1999年07月
新潮社刊
(2400円+税)
1999/09/07
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ペギー・コート、独身で男性に縁の無い図書館勤めの司書。彼女が愛した相手は14歳年下の巨人症の少年、ジェイムズ・スウェットでした。
ペギーの一人称で語られる、ペギーとジェイムズの物語です。
「私は人間があまり好きではない」 この一言から始まる通り、ペギーというのは非社交的な感じのする女性です。一方、彼の方はとても優しい性格ながら、身長2百数十センチという特徴から常に人の目にさらされて生活するほかない少年。
この2人の差は、サヴァン「ぼくの美しい人だから」に負けず劣らず不釣り合いなものでありながら、ストーリィを読む限り、極めて自然に進展していくように感じられます。
ただ、この物語には、何か目を見張るようなことが起きるとか、夢中になってしまう、というようなことが一切ありません。ただ淡々と時間が経過していった、という観があります。
どう捉えて良いのか判らなかったこの物語が、突如として正体を現すのは、本当に物語最後の部分です。ペギーは偏屈なところのある女性ですけれど、見事にジェイムズとの愛を成就させたように感じられます。それによって、ジェイムズも人々に忘れられない人物になった、そんな思いがします。
本書は、恋愛というイメージからおよそかけ離れた恋愛小説を読みたいと思った時、手に取るのがふさわしい物語かもしれません。
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