杏子はしぶしぶだったが、多絵が乗り気。半ば温泉旅行期待も抱いて2人は信州へ。
まるで私が初めて読んだホームズもの、「バスカヴィル家の犬」みたいじゃないですか。そこまで2人が本格的探偵になってしまって良いのかなァと思うのですが、そこは大崎梢さんの巧みなところ。 |
●「サイン会はいかが?−成風堂書店事件メモ−」● ★★ |
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2010年03月
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24歳の書店員・杏子と21歳の女子大生バイト店員・多絵ちゃんが活躍する“成風堂書店事件メモ”シリーズ、第3弾。 今回は「配達あかずきん」と同じく短篇集です。 本書の面白さが日常ミステリにあるところは間違いないことですが、実はそれ以上に魅力的なのは、書店の仕事における様々な苦労話を聞けること。 また、随所に杏子がコミカルに多絵ちゃんを揶揄する場面が各章にちりばめられています。頭脳明晰だけれど、人並み以上に不器用という多絵ちゃん、なんと可愛らしいキャラクターであることか。ガールフレンドにしたい登場人物というコンテストがあったら、間違いなく上位入賞するキャラクターだと確信する次第。 なお、本書中とくに秀逸なのは「君と語る永遠」と「サイン会はいかが?」の2篇。 取り寄せトラップ/君と語る永遠/バイト金森くんの告白/サイン会はいかが?/ヤギさんの忘れもの |
●「片耳うさぎ」● ★★ |
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2009年11月
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父親が事業に失敗し、奈都一家は父親の実家に同居することになる。しかし、田舎の名家である蔵波の家は、迷子になるくらい大きくかつ薄気味悪い。そのうえ同居する雪子大伯母、伯父一家にも奈都は馴染めない。 父親が不在のうえに、急に入院した実母の看護のため母親まで里帰りとなり、小6の奈都は、あの広い家で4日間一人で過ごす夜を思うと恐怖に震えるばかり。 そんな奈都に救いの手を差し伸べてくれたのは、同級生の一色祐太。古い屋敷が大好きだというねえちゃん=中3のさゆりに話を通じると、さゆりは大喜びで泊まりに来てくれる。 しかし、そのさゆりこそ要注意人物なのかも? 礼儀正しい美少女という外見に反して好奇心旺盛。さっそく夜中、奈都を引きずり出して屋敷の探検に乗り出します。 古い屋敷に残る不吉な言い伝えと謎、そして屋敷の中を動き回る不審な人物の影。2人の少女が探偵役として、片や積極的に、片や否応なく、家族に秘められた謎解きに挑むという、ホームドラマ的ミステリ。微笑ましく、時に不可解で、最後には心温まる結果が待ち受けてくれるのが本作品の魅力。 ミステリはミステリなのですが、本ストーリィの肝心は家族物語にあります。 奈都とさゆり、2人の女の子の人物造形が素敵な、心温まるホーム・ミステリ(そんな言葉ある?)。 |
●「平台がおまちかね」● ★★ |
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2011年09月
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中小出版社・明林書房の新人営業マン=井辻智紀を主人公とする“出版社営業・井辻智紀の業務日誌”シリーズ、第1弾。 “成風堂書店事件メモ”は“本”業界を書店から眺めたシリーズでしたが、本シリーズは出版社側、それも営業マンの目から眺めたという点がミソです。 本好きにとっては、書店だけでなく出版社・営業マンの苦労をいささかなりとも知ることができるというのが、嬉しいところ。 主人公の井辻智紀は、謙虚で生真面目な好感の持てる青年。出版社でも編集の仕事だけはしたくなかったというのが奇妙ですが、その理由はご愛嬌。 各篇の謎は、 最後に出版社、書店の皆さん、ごめんなさい。 平台がおまちかね/マドンナの憂鬱な棚/贈呈式で会いましょう/絵本の神さま/ときめきのポップスター |
●「夏のくじら」● ★★☆ |
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2011年06月
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大崎さんといえば“成風堂書店”シリーズを中心に書店絡み、ミステリ絡みの作品が多かったので、今回はそれらと違う青春物語ということで期待半分・心配半分だったのですが、読んでみればそんな心配を笑って吹き飛ばすような爽快なストーリィ。いやぁ嬉しかったです。
本作品は、高知で毎年8月に行なわれる“よさこい祭り”を舞台にした、爽快な青春ストーリィ。 まず何といっても面白く、そして魅せられるように引っ張り込まれるのが、ストーリィの背景、最後の大舞台となる“よさこい祭り”。 よさこい祭りの興奮、熱気を蘇らせ、それにプラス青春群像、ささやかなミステリもありといった、まさに私好みの作品。 ※本作品、映画化されたらさぞ面白いに違いありません。 プロローグ 四年前/四月 祭の町/五月 恋する衣装/六月 鳴子によろしく/七月 地方車は夢を見る/八月十日 アスファルト・ダンシング/八月十一日 花メダルをこの手に |
●「スノーフレーク Snow Flake」● ★ |
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2011年07月
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大崎梢作品ということで楽しみにしていたのですが、(厳しい言い方になりますが)期待外れ。
函館に住む高校3年生の真乃。まもなく卒業し、東京の大学に進学して故郷を離れる予定。 ストーリィに最初から溶け込めなかったのは、不自然なところが大きかったから。 |
●「ねずみ石」● ★ |
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2012年01月
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神支村という辺鄙な村を舞台とし、その村に伝わる古式ゆかしい奉納祭りを背景とした、中学生を主人公としたミステリ。
4年前の奉納祭りの真っ最中、母娘2人が殺されるという事件が神支村で起きた。 サトやセイ、そしてサトが慕う2学年上の修ちゃんら、中学生が主体となって事件の真相を探り出そうとするストーリィ。 伝統的な祭り、事件の鍵となっているらしい“ねずみ石”、怪しい人物は同じ村の親しい人間ばかり、事件解決の糸口をみつけるのは中学生4人と、いろいろ面白そうな要素てんこ盛りなのですが、全ての面において今一歩、という感じなのが残念。 |
●「背表紙は歌う」● ★☆ |
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2013年07月
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中小出版社・明林書房の新人営業マン=井辻智紀を主人公とする“出版社営業・井辻智紀の業務日誌”シリーズ、第2弾。
“成風堂書店”シリーズがお客と書店をめぐる本の謎であるのに対し、本シリーズは出版社の営業マンが主人公ですから、謎の範囲は出版社・書店・作家とより広がっています。 しかし、その業界内部話だからこそかえって面白いというのが「君とぼくの待機会」。有名な文学賞の候補作が決まったところで各出版社の営業マンたちが心躍らせ、活気づく風景、なかなか楽しいものがあります。 ・悪口を叩く取次社員の真の姿は? ビターな挑戦者/新刊ナイト/背表紙は歌う/君とぼくの待機会/プローモーション・クイズ |
●「かがみのもり」● ★ |
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2013年09月 2011/04/22 |
実家は神社という新米中学教師の片野厚介、担任クラスのお騒がせコンビ=笹井誠と勝又裕吾の言葉にうまうまと乗せられ、立入禁止という山宝神社の裏山(香我美山)に足を踏み入れることになります。 2人が見つけてカメラで撮ったという、怪しい洞窟の中に見つけた金色に輝くお宮。果たしてその正体は何なのか。 ところが、その直後からいろいろと不穏な動きが彼ら3人の周りに起き始め・・・・、というストーリィ。 本書は、光文社“BOOK WITH YOU”というシリーズ本の中の一冊ということなのですが、同シリーズ、どちらかというと児童向け。けれど、大人も子供の気分に返って楽しめる、という趣向のようです。 本作品も、まさにそんな趣向に適ったサスペンス。 ストーリィには、現代社会のトピック事件も盛り込み、それでも腕白少年たちの冒険ものというスタンスを守った、本格的軽量サスペンス。 ストーリィの割に登場人物は多彩で賑やか。 それなりに楽しめる、冒険+サスペンス作品です。 |
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