その9 名水点てで思うおいしいお茶とは

 今回の稽古の点前は名水点。手桶の水指には注連縄が張ってある。名水ゆえ、茶を点てる前に客から水を所望する。水は濃茶の様に連客で廻し飲みする。

 こういうお点前に限らず、水には最大限気を使うべきと思う。お茶を頂く時は、神経が集中しているせいか、味覚も研ぎ澄まされているような気がする。お茶の味だけでなく水そのもののうまい、まずいもよく分かる。どんなに立派な道具を使い、素晴らしいお点前で合っても、肝心の水が水道水そのままではいただけない。

 利休の言葉にあるように、茶の湯の本随がただ、湯を沸かし茶を点て飲むばかりであるからこそ、おいしいお茶を点てるということが最大の目的でなければならない。そのためにはおいしいお茶をどうすれば点てられるか、各自研究が必要だ。抹茶と水の相性、お湯の温度、お茶の濃度、量など、色々と試してみるべきだと思う。そういう事を心がける茶人って、世間には果たしてどのくらい居るのだろうか。いわゆる茶道人口の増加の一方で、茶の湯の本筋からますます離れていく事を憂うのは古人ばかりではないが、今を生きる我々はそれだけではいけない。行動が必要である。

 

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