トーン・テレヘン作品のページ


Toon Tellegen  1941年、医師の父とロシア生まれの母の元、オランダ南部の島に誕生。ユトレヒト大学で医学を修め、ケニアでマサイ族の医師を務めた後アムステルダムで開業医。84年、幼い娘のために書いた動物たちの物語「一日もかかさずに」を刊行。以後、動物を主人公とする本を50作以上発表し、国内外の文学賞を多数受賞。「ハリネズミの願い」は大人のための〈どうぶつたちの小説〉シリーズの一冊。


1.
ハリネズミの願い

2.
おじいさんに聞いた話

 


   

1.

「ハリネズミの願い」 ★★
 
原題:"Het verlangen van de egel"     訳:長山さき


ハリネズミの願い

2014年発表

2016年06月
新潮社刊

(1300円+税)



2016/07/25



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ひとりぼっちのハリネズミは、誰も自分を訪れてくれないことを寂しく思っている。
今まで誰も家に招待したことがないことに気付き、動物たちへの紹介状を書き始めます。
「親愛なるどうぶつたちへ ぼくの家にあそびに来るよう、キミたちみんなを招待します」と。そして最後にこう書き足します、「でも、だれも来なくてもだいじょうぶです」と。
書き足した内容が良かったかどうか考えあぐねたハリネズミは、結局手紙を引きだしにしまい、出さないまま。
そして次の日から、こんな動物が訪ねてきたら、と想像を巡らせます。その結果は恐ろしいことばかり。ハリネズミの小さな家に合わない大きな動物たちもいれば、一方的で身勝手な動物たちもいるのですから。

全部で59章、ハリネズミの想像の中でいろいろな動物たちが登場し、いろいろな訪問劇を繰り広げます。
いくらなんでもそりゃ、ゾウやクジラは無理でしょう。それなのにハリネズミの想像の中では彼らも例外ではありません。
臆病で、何かと悲観的なハリネズミ、想像は悪い方へ悪い方へと進むばかり。心配ばかりして行動せずにいるより、とにかく一歩足を踏み出してみれば、と思うのは私だけではない筈。

最後、ハリネズミの元に思いがけない来客が。義理だけの多くの来客より、心から喜べるたった一人の訪問が何と嬉しいことか。
本ストーリィ、決してハリネズミ特有のことではなく、誰にも共通する事柄のように感じます。
なお、数多くの動物の中でユニークで愉快なのは、カメとカタツムリのコンビ。その迷コンビぶりを是非お楽しみあれ。

         

2.

「おじいさんに聞いた話」 ★★
 
原題:"De trein naar Pavlovsk en Oostvoorhe"     訳:長山さき


おじいさんに聞いた話

2000年発表

2017年08月
新潮社刊

(1800円+税)



2017/09/14



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著者の祖父は元々オランダの貿易商の一族で、ロシア革命が起きた翌年の1918年、40年以上暮らしたサンクトペテルブルクを後にして、妻・息子5人・娘1人(テレヘンの母)と共にオランダへ移住したのだそうです。
その祖父から、孫であるテレヘンが子供の頃に聞いたロシアの話あれこれをまとめたのが本書、という設定。
ただし、実際には祖父が語ったという話は全くなく、すべてテレヘンの創作なのだそうです。
要は、
「自分が祖父から聞くことができたかもしれない話」とのこと。

如何にもロシアらしい話が詰まっています。
不思議な話だったり、ちょっとホラー的なものもあれば、社会の底辺にいる人々に降りかかった悲劇があったり、一方で皇帝が登場する話もある、と多彩。
ふと
ゴーゴリツルゲーネフの短篇、トルストイの民話などの雰囲気を懐かしく思い出させられる処があります。その辺り、如何にもロシアならではといった印象の小話集。

祖父が孫の男の子に語るという前提ですから、悲劇的な話が混じっていても各々軽やかであり、時に可笑しみも感じさせられ、気軽に楽しめる短篇集になっています。

パブロフスクとオーストフォールネ行きの列車/ピロギ/詩人/年老いた男/散歩/ユダたち/神と皇帝/二人の修道士/おとなしい少年/罪/地図帳/なにかが祖父を思いとどまらせていた/日常/死ぬこと/悪魔/中心/「なんなんだ?!」/フェーデ/犬/医師たち/テルヘン/サイ/いとこ/織りまちがい/使用人の母/綱渡り師/涙の谷/小部屋付きの大広間/鳩墓地/ステフラー/ドヴィチェニー・サーカス団/馬/クマのお話/小さな魔女/裸の皇帝/手品/翼/葬儀/ステップ

 



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