クリスティナ・ベイカー・クライン作品のページ


Christina Baker Kline  小説家・ノンフィクション作家・編集者。イングランド、テネシー州、メイン州で子供時代を送り、その後はミネソタ州、ノースダコタ州に居住。イェール大学、ケンブリッジ大学を卒業し、ヴァージニア大学で小説創作コースの特別研究員を務め、フォーダム大学やイェール大学等で創作や文学を教える。

 


             

「孤児列車」 ★★★
 原題:"Orphan Train"      
訳:田栗美奈子


孤児列車

2013年発表

2015年03月
作品社刊
(2400円+税)

 


2015/05/22

 


amazon.co.jp

“孤児列車”という言葉にギョッとしますが、実際に19世紀後半から20世紀初頭にかけて米国で行われていた慈善事業(?)なのだそうです。
身寄りのない子どもたちが列車に乗せられ、東海岸の都市から中西部の農村へ。子供の引き取り手、親代わりを探すためという建前ですが、実際には賃金のいらない働き手として引き取られたケースが多かったようです。到着した駅で大勢の大人たちの視線にさらされ、物色するかのように選ばれる。選ばれたにしろ、選ばれなかったにしろ、その時の子供たちの気持ちを思うと、心が痛みます。

ストーリィは、9年間で10軒もの里親にたらい回しされた
モリー17歳が、本を盗もうとした罪で社会奉仕を命じられ、1人暮らしの老女=ヴィヴィアン・ディリー91歳の元に通い始めるようになったところから始まります。
奉仕内容はヴィヴィアンが部屋を片付ける手伝いというものでしたが、彼女はやがてモリーに、自分が孤児列車に乗り込んだ時からの反省を語りはじめます。
同じ孤児として、似たような辛い体験を重ねてきたヴィヴィアンとモリーは、91歳と17歳という年齢差を超えて、信頼と友情で結ばれるようになります。その結果は、モリーだけでなくヴィヴィアンにも思いがけない未来を開くことになる・・・・。

まずヴィヴィアン、即ち本来名=
ニーヴが放り込まれた状況の過酷さに、胸を痛めずにはいられません。同時に、そのニーヴという少女の精神的な強さに胸を打たれずにはいられません。
引き取り手の女性から勝手に名前を変えられても、これからその名前で自分は生きていくんだと、少しも動じません。むしろ困難を乗り越えて行こうとする意志の強さに尊敬の念を抱く程です。
まさに不撓不屈と言いたいような強さですが、人に頼るような生き方はしないというニーヴの確固とした考えは、現代にも通じることと思います。
最後は思いがけなくも、皆が幸せを感じるような、爽やかな感動が読み手の胸を満たします。
本作品は、是非お薦めしたい、傑作です。

※なお、本書を読みながら
アン・シャーリーを思い出していました。ただし、モンゴメリ「赤毛のアンではなく、その前日譚であるバッジ・ウィルソン「こんにちはアンの方。似ているところもありますが、本作品の方がリアルな現実を味わわせてくれるのは勿論のことです。      

    


     

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