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「無理だよ。マグナムは、そう簡単に懐かない」
食事が済んでも、マグナムとソニックは、洞窟に戻ることなくレツの家の中にまで着いて来た。
自分の頭に乗っかっているソニックはいいとして、ずっと、レツに縋り付いているマグナムに手を伸ばそうとすれば、レツに苦笑されてしまう。
しかも、マグナムに差し出した手を、自分の頭の上に乗っかっていたソニックが遮るように噛み付く。
「痛くはねぇけど、マグナムには、手を出すなって事かぁ?」
自分の腕に噛み付いてきたドラゴンに溜息をついて、ゴーはその手を引っ込めた。
「マグナムは臆病だからね、ソニックが庇うのは当たり前だよ。ソニック、おいで・・・・・・」
レツに呼ばれて、ゴーの腕に噛み付いていたソニックが嬉しそうにレツの肩に乗る。
「それに、この2匹は兄弟なんだ。ソニックが兄で、マグナムが弟」
嬉しそうに自分の頬に擦り寄ってくるソニックの喉を撫でてやれば、可愛い声で鳴く。
ソニックは、翼を広げて嬉しさを体全体で表した。
「・・・・・んじゃ、一つだけ聞いてもいいか?」
そんな姿を横目で見ながら、ゴーは疑問に思った事を訊ねる決心で口を開く。
「いいけど・・・・・・?」
改まって聞かれた事に、不思議そうに首を傾げる。
「ソニックとマグナムって、まだ大きくなるのか?」
だが、真剣な顔で尋ねられた事に、レツは一瞬きょとんとした表情を見せて苦笑をこぼす。
「・・・・・・何かと思えば、そんな事・・・ソニックとマグナムはこれで成体。だから、これ以上大きくなる事はないよ」
ゴーが疑問に思うのも仕方ないだろう。目の前に居るドラゴンの姿は、わずか30フュンド(約30sm)あるかどうかといった所なのだ。
「んじゃ、あの凶暴ドラゴンの真相は?」
レツの言葉に、ゴーが村の噂の解明を図ろうとするが、自分の言った言葉に小さく溜息を返される。
「・・・・・・村では、そう言われてるんだ・・・・・・でも、ソニックたちは草食で、人なんて襲わないよ」
少しだけ寂しそうに言われて、ゴーは自分の失態に漸やく気が付く。
レツは、ドラゴンが悪く言われるのを、良く思っていないのだ。
もっとも、自分が可愛がっているものを悪く言われて、気分のいいヤツは居ないだろうが・・・・・・。
「わりぃ・・・・・・そう言う意味じゃなくって・・・・・・」
表情を曇らせた相手に、どう言い訳し様か考えて、ゴーは素直に頭を下げた。
「いいよ・・・・知ってる事だから・・・・・・それに、この森に入る事は本当に危険だから、そんな噂でも流れてくれてる方が安全だしね」
「この森が、危険?」
苦笑をこぼしながら言われた事に、ゴーは正直に首を傾げる。
確かに、魔物の巣窟であるこの森は、一般の人間にとっては危険だろう事は、認めよう。
だが、レツがこぼしたそれは、明らかにそれ以外の事を指しているようで・・・・・・。
「・・・・・・ま、魔物の巣窟なんだから、危険に決まってるよ・・・・・・入って来るのは、君みたいなバカくらいだろうね」
だが、それは直ぐに慌てたように付け足された言葉で返される。
それが、いかにも過ぎて、余計に怪しい。
「・・・・・・そう言えば俺、もう一つ疑問があるんだよなぁ・・・・・・」
「えっ?」
自分の言葉に、敏感に反応して、レツが瞳を見開いてゴーを見詰める。
そんな相手の様子を横目に、ゴーは小さく息を吐き出した。
『隠し事あるのバレバだよなぁ・・・・・・』
素直な反応を見せるレツに苦笑を零しながら、ゴーは出されていたお茶を飲む。
「ぎ、疑問って?」
ぎこちない表情を浮かべながら、レツが先を促す。
促された事で、ゴーは仕方ないとばかりに口を開いた。
「・・・・魔物って、なんでこの森から出られないんだ?」
そして、ずっと疑問に思っていた事を口にする。
普通なら、魔物が村を襲っても不思議はないのだ。
それなのに、魔物達は森の中から出る事はない。
いや、正直に言えば、出られないのだ。
森の出入り口になると、魔物達は何かに邪魔されるように森の外へは出られない。
それは、昨日自分が目の前で確認した事。
魔物達は、何かの力の為にこの森に閉じ込められているという事に・・・・・・。
だが、自分には、その何かが分からなかった。
それを、目の前に居る人物は知っているのだと自分の直感が告げている。
「そ、そうなの。ボクは、そう言う事、知らないから・・・・・・ボク自身、この森を出る事はないからね」
フッと自分から目を逸らしながら、レツが返した言葉に、ゴーはもう一度溜息をついた。
正直に話すとは思っていなかったが、こうもあからさまだと知っていると言っているようなものだであろう。
「・・・・・・本当、素直じゃねぇよなぁ・・・・・・」
「えっ?」
ポツリと呆れたように呟いて溜息をつけば、聞き逃したのであろうレツが不思議そうに首を傾げる。
「・・・・・・知ってるって、態度で言ってるるぜ、レツさん」
苦笑を零しながら、自分を見詰めてくる相手の視線を真っ直ぐに受け止めて返せば、慌てて視線をそらされてしまう。
そんなレツを前にして、一瞬沈黙が続くがそれは1匹の存在によって見事なまでに崩された。
「いってぇ〜!!」
突然の大声に、レツも慌ててそちらに顔を向けた瞬間、驚いて瞳を見開いてしまう。
ゴーの腕に噛み付いているのは間違いなくマグナムで、レツを苛めていると思ったのだろう、小さく震えながらも、しっかりとゴーの腕に噛み付いている。
「マ、マグナム・・・・・・・」
ソニックならまだしも、まさかマグナムがゴーに噛み付くとは思ってなかっただけに、レツは驚きを隠せない。
「俺は、苛めてねぇよ・・・・・・・たく、大したナイトだ・・・・・・」
慌ててマグナムを腕から離すと、腕を摩りながらゴーが苦笑を零す。
言われた事に、自分の腕の中でまだ小さく震えているマグナムに視線を移した。
臆病なマグナムが自分の為にゴーの腕に噛み付いた事が、嬉しくってぎゅっと抱き締める。
「これで、俺は完全に嫌われちまったかな・・・・・」
レツに抱き締められて、安心したように甘えた声を出しているマグナムを見詰めながら、小さく息を吐き出す。
そんな自分の頭に、またソニックが乗っかってきた。
「お前には、気に入られてるみたいだけどなぁ・・・・・・悪かったよ、お前達のご主人様を追い詰めるような事しちまって・・・・・・でも、虐めてた訳じゃねぇよ。俺も、お前達のご主人様が好きだからだぜ・・・・・・」
自分の頭の上に居るドラゴンの頭を撫でながら、ゴーは苦笑を零す。
それに、『分かっている』とばかりの態度で、ソニックはその手を慰めるように舐めた。
「サンキュな、ソニック・・・・・・」
お礼の意味も込めて頭を撫でれば、嬉しそうな声を上げてその手に擦り寄ってくる。
そんな二人(?)のやり取りを目の前に、レツは一瞬困った表情を見せた。
何せ、目の前で告白されたようなものなのだから、顔が赤くなるのは止められない。
『スキって・・・・・・ボクの事?』
言われた事が信じられなくって、思わず頭の中で復唱すれば、更に顔が赤くなる。
「大丈夫か?なんか、顔が赤いけど・・・・・?」
「なっ!なんでもな・・・・・・!?」
心配そうに声を掛けられて、慌てて首を振った瞬間、はっとして顔を上げて外に視線を向けた。
それは、エーリも同じで、寝ていた体を起こすと警戒態勢を作っている。
「な、何だ?」
「マグナム、ソニック!お前達はこのままここに居るんだ。この中なら、結界が一番強い。エーリ、出るよ!」
バンッと大きく扉を開けて、レツとエーリが外に出て行く。
後に残されたゴーは訳が分からなくって、首を傾げた。
「おい、ソニック!一体、何が起こったんだ・・・・・・」
自分の頭の上に乗っかっているドラゴンに声を掛けても、返事など返るはずもないだろう。
そのまま不思議そうな瞳で見詰められるだけだった。
「まっ、何かが起きたってのは、二人の態度から予測できるよなぁ・・・・・それを確かめるにゃ、後を追いかけるのが一番!」
自分の言葉に納得して、置いておいた剣を装備する。
「んじゃまぁ、行くか・・・・・お前らは、ちゃんとここに居ろよ」
それだけを言い終えると、レツ達の後を追って家を飛び出す。
「何処だ?」
家を出たまでは全く問題はなかったのだが、既にレツ達の姿は無くゴーは思わず溜息をつく。
「さてどうしたものか・・・・・・」
その呟きと共に、盛大な爆発音。
「あそこか!!」
その爆発音は、意外に近い。
それが、レツの放った魔法だと考えるのが、一番妥当だといえるだろう。
そして、魔法を使わなきゃいけない状態にあると言う事は・・・・・・・。
「魔物って、事だろうなぁ・・・・・・」
昨日の様な敵が相手では、正直自分は足手纏いになるだろう。
だが、そんな敵が出るのが夜だけだと言う話が本当ならば、自分とて十分に役に立てるはずである。
「いっちょ、暴れますか・・・・」
ペロリと唇を舐めて、鞘から剣を抜く。
それと同時に聞こえてきた声に、ゴーはその足を速めた。
<清らかなる 風界の主達よ 我が声に答えよ!
汚れしモノに刃を向けよ 我 守護族のレツが願う!>
『真 空 刃!!』
風がうねりを上げて、敵に襲い掛かったのとゴーがその場に辿り着いたのは殆ど同時。
その時にはすでに、レツは最後の魔物を倒していて、ゴーの出番は全く無い。
「・・・・・俺の出番なしか・・・・・・出遅れたって、訳だなぁ・・・・・・」
レツの放った魔法で、最後の魔物が消えていく。
それを確認して、ゴーは盛大な溜息をついた。
エーリも何匹か魔物を倒したのだろう、銀色の毛並みには魔物の返り血が付いている。
「・・・・・・・エーリ、ご苦労様・・・・・・あの人は、無事?」
魔物の返り血を浴びているエーリの頭を撫でて、レツは心配そうにある一点に視線を向けた。
釣られてゴーもそちらに視線を向ければ、そこに倒れているのは・・・・・・。
「J!」
「えっ?!」
見慣れた金髪の髪と、その肌の黒さは見間違えるはずも無い自分の幼馴染である。
まさか、この魔物の巣窟である森に入ってくるなんて思っていなかっただけに、ゴーの驚きは尋常ではない。
「・・・・知り合い?」
「俺の幼馴染だ!剣なんて使えねぇし、そんなに体力ねぇから、来るなって言ったのに・・・・・・」
慌ててその傍に行くと、抱き上げようと手を延ばした瞬間、それはレツに遮られた。
「・・・・・動かさない方がいいよ・・・・・毒に犯されてる・・・動かすとそれだけ、毒の回りが速くなるからね・・・・・」
「毒?」
言われて驚いてJに視線を向けて、思わず首を傾げる。
見た目では、毒を受けているのかそんな事はわからない。
魔物の中には、確かに毒を持っているものが居るのだが、毒を受けているかどうかはその人物の表情を見れば、大概分かるはずである。
だが、今のJにはそんな要素は何一つ見受けられないのだ。
「・・・・・この傷、多分猛毒を持つヤツにやられてる・・・・ここまで来れたのも奇跡だと思うけど・・・・」
「猛毒って・・・あんた・・・・」
Jの腕の傷を見ながら、レツは小さく息を吐き出す。
そして、ゆっくりと空を見上げると小さく頷いた。
「少し待って・・・・・もう直ぐ風が通るから・・・・・」
「風?」
言われた意味が分からずに、ゴーは首を傾げる。
風とJの毒との結び付きが全く分からない。
そして、本当にJが毒を受けているのかどうかも分からないゴーはもう一度Jに視線を移した時、確かにJの受けている傷口が、腐りかけているのを見て、一瞬息を呑む。
「この傷・・・・・どうなってるんだ?」
先程までは、そんなに大した傷ではなかったのに、どんどんと傷口が広がっていくのが見ていて分かる。
「・・・・・・この辺に居る魔物の傷じゃない・・・・・この毒は、ボクにも浄化しきれない・・・・」
驚いたようにレツに視線を向ければ、小さく首を振って返されてしまう。
だが、直ぐにレツは視線を空へ向けると小さく呟く。
「・・・来る・・・・・・・」
レツの呟きを聞き逃したゴーが視線を向けた時、空から突然風が吹き荒れた。
<吹き抜ける風よ 我の声を聞け そして願いを聞き届けよ
聖界なる風の旅人よ 彼の者の毒を取り去り 運べ>
『浄 化 風!』
レツの言葉が終わるのと同時に、その突風が吹き抜けてJの体を包んでいく。
『・・・・・・有難う・・・願いを聞き入れてくれて・・・・・・』
不思議な言葉が耳に届くのと、一群の風が遠ざかって行くのは殆ど同時。
何が起こったのか分からないが、目の前のJの腕の傷が薄れているのだけは確認できた。
「・・・・・・な、何が起こったんだ?」
「・・・・もう大丈夫・・・・あの毒は、どんな薬草も効かない。だから、風に運ばせたんだ・・・・ゴー早く家に・・・・・傷はそれだけじゃない」
「あっ、ああ・・・・・・」
言われるままに、Jを抱え上げると家に急ぐ。
状況としては、やっぱり自分は役に立たなかったと言う事だけは、嫌でも理解できるだろう。
その事実に、溜息は止められない。
「大丈夫みたいだね・・・・」
傷の手当てを全て終えてから、レツは安心したように笑顔を見せた。
その言葉と同時に、後ろでずっと様子を見ていたゴーも思わず安堵の溜息をつく。
「サンキュー・・・あんたに医者みたいな事させちまって、悪かったな」
「別に、たいした事はしてないよ・・・・・それに、気になる事があるから、彼に事情を聞きたかったからね・・・・・・」
「気になる事?」
苦笑をこぼしながら言われた事に、思わず聞き返す。
それに、慌てて首を振られて返される。
「大した事じゃないよ・・・・・・それに、もしそうなってたとしたら・・・・・・・」
言いかけた事に、ハッとして慌てて口を閉じて、ゴーから視線を逸らす。
そんな態度に、不自然なものを感じながら、ゴーは首を傾げて見せる。
聞いたところで答えてくれないのは、身をもって理解してしまった。
しかし、その表情からそれが大事な事だと何かが直感で告げてくる。
「何か、思い当たる事があるんなら、俺にも教えてくれ・・・それに、Jが知ってるって事は、村の事なんだろう?」
「・・・・・・」
ゴーの質問に、レツは何も言わずに唇を噛む。
「あのJの傷、この辺に居る魔物の傷じゃないって言ってたよな?それって、Jに聞きたい事と関係してるんだろう?」
何も言わないレツに、ゴーが更に疑問を投げ掛ける。
そんなゴーの態度に、レツは小さく息を吐き出すと弱弱しく首を横に振って返す。
「・・・・・・違う・・・・だって、もしそうだとしたら、この人だって生きていられるはずが無い・・・・・・だから、ゴーには関係ない事・・・」
自分の考えを否定するように、レツが小さく呟いた言葉に、ゴーがムッとした表情を見せる。
「関係ならあるだろう!!あんた一人の問題じゃねぇんだぜ!」
大きな声でそう言えば、レツが首を振って返す。
「・・・・ボク一人の問題だよ・・・・・これは、守護族としての役割りだから・・・・・・・」
ゆっくりとか絵を上げて、真っ直ぐに自分を見詰めて言われたその言葉に、ゴーは一瞬言葉を失った。
そう言ったレツは、全てを諦めたような笑顔で、今にも消えてしまいそうに見えたから・・・・・・。
「・・・・・・ゴーくん・・・・・・」
何も言えず見詰め合っていた自分達の間に、突然弱弱しい声が掛けられて、ハッしたように二人は同時に声のした方に視線を向ける。
「J!」
ゴーが名前を呼んで、直ぐ傍に行けば、Jは少しパニック状態のままゴーの腕に縋りついた。
「・・・・・・ゴーくん・・・村が・・・村のみんなが・・・・・・」
「村がどうかしたのか?」
「魔物が、突然魔物が襲ってきて・・・・・僕達の村を・・・・・・」
震えながら、村の状態を話すJに、ゴーは信じられない気持ちを隠せない。
今まで一度だって、魔物が村を襲った事などないのだ。
そして、魔物が森から出られないという事を知ってしまったばかりなだけに、Jの言葉を直ぐには信じられないでいた。
「・・・・僕は、なんとか逃げ出したんだけど・・・・・みんな、魔物に襲われて・・・・・・」
ぐっとゴーの服を掴んだまま、Jが必死に状況を伝えようとするが、それは言葉にならないようで上手く説明出来ていない。
そんな二人を見詰めながら、今まで何も言わなかったレツが、漸く口を開く。
「・・・・・大丈夫・・・・落ち着いて、ゆっくりと息を吐いて・・・・・・・・今は、まだ休まないと・・・・傷に障るよ」
信じられない気持ちで、言葉を返さないゴーの代わりとばかりに、レツが静かな口調で声を掛ける。
そして、持ってきた薬湯をゆっくりとJに差し出した。
「村は、大丈夫だから・・・・・・心配しないで・・・・・ゴー、これを彼に飲ましてあげて・・・・・」
Jに差し出した薬湯をゴーに押し付けると、レツは優しく微笑むとそのまま部屋を出て行く。
その後姿を静かに見送ってから、Jが不思議そうに首を傾げた。
「・・・・・・ゴーくん・・・あの人は・・・?」
少しだけ落ち着いたように、自分に問い掛けられたその言葉で、ゴーは苦笑をこぼすと溜息をつく。
「・・・・・・俺の、初恋の相手・・・・・・」
「えっ?って、本当に居たの、幻の君!?」
ボソッとこぼした言葉に、Jが驚きの声を上げる。
小さい頃から聞かされていた、幻の相手。
自分の事を励ましてくれた人だと聞かされていたのだが、その姿をこうやって目の前で見られるとは思っていなかっただけに、Jの驚きは当然であろう。
「・・・・・幻の君って・・・・お前、そんな風に呼んでたのか?」
「だって、ゴーくん名前も分からないし、何処に居るのかも分からないって言ってたから・・・・・でも、ようやく会えたんだね」
「ああ・・・・・・ちなみに言うと、お前の命の恩人でもあるんだからな」
「僕の?そう言えば、傷が・・・・・・あんなに苦しかったのに・・・・・・・」
逃げる際に受けた傷。それは、本当に焼けるような痛みを自分に与えていたのに、今は全く感じられない。
「・・・・・J、そんな事はどうでもいい、一体村はどうなったんだ?」
「ゴーくん・・・・・・」
グッと自分の肩を強く捕まれて、真剣な瞳で問われた事に、Jは静かに瞳を伏せると言いにくそうに口を開いた。
「・・・・・・村は、村のみんなは、多分・・・・・・」
言い辛そうにそこで言葉を区切ると、Jは辛そうにグッとシーツを握り締める。
「ゴーくん、あいつ等は、あの祠から出て来たんだ!」
そして、バッと顔を上げると、真っ直ぐに自分を見詰めて言われた言葉に、ゴーは驚いて瞳を見開く。
村にある祠。
何の為に、そして誰が作ったのか分からないそれは、村の四方にあり、まるで村を何かから守る為に置かれて居るように思えたそれ。
そして、ゴーはその祠をこの森の中でも見付けた事を思い出した。
森の出入り口にそれぞれ置かれていたのは、確かに村に置かれているものと同じモノ。
「J・・・・・その祠は?」
「分からない・・・・でも、誰かがあの祠を壊してしまったのは確かなんだ・・・・・誰が何の為に壊したのかは分からないけど、その祠が壊れてしまった時、その中から見た事もない魔物が現れて・・・・・・そして・・・・・・」
「・・・・・分かった、それ以上は言うな・・・・・・J、これ飲めよ・・・・あいつが、薬湯だって言ってたからな・・・・・・」
「ゴーくん・・・・・・」
「お前だけでも、無事だった事、感謝しねぇとな・・・・・・」
Jに薬湯を渡しながら、笑顔を見せる。
そして、Jが薬湯を飲むのを見詰めながら、ゴーは密かに溜息をつく。
頭の中で、何かが警告を出しているのを感じながら・・・・・・・。
「・・・・寝ちまったか・・・・・・」
薬湯を飲み終えて直ぐに、Jが静かな寝息を立て始めた事に、ゴーは安堵の溜息をつく。
正直今は、どんな慰めの言葉も思い付かないのだ。
自分はその場に居なかったのだから、その時の状況など分かる筈もない。
しかも、正直言うと信じられないのである。
魔物が、いままで村を襲った事など一度もない。
それが、今になって襲ったと言う事を実際目の前で見ていない自分には信じられないのだ。
「・・・・・・祠・・・・それが、全ての鍵って訳だな・・・・・・」
目の前で眠っているJの姿を見詰めて、ゴーが静かに口を開く。
「そして、謎を知っているのは、あいつだけって事か・・・・・・」
呟いて、そのまま窓の外に視線を移す。
目の前に広がるのは、太陽の光を受けて輝いている湖。
それは、今のこの状況からは考えられないほど綺麗で、静かな光景。
そして、今感じている不安を、優しく見守ってくれるそんな景色であった。
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『3』終わりました。そして、やっぱり終わりませんでした。御免なさい(><)
でも、少しは話が進みましたでしょうか?
自分では、頑張ったつもりなんですが・・・・・・・急展開って言う言葉が正しい気もしますが、如何でしょう?
本当に、何時になったらゴーレツ話になるんでしょう。このまま終わる可能性が高いように思いますが、どうでしょうかねぇ・・・・・・xx
そして、ゴーに『兄貴』って呼ばせられない辛さが今更ですが出来ててしまいました。
その所為で、マグナムとソニックは兄弟です。<苦笑>
本当は、恋人同士でも良かったんですけどね。(笑)
ううっ〜、やっぱり、ゴーとレツは兄弟で居てもらいたいです。
はっ!まったく関係ない事を・・・・・・・xx
そ、そんな訳で、またしても続いてしまいました。本当に御免なさい。m(_ _)m
反省だけは何時もしてるんですけどね。<苦笑>
次こそは、終わりにしたいです。(ずっと言ってるような気がする・・・・・・xx
頑張りますので、宜しければお付き合いいただけると嬉しいです。(捨てられてそう・・・)
では、次は『4』でラストになりますように・・・・・xx
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