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●「この声が届く先」● ★★ |
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2012年06月
2012/09/25
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凶悪犯に人質にされた相棒リディアを救済するため、犯人が仕掛けたゲームをクリアしつつNYを駆けまわる私立探偵ビルの姿を描いたノンストップ・サスペンス。 あらすじを聞いて面白そうだと手に取った作品ですが、私にとっては久々の海外私立探偵もの。 最近はすっかり海外ものミステリに縁遠くなっているものの、中学〜高校時代は海外ミステリに嵌っていました。久々に読む所為か、尚のこと楽しく感じます。 本書、中国系女性=リディア・チンと白人男性=ビル・スミスという2人の私立探偵がコンビとなって活躍する“リディア・チン&ビル・スミス”シリーズの第10作目なのだそうです。 本書を読むまで全く知らなかったのですが、シリーズを読んでいなくても十分楽しめます。 ビルに深い恨みを抱いているらしい正体不明の犯人が示してきた猶予時間は12時間。 警察に知らせるなという制約の下、警察や売春組織にまで追われながら、友人や知人たちの協力を得つつNY中を疾走するビルを描く本ストーリィは、スリリングな面白さで一杯です。 また、制限時間に追われるサスペンスという趣向はJ・ディヴァー作品にもあったと思いますが、私はふとアイリッシュの名作「暁の死線」を思い出させられました。本書が本シリーズならではの面白さに加え、古典的な面白さをも備えているからでしょう。 本ストーリィの魅力は、展開の面白さだけでなく、主人公ビルと一緒にNY中を駆けまわる協力者たちのキャラクターにもあります。 リディアの親戚でITに熟練しているライナス18歳も魅力ありますが、それを凌駕するのがそのガールフレンドであるトレラ。スーパーガールといった活躍ぶりです。終盤、NY街中に姿を眩ませている犯人を見つけ出すアイデアが何とも圧巻です。 スリリングなサスペンス+キャラクターの楽しさ、お薦めです。 |