イーユン・リー作品のページ


Yiyun Li  1972年中国・北京生、北京大学卒業後、96年渡米。アイオワ大学大学院で免疫学修士号、次いで同大学創作科修士号を取得。2004年「不滅」にてプリンストン新人賞、ブッシュカート賞を受賞。05年「千年の祈り」にてフランク・オコナー国際短篇賞、PEN/ヘミングウェイ賞、ガーディアン新人賞、ニューヨークタイムズ・ブックレビュー・エディターズ・チョイ賞、ホワイティング賞を受賞。現在ミルズ・カレッジ文学部創作科助教授。カリフォルニア州オークランドに夫と息子2人ともの居住。

 


 

●「千年の祈り」● ★★☆       フランク・オコナー国際短篇賞他
 原題:"A Thousand Years of Good Prayers" 
      訳:篠森ゆりこ




2005年発表

2007年07月
新潮社刊

(1900円+税)

 

2007/08/17

 

amazon.co.jp

デビュー短篇集にもかかわらず、数々の文学賞を受賞した書。
作者は中国人女性で、米国に留学して免疫学で修士号を取得した後小説家を志したという変り種ですが、本書を読み終えるとその辺りの事情もなんとなく納得がいきます。

僅か 240頁余りの中に合計10作品。したがってどれもごく短い作品ですが、読んだ印象ではとてもそんな風には思えません。中篇小説というに値する濃さ、深みが本書にはあります。
中国という国を批判的に捉える一方で、その重しを担いながら人々が生きてきた歴史を時代を超えて捉えるといった作品集。
いずれの作品の主人公にも、ひとりぼっちの哀しみが感じられます。それは革命国家である中国に翻弄された結果でもあり、そんな中国に相容れない気持ちを抱くためでもあります。
しかし、作者は決して情緒に流されることなく、冷静に中国人の宿命を見定めているような強さがこれらの作品からは伝わってきます。
作者の文章は、堀江敏幸さんが書かれているように「正確で湿り気がなく」、そして「硬質」。まさに微塵の揺るぎもないといった風格すら漂います。

収録された10作品の中では、創作科卒業前に雑誌掲載されたという「不滅」と冒頭作「あまりもの」、そして「市場の約束」が特に心に残りましたが、それらをはるかに超えて表題作「千年の祈り」が抜群に秀逸。
米国に住み離婚した娘を案じて中国からやってきた父親を描いたストーリィ。僅か20頁程の短篇ですが、会話が通じない以上に考え方が通じない父娘、そこには中国という世界の中で生きてきた父親と、その不自由さを嫌って国外飛び出した娘との思いにおける世代格差が強く感じられます。
それでも代々中国で生を営んできた祖先がいたからこそ、こうして今の彼女がいる。「千年の祈り」という表題はとても余韻の深い言葉です。

※なお、何故あれだけの中国人が外国へ出て行くのか。その理由が本書を読んで初めて判った気がします。

あまりもの/黄昏/不滅/ネブラスカの姫君/市場の約束/息子/縁組/死を正しく語るには/柿たち/千年の祈り

     



新潮クレスト・ブックス

  

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