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1.遁走状態 2.ウインドアイ |
1. | |
「遁走状態」 ★★ |
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2014/03/31
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うーん、率直に言って本作品の内容を紹介するのはかなり難しいです。 自分で無理に捻り出すより出版社の紹介文を引用した方が良いと思いますので、以下の通り。 「私は気づけばもう私でなく、日常は彼方に遁走する」「奇想天外なのにどこまでも醒め、滑稽でいながら切実な恐怖に満ちた、19の物語」 各篇に序盤などなくいきなり始まり、そしてどんな状況に主人公がいるのか皆目判らず。しかも客観的な説明は無縁にして、全て主人公の目から語られるのですから、いつのまにか読み手も主人公に同化させられてしまい、途方に暮れるのは主人公だけでなく読者も同様なのです。 明るい話や希望が感じられるような要素は何処にも無く、どれも陰翳濃く、むしろブラックな物語ばかりなのです。 と言ってホラー小説でも幻想小説でもない、あくまで普通の小説である筈なのに、どこまでも途方に暮れるばかり。 でもどこか奇妙なユーモアが漂っているように感じられ、それ故に本短篇集に惹きつけられるのです。 19篇の中で文句なく面白かったのは「マダー・タング」。 「供述書」は絶句する様なストーリィ。こんな作品を書いていたらモルモン教から破門されるのも当然でしょう。 「見えない箱」は幻想かもしれませんけれど、実にリアル。 「助けになる」はブラック・ユーモアか。 「父のいない暮らし」はもう、何と言ったらよいのか。 「アルフォンス・カイラーズ」および表題作「遁走状態」は、まるで短篇という枠をはみ出すような篇で読み応え有り。 先月読んだ「もう一度」は吃驚な作品でしたが、本書はそれと違う意味で、稀有な短篇集と言うべき一冊。是非お試しあれ。 年下/追われて/マダー・タング/供述書/脱線を伴った欲望/怖れ 絵:ザック・サリー/テントのなかの姉妹/さまよう/温室で/九十に九十/見えない箱/第三の要素/チロルのバウアー/助けになる/父のいない暮らし/アルフォンス・カイラーズ/遁走状態/都市のトラウブ/裁定者 |
2. | |
「ウインドアイ」 ★☆ |
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いつも一緒にいた妹が、ある時を境に姿を消してしまう。しかし、誰に聞いても妹など元々存在していないと否定されるばかり。確かな実像をもって記憶に残っている妹、本当に存在していたのだろうか胸の内に疑いが広がる。 表題作であり冒頭の篇である「ウインドアイ」は、上記のようなストーリィ。 不穏さと不安定さ、作品によってはさらに不気味さも加わる、という雰囲気に満ちた短編集、25篇。 「ウインドアイ」は割と判り易かったのですが、読み進むに従い判り難さが増していく印象。エヴンソン作品に対する評価はかなり高いようなのですが、掴みどころが難しく、ストーリィを理解しにくいことといったらこれ以上ない、というくらい。 一篇、一篇、時間を空けて読むのが一番良い読書法なのかもしれませんが、図書館から借りて読んでいるという立場としてはそういう訳にもいかず。 結局、多少無理やり気味にと見通したという次第。 それでも、本書が備える不穏さ、不安定さ、不気味さは決しておどろおどろしいものではなく、むしろカラッとしたもの。ある意味、ストーリィの中にしっかり定着しているという風。そこが不思議ではあります。 そうした中、本書中で忘れ難く印象に残ったのは、「ウインドアイ」「ダップルグリム」「不在の目」「タパデーラ」「グロットー」という5篇。 ウインドアイ/二番目の少年/過程/人間の声の歴史/ダップルグリム/死の天使/陰気な鏡/無数/モルダウ事件/スレイデン・スーツ/ハーロックの法則/食い違い/知/赤ん坊か人形か/トンネル/獣の南/不在の目/ボン・スコット-合唱団の日々/タパデーラ/もうひとつの耳/彼ら/酸素規約/溺死親和性種/グロットー/アンスカン・ハウス |