池波正太郎さんのご紹介

私のうろ覚えの記憶だけで書いていますので、一部不正確なところがあるかもしれません。ご容赦ください。

1.池波さんの略歴
 1923年東京・浅草生まれ。小学校卒業後株屋の店員となり、使い走りの傍ら、美味しいもの、映画等への趣味を肥やす。
 戦後、都庁勤務の傍ら、新国劇の脚本や小説を執筆。60年「錯乱」にて直木賞を受賞、「鬼平犯科帳」のシリーズもの、長篇「真田太平記」等により人気を博す。1990年没。
 
2.池波正太郎作品との出会い
 最初に読んだのは「剣客商売」でしたが、その後、あまり本を読まない父親から薦められて読んだ「鬼平犯科帳」で一気に夢中になりました。
 ちょうど社会人になって仕事も忙しくなり、本があまり読めない一方でストレスもそれなりに抱えるようになっていた頃。面白かった、とても楽しかったです。テンポが良くどんどん読めてしまうのもその魅力。一度読み始めたらもう止められず、夢中になってむさぼり読みました。
 池波さんを読む前は、司馬遼太郎に始まり、海音寺潮五郎、山本周五郎とか歴史小説が中心。とくに司馬作品は愛読しましたが、この頃には逆に飽いて来た観がありました。それだけに、池波作品の面白さは衝撃的、新鮮なもの。結果的には、後に夢中になった藤沢周平隆慶一郎と、時代小説への道を大きく広げる契機となったものです。

 代表的なシリーズもの“鬼平犯科帳”“剣客商売”の双方に共通して言えることですが、池波作品の他にない魅力は、次の点にあると言えます。
・悪人であっても善い振る舞いをすることがある、人間ってなぁ、面白い生きものよ、という考え方。したがって、ストーリィの面白さ=人々の姿、その生き方の様にあると言えます。
・作品中に登場する、食べることについての楽しみ。池波さんは幅広い食通であり、作品中には度々食べものに舌鼓を打つ場面が登場します。どんな料理か、具体的な作り方にも及んで描かれ、読み手も思わず舌なめずりする程です。
「鬼平料理帳」、「剣客商売包丁ごよみ」、「梅安料理ごよみ」という、そんな場面ばかりを編集した本が刊行されているくらいですから、その楽しさが判ろうというものです。
・シリーズものとなると、一度登場した人物が、また繰り返し登場する、そして小説の中の世界はどんどん限りなく広がっていく、というところが楽しい。その点、トルストイ「戦争と平和」のような大河小説さえも凌駕すると言って憚りありません。

 
3.TVドラマの楽しみ
 池波作品は度々TVドラマ化もされていて、それも楽しいものでした。

○「剣客商売」 
 最初に見たのは、昭和40年代。秋山小兵衛=山形勲、秋山大治郎=加藤剛、佐々木三冬=音無美紀子という配役でした。秋山小兵衛を演じるというのはかなり難しいことと思いますが、山形勲さんが良い味を出していました。
 近年では、秋山小兵衛=藤田まこと主演で放映されましたが、大治郎や小兵衛の若い妻となるはるがもの足りず、一度見ただけ。

○「鬼平犯科帳」
 シリーズもの3作の中では、唯一主人公が実在の人物。火付盗賊改め長官という長谷川平蔵について、池波さんは先代・松本幸四郎さんをイメージして書いたそうです。
 そのため、ドラマ「鬼平犯科帳」の平蔵といえば、まず先代・松本幸四郎。ただ、この頃はまだ“鬼平”を知らなかったため、見ていません。
 私が大好きで観ていたのは、先代幸四郎の次男である二代目・中村吉衛門主演の“鬼平”。懐の深さと立ち回りのキレが良く、絶品でした。平蔵の奥方・久栄=多岐川裕美、同心・うさぎの木村忠吾=尾身としのり、密偵・おまさ=梶芽衣子、密偵・粂八=蟹江敬三、相模の彦十=江戸屋猫八、等々の顔ぶれもぴったりで、見事な顔ぶれでした。
 「鬼平犯科帳」のTVドラマ化については、池波さんが、原作に忠実であること、原作以外のストーリィを勝手に作らないという条件付きだったそうです。そのため、作品の質が極めて高く、見応えのあるものになっていることが魅力です。
 ※萬屋錦之介主演の“鬼平”もありましたが、これはやたらと威張りくさった感じで、私としてはマイナス評価。

○「仕掛人・藤枝梅安」
 さすがに人を殺すストーリィともなると、そう簡単には書けないからと池波さん自身が言うとおり、3シリーズの中では一番作品数が少ない。
 このシリーズは、小説よりTVで観た方が先で、中学生の頃に放映された「必殺仕掛人」。原作とはちょっと違い、元締・音羽屋半右衛門=山村聡、仕掛人・梅安=緒形拳、同・西村左内=林与一、他に秋野太作、太田博之という面々が出演者でした。この作品からドラマ“必殺”シリーズが人気となり、必殺仕事人・中村主水=藤田まことさんが生まれたのですから、記念すべきドラマだったと言えます。
 後にTVドラマとなった時は、梅安=渡辺謙、彦=田村高広?という配役だったと思いますが、これは観ておらず。

 
4.食べ歩きの楽しみ
 池波さんの食べものエッセイを読むのも楽しい限りですが、その中で下記の店、メニューは、私も大好きなところです。

 ・「煉瓦亭」のポークカツレツ、ハヤシライス(銀座)
 ・「万惣」のホットケーキ(神田)
 ・「竹むら」の粟ぜんざい(神田)

 


 

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