島根県の山奥・美郷町にある邑智(おおち)小学校。
本屋さんが近くにないこの町の子供たちが頼りにするのは、児童書をいっぱに乗せた車を駆り、毎日島根県の山間部から沿岸部まで走り回っている「子どもの本屋さん」=松本栄野さん。
その松本さんが人に会うごとに勧めていたのが、「チョコレート工場の秘密」を含む≪ロアルド・ダール コレクション≫だったそうです。
そんな中、邑智小学校から相談を受けた松本さんが提案したのは、上記シリーズの訳者である柳瀬尚紀さんを呼んで、教室で特別授業をしたらどうか、というものだったそうです。
松本さん経由で申し出を受けた柳瀬さんが快諾し、2回に亘って行われた邑智小学校での特別授業、その前後のことを書き記したのが本書、という次第。
山間地の小学校ということで、生徒数は16人。
そこで柳瀬さんは、日本語の面白さについて、実証的に話を繰り広げます。それに対する子供たちの反応が良い。
柳瀬さんと子供たちの間で、言葉がきちんと通じ合っている、そのことが素晴らしいように感じられます。
子供たちに興味をもたせ、子供たちは関心を持ち、学ぶ姿勢を高めていく。教え、学ぶことの原点がそこにあるように感じられます。
私が子供の頃、本は貴重でした。だからこそ、本を大切にして、本に没頭したように思います。
物が有り過ぎると、子供たちの関心度も低下してしまうのでしょう。その点、邑智小学校六年一組の16人の感度の良さは強く印象に残ります。
本書での主役は、邑智小学校6年の生徒たち、16人です。
「子どもの本屋さん」に誘われて/みんな日本語という世界の住人−第一回特別授業−/六年一組十六名からの手紙/邑智小学校は開校七年目/最大の奇跡は言語である−第二回特別授業−/子供たちの創作/空想授業:邑智中学校一年生に向けて
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