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「もう一度」 ★★ |
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2014/03/04
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事故による昏睡から目覚めた主人公、その事故についての記憶を一切失っていたにもかかわらず、その事故に関わることについて黙秘を守るという見返りに
850万ポンドもの大金を手に入れます。 しかし、かえってその経緯に現実感を持てない主人公、あろうことか入手した大金を惜しげもなく使って事故を再演し、自分が納得できるリアリティを手に入れようとする・・・・というストーリィ。 およそ考えられない謎めいた示談に始まり、およそ考えられない行動をとり始める主人公。 現実の事件を微細にわたって再現しようと、オンボロ建物まで買い取り、再演者たちを雇ってまで事実を再現しようとする主人公の行動は、頁を繰るに連れどんどんエスカレートしていきます。 そこにあるのはまるで狂気としか言いようのない固執、妄想、執念、エトセトラ。それは怒涛のようにエネルギーを高めていき、読み手まで巻き込んでしまいます。そしておそらくは、主人公自身までも。 その行き着いた果てと言えば、あぁ!何と・・・・。 本作品を一言で表せば、驚くべき、そして狂気のようなエネルギーを充満させた長編小説、と言うに尽きます。 ですから、本ストーリィを丹念に読む必要はないのではないか。本作品のもつエネルギーに、ただただ、引き摺られて読み進んでいけばよいのではないか、そう感じます。 |