もしも、お前が欲しいと言ったら、どんな顔をするのだろう?
俺の事を軽蔑するだろうか?
だから、恐くって何も言えなかった。
それは、俺が本当に、お前を好きだから……。
だから、勇気を出して、本当の気持ちを伝えたい。
俺の、全てを知ってもらいたいから………。
見えない想い 12
出来あがった料理をテーブルに並べている中、玄関のドアが開く。
父親が帰ってきたと言う事に気が付いて、太一とヤマトは顔を見合わせた。
時計を見れば、既に8時半を過ぎている。
「……ただいま…」
疲れたよな声に、太一が慌てて頭を下げた。
「あっ!俺、その八神 太一です……えっと、ご迷惑掛けてしまってすみません……」
突然頭を下げられた事に、一瞬驚いたような表情をして太一を見詰めてから、父親は申し訳なさそうにしているその頭にポンッと手を乗せる。
「ああ、気にしなくっていいよ、太一くん。それに、君とは何度か会っているからね。知らない仲じゃないんだ、気にする事はないよ。記憶が無くなるなんて、大変な事なんだから、ここを自分の家だと思って遠慮なんてしなくってもいいぞ」
笑顔と共に言われたそれに、太一は困ったような表情を見せた。
「……本当に、すみません・……」
そして再度頭を下げる。
そんな太一を前に、父親は苦笑を零してしまう。
「そんなに畏まらなくてもいいよ……あっ!ヤマト、すまん。今は、着替えを取りに来ただけなんだ。飯を食ったら、また局の方に戻らないといかん」
そして、椅子に座るとヤマトの方に視線を向けて疲れたようにため息をついた。
そんな自分の父親の態度に苦笑を零しながら、ヤマトは父親の部屋へ準備をする為に移動しながら頷く。
「ああ、着替え準備しとけばいいんだな」
「すまんなぁ……」
疲れた様子の父親にため息をついて、笑いを零す。
「今更だ……太一、飯先に食ってていいぞ」
「あっ、えっと……分かった…」
食事の準備は既に出来ている状態なので、ヤマトの言葉に躊躇いながらも頷いてから、太一は慌てて茶碗にご飯を盛ると父親の前に差し出した。
「どうぞ……」
「ああ、有難う……鯖の味噌煮かぁ……ビールでも飲みたいメニューだね……」
テーブルの上に準備されている品を見詰めて、笑顔を見せる相手に、太一も思わず笑顔を見せる。
「…お仕事、大変なんですね……」
「ああ、編集作業におわれているからね……」
太一の質問に苦笑を零しながら呟いて、父親が箸に手を伸ばす。
「おじさん、駄目ですよ。手を洗わないと!」
だがその手を、太一の手が慌てて止めた。
そして、少しだけ怒ったような表情で父親の事を睨み付ける。
突然遮られた自分の行動と、自分を見詰めながら言われたそのセリフに、一瞬訳が分からずに驚いていた父親が、その意味を理解した時、耐え切れずに笑い出した。
「……そうだったね…そんな事を言われたのは、久し振りだよ、太一くん……分かった、手を洗えばいいんだね」
楽しそうに笑いながら椅子から立ち上げって、太一の言葉に従う様に洗面所に行く父親の姿を見送ってから、太一は自分がしてしまった事に、思わずため息をついてしまう。
しかし、間違った事はしていないと、自分を納得させてから、残っていた料理をテーブルの上に並べて、更にお茶を準備してから、ヤマトの分と自分の分のご飯をテーブルに置く、それと同時に父親が戻ってきた。
「…それじゃ改めて、いただきます……」
椅子に座ってぺこりと頭を下げるその姿に、思わず笑いを零しながら、太一も同じように椅子に座るとぺこりと頭を下げる。
「……この鯖の味噌煮は、ヤマトが作ったのかい?」
お茶碗を持って、箸をつけようとした瞬間に問われたその質問に、思わず太一が心配そうに父親を見た。
それは、自分が作ったモノだから、失敗してしまったのかという不安が募る。
「……美味しくありませんか?」
心配そうに自分を見詰めながら、問い掛けられたその言葉に、父親が笑顔を見せた。
「もしかして、太一くんが作ったのかい……大丈夫、美味しいよ。ヤマトはこう言う煮物系は、あんまり作らないから、珍しいと思ってね……でも、太一くん、料理上手だねぇ」
「親父が、不器用なだけだろう……ほら、着替えここにおいて置くからな」
呆れた様に呟いて、ヤマトが小さな鞄を床に置く。
突然会話に入ってきた相手に、二人が同時にヤマトを見てから、お互いの顔を見合わせて苦笑を零した。
「な、なんだ?」
その不二人の行動に、ヤマトが不思議そうに太一達の顔を交互に見詰める。
「何でもない。ほら、ヤマトもご飯食べようぜvv」
楽しそうに笑いながら、言われたその言葉に、納得できないという表情を浮かべながらも、素直に従ってしまう。
そんなヤマトを前に、父親はもう一度苦笑を零した。
「なんだよ、親父……」
「いや……俺は、太一くんみたいな息子が欲しかったなぁと思っただけだ……」
「なっ!!」
ポツリと零されたそれに、ヤマトの顔が真っ赤になる。
「そうですか?俺、きっといい息子になるとは思えないんですけど……」
しかし、不思議そうに赤くなっているヤマトを横目にしながら言われた太一の言葉に、父親は言われた事の意味が分からなくって、驚いた様に太一を見詰めた後、楽しそうに笑いだした。
「太一くんは、十分いい息子になると思うよ……これからも、ヤマトを宜しく頼む……」
目許に浮かんだ涙を拭いながら言われたその言葉に、太一が不思議そうな表情をしながらも頷いて返す。
その目の前の遣り取りを見詰めながら、ヤマトは盛大なため息をついた。
太一の母親だけではなく、自分の親にまで自分と太一との関係がバレてしまったことに、正直頭が痛い。
しかし、ここで反対されないのは、良い事なのかどうか疑問に思っても許されるだろうか?
しかも、どっちの親も協力的なだけに、不気味なのである。
「おっと、時間が無いな……それじゃ、太一くん、気を付けるんだよ」
「えっ?気を付けるって?」
食事を早く終わらせて、自分の肩にポンッと手を置いてから立ち上がり際に言われたその言葉に、太一が意味が分からなくって問い掛けた瞬間、笑顔だけが返された。
「それじゃ、行って来る…」
「あっ!仕事頑張ってください……」
「有難う。……ヤマト、俺が居ないからって、無理はさせるなよ」
「親父!!」
太一に笑顔を見せてから、ヤマトの耳元で言われたそのセリフは、勿論太一には聞こえない様に囁かれたモノである。
その言われた事に、ヤマトが真っ赤になって大声を上げるのを楽しそうに見詰めてから、父親は仕事のために家を後にした。
「たく……ふざけすぎだ……」
漸く静かになった部屋の中で、ヤマトが疲れたように頭を抱えているその姿に、太一は不思議そうな表情を見せる。
「なぁ、ヤマト、気を付けるって、何を気を付けるんだ?」
「はぁ?」
「だって、おじさんが、気を付けろって……」
意味が分からないその事を問い掛けてくる太一を前に、ヤマトは正直に頭を抱え込んだ。
そして、心の中で、父親の存在を恨んだのは、言うまでも無い事であろう。
その後も、熱心に自分に問い掛けて来る太一を納得させるのに、ヤマトが苦労したとかしなかったとか、それはここだけの話である。

はい、とうとう12まで行きましたね。このお話……xx
他にも書きたいのが一杯あるのに、この話が終わるまでは、何にも書けません。
続き物を増やして行くのが辛いと言う事を、別ページで知っているので、書くに書けない状態です。<苦笑>
しかも、考えているモノも続き物になりそうなので……xx
私って、続き物しか書けないのかもなぁ……xx(駄目過ぎる(><))
あっ!忘れるところでした。(大変済みません(><))
このお話の中に、予告した通り隠し小説をUPしております。ヒントは、このページの中!(それは、ヒントじゃないって…xx)
私、基本的に隠すの下手なので、↑のだけをヒントとさせてください。
それ以上書くと、隠している意味が無くなってしまいますので……。
そして、隠しなので、勿論少しヤバメ( 注)本当に少しだけですよ!)なので、苦手な方は気にせずに、
そのまま13がUPされるのを待って頂けると嬉しいです。
一様、隠しを読まなくっても、話が分かるようにしたいと思っていますから・・・・・・xx
その辺は、絶対と言えない自分の未熟さを実感してしまいますが…xx
さて、それでは、『見えない想い』も、そろそろ終われそうな感じです。
上手く行ければ、13で終わりますので、頑張りますね。そして、新しい話を書くぞ!!
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