もちろん、父が殺されたという悲しみに浸る間も無しに、その後任として和平を進めるという重責に耐えることは、同胞の死の悲しみには疎いクリンゴン人である彼女にとっても、その精神的苦痛は小さくはなかったはずである。その際、彼女の感情のはけ口となったのは、ゴルコン暗殺容疑で逮捕した宇宙艦隊提督ジェームズ・T・カークと医師レナード・マッコイの二名であった。彼女は、和平はなんとしてでも成功させる、と同時に父の仇であるカークへの復讐も必ず果たすと誓うのである。彼女にとっては、どちらも尊敬すべき父への孝行なのであった。カークとマッコイの二人はクリンゴンの法律で裁かれ、有罪となり悪名高き収容所ルラ・ペンテへ送られるが、そこを脱出し、キトマーで行なわれた平和会議での惑星連邦大統領の暗殺を未然に防ぎ、彼女の信頼を得ることになる。
このキトマー平和会議は、約70年におよぶ両勢力の対立に終止符を打つ歴史的な出来事となる。
西暦2293年、惑星連邦との和平交渉に向かうゴルコン宰相に首席補佐官として同行。しかし、その後に訪れる平和は、戦闘種族クリンゴンにとっては退屈な好まざる状況であると感じ、これを阻止するために、宇宙艦隊のカートライト大佐、ロミュラン大使ナンクラス等と結託し、ゴルコン暗殺を指揮する。そして、カーク提督に暗殺犯の濡れ衣を着せ、その裁判では検察官を務め、ルラ・ペンテ収容所へと送る。その後、平和会議の開催場のあるロミュラン国境近くの惑星キトマー上空で、ルラ・ペンテを脱獄したカークと交戦し、乗っていたバード・オブ・プレイごと爆死する。
教養があり、特に地球の文学に対して造詣が深かった様で、ことあるごとにそれらから引用していた。特にシェークスピアが好きだった様で、なかでもハムレットの第3幕第1場のto be, or not to be...(taH pagh taHbe')はお気に入りの文句であった。彼の最後の言葉も英語(連邦標準語)によるこれであった。
彼は、かねてより惑星連邦との共存を考えていた。そして、西暦2293年のプラクシスの爆発事故でクリンゴンの祖国(Klingon Homeworld tlhIngan juHqo')が危機に瀕したのをきっかけとして、特命外交官スポックを通じて惑星連邦に対して和平を持ちかける。それまでにも両国間の和平会談は数回にわたって行なわれていたが、クリンゴン側代表団が強行派の軍部関係者で構成されていた為、いずれも決裂に終わっていた。オーガニア平和条約は唯一の成功例ではあるが、第三者であるオーガニア人によって強制的に取り交わされたものであるという意識がクリンゴンと連邦の双方に存在し、またその後のオーガニア人の沈黙も手伝って、両国間の平和は乱れがちであり、常に小さな小競り合いが続いていた。
今回の和平会談では、クリンゴン側に種族存亡の危機という大問題が存在していた為、急速に和平に向かうであろうと予測されたが、理由は様々であれそれを望まぬ者も多かった。果たして、和平会談の為に地球へ向かう航宙戦艦クロノス1号の船内で、暗殺者によりフェイザーで胸を打抜かれ、宇宙艦隊医師レナード・マッコイの必死の手当も間に合わず息絶える。
その後の遺志は、娘のアゼトバーによって引き継がれ、キトマー平和会議として実ることになる。
ゴルコン暗殺事件のクリンゴン側首謀者であるチャン将軍に付き従う。ゴルコン暗殺後には、後任のアゼトバーに対して「奴らが分け与えようとしているものすべてを、力ずくで手に入れることが出来ます。」と言って、彼女に開戦を進言する。惑星キトマー軌道上で新型バード・オブ・プレイ、*ダクロン号を連邦宇宙艦エンタープライズ号とヒカル・スールー船長指揮下のU.S.S. エクセルシオール号に撃墜され、搭乗していたチャン将軍共々爆死する。