異分子。
今の自分を例えるのなら、その言葉が一番的確な言葉ではないだろうか。
少しだけ認められたとしても、それは存在のみを許されただけ。
本当は、この場所に居る事は、許されていないのかもしれない。
そう、自分は、間違いなく、この世界のモノではないから……。
GATE 29
自分の事だけで、肝心な話しを忘れていた事に、己を叱咤する。
一番に考えなければいけないのは、自分の事ではなく、彼等の無事。
今は、それが最優先。
「デジヴァイスは、サーバ大陸の、ヴァンデモン城後で見つかった」
太一に促されて、レオモンが場所を教える。
「ヴァンデモンの城?そんな所にあるのか?」
レオモンから聞かされた意外な場所に、太一は思わず声を上げてしまう。
「なんだ、何の城なんだ?」
しかし、デジモンの名前を聞き取る事の出来ないヤマト達は、レオモンが言った言葉も、太一が言った言葉も聞こえずに、意味が分からずに首を傾げた。
「……そっか、そんな所に……」
ヤマトの疑問の声を耳にしても、太一は説明する事も無く、考え込む。
「本当は、私が持ってこちらに来るのが良かったのだが、まるで何かを守るような守護の力が働き、触れる事も出来なかったのだ。役に立たず、すまない」
そんな太一に、レオモンが申し訳なさそうに謝罪した。
「いや、その情報だけでも助かった。これからの、行動が決まったんだからな」
「一体、どう言う事なのですか?」
自分達の存在を全く無視して話される会話に焦れて、光子郎が問い掛ける。
「俺は、一度デジタルワールドに戻る」
「お、お兄ちゃん!!」
皆の方を向いて、きっぱりと言われた言葉に、ヒカリが驚きの声を上げた。
折角、その世界に存在認められたと言うのに、どうして、戻るなどと言うのかが、理解できない。
「どうしてもお前達に返さなきゃいけないモノが、デジタルワールドにあるって分かったから、取りに行ってくる」
「それは、デジヴァイスと言うモノですか?」
会話の流れから考えれば、それしか思い付かない。
だが、自分達のものだと言われても、その名前を聞いても思い出せないのだ。
「ああ、それは、お前等が持っていなきゃいけないものだからな。だから、取りに行ってくる」
ニッコリと、ちょっとした忘れ物でも取りに行くように言われた言葉に、何も言えなくなってしまう。
「それって、危険なんじゃないの?」
そんな光子郎に気が付いて、空が心配そうに問い掛ける。
「大丈夫だって、お前達にはパートナーが居るんだぜ、何の心配もしてねぇよ」
心配そうな空の質問に、太一は、ニッコリと笑顔を見せて、キッパリと言い切った。
「そんな事を言ってるんじゃないだろう!お前が、危ないんじゃないのか?」
だが、空の質問が、自分達の事を心配してではないのだと分かっているヤマトが、少しだけ声を荒げ否定し、再度質問を投げかける。
もう何度か、操られたデジモン達が、自分達の命を狙ってきていたのだ。
操られているのが、デジモンである以上、その生き物達の世界に戻ると言う事は、この世界に居るよりも、危険を意味している。
「俺には、アグモンが居る。だから、大丈夫だ」
「うん、ボクが、タイチを守るよ」
心配気に言われた言葉に、自分のパートナーを指して、太一が返事を返す。
その太一の言葉に、アグモンが胸を張って言い切った。
「……ボクからも、質問してもいいかな?」
そんな遣り取りの中、言い難そうに声が掛けられる。
今まで黙って全員の遣り取りを見ていた丈が、学校で教師に対するように小さく手を上げて、居る事に気が付いて、太一は思わず苦笑を零した。
こんな時でも、真面目なのは、変わらない。
「俺に、答えられる事なら、何でも良いぜ」
それに何処か安心して、返事を返せば、ホッとした表情を見せて、口を開く。
「えっと、そのデジタルワールドって言うのは、僕達が3年前に旅をした場所なんだよね?」
確認するように言われた内容は、ヒカリから簡単に説明された事。
「ああ、ヒカリが言っていたように、俺達8人は、デジタルワールドを旅していた。その世界を救う為にな」
「なら、僕達も、その世界に行くって言うのは、どうだろう」
ヒカリ同様、簡単に説明された太一の言葉に、丈が続けて申し出た内容は、驚かされずには居られないモノだった。
昔の丈は、どちらかと言えば、慎重派。
なので、自分から危険な事をするような人物ではなかったのだ。
なのに、躊躇いながら言われた内容は、自分から前へ進んでいこうとしていかのようで、昔の丈を知っていれば、ただ驚かされるものである。
「私も、それに賛成!」
続けて、丈の隣に立っていたミミも、大きく手を上げて、同意の言葉を述べる。
「それは、駄目だ!」
そんな二人に、太一が少しキツイ声で、否定の声を上げた。
「どうしてですか、理由を教えて下さい」
光子郎も、丈の意見に賛成だったのだろう。
否定されて、太一にその理由を問い掛ける。
「デジヴァイスを持たないお前達を連れて行く事は出来ない」
「そのデジヴァイスを取りに行くんだろう?それは、俺達のじゃないのか?」
デジタルワールドが今どういう状況か、一番分かっているのは、自分。
今でこそ、操られていたのが、自分達にとって親しい相手だったからこそ問題はなかったのだが、あの世界に至っては、操られていないモノでも、好戦的なデジモンは存在する。
記憶がない上に、デジヴァイスを持たない彼等を、そんな危険な場所に同行させる事は出来ない。
「……俺の我侭だと思ってくれていい……でも、お前達を連れて行く事は出来ないんだ……」
自分が、この世界に来た目的は、彼等を守るため。
そんな自分が、彼等を危険だと分かっている場所に連れて行く事は出来ない。
自分勝手だと言われても、これだけは譲れないのだ。
今なら、彼等には、パートナーデジモンが居る。
だからこそ、安心してあの世界に、用事を片付けに行く事が出来るのだ。
何よりも、それは、彼等にとっても、大切なものだから……。。

はい、中途半端な場所で区切ってしまいました。
『GATE』29話目になりますね。
う〜ん、次で30話か、遅いのか、早いのか疑問なモノがありますね。
長いって言うだけなら、納得出来るんですけど。<苦笑>
『裏・GATE』合わせると、54話……。長いよなぁ……。(しみじみ)
今までの中で、最長なお話ですね。
でも、まだまだ終わりそうにない。
もう暫く(なのか?)のお付き合いをお願い致します。
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