まはら三桃
(みと)作品のページ No.1


1966年福岡県北九州市生。2005年「オールドモーブな夜だから」(出版時「カラフルな闇」に改題)にて第46回講談社児童文学新人賞佳作、2011年「鉄のしぶきがはねる」にて第27回坪田譲治文学賞・第4回JBBY賞を受賞。鹿児島児童文学者の会“あしべ”同人。


1.カラフルな闇

2.最強の天使

3.たまごを持つように


4.鉄のしぶきがはねる

5.鷹のように帆をあげて

6.わからん薬学事始1

7.わからん薬学事始2

8.わからん薬学事始3

9.伝説のエンドーくん

10.風味さんじゅうまる

白をつなぐ、つくしちゃんとすぎなさん、ひかり生まれるところ、三島由宇当選確実!、奮闘するたすく、青がやってきた、疾風の女子マネ!、パパとセイラの177日間

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1.

●「カラフルな闇」● ★★        講談社児童文学新人賞佳作


カラフルな闇画像

2006年04月
講談社刊
(1300円+税)


2011/04/17


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両親の離婚によって起きた、女子中学生=里中志帆の様々な色合いに揺れる胸の内を描いた作品。
どちらかというと小品で、描かれるストーリィはごく限られた中でのことですが、瑞々しさが印象的です。

志帆は母親の美砂子と共に、大好きだった家を出て、マンションで2人暮らし。その美砂子は、離婚後気分の浮き沈みが大きく、娘としては苦労する毎日。
一方学校では、深夜度々目撃される“
闇魔女”に関する話題が人気。闇魔女を見て運が向いたという人間と、逆に不運を招いたという人間がいる。
そんな折、志帆は関わりたくない相手、上級生の
クリシューこと小栗周一郎と知り会ってしまいます。彼が描いたよく判らない絵、それを鳴瀬川の絵だと気が付いたことから。

クリシュー先輩と知り合ったことから、志帆は窮地に陥ることともなり、またそこから新しい局面を見出すことにもなります。
本書はそんなストーリィ。
志帆と小栗が関わり合って進んでいくストーリィ、清新で、好感が持てます。
ささやかな物語ですが、そのささやかさがかえって気持ち好く、爽やか。私好みの作品です。          
  

      

2.

●「最強の天使」● ★☆


最強の天使画像

2007年06月
講談社刊

(1400円+税)


2011/05/28


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カラフルな闇の続編。
前作で脇役だったクリシュー先輩こと、
小栗周一郎が本作品の主人公です。
その周一郎、母親が祖父母の経営してきた美容院を引き継ぐこととなり、鹿児島への引っ越しが決まります。
そうした中、「カラフルな闇」では主人公だった1年後輩の
里中志帆に中々そのことを告げられず悶々とする周一郎ですが、その一方で周一郎に会いたいと言ってきた父方の祖父の存在、ひいてはかつて家を出た父親の存在が、周一郎の気持ちをさらに揺さぶります。

中学生という早春期において周一郎が味わう、ちょっとした試練を描いたストーリィ。ですから、それ程インパクトのある作品ではありません。
でも、志帆と周一郎の後日談を読む楽しみ、前作では颯爽とした印象だった周一郎の慌てふためいてばかりという姿、そして新たな旅立ちを迎えた周一郎のちょっとした成長ストーリィ。それが爽やかで快いのは、まはら作品に共通するところです。

最終場面、志帆の存在もあって、読後感はとりわけ爽やかです。

          

3.

●「たまごを持つように」● ★★


たまごを持つように画像

2009年03月
講談社刊

(1400円+税)


2009/04/26


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爽やかな青春スポーツ小説。
主人公たちは中学生、そして競技は珍しいことに弓道。
まずそこに興味を惹かれました。

舞台は福岡にある光陵中学の弓道部。部員は3年生の柏木由佳をはじめとして、主人公である伊吹早弥(さや)松原実良(みら)、石田春フィリップアンダーソンという2年生が3人。
不器用で何をやっても上達が遅い早弥、それと対照的に実良は楽々と弓を引き天才的な才能を見せ付けるが、突然にスランプ。
父親がアフリカ系米国人の春はその風貌から人目を集めるが、着々と地力をつけていくタイプ。
由佳引退の後、三人三様、それぞれに悩み苦しみながら成長していく姿が爽やかに描かれる青春小説です。

弓道という、人気がありそうながら、小説には登場していなかったスポーツへの興味。
そして弓道といっても決して一人ずつの競技ではないと、遠回りしながら気づいた3人が、心を合わせてお互いの力を高めていくという展開が、とても気持ち良い。
青春スポーツ小説がお好きな方には、お薦めです。

※なお題名は、弓は卵をもつようにふんわりと握らなければならない(=「握卵」)という教えから。

     

4.

●「鉄のしぶきがはねる」● ★★       坪田譲治文学賞


鉄のしぶきがはねる画像

2011年02月
講談社刊

(1400円+税)



2011/04/03



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高校青春小説といっても、そこは珍しい、工業高校を舞台に“もの作り”にかける女子高校生を主人公にしたストーリィ。

三郷心(しん)、北九州工業高校電子機械科の1年生。そもそも工業高校に女子は珍しく、心、電子機械科でただ一人の女生徒。
システムエンジニア志望でコン研(コンピュータ研究部)に所属している心、顧問教師から文化祭の準備で大わらわの
もの研(ものづくり研究部)の手伝いを頼まれます。
最初は断るつもりだった心、実習工場で名人の操る旋盤の音に思わず惹きつけられ、いつの間にか<もの研>の仲間と共に、全国の工業高校生の精鋭たちが技術・技能を競い合う
「高校生ものづくりコンテスト」出場を目指すことになります。
それは、腕の良い旋盤工だった亡き祖父から受け継いだ血が騒いだためか。

繰り返しになりますが、ともかく舞台設定が珍しい。片川優子さんの大学生青春小説動物学科空手道部高田トモ!も珍しいですが、そこは部活動もあり、男女関係のあれこれもありと、もう少し華やか。
それに対し本書は、工業高校、いつも作業服、旋盤と、極めて地味です。
でも、
“もの作りの楽しさ”という技術進歩の原点をテーマにした点、大いに評価したい作品です。
こうした高校生たちの健闘に期待すると共に、その力を発揮できる場所が日本に多くあることを、心から祈ります。

※高等専門学校生たちがソーラーレースにかける、高専校生もの青春ストーリィがあることを後から思い出しました。濱野京子「レッドシャインです。

           

5.

●「鷹のように帆をあげて」● ★★


鷹のように帆をあげて画像

2012年01月
講談社刊

(1400円+税)



2012/03/03



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弓道も珍しいと思ったのですが、旋盤を操る女子が主人公というのも新鮮な驚きでした。
しかし、
鷹匠とはなぁ・・・・・。いくらなんでもと、もう驚きを越えた感じです。
「女子中学生、鷹匠になる! 九州の空を舞台に、生きる気流をつかむ青春小説」という紹介文から、女子中学生が鷹匠の元に弟子入りする物語と思っていたのですが、そうではなく、ペットに飼ったその延長に鷹匠という立場があった、というもの。

よちよち歩きの頃からの親友=が突然に交通事故死してから1年、中学生の葉山理央は、事故の直前に2人で見ていたヒナがペットショップ大きく育っているのを見出します。それはハリスホークという種類の鷹。その鳥から目を離せなくなった理央は、ついに両親に請うて鷹を飼うことになります。
しかし飼うといってもそこは猛禽。餌も世話も簡単ではありませんし、さらに大空高く飛翔させたいと思えばそれなりの訓練も必要。理央と鷹の濃密な日々がそこから始まります。
鷹の飼育というストーリィ部分も興味津々ですが、大空高く帆翔する鷹の姿を見たいという夢、その夢に向かって一歩一歩進む理央と飛べない鷹=モコの、二人三脚の日々の重なりがとても爽やかです。

なお、理央に貴重なアドバイスを授ける先人として、9歳の頃から猛禽を買い始め、今や女子高生の鷹匠として有名だという平林美咲。
あくまで架空の登場人物だと思っていたら、実際に
石橋美里さんという女子高生鷹匠がいるのだそうです。なんとまぁ。
女子中学生&鷹というコンビを主人公にした、爽やかな青春ストーリィ。お薦めです。

             

6.

「わからん薬学事始1」 ★★


わからん薬学事始1画像

2013年02月
講談社刊

(1200円+税)



2013/03/03



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弓道、旋盤、鷹匠と来たところで今度は薬学かぁと嬉しい驚き。
ただし本書は、児童向け小説です。

本土から離れた、定期航路もない小島の久寿理島
その久寿理島は自然、植物、化石等々多くの実りに恵まれ、製薬会社を営む
木葉家では代々「気休め丸」という万能丸薬を世に送り出し、長く人々のために立ってきた。
代々女子直系だった木葉家に 470年ぶりに生まれた男子=
草多は15歳を迎え、万人に効く新・気休め丸を作り出すという使命を担って上京、薬学を授業の中心に据える和漢学園に進学します。
当然ながら実家を離れた草多は学園近くに下宿することになりますが、そこは何と元病院だったという“
わからん荘”。オーナーの橘蘭という老人を始め、下宿仲間の先輩2人=熊野嵐、細川伸太郎、同級生の黒田真赤(まき)、いずれも個性的な面々ばかり。
のんびりと育った島を出てシビアな授業を繰り広げる和漢学園に入学した草多、彼にはどんな高校生活が待い受けているのか。そして草多はどう自分の運命を切り開いていくのか、という薬学青春ストーリィ。

人とは違った才能を持つ主人公が、伸びやかに育った田舎から東京に出てきて慣れない学園生活の中で揉まれながらも、徐々に天性の素質を伸ばしていく爽やかな青春ストーリィという処、折原みと「乙女の花束と共通するところを感じました。
本物語はシリーズ化されるようで、本書における草多はまだスタート地点に着いたばかりというところ。
いつも伸びやかで清新なストーリィを味わわせてくれるまはら三桃さん、今後の展開がとても楽しみです。

1.旅立ち/2.わからん荘の人たち/3.久寿里(くすり)島のこと/4.和漢学園/5.わからん荘の流儀/6.ブランカ/7.牧野研究室/8.大塔秀有/9.雪さん/10.逃亡マウス/11.Xクラスへ/12.母への手紙

                    

7.

「わからん薬学事始2」 ★☆


わからん薬学事始2

2013年04月
講談社刊

(1200円+税)


2013/05/19


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薬学青春ストーリィNo.2。
和漢学園でXクラス入りを許された
木葉草多、竜骨の声に時折助けられながら、徐々に前進です。
それは草多だけでなく、他の仲間達にも言えること。
高3でずっと留学中だった
熊野嵐がついに和漢薬科大学に合格。しかし、そこでまた嵐に難問が降りかかり、草多が嵐(と自分たち)のため奮闘、2人は北海道へと足を伸ばします。
もう一人は
黒田真赤。双子のブランカが日本に戻って以来3年間会わないまま。そこにはどんな事情があるのか。そこでもまた草多、竜骨の声に促され真赤のためにその力を活かします。

少しずつ進歩しているように見られる草多ですが、何もかも順風という訳には行きません。焦慮する悩みごとを2つ新しく抱え込みます。その辺りがどう展開は次巻に期待するところ。

薬になるものの声を聴くことができるという持ち味が、ファンタジーながら主人公=草多の魅力と改めて感じる次第です。
児童向け青春小説ですが、大人が読んでも十分楽しい。

1.嵐の危機/2.Xクラス/3.草多ひらめく/4.遥かなる北の大地/5.草多vs.秀有/6.メル/7.真赤とブランカ/8.真赤の決意/9.正太郎あらわる/10.胸のときめき/11.「気休め丸」の声/12.「気休め丸」の作り方?/13.「気まぐれなんかじゃない」

                  

8.

「わからん薬学事始3」 ★☆


わからん薬学事始3画像

2013年06月
講談社刊

(1200円+税)



2013/07/21



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薬学青春ストーリィNo.3にして完結編とのこと。

和漢学園で製薬を学ぶ木葉草多たち、あっという間に2年生〜3年生の時が過ぎます。
本巻ではわからん荘の1年上、
細川伸太郎の縁戚で忍者の末裔の如き生活を続けている泰蔵じいさんを伸太郎と草多が訪ねる話から始まります。
そこで偶然にも草多が知ったこと。しかしそのことを実際に活かそうと草多が暴走した結果、思わぬ事態が生じ、草多は困難に直面します。しかしかえってそれが草多には幸いしたのか、草多が真摯に勉強に励むきっかけとなります。
また、恋愛要素もちょっぴり。そして草多の実父の事情がついに明らかとなります。

“新・気休め丸”への道のりはまだまだ。それなのにあっさり完結編となってしまい「え?」と思うところですが、そもそもの題名が「事始」。そう簡単に新薬が開発できる訳もなく、草多が和漢薬科大学入試に合格したところでちょうど良い幕切れなのかもしれません。
ただし、児童書である本物語はそれで良しとした上で、今後いつか、登場人物たちの製薬にかける青春物語を読んでみたいと願う次第です。

1.気まぐれなんかじゃない/2.忍者と薬草の地へ/3.兵糧丸の歌/4.「気休め丸」はしゃべるか/5.芳原先生/6.きこえない/7.秀有と/8.受験勉強/9.処置室からの声/10.一九九二年秋/11.久寿理島に誓う/12.母への手紙/13.「気休め丸」が教えてくれたこと

      

9.

「伝説のエンドーくん」 ★★☆


伝説のエンドーくん画像

2014年04月
小学館刊

(1400円+税)

2018年06月
小学館文庫化



2014/04/30



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“エンドーくん”の伝説が伝わる市立緑山中学校。その緑山中を舞台にした生徒と教師たちを描いた連作風長編。

新米教師の
清水勇気、張り切って挨拶したところとんでもない間違いをしでかし頭を抱えてしまいます。
そんな清水が気付いたのは、緑山中学内のあちこちに「エンドーくん」の名前を付した落書きがそこら中にあること。何十年もの間に増え続けてきたものらしい。
その「エンドーくん」とは何者か? どうも昔に在校したスーパーヒーローのような生徒だったらしく、困ったとき等々生徒たちはそのエンドーを心の支えにしているらしい。

といっても本ストーリィ、主体となるのは生徒よりもむしろ、多感な年頃の中学生たちに向き合う教師の側。
中学生に負けず、教師にも悩みや苦悶あり。本書では敢えて生徒ではなく教師の側を描いたところが新鮮です。
冒頭の清水のミスは校歌にある「
清爽」という言葉を「清掃」と思い込んだことなのですが、その「清爽」、目にし、あるいは口にするだけでも爽やかな気分がしてきます。
それはそのまま本書ストーリィの読後感にも通じます。

そんな学園ストーリィに加えての本作品の魅力は、なぜエンドーくんは伝説になったのか、というストーリィが最後に用意されていること。
そのミステリ風味が本書の隠し味、楽しめること、間違いなし!です。

1.エンドーくんは、体育祭の星/2.エンドーくんの愛はふめつ/3.エンドーくんはお金よりつよし/4.エンドーくんは変化をおそれない/5.エンドーくんは、魔王にかつ/6.エンドーくん誕生/7.百周年にエンドーくんは

          

10.

「風味さんじゅうまる」 ★☆


風味さんじゅうまる画像

2014年09月
講談社刊

(1400円+税)



2014/10/04



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ストーリィの舞台は福岡県飯塚市、江戸まで繋がるという“長崎街道”近くの錦町商店街。
主人公である中2生=
伊藤風味(ふうみ)の家は、その商店街で大正時代から続く和菓子屋“一斗餡”。
入り婿で三代目の祖父=
五平太亡き後、祖母のカンミ、両親の和志・典子という3人で店を守っているものの、小さな和菓子屋であることは否めない。
なお、イケメンながらチャラ男の兄=
北斗は高校卒業後、長アの有名菓子店寮に住み込んで製菓学校に通い、修行中。

そんなある日、長崎街道のお祭りで街道沿いの菓子屋が集まり、新作菓子を人気コンテスト形式で競うSS−1グランプリが開かれる、ついては一斗餡も参加しないかと、誘いがかかります。
忙しい、余計なお金がかかると渋る両親でしたが、ちょうど美術部の仲間と喧嘩して時間を持て余していた風味、そして何故か突然家に帰ってきた北斗が参加に乗り気。
ついに一斗餡もコンテストに参加することとなったのですが、その前に風味、そして北斗の問題は解決するのか。そして北斗餡において新作菓子は出来上がるのか、というストーリィ。

本作品は主人公に相応しく、風味の中学校生活と実家の和菓子屋稼業を描いたジュヴナイル作品。
ですから軽いノリ気分で、楽しく読んでいられます。
和菓子作りの薀蓄も、お菓子好きにとっては楽しい限り。


1.一斗餡/2.北斗、帰る/3.カシミの病室/4.風味の悶々/5.製作開始/6.北斗の決心と風味の爆発/7.文化祭にむけて/8.命名「風味さんじゅうまる」/9.SS-1/10.長崎街道/11.再び一斗餡

   

まはら三桃作品のページ No.2

   


   

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