リング・ラードナー作品のページ


Ring Lardner  1885-1933 アメリカの風刺作家。アーマー工芸大学中退後、1919年まで新聞記者としてスポーツ欄を担当。この間1914年に週刊サタデー・イヴニング・ポスト誌に手紙形式のユーモラスな野球の連載小説(「ユー・ノー・ミー、アル=ある二流選手の手紙」)を掲載したところ、一躍評判となる。単なるユーモア作家ではなく、アメリカ有数の風刺作家と称され、「アメリカのスイフト」「マーク・トウェインにつぐアメリカ的作家」として高く評価されている。

 


   

●「微笑がいっぱい」●  ★★★
 
原題:THERE ARE SMILES




1970年08月
新潮社刊
 
1993年8月復刊
現在絶版

 

1993/10/31
2001/05/0
3

 


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ラードナーというのは、一度読んだだけで愛着を覚えてしまう作家です。単純明快なストーリィ、さりげない語り口。そして、ユーモア、風刺、哀感、どれをとっても一級の作家です。

ラードナーは、元々プロ野球を題材とした小説を書いてデビューした作家ですが、その為もあってかその作品には野球ものが多く、秀逸なものが目立ちます。
本書中では「弁解屋アイク(アリバイ・アイク)」「当り屋」「ハリー・ケーン」が野球もの。いずれもとても愉快な小説ですが、中でも「弁解屋アイク」は傑作中の傑作! 失敗した時だけでなく、大活躍した時でも弁解せずにはいられないという野球選手の話は、一度読んだらとても忘れることなどできない作品です。

アメリカ文学で短篇小説の名手と言うと、O・ヘンリの名が思い浮かびます。O・ヘンリの作品は、日常生活における喜怒哀楽をユーモアとペーソスで語ったところに素晴らしさがありますが、ラードナーはそれに強烈な風刺を加え、さらに野球等とてもアメリカ的な面を描いているところに、大きな魅力があります。その作品は、若い頃のヘミングウェイの「ボクサー」等作品に影響を与えたと言いますが、「チャンピオン」を読むとそれは充分納得できること。

ラードナー作品は決して滑稽譚ばかりではありません。スポーツ選手を英雄視するマスコミの風潮を風刺した「チャンピオン」があると思えば、礼儀正しい生活を尊重する彼の考え方を表した「古風なクリスマス」のような作品もあります。
しかし、ラードナーの本質は「この話もう聞かせたかね」「保養旅行」のような、日常的な風刺譚にあると思います。

微笑がいっぱい/メイズヴィルの吟遊詩人/弁解屋アイク/チャンピオン/当り屋/ハリー・ケーン/この話もう聞かせたかね/保養旅行/古風なクリスマス

      


ラードナーを初めて読んだのは、1979年に「アリバイ・アイク」が新潮文庫化された時でした。その面白さに興奮し、単行本の「微笑がいっぱい」「息がつまりそう」を買って読みました。その後3冊とも絶版となり、1993年に「微笑がいっぱい」のみ復刊されました。しかし、それも今は絶版となったようです。アメリカを代表する作家の1人だけに、ファンとしてはとても寂しい限りです。なお、現在では、福武文庫にて「ラードナー傑作短篇集」が刊行されているようです。

  


   

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