ガチアン・クウルティルス・ド・サンドラス作品のページ


Gatien de Courtils de Sandras 1644-1712年。フランス・パリ生。長く軍人生活を送った後に文士となり、歴史ものを執筆。しかし、暴露物を書くたりして投獄されることも数回に及ぶ。1702年バスティユ監獄に投獄され、1711年漸く釈放される。歴史小説ジャンルの先駆を成す。

 


 

●「デュマ“ダルタニャン物語”外伝 恋愛血風録」● ★★
 原題:"Vie de D'Artagnan par Lui-meme"     訳:小西茂也




1700年刊

1955
河出書房

2005年01月
ブッキング刊
(2000円+税)

 


2005/05/14

 


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原題の邦訳は「ダルタニャン自叙伝」
詳しい標題は「国王銃士隊第一大隊長ダルタニャン氏のメモワール」と言い、18世紀に盛んに読まれ、ヴィクトル・ユーゴーも愛読したとのことです。そして、1842年頃デュマがルイ14世時代の歴史小説を書くため図書館で材料を漁っていたところ発見したのが本書で、これを種本にデュマは「ダルタニャン物語」を執筆したという次第。
なお、ダルタニャンは本名シャルル・ド・バッツ・カステルモールという実在の人物ですが、本書は事実どおりではないらしい。その点を確かめるには、佐藤賢一「ダルタニャンの生涯を読むと良いでしょう。

本書が1955年河出書房から刊行された時の邦題は「ダルタニャン色ざんげ」だったとのことですが、いみじくも本書の内容を良く語っています。
つまり、デュマの「ダルタニャン物語」のような、天下を相手にした華々しい活躍などは、本書にはありません。
それどころか、任務遂行中だというのに性懲りもなく色恋沙汰に巻き込まれるのが常、というのが本書のダルタニャンです。
色恋なくして物語もないという作品ですから、全篇を通じての大きなストーリィはなく、その点では散文的な物語です。
それでも、ルイ13世時代に始まり、多くをマザラン枢機官の元での密偵仕事に尽くし、最後にやっと軍人としての昇進を手に入れるという半生記らしい流れはあります。
宮仕え故のせちがらさが幾度も感じられ、本書ダルタニャンには同情も禁じえません。

本書の面白さは、デュマの「ダルタニャン物語」と比べながら読むところにあります。
デュマのボナシュー夫人コンスタンツェ、ミラディー、小間使いケティーに関わるストーリィは、本書のこの部分をあのように膨らませたのかと、はっきり判るところが楽しい。
また、あの気取り屋のアラミスが、下剤を飲んだすぐ後にダルタニャンの決闘立会いに出かけ、○○しながら敵方と切り結んだという部分は忘れられない可笑しさです。
良くも悪くも、デュマ「ダルタニャン物語」の種本として読むからこその面白さです。

前口上/最初の決闘/初恋/危険な恋/ボルドー戦役/イギリス/バスティユ監獄/戦争/結婚と最後の恋

   


 

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