その15 茶を挽く
口切りの茶事が催され、その一端を担った。”口切り”とはその年に摘んだ茶を茶壺に詰め半年ほど寝かせておき、11月の開炉に合わせその封を切り茶を点てるものである。懐石を担当するなど裏方に終始したため、肝心の口切りの儀式を見ることは出来なかったが、後日茶を挽いて飲む機会を得られた。
茶壺には袋に詰めた濃茶が薄茶の詰め茶と共に入れられている。実際に挽いてみると、さすがに良い香味が立ち上る。薄茶を挽いたのだが、市販のものより濃い色をしている。点てて見ると、なかなかうまく、濃茶に練ってみても悪くない。しかしながら、挽けムラがあり、舌触りが良くない。市販の抹茶も勿論、臼で挽いているはずだが、歯の細かさや挽く速度などでこのような違いが出るのだろうか。だが、利休の頃の技術を考えてみれば、このような茶を飲んでいたのかもしれない。ちなみに、茶は裏千家流のこんもりとした泡は立たず、表流の風情である。今となれば点前の差異として見なされるのみだが、表流の茶こそが利休の茶の姿を伝えているのかもしれない。
○茶壺と茶入日記(茶の種類と摘んだ日付、茶師の名が記されている 末客を”お詰め”と称するのも茶師がその役を務めた事に由来する)
○濃茶(通常10匁(37.5g)ずつ袋詰めにされる)
○碾茶(てんちゃ)
○茶臼(反時計回りに回す)
○挽いた茶
○茶臼の歯
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