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耳元で、囁き掛けて来る声に、小さく体が震えてしまうのを止められない。
こうなってしまった原因を作ったのが、自分であると分かっていても、後悔してしまうのは、仕方ない事だろう。
勿論、イヤだと想うからの後悔ではない。
寧ろ、自分はそうなる事を望んでいたと分かるから……。
「……本当に、いいんだな?」
心配そうな声がもう一度だけ確かめるように囁かれたそれに、はっきりと頷いて返す。
こうなった原因を作ったのは、自分だから……。
ヤマトの父親が残した言葉が気になって、ヤマトを問い詰めた結果、何に対して『気を付けろ』と言ったのかを実践で教えてやと言われたのは、ほんの数分前の事。
食事の後片付けもそこそこに、ヤマトの部屋に連れて来られたのは、ほんの数秒前のことである。
そして、その間何度も問い掛けて来るヤマトに、『男に二言はない!』と返したのは、自分以外の誰でもない。
だから、一度決めた事を『嫌だ』と言えない自分を相手に、何度も問い掛けて来るその言葉は、少しだけ自分をイライラさせているのも、正直な気持ちである。
「…何度も言ってるだろう!……それとも、ヤマトは、嫌なのか?」
だから少しだけの意地悪も込めて問い掛けてたその言葉に、ヤマトが苦笑を零した。
「……嫌なんて、そんな事思う訳ないだろう……俺は、ずっとこうしたいと思ってたんだから……」
照れたような、だが真剣な瞳で言われたその言葉に、太一は満足そうに頷いて返す。
「だったら、何度も同じ事聞くな…バカ……」
そっとヤマトの首に手を回して、その胸に顔を寄せる。
そんな太一の行動に、ヤマトは胸が高鳴ってしまうのを止められない。
「……太一……」
その体を抱き締め返しながら、そっと耳元で名前を呼ぶ。
それに、太一がゆっくりとした動作で顔を上げた。
「……好きだ…ずっと、お前の事が欲しくって……醜い感情でお前の事、見てた…そんなの、お前にだけは知られたくなくって……」
自分を真っ直ぐに見詰めて来るその瞳が、辛そうに言葉を紡いで行く。
そんなヤマトの唇に、そっと指を当てて遮ってから、太一が笑顔を見せた。
「……同じだよ…俺だって、ヤマトとこうしたいって望んでた……昨日だって、本当はヤマトの裸見てそんな事考えてたんだ……」
そして、楽しそうに笑い出す。
「俺達、すごくバカみたいだよなぁ……両想いだったのに、お互いに臆病になってたし、同じ事思ってるのに、嫌われたくないからって、我慢し合うなんて……これって、進歩がないって言うんだろうなぁ……」
感心した様に言われたその言葉に、ヤマトが苦笑を零してしまう。
否定できないその事に、正直笑うしか出来ない。
お互いが同じ事を思っているのに、どちらもが臆病になって前に進めていなかったのだ。
誰かが切っ掛けをくれなければ、自分達は前に進む事は出来ないという事が、余りにも情けない。
「……想いは見えないから、言葉にしないと伝わらない……」
「ヤマト?」
突然囁かれたその言葉に、太一が不思議そうに首を傾げてヤマトを見る。
そんな太一に、ヤマトは笑顔をみせた。
「……昔、何かの本で読んだんだ……人の心は見えないから、想いを言葉にして伝えよう……見えない想いを詩にして君に送ろう……そんな詩だったと思う……」
「……くさい詩だなぁ……」
「でも、俺達にはピッタリだろう?」
照れたような太一にウインクで問い掛ければ、呆れた様に苦笑を零されてしまう。
確かに、自分達は、想いを伝えないで空回りしてきた。
それを認めているからこそ、その詩が自分達に必要な事を教えてくれているのは、本当の事。
「……だから、言葉にして伝える……俺は、太一が欲しい…ずっと、太一を抱きたいと思ってた……」
真剣に自分を見詰めて来るその瞳に、太一がフワリと笑顔を見せる。
そして、もう一度そっと首に手を回して、ゆっくりとヤマトの顔を引き寄せると小さく耳元に囁きかけた。
「……俺だって、ずっと、ヤマトが欲しいって思ってた……だから……」
最後の方は余りにも小さすぎて、耳元で囁かれたヤマトにも聞き取り難いものだった。
だが、その言葉に優しい笑顔を見せて、そっと太一を抱き締めて、その体をゆっくりとベッドに横たえる。
そっと頬に唇を寄せれば、擽ったそうに太一が肩を竦めた。
「……でも、優しくしないと…嫌いになるからな!」
肩を竦めながらも言われたそれに、笑顔を見せる。
どう見ても照れていると分かるのは、その顔が真っ赤になっているから…。
「…努力するよ……太一…」
笑いながら、そっと互いの顔を見合わせて二人同時に噴出してしまう。
そして、その笑いが収まってから、どちらとも無くキスをした。
始めは触れるだけのそのキスが、次第に深いものへと変わっていく。
そして、その行為の為に、太一の体からゆっくりと力が抜けて行くのを見て取って、ヤマトは名残惜しそうに唇を放した。
「…太一?」
余程苦しかったのか、少し赤くなった顔で大きく咳き込んでいるその姿に、心配そうに声をかける。
「大丈夫か?」
ディープキスなど初めての経験に、太一は全く呼吸をしていなかった様だ。
その事に対して、ヤマトは正直笑いを零してしまった。
「……お、お前は…なんで、そんなに平気そうなんだよ!!」
目許に涙を浮かべた状態で、睨み付けられて、ヤマトは思わず苦笑を零してしまう。
そんな事を言われても、困ると言うものだ。
それにしても、初めての経験のはずなのに、余りにもムードが無さ過ぎると感じるのは、自分の気の所為なのだろうか?
これでは、何時ものジャレ合いと全く変わらない。
「……お前なぁ……今、俺達がしてる行為、ちゃんと分かってるか?」
「分かってるに決まってるだろう!だけど、お前がそんなシレッとした顔してるから……」
呆れた様に呟いたその言葉に、少しだけ拗ねた様に返されたそれ。
「誰が、シレッとした顔なんてしてるんだ!俺だって、ドキドキしてるに決まってるだろう!!」
ずっとドキドキしている事をばれない様にしていたのは、本当の事。
太一を不安にさせたくないと思っているから、普通通りに装うって居るけど、ずっと胸はドキドキしていて、手が小さく震えるくらい緊張している。
「そんな風に見えない!」
「本当の事だ、ほら!」
すっと震えている手を太一の手に重ねて、ヤマトはため息をついた。
「……俺だて、緊張してるんだよ……太一を傷付けたくないって、思ってるんだからな……」
プイッと拗ねた様に逸らされたその視線に、太一は漸く笑顔を見せる。
確かに自分の手に重ねられたそれは、緊張の為に小さく震えているのを感じられるから……。
だから、そっとその手を握り締める。
「太一?」
「……大丈夫……どんな事されたて、俺はヤマトを嫌いになんてならねぇから……言っただろう…抱いて欲しいって……」
照れたようなその笑顔を前に、ヤマトは言葉も無く見惚れてしまう。
何時だって見せている太陽のような笑顔ではないその表情は、きっと自分にしか向けられない笑顔だと分かるから…。
「……本当に、お前には勝てない……勇気をくれるのは、何時だってお前の言葉だけだ……」
「…ヤマト……」
ゆっくりとした動作で静かに瞳が閉じられて行くのを見詰めてから、ヤマトがそっとその唇に自分のを重ねる。
暖かいその温もりを感じながら、手を重ねている方とは違う手でそっと太一の体を確かめる様に動かした。
「んっ……」
その手の動きに、小さく太一の口から声が漏れる。だがそれは、口を塞がれている状態で、確かな音を作る事はない。
そして、手がゆっくりとした動きで自分の体を動いていくのに、太一は小さく体を動かす。
くすぐったいその動きに、体が逃げを打つのは止められない。
それでも逃げられないのは、自分の唇を塞いでいるそれと、重ねている手を感じられるから……。
「……ヤ、ヤマト……」
漸く開放された唇から、相手の名前を呟けば、優しい笑顔で見詰められる。
それを感じて、笑顔を返せば、もう一度優しいキス。
そして、顔中にキスをされたと思った時には、何時の間にか服のボタンは外されていて、少し冷たい外の空気に触れた肌が、小さく震える。
「……大丈夫だから…太一……」
震える体に、優しく耳元で囁かれて、小さく頷く。
恐くって震えた訳ではないから、大丈夫だとしっかりと伝える。
それに、満足そうに笑顔を見せて、ゆっくりとした動作で唇が耳元からそのまま下へと移動して行くのを感じて、太一は小さく声を漏らした。
自分でも、初めて聞くようなその声に、慌てて手を口に当てる。
「……俺……」
自分が漏らした声が恥ずかしくって、真っ赤になっている太一に、ヤマトがそっと笑いを零す。
そして、そのまま行為を続けるように唇を動かして行く。
太一は、必死で声を出さないようにしているようだが、時々漏れてしまうその声は、どうしようもないくらい甘い声である事に、ヤマトは満足そうに笑顔を見せた。
幾つかの所有印を体に付けながら、ヤマトはゆっくりとした動作で太一を追い詰めて行く。
時間が経つに連れて、太一は自分の口に当てていた手で、ギュッとシーツを握り締めていた。
その為に、始めの頃は我慢していた声も、今では少しだけ苦しそうに漏らされている。
太一の声を聞きながら、ヤマトは自分の方も既に追い詰められた状態になっている事を悟って、ため息をつく。
優しくしたいと思っているのに、気持ちとは反対に体が言う事を聞いてくれない。
このまま太一の事を滅茶苦茶にしてしまいそうで、ヤマトは激しく頭を左右に振った。
だが、今の太一には、そんなヤマトの動きでさえも追い詰めるモノになってしまう。
「……やっ・・…や…ま・・とぉ……」
甘い声が自分の名前を呼んでくれる、それだけでも幸せだと感じられるのに、どうしてそれ以上の事まで望んでしまうのだろうか?
「……大丈夫…だから………ヤ・・マトの…好きにして、いいぜ・……」
行為を中断して迷っている自分の頬に、そっと触れて来たその手と、涙の浮かんでいる瞳のまま言われたその言葉は、まるで自分の心を読んだかのように、的確に自分を促してくるモノ。
涙で塗れているその瞳のままで、ニッコリと笑う笑顔が嬉しくって、ヤマトはもう一度太一を抱き締めた。
「……太一…愛してる……」
「……うん…」
そっと囁けば、嬉しそうに頷いて返してくれる存在。
それを感じながら、ヤマトは今まで生きてきた中で、一番幸せな時間を感じる事が出来た。
それは、見えなかった二人の想いが重なった瞬間だったのかもしれない。

ヤバイです。この話、どう見ても本編に関係していますね。
苦手な方は探さないで下さいって、書いたのに、どうしましょう?
しかも、隠しの意味も全く無い内容のような気がするのですが、どうなんでしょうか……。
あっ!えっと、ここを見付けてくださった皆様、お疲れ様でした。
頑張って探していただいたのに、こんな内容で申し訳ありません。
しかし、私にはこれが精一杯なのです。本当にごめんなさい(><)
しかも、いい加減にしろ状態のこの二人……xx
両想いなのに、悩みまくりなこの二人を、周りの人はジレッタいと思いながら見てるんでしょうねぇ…<苦笑>
ここで、漸く纏まったようなので、一安心と言えるのでしょうか?
無理やりな展開って思った方は、その通りです。(笑)私でも、思うんですから、きっと沢山の方がそう思うことでしょう。
それは、そろそろ終わらせてしまいたいという私の想いが形となって現れている所為です。
いい加減、別な話を書きたいので……xx
っと、言っても、このお話をいい加減なモノにするつもりはありませんので、安心してください。
しかし、手を抜いていると想われても仕方ない内容になるのは、私が未熟な所為です、はい……xx
では、次はラストになるかもしれない13で!
太一の記憶は戻るのでしょうか?
階段から落す事はしないからね、多分……。(笑)
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