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2.幻の女 (アイリッシュ名義) 3.暁の死線 (アイリッシュ名義) 4.喪服のランデヴー (ウールリッチ名義) 5.黒いカーテン (ウールリッチ名義) 6.夜は千の目を持つ (ハプリー名義) |
●「黒衣の花嫁」● ★★☆ |
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1940年発表 1983年08月 1998/10/14
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※「やがて彼女はつぎつぎと5人の男の花嫁になった」−ちょっとこの表紙カバーの文章には異議あり。読む前に誤解を招いてしまう。^^; 何はともあれ、鮮やかに現れ、狙った相手を確実に殺して綺麗に姿を消す、という謎の女を描く本作品は、まさに名作。 各々の殺人プロセスは、連作短篇と言って良いほど、そのひとつだけでも読み応えあるものです。 後から冷静に考えれば、作者として決着には二つの方法があったと思います。ひとつは“黒衣の花嫁”という虚像をそのまま完成すること。もうひとつは虚像を打ち壊し、別の姿を読者に見せること。 |
●「幻の女」● ★★★ |
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1942年発表 1998/09/23
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「暁の死線」以来20年振りに読んだアイリッシュ作品。 見知らぬ女性と共に食事、ショーと夜を過ごしたスコットが帰宅してみると、喧嘩した妻が殺されていた。そして自身は犯人として逮捕される。 目次は「死刑執行前150日
午後6時」から始まり、最後には「執行前3日」「死刑執行当日」「死刑執行時」と迫っていきます。 なんといっても素晴らしいのは、時間に追われる切迫感と探索側の焦燥感からくるスリリングさ。 |
●「暁の死線」● ★★★ |
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1944年発表
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かつての愛読書です。 翌朝故郷へ向かうバスの出発時間を最終時限として、一夜の間に二人の必死の探索が始まる、という点で「幻の女」の構成と良く似ています。 この本以外に長くアイリッシュ作品を読んでいなかったというのも、この1冊を読んだだけで充分満足してしまった、というのが理由でした。(^^;) |
●「喪服のランデヴー」● ★★ |
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1948年発表 1976年04月 1998/10/14
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まさに「黒衣の花嫁」の裏返し、と言える作品。 前作では謎の女がどのように殺人を行うかに興味がありましたが、本作品において男はストーリィの主体から一歩引き、むしろ被害者側の人生模様がストーリィの主題になっているようです。 それだけに、前作以上に一篇一篇が独自の風格をもつ短篇、と言うにふさわしいだけの充実感を備えています。 それにしても、前作同様のストーリィでありながら、その直後に読んでさえ全く二番煎じと感じることはありませんでした。それだけ円熟した作品であるということでしょう。 |
●「黒いカーテン」● ★ |
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1941年発表 1960年02月 1998/10/17 |
気がついて家に辿りついた主人公は、自分が3年余りの記憶喪失から回復したことを知った。以前の生活を取り戻した主人公を襲った恐怖とは? というストーリィです。 その3年間の謎を探るという視点でなく、「恐怖」という入り口から読者をストーリィの本筋に誘い込んでいく辺り、情緒描写に長けた作者の真骨頂というところ。 比較的短い長篇ミステリですが、それなりに納得できる好作。 ※これが3年でなく25年も飛んでしまうと、主人公は過去より今をどうするかというのが最大の問題。それを扱った作品が北村薫「スキップ」。 |
●「夜は千の目を持つ」● ★ |
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1945年発表 1979年07月 1999/01/20 |
ある夜、青年刑事ショーンは川に身を投げようとしていた娘・ジーンを助ける。その娘は、父親が死を預言されたといって怯えていた。 ショーンはジーンの父を救うため警護に乗り出します。 ゴールの時限を定めて緊迫感をつのらせていくのは、アイリッシュの得意の手法だと思いますが、そうとわかっていてもその渦中に放り込まれると、完全に作品の中に取り込まれてしまいます。 |