●｢チョコレート工場の秘密−ロアルド・ダール コレクション２−｣●　★★
　原題："Charlie and the Chocolate Factory" 　　　　訳：柳瀬尚紀

2005年04月
評論社刊
(1200円＋税)

2011/02/05

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とても貧乏な家の少年チャーリー。チョコレートが大好きなものの、チョコレートを食べられるのは年に一度の誕生日、プレゼントとしてもらった時だけ。
ところがチャーリーの町には、世界一のチョコレート工場があるという皮肉な巡り合わせ。
その経営者であるウィリー・ワンカ氏が、突然に発表。未だかつて誰も入ったことのないその工場の中に、５人の子供たちとそのつきそいの大人を招待すると。
招待されるのは、購入したワンカのチョコの中から、５枚の黄金札を引き当てた者だけ。
そして何とチャーリー、幸運にも黄金札を引き当てますが、さて、巨大なチョコレート工場に足を踏み入れたチャーリーたちが発見、そして体験したこととは・・・・。

訳者である柳瀬さんの本を読んだことが、本書を読むきっかけ。ジョニー・ディップ主演による映画化を以前見たのですが、その時は何だかよく判らないまま終わってしまったなぁというのが、印象。
改めて読むと、映画を観る前に本書を読んでストーリィを知っておけば良かった、と思います。そうすれば、きっともっと映画を楽しめたことでしょう。
ファンタジー映画のように見えますが（そうであることは否定できませんが）、実はわがまま、自分勝手な子供、それを許す親たちへの警告を多分に含んでいる、ということが分かります。
その意味で、ウンパッパ・ルンパッパ人たちが大勢で歌う、歌の文句がそのままズバリで、痛快。
残念なことは、主人公チャーリーが、積極的にワンカのお眼鏡に適ったのではなく、消去法で残っただけ、ということ。

ともあれ、奇抜で楽しい発想は、子供時代に読んだらきっと大喜びしていたのではないかと思います。

「あなたに似た人１」　★★☆
　原題："Roald Dahl's Short Stories Volume1" 　　　　訳：田口俊樹

2013/06/18

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ロアルド・ダール短篇集の新訳版、２巻に分冊しての第一集、11篇収録です。
ダールは“短篇の名手”と評されているようですが、本当に上手い！
冒頭の「味」「おとなしい凶器」という２篇を読んだだけですぐ虜になりました。
最後に予想もつかない結末へと転がしていく辺りが、絶妙の上手さなのです。あっさりと読み終えてしまいそうになるところ、よく咀嚼してみると、実はとても怖い話ばかりなのです。
驚愕する、あるいは怖気を覚えてしまう展開も、さらりと言いのけてしまう。その転がしの妙と、事実と語りのギャップの大きさが、ダール短篇集の底知れない魅力です。

「味」、ワインの銘柄当てを巡って賭けをする話なのですが、途中から身体の底からゾクゾクするようなスリリングさ、それなのにそれを一気に凍結させてしまう人物の登場が凄い。
「おとなしい凶器」は有名なミステリ風の一篇でしょう。以前何かのアンソロジーで読んだ気がします。
「プールでひと泳ぎ」、何とまぁ、主人公はいったい・・・？

そして最後の一行あるいは数行が凄い、もう絶句する他ないという篇は、「南から来た男」「皮膚」「首」の３篇。

どの篇も一癖二癖、小憎たらしい程上手い！　結末が驚きという短篇小説の好きな方には、是非お薦め！

味／おとなしい凶器／南から来た男／兵士／わが愛しき妻、可愛い人よ／プールでひと泳ぎ／ギャロッピング・フォックスリー／皮膚／毒／願い／首