アントン・パヴロヴィッチ・チェーホフ作品のページ


Anton Pavlovich Chekhov 1860〜1904 ロシア文学を代表する作家の一人。ウクライナの商人の息子に生まれ、モスクワ大学医学部在学中に家族を養う為、チェホンテ(「ドン・キホーテ」のもじり)という筆名にてユーモア短篇を雑誌や新聞紙上に発表し始める。作品には短篇小説・戯曲が多く、戯曲作品としては「かもめ」(1896)、「ワーニャ伯父さん」(1897)、「三人姉妹」(1901)、「桜の園」(1904)が有名。

 


 

●「ワーニャおじさん−四幕の田園生活劇−」● ★★   訳:小野理子




1897年発表

2001年9月
岩波文庫刊

  

2001/11/09

チェーホフの代表的な戯曲作品のひとつ。副題に「田園生活劇」とある通り、地方における地主階級の生活の実態を描いた作品です。
この作品の主人公は誰なのか、それは何故なのか、そして何が主題なのか。
その辺りがつかめないと、この作品を読み通したものの何となく茫々とした印象が残るだけ、ということになりかねないのではないかと思います。
私がチェーホフ作品を多く読んだのは25年も前のことですが、当時の読後感はかなりそうした印象に近いものがあって、繰り返し読むことも少なく、その為かあまり記憶に留まっていません。他のロシア作家たち、トルストイドストエフスキイプーシキンゴーゴリと比べ、強烈な印象が少ないという所為もあったからでしょう。

チェーホフを味わうには、ある程度解説の助けを借りることも必要でしょうし、繰り返し読むことも必要だという気がします。
本作品の舞台は、田園地方の地主の家庭。
亡母から引き継いで領地の所有者である娘ソーニャと領地管理を任されている伯父イワン・ペトローヴィチ(ワーニャ)の元に、退職教授であるソーニャの父親セレブリャコーフとその若い妻エレーナが訪れ、滞在しています。
父親が滞在して以来、地方的な秩序ある生活がすっかり狂わされている様子から語り出されます。
父親とその若い妻は典型的な都会生活者であり、華やかさと奔放さを持ち合わせ、この家庭内でもソーニャとワーニャに対して優位に立っています。しかし、生活の糧はもっぱらワーニャからの仕送りに頼っていることが次第に明らかになります。
でも、その地方における領地経営は楽しいものかというと、苦しく沈鬱なもので、長い日々を耐え続けていくほかない境遇であることが語り出されています。
本書は、ワーニャ、ソーニャを始めとし、エレーナ、医者アーストロフ、没落地主テレーギンと、運命の枠の中に縛られて生きていく人間の哀しい姿が描き出している作品です。

 

読書りすと(チェーホフ作品)

 


  

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